[2229] 名刺代わりの作品

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<別に東京でなくても仕事できるじゃん>

■創作戯れ言[13]
 名刺代わりの作品
 青池良輔

■デジクリトーク
 伊豆高原での「なんちゃって田舎暮らし」
 松林あつし


■創作戯れ言[13]
名刺代わりの作品

青池良輔
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僕がコンテンツ制作でお金をもらうようになってから6年程になりますが、改めて振り返ると、その間にもろもろのクライアントワークや、個人的な創作作品を含めると意外に結構な数の作品を作っています。

僕の制作のスタイルとして、「いろいろ試したい」という気持ちがあり、プロジェクト毎にテクニックや見た目を意図的に変えています。ほとんどがAdobe社のFlashを使ったアニメーション作品なのですが、正直なところ、コンテンツクリエイターとしても、アニメーターとしても専門的な教育を受けていない自分自身への漠然とした不安から、開き直って「模索」というものを自分の作風にしているところもあります。

しかし、この「いろいろやりまっせ」というウリでは、クライアントが困惑してしまう場合もままあります。クライアントサイドのイメージを具現化するにあたり、「個性」の希薄な状態では、通常よりとっかかりを見つけるのに、一ステップよけいな手間がかかっていると感じることもあります。画風やデザインの傾向などで、はっきりと主張できればいいのですが、それはそれで相手に自分を押し付けるようで気が引けてしまうのです。

そこで、相手にもわかりやすく、自分もさりげなく主張できる方法として、「名刺代わりになる作品」を作るという方法があります。自分の過去の仕事を提示して相手に理解してもらうのはもっとも手っ取り早いやり方だと思います。多くのウェブサイト制作の会社のプロフィールを拝見すると、良質のクライアントのウェブサイトが制作事例として紹介されています。作家でも、フィルモグラフィーという形でいくつも紹介されています。

ただ、「名刺代わり」に限って言えば、プロフィールのような作品の羅列ではなく、なんとなくですが、もっと「一発勝負」的な感じもしています。名刺はだいたい相手一人に一枚渡せば終わりですし、その一枚でなんとなく相手を判断する事もあります。オシャレっぽい名刺なら、デザイン系の仕事の印象を受けますし、シンプルかつオーソドックスな名刺なら、堅実さを感じる事もあるでしょう。

そのように考えてゆくと「私こういうものでございます」と自己紹介するのに、クリエイターであればびしっと、一本の作品でアピールしたいなぁと思うのです。

僕は、はじめて作った作品の公開が、ちょうどFlashがインターネットで目新しく受け取られていた時期と重なった為、それなりの認知を得ることが出来、対外的には「代表作」になっていますし、この場合、「名刺代わりの作品」ということができると思います。

ただ、個人的には「受け入れられたのは嬉しいけど、そろそろ新しい名刺も持ちたい」と思うのです。また、はじめての作品が名刺代わりになってしまうと、「いつも新鮮! 荒削り!」的なノリが前面に出てしまうような気もしてしまうのです。6年とはいえ、僕なりに変化もしただろうと……

改めて「新しい名刺的な作品を作ろう!」と考えると、多少なりとも「狙い」をつけた方がいいかなぁと思うのです。

自己アピールができているか? その作品は、自分が相手に与えたい印象を代弁してくれるか? 無理がないか? 気負っていないか?

と、考えているうちに気負ってしまったりするのですが、こういった点を作品作りの前の企画段階で考えてみるのも面白いかと思っています。「結果的によくできたから代表作」「思わず人気が出たから名刺代わり」というのとは、アプローチが全然違います。受け仕事であっても「名刺代わりにするつもり」であれば、自身のプロモーションへの利用許諾という希望を契約の早い段階で相手に提示もできるでしょうし、作品に使用するイメージやサウンドについてもちょっと心遣いが変わってくると思います。

より良いものにする為に、通常の仕事よりちょっと見積もり以上の仕事をしてしまう事もあるかもしれません。「名刺は自費で作るもの」と思えば、ある程度の自分の時間や労力の投資もやむなしでしょう。

