[2216] 男らしい名前とは

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<こういうのを「やらずぶったくり」と言う>

■デジアナ逆十字固め…[47]
 「本の雑誌」で助っ人を始める
 上原ゼンジ

■笑わない魚[225]
 男らしい名前とは
 永吉克之

■デジクリトーク
 応募規約は危険がいっぱい
 柴田忠男


■デジアナ逆十字固め…[47]
「本の雑誌」で助っ人を始める

上原ゼンジ
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日刊スポーツの印刷局でバイトを始めた1981年の秋、私はもう一つのバイトを始めた。愛読誌のひとつだった「本の雑誌」が助っ人を募集していたので、応募してみることにしたのだ。助っ人というのは、きちんとしたバイト代は払えないけど、仕事が終わればメシぐらいはおごりますという制度のことだ。

助っ人のメインの仕事は配本。当時「本の雑誌」は直販体制だったために、書店に納品する人間が必要だった。直接雑誌や本を書店に担ぎ込んで納品をし、時には請求書を立てて精算するところまでが助っ人の仕事だった。本誌や書籍が刊行されれば、レンタカーを借りて配本してまわり、日々の細かい注文にはカバンに本を詰め、電車に乗って書店へと向かった。

私が応募した時の助っ人募集には、130名の学生達が集まった。編集長椎名誠が「さらば国分寺書店のオババ」でデビューして二年。代表作でもある「哀愁の町に霧が降るのだ」の上巻が発売されたばかりでもあり、ナマ椎名が見てみたいという人間も多かったんじゃないかと思う。

当時は編集長椎名誠、発行人目黒考二のほか、唯一の社員として、作家デビューする前の群ようこがいた。最近では「かもめ食堂」の原作者として有名だが、当時は、たまに「本の雑誌」に原稿を書く程度で、ふだんは電卓をカタカタ叩いている事務のお姉さんだった。

130名の応募に対し、合格不合格というのはなく、全員採用となったので、しばらくの間、信濃町の狭い事務所は混乱した。そしてゆっくりと時間をかけ、助っ人君達は淘汰されていった。ただ、今考えてみれば、この時しぶとく残った連中というのは、個性的で面白い人間が多かったかもしれない。現社長の浜本茂もその時の助っ人同期だ。

助っ人の先輩、後輩も合わせれば、本を出している人間も多い。マガジンハウス書籍編集部編集長の沢田康彦は、エッセイ集の他に短歌の本も何冊か出している。あやしい探検隊のドレイ上がりのくせに、女優と結婚したことでも話題になった。翻訳家の那波かおりや、絵本作家の本下いづみもいっぱい本を出しているし、同期の富澤えいち(ジャズ評論)や、吉田伸子(書評)もそれぞれの分野で活躍している。

当時の助っ人の中で私が強力プッシュしたいのは、イラストレーターの福井若恵。独特の視点で絵の付いたエッセイを発表しているのだが、これが面白い。今さら私がプッシュしなくても、すでに活躍しているのだが、もっともっと売れて欲しい。若恵さんを世の中に知らしめたいので、ぜひブログにアクセスしてみてください。

◇歩き方がただしくない
< http://kazan.at.webry.info/ >

●自称アートディレクターの頃

助っ人の基本は配本だが、対談のテープ起こしや、赤字の付け合わせなんかの編集作業も多少あった。そして、学生ながらに責任を持たされてやっていたのが、交換広告の担当。交換広告というのは、マイナー雑誌同士が、無料で互いの広告を掲載しあうというシステムのこと。当時「本の雑誌」は不定期刊だったので、いつ頃発売予定とか、21号が発売中といったアナウンスに使っていた。

当時交換広告をしていた雑誌としては、「話の特集」「広告批評」「写真装置」「FOOL'S MATE」「ガロ」「漫金超」「ぱふ」「夜想」「軍事民論」「遊」「J UNE」、エトセトラ……、といった辺りが思い浮かぶ。当時はサブカル系の雑誌に勢いがあった頃で、編集者の顔が見える面白い雑誌がいっぱいあった。

私は若恵さんの後を引き継いで交換広告の担当になった。せっかく「本の雑誌」に出入りしているのだから、編集っぽい作業がしたいと思い、若恵さんから版下作業の手ほどきを受けた。当時はワープロも一般的ではない頃だから、ロットリングを使って罫線を引き、ペーパーセメントを使って写植の切り貼りをしていた。

