デジアナ逆十字固め…[52]街道沿いに写真史を歩く/上原ゼンジ

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日本の写真家 (33) 川田喜久治写大ギャラリーで「日本の写真表現を新たに切り拓いた『VIVO』展」が開催中だ。7月7日に川田喜久治、細江英公、福島辰夫といったお三方のギャラリートークがあるというので、出かけてきた。

VIVO(ビボ)に関する説明は、以下写真展の案内文より引用させていただく。

「1959年、若い写真家6人によるセルフ・エージェンシー『VIVO』が設立された。メンバーは川田喜久治、佐藤明、丹野章、東松照明、奈良原一高、細江英公である。目的は写真家自らの経済的利益と創作上の環境整備であり、お互い独自の表現を尊重し、独創性、創造性を最も重視する写真家共同体であった。彼らは、その前、1957年写真評論家・福島辰夫企画による日本の現代写真の新たな突破口を開いていこうとする第1回『10人の眼』展に参加する。これがきっかけとなり、VIVO設立へと繋がっていく。なお、VIVOとはエスペラント語で“生命”を意味する。(後略)」
< http://www.t-kougei.ac.jp/arts/sc/topics210.php >

日本の写真史の中でも、ひじょうに重要な存在である「VIVO」のメンバーの話が直接聴けるということで、「これは行かねばなるまい」と思い、中野坂上の写大ギャラリーまで、遠征してきた。


写真家・細江英公の世界―球体写真二元論そんなに大きくはないギャラリーだが、かなりの立ち見が出る盛況だった。ただ、年配の人が多く、若いもんが少ないのが、ちょっともったいないと思った。私自身はVIVOが解散した1961年の生まれなので、当時のことはまるで知らない。後から写真を見たり、先輩から話を聞いたり、本で読んだりという知識しかない。

ただ、本で読んだようなことも、本人の口から直接聞けば、また全然違う広がりを持ち始める。「VIVO」には直接触れた経験がなかったので、歴史を体験するためのいい機会と思った。昭和ひとけた生まれの写真家の話が聴けるチャンスというのも少なくなってきたので、もっと若い人たちにも立ち会って欲しかったなあと思う。

話を伺い、自分の中に漠然とあった「VIVO」像と、少し違いがあることが分かった。それはVIVOがきちんとビジネスを成り立たせようとしていた集団だったということだ。何か芸術的な理念のもとに集まった集団のようなイメージがあったのだが、仕事をもらってきて振り分けたり、事務所に上納金を入れたり、スタジオや助手を共用したりという、写真で喰うための集団であったということだ。

現在は自分の作品を撮るということと、写真でメシを喰うということがはっきりと分かれていて、自分の表現を追求している人は写真ではメシを喰っていない、というケースが多いと思う。その点「VIVO」の場合は広告写真等の仕事をとってきつつ、自分の作品もしっかり撮るということで、何か勢いとか力強さのようなものを感じさせられた。

また、当時の諸氏が若かったことに驚かされる。VIVO設立当時のメンバーの年齢は26〜29歳。ギャラリーに展示された写真の完成度の高さを見れば、よくもまあこれだけの才能が集結したものだと思う。ギャラリーで展示されているのは、以下のような作品だが、最近水晶レンズで軟弱な写真を撮っていた私には、ちょっと刺激的な骨太写真だった。ギャラリートークはもうないが、オリジナルプリントを見に、ぜひ足を運ばれることをお勧めします。

川田喜久治『地図』
佐藤明『冷たいサンセット』『サイクロピアン』他
丹野章『サーカス』『アーティスト』
東松照明『NAGASAKI』
奈良原一高『王国1、2』
細江英公『おとこと女』『薔薇刑』のシリーズ

1961年にVIVOは解散するが、その解散の直前にVIVOを頼り、大阪から森山大道さんが上京する。この時23歳だったそうだ。VIVO自体は解散してしまったが、その残党の事務所に助手として潜り込み、そこで諸先輩のさまざまな影響を受けることになる。

●「街道」が再びオープン

凶区/Erotica西新宿のエプサイトでは森山さんの写真展が開かれている。アムステルダム、ケルン、パリ、シドニー、タイ、上海、新宿、大阪などの都市で撮影されたスナップショット。大判のインクジェットプリンタから出力されたプリントは大迫力。森山大道を浴びてくるには、いい展覧会だと思う。

