グラフィック薄氷大魔王[91]ショートアニメ制作顛末3 3ds Max篇/吉井 宏

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モデリングやマップ画像などの準備が整い、いよいよ3ds Max 9でのアニメーション作業に突入。

僕はWindowsマシンは現在持ってなく、MacBook ProをBootCampでWindows起動して3ds Maxを使っている。僕がやるようなシンプルなアニメーションならまったく十分実用になる。それどころか、ワークステーション用のCPUを使ったマシンを除けばCore2Duoの2.33GHzといえば、最上級クラスなのだ。

準備の段階で、簡単なものも含めて九体のキャラクターにボーンを仕込んだのだが、この作業が時間を食う。ヘタすれば一体に丸一日かかってしまう。ボーンは3ds Maxのキャラクタースタジオは使わず、CAT(Caracter Animation Toolkit)というプラグインを使っている。CATには、あらかじめいろんなキャラクターの形や用途に合うように多数のリグ(ボーンを組んだもの)が用意されていて、キャラクターの形に合わせて微調整するだけで使える。歩きや走りの動作も読み込んで使える。


というとカンタンみたいだが、関節や胴体などのポリゴンメッシュが思い通りにボーンで変形させられるようにする調整作業が大変。関節を曲げたときに、周囲の頂点が不自然にならないよう、最終的には一個一個の頂点のウエイトを微調整しなきゃならない。だいたいできたかなと思ってキャラクターを動かしてみると、一部の頂点が置いていかれてビヨーンと伸びたり、関節の内側の肉がめり込んだりする。ボーンで動かすキャラクターは細く手足が長いほど仕込みがラクで、針金の手足みたいなものが理想。ところが僕のキャラクターはみんな太く、手足が短い。

キャラクターや大道具などをシーンに読み込んで構成、ライティングや大気の設定をする。三本のムービー全編にわたって同じライティングでいきたいので慎重に設定する。メンタルレイや間接光などを使えば美しいレンダリングができるのだが、なるべく時間をかけたくないので、シンプルな設定にする。レンダリングを速くするにはシャドウマップという単純なシャドウを使うのだが、森のセット全体を照らすとシャドウが粗くなってしまうことがわかり、いろいろ設定してごまかす。まあ、静止画で気になるような粗さも、アニメーションではぜんぜん見えなかったりするのでそのあたりの妥協点を探す。

で、動きをつけていく。作業全体を書くのはややこしすぎるし、3ds Maxを使ったことがある人しかおもしろくないので、困ったことや失敗だけ書く。

●割り出したフレーム数を厳密に守ってキャラクターを演技させるのだが、あまりにチャカチャカしすぎて早回しフィルムみたいにせせこましくなってしまうことが多い。で、限界まで切り詰めてある動作をさらにシンプルに切り詰めてフレーム数をかせぐ。やってみると意外に不自然な感じはなく、逆にわかりやすくなることもたびたび。

●アニメーション作業真っ最中、ボーンやIK(特定の関節の動きに応じて他の関節が動く仕組み)が期待通りに動かないことがわかったりする。突貫工事で仕込んだせいだ。修正するのがたいへんそうな場合、そのキャラクターが登場する残りのカットが少なければ修正せず、チカラワザで1フレームごとにキーを打ってしのいだ。手の指がまともに動かないことが判明したときはあせった。パーとグーの二種類くらいしか使わなかったが、動きが速いアニメーションなのでまあ、わからないか。べークマの胴体が不自然に歪んでしまうカットがいくつもあるが、動いてるとほとんどわからない。

●べークマが切り株を頭上に持ち上げるシーンと双眼鏡を覗くシーン。気がついて愕然としたのだが、手の長さがぜんぜん足りない。顔の半分くらいが切り株にめり込んでしまうし、双眼鏡は口までしか上がらない。困った〜。結局、問題になるカットだけ手を二倍近く長くした。