交換広告担当者は、自分のところの雑誌に掲載する広告を集め、また他誌に掲載するための広告版下を作って送るのが役割だ。版下は郵送すればいいのだが、よその雑誌編集部が覗いて見たくて、わざわざ届けたりもした。神保町の「ガロ」編集部があった木造モルタルの王国や原宿にあった「話の特集」編集部のセントラルアパートにも偵察に行った。

広告の基本は「本の雑誌」専属イラストレーター沢野ひとし画伯のイラストを使うことだが、担当者がトレースすることもあったし、勝手に自分でイラストを描いてしまうこともあった。当時はコピーライターブームで、広告関連のクリエイティブ作業が持てはやされた時代でもある。

私もコピーライターとか、アートディレクターになったつもりで、「本の雑誌」の交換広告をクリエイトしていた。当時の私の作品のひとつには、「タタンタタンメン タン ンタタン」というリズミカルなコピーとともにタンメンのイラストが描いてある、というものがあった。そう、「広告批評」で褒めて貰ったことでも話題になったあの広告は、私が作ったものだったのですよ。二十一歳の頃の話だねえ。

【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
◇キッチュレンズ工房
< http://kitschlens.cocolog-nifty.com/blog/ >

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■笑わない魚[225]
男らしい名前とは

永吉克之
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彩子、真由子、美枝、理恵、ゆり、アンヌ

女性の名前といえば、昔からこういったあたりが好きだった。多分、やらたと女っぽい響きがあるからだと思うのだが、なぜ女っぽい響きがあるかというと、それらには「和子・和雄」「弘枝・弘之」「聡美・聡」のように、対応する男性名がないからだろう。

彩男、真由平、美枝之介、理恵五郎、ゆり作、アンヌ左衛門

こんな名前は聞いたことがない。

この例のように、対応する男性名のない女性名は、いくらでも見つかりそうだが、その反対はなかなかいそうにない。だから、息子に男らしい名前にをつけようとして、女の名前には普通使わないような字を入れた名前を考えるとなると大変である。

権三、伝兵衛、熊五郎、田吾作、土左衛門、助平

なんてのがあるが、21世紀の子供につけるのは残酷だ。だから男性的な魅力に満ちた言葉を名前に含めるのが最もいちばん最高にベストだろう。

                 ●

男性の魅力といえば誰でもまっ先に浮かぶのが「暴力」である。人間の歴史は暴力の歴史と言ってもいいくらい、紛争や戦争の連続であった。そしてその主力は常に男だった。そういった歴史が、暴力を男の存在証明にしたのである。

女性が、恋人にしたい男性の条件のなかに、よく「優しい人」や「頭のいい人」というのを挙げているが、ということは、優しくて頭がよく、暴力を振るう男というのが、最も女が求める男のタイプということになる。

口のきき方が気に入らないと因縁をつけて、人を殴ったり蹴ったりしているときの残忍な笑い、車のミラーを擦ったと、相手ドライバーの胸ぐらを掴んで脅しているときの凶暴な眼差し、店員の態度が悪いと、店の窓ガラスをイスで片っ端から叩き割っているときの野獣のような雄叫び。それらこそ、女が求めている男の姿なのだ。

【激論2007!】暴力の可能性を探る

◎パネリスト
山本殴(やまもと なぐる)暴力体育教師
加藤毀(かとう こわす)バイオレンス作家
北川土月(きたがわ どつき)ボクサー崩れの用心棒
大田巴海(おおた はかい)延暦寺僧兵
李獏哈(り ばくは)中国マフィア幹部

司会者/アルチュール凶暴(詩人)

司会者「えー、まず『子供のことでいちいち学校にネジ込んでくる親は殴れ』がベストセラーになった中学教師の山本殴さんにお伺いします。どんな場合に暴力をお振るいになりますか?」

山本殴「私は教育者ですから、教育の場でしか暴力は振るいません。派手な髪型で登校する、授業中にガムを噛む、といった風紀を守らない生徒にはもちろん暴力を振るいますが、たとえば、私が眼をつけていた女子生徒とカップルになっている男子生徒などにも暴力を振るいます。他人のモノに手を出してはならないという社会のルールを教えるためです。このように、暴力を振るうことこそ私の仕事だと思っています!」

司会者「なるほど、ではご家庭でも暴力を振るわれるわけですね?」

山本殴「振るいません。家庭には仕事を持ち込まない主義なんです」

司会者「さて、白熱した意見の応酬となりました今回の『激論2007!』ですが、残念ながら残り時間が少なくなってまいりました。とはいえ、暴力の将来像が垣間見えたような気が致します。長い時間、ご視聴ありがとうございました。そしてバネリストのみなさん、お疲れさまでした」

