デジアナ逆十字固め…[44]ビー玉レンズを作ってみた
── 上原ゼンジ ──

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ガラスコップの底を切り取ってフィルター代わりに使いたい、という話を書いたらお二人の方からメールをいただいた。ガラスの切り方に関してだ。ありがとうございます。しかし、役に立たないボトルカッターを買ってしまったショックで寝込んでしまい、もう何も切りたく症候群に陥ってしまった。

お二人のやり方というのは、灯油を染みこませたタコ糸でカットしたい部分をぐるりと巻き点火する。そして火が消えたら冷水入りのバケツに突っ込む。すると、あーら不思議、糸を巻いていた部分からパリンと割れますよという方法だった。


実はこういうようなやり方があるということは知っていた。昔、ギターのボトルネック奏法というのをやりたいと思ったことがあるからだ。ボトルネック奏法というのは、酒瓶の注ぎ口近辺の細い部分をカットして指にはめ、指で弦を押さえる変わりにボトルネックで押さえながら、スライドさせて音程を変える方法だ。

ブルースギターで主に使われるやり方で、マディ・ウォーターズやライ・クーダー、キース・リチャーズに憧れて、やってみたいと思った。ただ、楽器屋に行けばボトルネック奏法用のガラス管が売っているので、実際に自分で切ったりはしなかったのだが……。

この時、音楽雑誌で見かけた切断方法というのは、
◇和紙を帯状に二枚切り、水に浸す
◇和紙一枚を切りたい部分に巻く
◇少しずらせて隙間を空け、もう一枚を巻く
◇和紙と和紙の間の細い隙間の部分を火で焙る
◇ガラスが熱せられたら、冷水に浸ける

というやり方だ。何で今回この方法をとらなかったのかというと、切りたいガラスというのが、かなり小さなコップで、ちょっと厚手だったこと。失敗して変な風に切れてしまうと嫌なので、確実性を求めた。という理由なのだが、使えないようなボトルカッターを買ってしまったのは大きな誤算だ。

いただいたメールでは板ガラスの切り方もあった。
「窓ガラスなどの薄いガラス板などはガラスを水の中に入れた状態だと普通の鋏で面白いように切れますよ! ザクザクって感じで、お世辞にもキレイに切れるわけじゃないけどちょっと快感です」

というのは、ぜひ試してみたいなあ。板ガラスをザクザク切って何をするのかよく分からないが、何も切りたくない症候群からの脱出のきっかけとしたいものだ。

●ビー玉の中のやわらかな世界

傷心の中私は、ビー玉を使った撮影にチャレンジしてみた。ビー玉を使った撮影というのは、mixiのキッチュレンズ工房コミュでやっていた人がいて、興味を持っていた。とりあえずビー玉を手に持って撮影してみたら面白そうだったので、今回はちゃんと工作して、レンズに取り付けられるようにしてみたい。

まずはコンパクトデジカメで試してみる。ポイントは短い距離でのマクロ撮影ができること。レンズ前のビー玉にピントを合わせられるようなカメラでないとダメだ。ただ、オートではなかなか合わないので、マミュアルフォーカスできるほうがいいだろう。

色々試していたらファインダーでちゃんとピント合わせがしたくなったので、一眼レフで工作することにする。ビー玉は二つある。直径17mmのものと27mmのもの。ビー玉といっても色が付いていたり、模様があるものではなく無色透明なものがいい。小さい方はラムネ瓶から取り出した。大きい方は、陰山英男先生の「光の進み方の完全図解」に付属していたものだ。

50mmレンズにリバースリングを着けて、レンズを逆向きにボディに取り付けてみる。こうすることによって等倍以上の拡大撮影ができるようになる。二つのビー玉を手に持って覗いてみるのだが、いまいちビー玉の大きさと合わないので、60mmマクロ、90mmマクロでも試してみる。結果、90mmマクロで工作することに決定。15mmのビー玉がうまくファインダーいっぱいに収まり、ビー玉を通した画の感じも良さそうだったからだ。

工作開始。まず鏡筒を作るが、大きなビー玉だとちょっと重みがあるので、紙ではなく0.75mmのポリプロピレンシートを利用することにする。レンズに合わせてぐるりと巻き、とりあえずはテープで留めるだけでオーケー。

ビー玉はドーナッツ型に切った円盤二枚で挟みこむことにする。ビー玉の直径よりも少し小さめの穴を開ければいいわけだが、これがけっこう手間取った。サークルカッターで切ったのだが、いつも切っている紙と違ってちょっと切りづらいのと、ちょうどいいサイズにするというのが、けっこう微妙だったからだ。レンズへの取り付けは純正フードにかぶせるだけだ。一応、グラグラしないようにテープで留めて完成。試作品なので、接着はすべてテープだけで処理した。

問題はちょっとデカイということ。90mmマクロに着けた状態でレンズ全体の長さは270mmになる。どう見ても大口径の望遠レンズにしか見えないが、実際は15mmのビー玉がレンズの先っちょについているというところが哀しい。

さらにこのカメラの難点は、上下が逆さまに写ってしまうということだ。私よりも先に実験済みのmaimoさんはカメラを逆さに持つことによって、この問題を解決したそうだ。それはいくら何でも格好悪いから、ミラーでさらに反転させる仕組みにしようかとも思ったが、試作一号はとりあえずシンプルに作ってしまった。

それに、一眼レフの場合はライブビュー機能付きのカメラでないと、逐次液晶画面で被写体を確認することができない。もしもミラーを使ってレンズを上に90度曲げたとしたら、常にゴメンナサイをしながら撮影しなければならない。6×6を上から覗きこむのなら構わないが、一眼レフじゃあ地面を撮っているようにしか見えないだろう。

ということで、テスト撮影の結果はブログの方にアップしておいたのでご覧下さい。すべて逆さまのまま構図を決めたが、そんなにおかしくはない。天地が逆でも撮影できる男として売り出すか?(どこに?)

< http://kitschlens.cocolog-nifty.com/blog/
>

描写はなかなか面白い感じになった。周縁部の柔らかさやフレアの具合がけっこう美しい。一応ガラスなので、安プラスチックのような嫌な収差はない。35 mm換算で135mm相当のレンズを使っているので、ビー玉のキズも目立たない。ドアスコープ魚眼の場合は真鍮製の鏡筒が剥きだしなので、レンズ内にメタリックで激しい反射が起こるのだが、それがない分やさしい感じになる。

ということで、ビー玉写真はさらに追求しても良さそうだな。さかさまでの撮影も気に入ってしまった。家に戻ってPCでチェックしてみると、普段は撮らないような写真が写っているのが楽しい。なるべく撮影した自分と切り離して写真のセレクトはしたいと思っているのだが、この方法であれば、かなり客観的に写真を選ぶことも出来るだろう。

【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
◇キッチュレンズ工房
< http://kitschlens.cocolog-nifty.com/blog/
>


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