●一番困ったのが、「ターザンのように木のツルにぶら下がって振り子運動をしていたキャラクターが木の枝に飛び降り、木の枝からツルに飛び移る」動作。つまり、「キャラクターの動き=ツルの振り子運動」をある時点からオフにして枝の上に立たせ、次に別のツルにつかまる、というような構造の動き。リンクコンストレイントという機能で動きの「親」を切り替えるらしいのだが、これがどうやってもうまくいかない。丸一日試行錯誤した末、あきらめた。飛び移ったり降りたりする瞬間は、別カメラからの視点に切り替えてごまかすことにした(編集してみると自然に飛び移っているように見えるから面白い)。

●もう一つ困ったのが、小道具のカメラにぶら下がっているストラップ。布の属性をつけてやれば自然な動きをするだろうと思ったら、ストラップのような細いものではムリなのか、オンにしたとたんにブワッと巨大に延び拡がってしまう。いくら設定を変えてもぶら下がるヒモのようにならない。ちゃんとダイナミクスを習得していないとムリみたいで、これも断念。動きの少ないカットにはポリゴンのストラップ(動かないもの)を使った他は、後で一コマずつPhotoshopで描くしかない。編集作業へ持ち越し。

●プレビューアニメーションでチェックしても、本番レンダリングしてみなければわからないミスがあったりする。レンダリングには作業MacBook ProとMac Bookの二台を使ったネットワークレンダリング。3ds Maxで作業しながら、バックグラウンドでレンダリングさせておき、終わったらQuickTimeに連番画像を読み込んで確認。何度もレンダリングを繰り返し、六回目が採用というのもある。とは言っても、三本合わせても1分半しかないし、設定の甲斐あって1フレームのレンダリングは10秒かからない程度(サイズは720x480)。やはり、レンダリングが速いに越したことはない。

●編集中に気がついた。冒頭シーンで丘の頂上にいるピヨッチが、ラストでは谷にいるように見える。困った。頂上を谷に変更するか、その逆か。どちらにしても数カットを修正してレンダリングしなおさなきゃならない。結局、谷を谷っぽくなく変更するにとどめた。

●あと小さなミス。やはり編集中に気がついたりするのだが、他のカットで使うキャラクターが遠くに小さく映っていたり、木の根本が地面に接してなくて空中に浮いていたり、キャラクターが幹にめり込んでいたり。また、半秒後に視野に入ってくる(まだ動いてない)キャラクターの影が地面に落ちていたり、逆に視野から出て向こうへ行ったはずのキャラクターの影が残っていたり。細かいところでは、目玉だけモーションブラーをつけるのを忘れていたり、背景の切れ目の端っこが見えていたり……などなど。いくつかはPhotoshopで修正したものの、ほとんどはレンダリングしなおし。こういった凡ミスをなくせば、制作時間は半分以下で済むかも。

……というように、やたらトラブル頻発しながらも少しずつレンダリングが出来上がっていくが、三本を仕上げるには時間が足りない。昨年やったキャラクターアニメーションの仕事は、キャラクターひとつを20分近くアニメーションさせるのに三週間かからなかったからナメていたかも。複数のキャラクターが相互に反応しあいながらの演技をさせるのは、桁違いにややこしい。しかし面白い。思い通りに動かせたときは何度も何度も見返してしまうくらい楽しいのだが……。

締め切りまで残り数日の段階で「三月中に最初の一本があれば可」ということになってホッとする。あと、きっかり30秒でなくてもいいことも判明。とりあえず一本を仕上げようと、完成に近いものを選んで集中することに……。

あああっ! 効果音や音楽はどうするんだ! 専門家に頼むつもりだったのに、時間がギリギリすぎて、頼めなくなってしまったー。しかたない、自分でやることにする。とりあえず、声優さんとスタジオの手配をし、録音に臨む……。

あと一回だけ、つづく。

オリンパスわくわくタウン
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【吉井 宏/イラストレーター】hiroshi@yoshii.com

ワイヤレスMightyMouse、おおむね気に入ってるのだが、単三電池を二本入れるとかなり重く、一本だけでもまだ重い。なので、軽い単三リチウム電池が推奨されている。ふと思いついて、エネループの単四電池一本を、ゼムクリップを折り曲げてマイナス側に挟んで入れてみたら、リチウム電池よりも軽い! 電池交換は早いだろうけど、軽く動いて快適!

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