                 ●

ここまでに書いたところで読み返してみたが、考えてみれば暴力は男だけのものではない。暴力を振るう女なんていくらでもいるからだ。私自身、大学時代交際していた女性に殴られて左頬が腫れ上がったことがある。だから暴力が男の魅力だなんて考え方は、まったく馬鹿げている。

男の本当の魅力は、女を孕ませる生殖能力以外にない。どう頑張っても女が女を孕ませることはできないのだ。だから、たとえあなたがいつも両肩にフケを溜めている風采の上がらない、のろまな大食漢で、一方あなたが惚れた女性が東大卒の才媛、若くしてIT業界で巨万の富を築いた美女でも、なんら不釣り合いはない。なにしろわれわれ男はみな、愛の海綿体を持っているのだから。

【激論2007!】今年の生殖はこう変わる

◎パネリスト
伊藤海綿体(いとう まさあき)性科学者
木村男根(きむら としひろ)強壮剤製造販売
鈴木睾丸(すずき とものり)官能作家
森陰嚢(もり よしかず)好色家
大山絶倫男(おおやま てつお)種馬

司会者/スピロ平太(お笑い芸人)

司会者「今回は、生殖の権化のような男性のみなさんにお集りいただきました。まず種馬をなさっている大山絶倫男さん。あなたは生殖そのものをお仕事にしておられて、羨ましいなどと言われることがあると思うのですが」

絶倫男「ありますあります。いや実際、私がこの仕事を始めたときも、そんな動機がなかったとは言えないのですが(苦笑)。でもダメですね、仕事でするとなると。まず相手が選べないのが辛いですよ。かつて遊郭に売られた女性たちの気持がよくわかりま…」

司会者「いやー、今回も意見百出でしたが、結論を見ることができないままタイムアップになってしまいました。しかしこの議題、いずれまた日を改めて討論していきたいと思います。ではみなさん、また来週!」

【ながよしかつゆき/餅米】katz@mvc.biglobe.ne.jp
次回はもう少しましなことを書こうと思っている。

・ちょ〜絵文字 < http://emoz.jp/ > au&Yahoo!ケータイ公式サイト
・無名芸人 < http://blog.goo.ne.jp/nagayoshi_katz/ >
・EPIGONE < http://www2u.biglobe.ne.jp/%7Ework/ >

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■デジクリトーク
応募規約は危険がいっぱい

柴田忠男
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最優秀賞1名100万円、優秀賞1名30万円、審査員賞3名各10万円。審査員はテレビ、CM、web業界を牽引するあの著名人。そう銘打った映像コンテストがあったので、紹介しようと思って応募規約をのぞいて、なんじゃこれは! と愕然。

応募者は、作品の応募に際して、以下の規約を遵守するものとします、として「応募作品に対する著作権その他の知的財産権(翻訳その他の翻訳権及び二次的著作物に対する原著作者の権利を含む)は、応募作品応募をもって当社に移転するものとします。なお、当社への権利移転に対価は発生しないものとします。応募者は、応募作品の応募後において、応募作品に対する著作者人格権を行使してはならないものとし、その著作者に著作者人格権を行使させないものとします。当社は、応募作品を、その裁量により改変し×××に掲載する権利を有し、また×××の広告としての使用等、×××のPR等に利用することができるものとします」だって。

信じがたいほど勝手なことを堂々と書き連ねている。おそらく「次世代クリエイターの発掘」などと標榜するイベントなのだろうが、そんなえらそうなことは言わせない。たんなる「コンテンツのただ取り」「コンテンツの一網打尽作戦」ではないか。とにかく、応募したが最後、すべての権利は主催者にただ取りされてしまうのだ。はっきりそう書いてある。曖昧でないところが、ある意味すがすがしい(笑)。

著作者人格権とはなにか。あの恐怖の(笑)いや笑ってる場合じゃないか、JASRACのサイトにわかりやすく解説されているので引用させてもらう。
< http://www.jasrac.or.jp/profile/copyright/person.html >

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そもそも著作物とは、それを創作した人の全人格を表したものとも言うことができ、著作物がどのように利用されるかは、単に、経済上の問題にとどまらず、著作者の人格的な問題にもかかわってきますので、著作権法では『著作者人格権』として次の3つを定めています。

●公表権 著作物を公表するかしないか、公表するとすればどのように公表するかを決めることができる権利。
●氏名表示権 著作物に氏名を表示するかしないか、表示する場合に本名を表示するかペンネームを表示するかを決めることができる権利。
●同一性保持権 著作物の改変、変更、切除などを認めない権利。