そうやって作った自分自身も満足しているコンテンツが一作品あれば、なにかしらオファーのあった時に「では、これをご覧下さい」と気持ちよくアピールができると思うのです。

代表作を作るという目的のもと、「自分は誰か?」「自分はどうなりたいか?」「自分は何を見せたいのか?」という事を考える為だけでも、挑戦してみたくなってきます。

僕自身、外に向けた自分のイメージが「自分はFlashでアニメーションコンテンツを作る人」「動画で物語を表現したい」「振り幅の大きい自由な作風と、バラエティのある制作スタイルをアピールしたい」となると、名刺代わりといっても、結局作品集みたいになってしまいそうです。

ああ、堂々巡りです。

生意気言いました。


本文でも触れました僕の名刺代わりになっている作品「CATMAN」がフジテレビ・お台場ランドで順次公開されています。過去の14作品公開後には、新作を公開します。この新作が名刺代わりになるといいのですが……
< http://www.fujitv.co.jp/game/catman/ >

【あおいけ・りょうすけ】your_message@aoike.ca
< http://www.aoike.ca/ >
1972年生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。学生時代に自主映画を制作したのち、カナダ・モントリオールで映画製作会社に勤務する。Flashアニメシリーズ「CATMAN」でWebアニメーションデビューする。芸術監督などを経て独立し、現在はフリーランスとして、アニメーション、Webサイト、TVCMなど主にFlashを使い多方面なコンテンツ制作を行う。

・書籍「Create魂」公式サイト
< http://www.ascii.co.jp/pb/flashbooks/create-damashii/ >

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■デジクリトーク
伊豆高原での「なんちゃって田舎暮らし」

松林あつし
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こんにちは。イラストレーター・CGクリエーターの松林です。ご存じないと思いますので、簡単に自己紹介しますね。

私の活動基盤はキャラクター業界です。四年半、大阪のキャラクター制作会社でデザイナーを経験し、その後転職し七年ほどサンリオでキャラクターデザイナーをしておりました。その時の経験を生かし、独立後キャラクター的な作品を中心に、雑誌のカバーイラストや商品のイメージキャラクターの制作、その他CG関連の仕事をこなし、今に至ります。

私を含め、フリーランスで活動されている方は沢山おられると思います。それぞれ業界や制作スタンスが違いますが、フリーランスの生活環境に関しましては共有できる情報も多々あると思います。また、業界の方々にもフリーランスという存在を理解していただく手助けになればと思います。

フリーで活動するという事に対して、みなさん色々な不安を抱えながら生活されていることと思います。私もそうです。いつまで仕事が続けられるのか、将来にわたって収入を確保できるか、子供の学費は確保できるのか、家は買えるのか、ローンは組めるのか、老後の蓄えはできるのか……など、不安要素を挙げればきりがありません。

では、なぜそんなに不安要素だらけの世界に飛び込む必要があったのか……ですが、一つにはバブルの崩壊がありました。つまり、サラリーマンももはや終身雇用の時代ではなくなった……では、自由に自分で仕事を選べるフリーランスでも同じではないか、と思ったわけです。会社組織というしがらみに縛られず、自由気ままに思う方向に進んで行ける……と。(本当の事を言えば、満員電車での通勤がいやだったのですが……)

しかし、実際はそれほど自由ではありませんね。まず、今まではある程度、会社の責任において仕事が進みましたが、独立後はすべて自分の責任で活動しなければなりません。その分、サラリーマンよりシビアです。さらに、会社のしがらみがなくなった代わりに、クライアントというしがらみができます。当然ですが、どんな要求でもクライアントの意向に背くことはできません。

ここにフリーランスとしての葛藤が生まれます。自分としてはオリジナリティを生かした仕事をしたい、しかし、クライアントからは自分のカラーとは正反対の要求が出される……でも、何とか「これが私の作品だ!」と表現したい、でも、クライアントにはそんなものは必要ない……常にこの葛藤のくりかえしです。

