電子浮世絵版画家の東西見聞録[4]NANTA
── HAL_ ──

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いやぁ、前回もカワイコちゃんの話を書けませんでした。「おまちどおさま」と、言いたいのですが、今回は「NANTA」の話をします。

もう、世界中で上演されている舞台なのでご存じの方も多いと思います。2000年から二十回以上も日本公演を行なっているので、出かけた方も多くいると思います。ごらんになった方は「NANTA」と聞いただけで、わくわくする事でしょう。それほど楽しい、心躍らされる舞台なのです。まだ見ていない方も、チャンスがあったら是非ごらんいただきたいものです。


「NANTA」は漢字で書くと乱打です。台詞はほとんどなく、タイトルの通り打ち鳴らすビートが主人公ともいえるミュージカルパフォーマンスです。韓国伝統音楽のサムルノリのリズムと、西洋的な様々なリズム、そして打ち鳴らす肉体を融合して新しいパフォーマンスが生まれています。案内にはよく「ノンバーバル(非言語)・パフォーマンス」等と書かれていますが、台詞はあります。でも、その台詞自体もリズムとなってパフォーマンスと融合します。今回は中で「キュウリ!」という単語を耳にしました。そう、そう、日本の胡瓜です。

実は、旅行計画当初には観劇の予定はなかったのです。偶然にも出発一週間前に届いた封書から、この計画は実行されました。この封書は韓国観光公社から届いたもので、いったい何が入っているんだろうと封を切ってみると「NANTA」の鑑賞券が入っていたのです。

これは今年三月頃に応募した韓国観光公社のイベントで、特賞は航空券だったと思いましたが、そんなことはすっかり忘れたまま旅行計画を立て、出発一週間前に届くとは単なる偶然だけとは思えません。なんと、そのチケットは一週間前に席の予約をしなければならなかったのです!!

今回、私たちはソウル市庁そばにある「NANTA」専用のナンタ劇場で見てきました。午後8時の席を電話予約し、カワイコちゃん取材などを終え、食事を取ろうと思っていましたが、少し遅くなってしまったので見終わった後にすることにしました。韓国の夜の更けるのは遅いのです。午後7時ではまだ夕方も早いと思えるほどの明るさです。それにしても、このまま行ってはお腹がすいてしまうので、通りがかりの店でトッポッキを食べナンタ劇場へ向かうことにしました。

入ったのはトッポッキと韓国おでんという二つだけのメニューの通りから見えるオープンな形態で、背中合わせのカウンターが十四、五席ほどあるだけの小さな店です。「トッポッキ、ハナジュセヨ」と言って二人でひと皿をいただきましたが、その後から入ってくる客はサラリーマン風の男女ばかり。みんな各ひと皿は平らげ、きっとその後、別に夕食も取るのでしょう。韓国人は皆大食漢です。チョンノサンガや明洞あたりの飲食屋台の数も相当なもので、夕方になると多くの人が首を突っ込んでいます。あ、屋台の話は別に書くとして、「NANTA」の話に戻りますね。

「NANTA」が使う楽器は鍋、包丁、まな板、バケツ、すべてキッチンにある道具ばかりです。これが、素敵な音を作り出すのです。開演と同時にチ〜ンというステンレス製の器をはじく音が流れ、ろうそくを手に三人の登場人物が舞台中央に現れます。そのまましばらく、静かなサウンドを創造して行きます。

おはなしは、厨房のコック三人の中に支配人の甥である素人がコックとして参加させられます。さらに、結婚式のパーティーの食事準備を命ぜられ、甥はコック三人に邪魔にされます。そんな状況の中で料理は失敗し、時間もなくなります。しかし、最後は全員が一丸となってパーティーを成功させるという簡単な流れです。

この簡単な流れの中にダイナミックなダンスあり、軽妙な笑いあり、魅力的なサウンドが打ち鳴らされ、鋭いビートが場内を包み込み、観客の身体が浮き立ちます。ふたつ隣の席にいた高齢のご婦人が、笑い転げて死ぬのではないかと、はらはらさせられる場面もありました。台詞はなくても、それほど楽しませてくれます。この舞台は壇上で演じるだけではなく、客をも上手く使い、最後にはすべての観客を巻き込んだパーティー会場を演出します。観客も「NANTA」の一部となるのです。

この舞台はブルー、ブラック、レッド、イエロー、グリーンという五人から七人による色分けされたチームで形成され、それぞれのチームから男四人と女一人という五人の構成が作られます。各チームの中のからどのように組み合わされ、何時演じるのかは当日開演するまでアナウンスは一切されません、同じ演目を別の組み合わせチームはどのように演じるのか、それもまた興味の対象となり、50回以上見ても見飽きない、と言う人がいるほどの舞台になっています。当然私たちもそのおもしろさに魅せられ、きっと再び見に行くことでしょう。とにかく、無条件に楽しいんだなぁ。

【HAL_】横浜在住アーティスト hal_i@mac.com
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