ローマでMANGA[3]「ワークショップ」さっそく試運転
── midori ──

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MANDALA Vol.1 (2007) (1)モーニングで「MANDALA」発売と同時に「国際漫画新人賞」募集を始めた。6年前にコアミックス社の「コミックバンチ」で募集した時も国籍問わずだったけれど、各国語で募集要項を発表するほど本気で各国の原稿を求めようという姿勢を見せた新人賞は日本のマンガ史上初めてのことではないだろうか。

学校には「日本の新人賞に応募するワークショップ」コースの提案はまだしていないし、始めるとしても新学期開始の10月にならないと実動にならない。現在私が講師をしているマンガセミナー参加者は皆一年生で、どう見ても技術的に無理がある。

というわけで、奨学金で日本へ行ったティーナと、同学年でやはり奨学金をもらったシルビアに参加を勧めてみた。ちなみに、シルビアは日本行きではなくてキューバのアニメ学校へ体験留学する賞をもらった。二人で日本の出版社に送ってみる作品を作るんだと、わが家に話しにきたばかり。

お知らせのメールを送ると、二人はまたとないチャンスと大喜びですぐにシノプシスを送ってきた。5月末締め切りだしね。やぁ、すごいなぁ。いい反応!二人とも描ける子達だし、うん、ひょっとしたらひょっとして……なんて夢見てしまった(ちょっと何かが進むと、その先をピンク色にいいようにいいように空想が先走る癖がいくつになっても抜けない)。

この新人賞サイトからイタリア語の応募要項をプリントアウトして、学校の掲示板に貼ると、さっそく小太りの男の子が一人、おずおずとメールをしてもよいか……とやってきたりして、「行く末安泰!」と思ってしまうのだった(ちょっと何かが進むと、その先をピンク色にいいようにいいように空想が先走る癖がいくつになっても抜けない)。


●目の問題

シルビアは最初のシノプシスだとどうしても長くなるので……と、別のシノプシスを送ってきた。キャライメージもあって、主人公が主人公にしては怖いし感情移入からはほど遠いので、それを指摘。重要な脇役の少女が日本の読者には少女に見えないのでそれも指摘。

ヨーロッパの目からは、東洋人は皆若くみえる。それが絵にも現れて、ヨーロッパ人が描く年齢は日本人から見ると老けて見える。

例えば。昔、さるホテル内の土産物屋に勤務したことがあった。学生旅行シーズンで女子大生とおしゃべりをしていたら、こんな体験を話してくれた。ロビーで会った白人の女の子とどうにか英語で会話をして、最後に年を聞いたら13歳だった。「同じか年上かと思ってたの。私は18歳って言った。恥ずかしくて21歳なんて、ほんとの年を言えなかったぁ」

すっかりヨーロッパ人の目になってしまってる私は、たまに友達から見せてもらう日本のテレビドラマは、誰が親で誰が高校生の息子で誰が上司なのか、把握に手間取ってしまう。誰も彼もが10代に見えてしまうのだ。ほんと。

日本のマンガの絵は手塚氏以来デカ目と決まっている。デカ目の方が表情を表しやすいという重要な意味があるし、童顔の方が日本の読者には受け入れやすい。さらに、「萌えばやり」でいわゆるアニメ系が主流になっている今はなおさらだ。

だからといって、イタリア人にアニメ系を描いてもらおうとは思わない。むしろ、自分のヨーロッパ風の絵で勝負して欲しいと思っていたのだけど、実際、18歳に見える8歳の少女ではとっつきにくい。

シルビアが送ってきた少女の絵をコンピューターで顔をやや丸くし、目を120%大きくしながら、この辺がヨーロッパ人の作品を日本市場へ入れる場合の問題の一つだな、と実感した。

日本の読者がヨーロッパの絵を見慣れるとこれも変わってくるかな。この辺から、ロリ好みから大人っぽさへの変換が起きたら面白いな……と遠い将来を思ってわくわくした。

●「応募したい!」と「応募する」の溝

シルビアが、他の仕事の締め切りがあるから、来週の週末には最初の5ページを見せるようにしたい……というメールを送ってきてから二週間経った。

ティーナからは、フランスへ売り込んでいた作品を買ってもらえそうなので、そちらに取りかかるから、残念ながら新人賞に出す作品にとりかかれなくなった……とメールがあった。ティーナにとってはよいこと。フランスというヨーロッパのマンガ先進国で作品が出るなら、言うことはない。

小太りくんは一度「大河物語の一部でもいいのか」というメールを送ってきて、それきり。ドアが開いていても、そこを通るか否かって、努力が必要。そして縁というものもあるような気がしてきた。

イタリア人マンガ家志望者が、日本の新人賞に作品を送るのはいつになるんだろう?

シルビアは作品を仕上げるか……
校長はワークショップの提案を受け入れるか……
次回のお楽しみに。

【みどり】midorigo@mac.com
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よくわかってないし、プレゼンスを共有する程のトモダチがいないから、活用になってないと思うけど、とりあえず触ってみたかった。

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MANDALA Vol.1 (2007) (1)
講談社 2007-03
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by G-Tools , 2007/05/15