笑わない魚[225]男らしい名前とは
── 永吉克之 ──

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彩子、真由子、美枝、理恵、ゆり、アンヌ

女性の名前といえば、昔からこういったあたりが好きだった。多分、やらたと女っぽい響きがあるからだと思うのだが、なぜ女っぽい響きがあるかというと、それらには「和子・和雄」「弘枝・弘之」「聡美・聡」のように、対応する男性名がないからだろう。

彩男、真由平、美枝之介、理恵五郎、ゆり作、アンヌ左衛門

こんな名前は聞いたことがない。

この例のように、対応する男性名のない女性名は、いくらでも見つかりそうだが、その反対はなかなかいそうにない。だから、息子に男らしい名前にをつけようとして、女の名前には普通使わないような字を入れた名前を考えるとなると大変である。

権三、伝兵衛、熊五郎、田吾作、土左衛門、助平

なんてのがあるが、21世紀の子供につけるのは残酷だ。だから男性的な魅力に満ちた言葉を名前に含めるのが最もいちばん最高にベストだろう。


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男性の魅力といえば誰でもまっ先に浮かぶのが「暴力」である。人間の歴史は暴力の歴史と言ってもいいくらい、紛争や戦争の連続であった。そしてその主力は常に男だった。そういった歴史が、暴力を男の存在証明にしたのである。

女性が、恋人にしたい男性の条件のなかに、よく「優しい人」や「頭のいい人」というのを挙げているが、ということは、優しくて頭がよく、暴力を振るう男というのが、最も女が求める男のタイプということになる。

口のきき方が気に入らないと因縁をつけて、人を殴ったり蹴ったりしているときの残忍な笑い、車のミラーを擦ったと、相手ドライバーの胸ぐらを掴んで脅しているときの凶暴な眼差し、店員の態度が悪いと、店の窓ガラスをイスで片っ端から叩き割っているときの野獣のような雄叫び。それらこそ、女が求めている男の姿なのだ。

【激論2007!】暴力の可能性を探る

◎パネリスト
山本殴(やまもと なぐる)暴力体育教師
加藤毀(かとう こわす)バイオレンス作家
北川土月(きたがわ どつき)ボクサー崩れの用心棒
大田巴海(おおた はかい)延暦寺僧兵
李獏哈(り ばくは)中国マフィア幹部

司会者/アルチュール凶暴(詩人)

司会者「えー、まず『子供のことでいちいち学校にネジ込んでくる親は殴れ』がベストセラーになった中学教師の山本殴さんにお伺いします。どんな場合に暴力をお振るいになりますか?」

山本殴「私は教育者ですから、教育の場でしか暴力は振るいません。派手な髪型で登校する、授業中にガムを噛む、といった風紀を守らない生徒にはもちろん暴力を振るいますが、たとえば、私が眼をつけていた女子生徒とカップルになっている男子生徒などにも暴力を振るいます。他人のモノに手を出してはならないという社会のルールを教えるためです。このように、暴力を振るうことこそ私の仕事だと思っています!」

司会者「なるほど、ではご家庭でも暴力を振るわれるわけですね?」

山本殴「振るいません。家庭には仕事を持ち込まない主義なんです」

司会者「さて、白熱した意見の応酬となりました今回の『激論2007!』ですが、残念ながら残り時間が少なくなってまいりました。とはいえ、暴力の将来像が垣間見えたような気が致します。長い時間、ご視聴ありがとうございました。そしてバネリストのみなさん、お疲れさまでした」

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ここまでに書いたところで読み返してみたが、考えてみれば暴力は男だけのものではない。暴力を振るう女なんていくらでもいるからだ。私自身、大学時代交際していた女性に殴られて左頬が腫れ上がったことがある。だから暴力が男の魅力だなんて考え方は、まったく馬鹿げている。

男の本当の魅力は、女を孕ませる生殖能力以外にない。どう頑張っても女が女を孕ませることはできないのだ。だから、たとえあなたがいつも両肩にフケを溜めている風采の上がらない、のろまな大食漢で、一方あなたが惚れた女性が東大卒の才媛、若くしてIT業界で巨万の富を築いた美女でも、なんら不釣り合いはない。なにしろわれわれ男はみな、愛の海綿体を持っているのだから。

【激論2007!】今年の生殖はこう変わる

◎パネリスト
伊藤海綿体(いとう まさあき)性科学者
木村男根(きむら としひろ)強壮剤製造販売
鈴木睾丸(すずき とものり)官能作家
森陰嚢(もり よしかず)好色家
大山絶倫男(おおやま てつお)種馬

司会者/スピロ平太(お笑い芸人)

司会者「今回は、生殖の権化のような男性のみなさんにお集りいただきました。まず種馬をなさっている大山絶倫男さん。あなたは生殖そのものをお仕事にしておられて、羨ましいなどと言われることがあると思うのですが」

絶倫男「ありますあります。いや実際、私がこの仕事を始めたときも、そんな動機がなかったとは言えないのですが(苦笑)。でもダメですね、仕事でするとなると。まず相手が選べないのが辛いですよ。かつて遊郭に売られた女性たちの気持がよくわかりま…」

司会者「いやー、今回も意見百出でしたが、結論を見ることができないままタイムアップになってしまいました。しかしこの議題、いずれまた日を改めて討論していきたいと思います。ではみなさん、また来週!」

【ながよしかつゆき/餅米】katz@mvc.biglobe.ne.jp
次回はもう少しましなことを書こうと思っている。

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