これを解決する道は、少数のクリエーターだけが手にできる「オリジナリティでのブレイク」しかないのですが、こればかりはエンドユーザーに認められなければ得られません。独りよがりの作品を押しつけても意味がないのです。ブレイクしたらブレイクしたで、色々大変な面はあるようなのですが、これが多くのフリーランスの目標地点でもあることは確かだと思います。

ちょっと話がずれましたが、私も当然それを目指しています……が、他にもフリーとして享受できる利点を見つけたのです。それが、「自由な生活環境」です。

会社員と最も違う点は、自宅もしくは事務所で気ままに仕事ができる点です。私は自宅の一部屋を仕事場として使っていますが、朝八時に起きて、朝飯を食べて、マックの電源を「シャーン」って入れる……これだけで仕事の準備完了です。こればかりは、サラリーマンに比べると夢のような仕事環境と言えませんか?

もちろん、こういったワークスタンスが実現したのはインターネットのおかげです。独立当初は仕事の度にクライアントに会ってミーティングをしていましたが、だんだんとその機会も少なくなりました。そして、ついには実際に依頼主と会うのも年に一回程度になってしまったのです。ほとんどのやり取りは、メールとFAXで済みますし、納品もデータ転送でおしまいです。

……そして、ある時私は気がつきました。
「別に東京でなくても仕事できるじゃん」

極論を言えば、沖縄でもハワイでも仕事はできます。しかし、悲しいかな小市民である私が勇気を振り絞って選び出した「地」が「伊豆高原」だったのです(伊豆高原から東京までは日帰りできます)。

昔から自然の豊かな所で生活をしたいという願望はありましたが、フリーランスという職種がそれを可能にしました。まあ、移り住むまでには色々紆余曲折ありましたが、昨年無事移住を完了し、こちらに移り住んで一年が経過したところです。

●引っ越し、ずばり正解

まず、朝ウグイスの(けたたましい)鳴き声で起こされ、朝食後犬の散歩です。帰ってから(最近買い換えた)インテルMacの電源を入れて仕事開始。夕方また犬の散歩をし、帰宅後また仕事……こんな感じです。

住んでいる場所は「大室高原」という分譲地ですが、自然が豊かで静かなところです。散歩コースからは相模湾を望み、天気の良い日は伊豆七島が望めます。仕事の合間に紅茶を飲みながら外を見ると、木々や電線を台湾リスが行ったり来たりしています。湿度は高いのですが、空気はきれいです。秋から冬にかけてはきれいな星空を見ることもできます。(私のホームページに天体観測のブログがあります。ご覧ください)

東京では一軒家を持つことなんて夢のまた夢でしたが、田舎だからこそ持てた家だとも言えます。何せ、土地は一坪五万から十万ぐらいがこの辺の相場……東京ではマンションも買えないぐらいの金額で土地付きの家を買うことができます。東京では考えられないような広い庭も持てます。ちなみに、私の家は中古ですが、400平米の土地で120平米の床面積です。これでもここに住んでいたら、「狭いな……」って思ってしまうところが怖い……

フリーランスとして享受できる利点を生かさない手はない、という考えからこの地に越してきましたが、ずばり正解でした。仕事に疲れたら、自然や温泉が癒してくれます。今まではずっと部屋に閉じこもってパソコンと向かい合っていましたが、ここでは、それ以外にやることも沢山あります。行きたいところも沢山あります。

そして、最大の不安要因だった「東京を離れて仕事は減らないか」という点ですが、この点はまったく変わりませんでした。このあたりのネット環境はまだメタル回線ですが、動画の納品でもない限り、これで充分です。

フリーランスの方で、「なんちゃって田舎暮らし」を考えている方はオススメです。(虫嫌いな方は要注意……クモ、ガ、ムカデ、ゲジゲジは日常茶飯事ですから)

【まつばやし あつし】イラストレーター・CGクリエイター
< http://www.atsushi-m.com/ >
< mail@atsushi-m.com >