◇森山大道展 凶区 Erotica
< http://www.epson.jp/epsite/ >

この日は丸ノ内線つながりで、南阿佐ヶ谷にできた新しいギャラリー「街道」にも顔を出した。街道のオーナーの尾仲浩二さんは、森山大道、倉田精二、北島敬三といったメンバーが在籍したフォトギャラリー「CAMP」の出身者だ。

私は「FOTO SESSION '86」という写真集団で森山さんに写真を見ていただいていたが、月に一度の例会に山内道雄さんとともに顔を出してくれていたのが、尾仲さんだ。FOTO SESSIONが解散した翌88年、尾仲さんは西新宿の青梅街道沿いのビルの中に、「街道」というギャラリーを作った。

尾仲さんが作ったのは写真家による自主ギャラリーで、自分の見せたい時に、どんどん写真を発表していくというスタイルだ。尾仲さんはギャラリーを閉鎖する92年までの間に32回の個展を開いた。

GRASSHOPPER―ONAKA Koji=2001‐2005そして2007年7月6日、「街道」は再び南阿佐ヶ谷の青梅街道からちょっと入った所にオープンした。今度は木造アパートの一室だ。広くはないが三部屋がギャラリーに充てられている。今回は自分の写真展ばかりをガンガンやっていくというスタイルではなく、基本的には貸しギャラリーとし、小部屋の方で尾仲さんの写真を見せていくという方式らしい。

年内のスケジュールはすでに埋まっているが、その中には懐かしい名前もある。叶芳隆と広瀬勉で、二人ともFOTO SESSIONのメンバーだ。叶さんは秋田在住で、中野坂上のアジトで月に一度開かれたFOTO SESSIONの例会には秋田から通っていた。そして、今も地元でしぶとく写真を撮っている。ブログで発表している写真は携帯電話で撮ったものらしいが、とても携帯電話で撮ったようには見えない、どしっとした写真なので、ぜひぜひ見て欲しい。

◇太陽ヲ貴方二
< http://visfoto.exblog.jp/ >

広瀬さんもかなりしつこく、携帯電話で撮った写真をブログで発表しているが、ほかにもWEB上で写真を発表しているメンバーがいる。東京光画館の吉野やわらと阿部敏之、ゆういち光画館のYuichiとJushoだ。

◇型録 携帯電話/広瀬勉
< http://blog.livedoor.jp/hiroven_catalogue/ >

◇東京光画館
< http://www.kougakan.com/ >

◇ゆういち光画館
< http://www001.upp.so-net.ne.jp/kogakan/ >

そのほか、日本写真協会新人賞を受賞した楢橋朝子やドグラマグラシリーズの猪瀬光もメンバーだったのだから、FOTO SESSIONというのも随分濃くてしつこい人々が集まっていたものだと思う。

◇03FOTOS
< http://www.03fotos.com/ >

七夕の日に私があるいた写真展は、どれも素晴らしいものだった。すべて南阿佐ヶ谷、中野坂上、西新宿とすべて丸ノ内線で行けるところなので、お近くのかたも、そうでない方もぜひ行ってみてください。

【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
◇上原ゼンジ写真研究所
< http://www.maminka.com/zenlab/top.html >

●日本の写真表現を新たに切り拓いた「VIVO」展
< http://www.t-kougei.ac.jp/arts/sc/topics210.php >
会期:6月12日(火)〜7月31日(火)10:00〜20:00 無休 入場無料
会場:写大ギャラリー(東京都中野区本町2-9-5 東京工芸大学 中野キャンパス TEL.03-3372-1321)

●森山大道展「凶区 Erotica」
< http://www.epson.jp/epsite/event/07/7.htm >
< http://www.moriyamadaido.com/ >
会期:6月27日(水)〜8月5日(日)10:30〜18:00
会場:エプサイト(東京都新宿区西新宿2-1-1 新宿三井ビル1階 TEL.03-3345-9881)

●尾仲浩二・三本立て「DRAGONFLY」「背高あわだち草」「ベトナム」
< http://kaido.mods.jp/ >
会期:7月6日(金)〜7月29日(日)13:00〜19:00 金土日の3日間開館
会場:Gallery街道(東京都杉並区成田東5-23-2 いわとうアパートメント2F)



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凶区/Erotica
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大阪+ 遠野物語 新宿+ moriyama daido t‐82 見続ける涯に火が・・・ 批評集成1965-1977



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なんでもやってみよう―私の写真史
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