デジクリトーク 先生と上司は使ってナンボ 〜元非常勤講師の極私的ソーカツ・その1/Rey.Hori

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いきなりの私事ながら、今年はフリーランスで制作仕事を始めて10年目にあたる。そのフリーのフルシーズン初年度の1998年から縁あって某美術短大で非常勤講師を勤めた。講義内容は、最初の2年間が3DCGの基礎(必須科目)、残りは言わばPhotoshop初級編(選択科目)、どちらもハンズオン型講義で、電源の入れ方(!)から始めて最後の数週の作品制作&講評でシメる、という流れでやっていた。

その講師生活に今年の3月つまり2006年度一杯で訳あって(少なくとも一旦は)ピリオドを打ったのだが、お引き受けした時点では丸9年もやることになるとは思いもしなかった。ここではその9年分の経験に基づく雑感をごく大まかに且つ極めて私的に整理して書いてみたい。

極私的なのでお気に障る点があれば平にご容赦を。お読みの方々の中にも沢山おられるであろう「制作仕事と講師の二足ワラジ」の人や、講師仕事に少しでも興味のある人のご参考になるかどうか……。


◇筆者の講義のモットー

筆者が講義でモットーとして学生たちに課したのは次のような事柄。もちろん教室内の飲食禁止(*1)や禁煙、携帯着信音オフ(*2)などの一般的事項は当然の前提として。これから講師をやろうとしている人はお気に召したら、ロイヤリティフリーなのでどうぞお使いあれ。

・講義のモットー(1)
まず「先生と上司は使ってナンボ」。こっちは教えたいことだらけな状態なのだから、無礼にならない範囲でうまく講師を使え、ということを言った。この気持ちは講師や講演の経験のある方にはわかってもらえることと思う。学生にナメられては困るが、敬遠されすぎてもつまらないのである。授業料分ぐらいは何か盗んで帰れ(もちろん学校の備品ではなく、講師の技術や知識を!)、とも言ったっけ。

・講義のモットー(2)
次に「大学の講義なのだから、何をしても、内職してもサボっていても構わない。ただし他人には絶対に迷惑をかけるな」。異論もあるかもしれないが、寝てる奴は寝ていても講義を理解できて課題を提出できるならそれでヨシと公言した。ただし他人を巻き込むな、というのを絶対条件として。なので制作時間中など特に許可した時間以外の私語や携帯の着信音を(生来の関西弁で)怒鳴りつけることは多々あった。

・講義のモットー(3)
「コンピュータはまだ紙と鉛筆に勝てていない。アイデアスケッチは紙に鉛筆で描き、いきなりマシンに向かわない」。これには実は若干の自戒も込めている。ましてやアプリの操作もおぼつかない学生たちのこと、作りたいイメージが固まらないままマシンに向かうと強力なアプリの機能に面白いように完全に“使われて”しまう。モーツァルトじゃあるまいし、頭の中だけで作品を完璧に完成させられるはずがないだろう、というフレーズもよく使った。“鉛筆”は具体的に鉛筆に限定したわけではないので念のため(*3)。

・講義のモットー(4)
「質問に来た学生にはとことん答える」。後述するように学生たちはなかなか質問してくれなくて困ったのだが、それでもクラスに数人は講義前後に質問に来てくれることのある学生がいた。質問の中身は講義に関すること、自分のコンピュータのこと、他の講義での制作のこと、仕事のこと、など様々。こっちも人間なので、こういう学生がいるとやはり嬉しい。こちらの知識の及ぶ限りとことん答えることにしていた(でも講義や採点のひいきはしない。それとこれとはもちろん別)。

・講義のモットー(5)
「なるべく泥臭い話をする」。こっちは実際の制作の現場を本業としている非常勤講師。理論だの学術的なことだのは常勤の先生方に任せて(って、こっちにゃそんな内容の講義はそもそもできないんだけど)、できるだけ制作の実作業に基づいた泥臭い話をしてやろうと思った。なかなかそうした脱線をする時間がなかったのは残念(*4)だが、興味のある学生には少しはウケたかも。

*1:教室の入り口に張り紙があるのだが、守らないヤツ多し。ペットボトルを見つけたらカバンに入れさせるか、取り上げて講義終了まで預かった。マシンにこぼされてはたまらないからだが、これを講義終わりに取りに来ないヤツがまた多し……。

*2:余談だが、人前に立って喋っている側からすると、いきなり鳴りだす着信音はとてつもなく邪魔で迷惑で無礼で馬鹿で最低。おのおの方、くれぐれもお気をつけあれ。なお筆者自身は携帯不携帯の絶滅危惧人種。

*3:消しクズの害を考えると、コンピュータ教室での鉛筆はむしろ厄介。プラスティック消しゴムの消しクズはプラスティックを溶かすことがあるし、単に細かなゴミとしてキーボードやマシン内に落ちてもトラブルの元になるので、消しクズは持ち帰れ、とも話した。

*4:半期のクラスなので、13〜15回ぐらいで完結せねばならない。いつも時間(その期の残り講義回数)との戦いだった。

【Rey.Hori/イラストレータ】 reyhori@yk.rim.or.jp

冒頭に書いた通り、フリーになってもうすぐ丸々10年。どこまでやれるか実験人生進行中だが、ひとまず特に困ったことにもならず、仕事に恵まれて10年もったことについて関係各方面に大感謝。次の10年も引き続きご愛顧下さいませ。3DCGイラストとFlashオーサリングを中心にお仕事をお請けしてます。
サイト:< http://www.yk.rim.or.jp/%7Ereyhori/ >

■デジクリトーク 美術系学生たちの生態 〜元非常勤講師の極私的ソーカツ・その2