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■訂正
昨日の「キムチ大好き」の中で、キムジャンに遭遇したのを今年三月と書いてしまいましたが、キムジャンに遭遇したのは昨年十一月でした。続けて行っているので日付感覚が狂っていたようです、お詫びして訂正いたします。(HAL_)

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■編集後記(6/26)

天使の軍隊・2010年から2012年にかけて北朝鮮が中国を侵略し、人民解放軍は敗北。中国は北京を首都とする中華人民共和国(北中国)、南京や上海を中心とする中原共和国、広州や香港を中心とする広州連合とに分裂した。停戦協定が締結され、いまも北中国と北朝鮮は国境を国連管理地域として向かい合っている。ところが、国連管理地域の外側の北中国領無人ベルトにある空港予定地を「長城戦線軍」と名乗る北中国のテロリストが制圧し、北朝鮮にテロを決行、人民解放軍に報復戦争を促す。だが、両国はともに日本からの経済援助でかろうじて国を運営しており、本音ではふたたび戦争はしたくない。北朝鮮は三代目問題もあり、ことを構えたくない。北朝鮮は(友好国である)日本の民間軍事会社、株式会社天使の軍隊に秘密裏にテロリスト排除を要請してくる。という背景の20 23年、ロボットによる「War 3.x」が展開される。佐々木敏著「天使の軍隊」(講談社、2007)は、近未来の人命尊重型の戦争をリアルに描いてじつに興味深い。筆者の「ロボット観」は専門家以上のレベルと思われる。しかし、本書への期待は大きく裏切られた。筆者は「予言サイト」として有名な「週刊アカシックレコード」の主宰者で、情報分析のプロ。大胆すぎる予測にはそんなばかなと思いつつ、いつもぐいぐい引き込まれるのであった。彼によれば中朝戦争は必至である。ということは、それがメインテーマの小説と期待しておかしくないが(タイトルから違和感はあったけど)舞台はいきなり戦後なのだ。しかも、一見ゲーム感覚とも思える「War 3.x」の話が中心である。もちろん、おもしろい近未来SF小説にまとまっている。よけいな期待をしないで読めばよかった。冒頭は、2020年に78歳で死去した金正日の「日本向けの遺書」である。ここに筆者の分析・予測が詰め込まれていて、非常におもしろい。この内容をポリティカルフィクションとしてぜひ展開してもらいたいと思う。(柴田)
< http://www.akashic-record.com/ > アカシックレコード

MITSUBISHI 冷凍冷蔵庫(407L) MR-A41M-CH カーボングレー・次に冷蔵庫を買うなら、これが欲しい〜、の「動くん棚」。物を載せたまま棚の高さを指一本、つまみをスライドするだけで高さ調整できるもの。TVでやってて便利そうだなと。一人暮らしなら特に便利なんじゃないかと思う「ねらって加熱」。二品が同時にあたためられるもので、センサーが二つついているため加熱時間の違うものでも可能なのだそうな。いくつかの家電メーカーサイトを見始めたが、進化しているたくさんの商品があって見きれなかったわ。最近家電の特集が多いなぁ思っていたら、世間ではボーナスシーズンなのね。(hammer.mule)
< http://www.mitsubishielectric.co.jp/movie/ >  動くん棚篇
< http://www.mitsubishielectric.co.jp/home/reizouko/ >  製品ページ
< http://www.mitsubishielectric.co.jp/shufu/movie/ >  動画で紹介
< http://national.jp/product/cooking/mi_oven/oven/ne_w300/p1.html >
二品同時加熱
< http://www.e-life-sanyo.com/cleaner/sanyo-marathon/ >
クリーニャの一日

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天使の軍隊
佐々木 敏
講談社 2007-04-26
おすすめ平均 star
starロボットの描写が新鮮で面白い!
starメルマガ読者の思い込みは如何なものか
star小説じゃないと思って・・・
starロボットのリアリティに脱帽
star期待しすぎてしまった。

ラスコーリニコフの日 龍の仮面(ペルソナ)〈下〉 龍の仮面(ペルソナ)〈上〉 ゲノムの方舟 下   徳間文庫 さ 27-2 龍の仮面(ペルソナ)