懸案であった「歪みガラスフィルタ」の工作に着手した。一番始めに歪みフィルタを作った時は、木工用のボンドを使った。透明塩ビを切り取り、木工用ボンドをわざと凸凹に塗った。乾けば透明になるというつもりだった。ところが、木工用ボンドの場合はそんなに透明度が高くなかったので、厚く塗った部分は半透明になってしまうという問題があった。
そこで次に試してみたのは、トップコートだ。トップコートというのは、マニキュアのコーティング剤で、マニキュアの保護と光沢を与える目的がある。これをやはり塩ビに凸凹に塗ってみた。今度は木工用ボンドよりも透明度が高く、乾きも速いという利点もあった。一応、合格。
しばらくして今度は、ガラスコップを使って撮影をしてみた。カメラのレンズの前にコップを持ってきて、側面や底を通して撮影するのだ。これは気に入った写真が撮れた。やっぱり腐ってもガラスで、塩ビやトップコートとは描写自体が違う。もう少しいろいろと撮ってみたいと思わせるものがあった。
そこで次に試してみたのは、トップコートだ。トップコートというのは、マニキュアのコーティング剤で、マニキュアの保護と光沢を与える目的がある。これをやはり塩ビに凸凹に塗ってみた。今度は木工用ボンドよりも透明度が高く、乾きも速いという利点もあった。一応、合格。
しばらくして今度は、ガラスコップを使って撮影をしてみた。カメラのレンズの前にコップを持ってきて、側面や底を通して撮影するのだ。これは気に入った写真が撮れた。やっぱり腐ってもガラスで、塩ビやトップコートとは描写自体が違う。もう少しいろいろと撮ってみたいと思わせるものがあった。
ただ難点は撮っている姿が格好良くないということ。だってコップを手に持ってるんだからねえ……。そんな人見たことありませんよ。しかも撮りづらい。こっちのほうが大きな問題か(笑)
そこでコップの底だけ切ってみようと思ったんだけど、まあいろいろあって……。今度はガラスを溶かしてみることを考えた。ただ板ガラスを温めて歪めてもいいのだが、小さく砕いたガラスを板ガラスの上に乗せ、上のガラスだけを溶かしてしまえば、全体を歪めるよりも簡単なんじゃないかというのが、私が考えついたこと。
ガラスを切るためのカッターを買ったのは「ガラスカッター.COM」。検索したら一番に引っかかったのと、動画による説明などが分かりやすかったので、ここで買うことにした。ほかにもいくらでもガラスカッターを売ってるところはあるし、お洒落ではないんだけど、ページの作り方がよく考えられている。ネットで商売をする場合に参考になりそうだ。
< http://www.g-tonya.com/cut/
>
購入したのは「ガラス暦20年のプロがお薦めするガラスカッター/スポイド付き」(インターネット特別価格2,380円)という製品。潤滑油が注入できるというところがポイントらしい。ただ、あいにくうちには灯油がなかったので、とりあえず潤滑油なしで切ってみることにした。8センチ角の板を作り、それをベースに後から細工をするつもり。
●ついにガラスを切る
動画を参考にとにかく切ってみる。定規を当ててチーッとガラスカッターを滑らせ、その後ペリンと割ればいい。
一回目。カッターでスジを付け、カッターの後ろの金属部分でガラスをコツコツと叩いてみる。これでヒビが入れば後はおせんべいを割るように、ペキッとやればいいらしい。しかし、いくらコツコツと叩いてもヒビは入らない。あまり強くやりすぎるとバラバラに割れそうで怖い。結局、このスジは薄すぎたと判断し、別の部分を使うことにする。
二回目。今度は少し力を入れながら、カッターを滑らせる。そして、カッターの後ろでガラスをコツコツとやってみる。またダメかと思った瞬間、ヒビが走った。でも少し曲がってしまった。潤滑油を使ってないせいかなあ……。
しかし、なんとなくコツはつかえめたので、最終的に8センチ角の板を三枚作ることに成功。多少曲がってしまったがまあいい。あとは砥石を使って切り口を滑らかにすればおしまいだ。危険と隣り合わせの作業を終えたことにより、心地よい充実感に包まれる。
小学生のころ、不忍池の脇で十徳ナイフを商うオジさんに遭遇したことがある。十徳というぐらいで、ただナイフの機能だけでなく、耳かき、ドライバー、ヤスリ、缶切り、栓抜き、マグネット、キリ、ヒモ通し等々、10の機能を持つ素晴らしい製品だ。最近はアーミーナイフの台頭で、十徳ナイフなんて言葉も聞かなくなったが、アーミーナイフとはちょっとニュアンスが違う。
その十徳ナイフの目玉機能がガラス切りだ。テキ屋のオジさんはテンポよく、ひとつひとつの機能を紹介していくんだけど、クライマックスはガラスを切るところ。直線ばかりでなく、曲線も自由自在に引いて、ナイフでカチッとやると簡単にガラスを切ることができた。そのナイフさばきが見事で、500円ばかりのナイフはよく売れていた。
その時買ったナイフでガラスを切ったのかどうかという記憶はない。たぶん、何かのガラスにちょこっとキズを付けた程度で、きちんとガラスを切ってはいないはずだ。それが40年後の今、こうして見事にガラスを切り倒したというわけですよ。こんな実験をしてみようと思わなければ、一生ガラスを切ることのないまま生涯を終えるところだった。写真の神様にお礼をしておこう。
●そしてガラスを溶かす
ベースのガラス板を切ったら、後はガラスのかけらをまぶし、炎で溶かせばいい。余った板ガラスをスーパーのレジ袋に入れてトンカチでコツコツたたく。しばらくすると粉々になったガラス片の完成。これを板ガラスの上に乗せてあぶるのだ。
作業は台所の流しで行った。板ガラスの上に乗せた小さなガラスのかけらに、「ウインドガードターボ(341円)」を使って炎をかざす。しばらくするとガラス片が溶けてくるはずだ。しかし、ガラス片にはいっこうになんの変化も起きなかった。
なおも炎をかざし続けると、「ビチッ!」と音を立て、板ガラスは割れてしまった。「オーマイガッ!! どーして〜!」。いや、分かるよ。ガラス片を置いた真ん中あたりだけ膨張したけど、周りがついていかなかったんだね。でも、どうしたらいいのさ……。
いいこと思いついて、ずーっと温めてきたアイディアだったのに……。どきどきしながら、板ガラスを切ったあの日。素敵な写真が撮れることを夢見て、砥石でガラスの端っこを研いだあの頃。流し台の前で呆然と立ちつくす私の脳裏に、楽しかった日々が、今走馬燈のように蘇る。って、すべて今日一日の出来事だけど。
さてどうしてくれようか。諦めがつかない私は、もう一度チャレンジした。しかし、今度は周囲も一緒に温めて、なるべく同じように膨張するように注意を払った。しばらく炎をかざしていたが、何も変化は起きない。なおも炎をかざしつづけると、「ビチッ!」と音を立て、板ガラスは割れた。
あと一枚ガラスは残っているが、実験は中止することにした。そして、そのまま私は傷心の旅に出たのだった。
【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
◇上原ゼンジ写真研究所
< http://www.maminka.com/zenlab/top.html
>
「カメラプラス トイカメラ風味の写真が簡単に」(雷鳥社刊)
< http://www.maminka.com/toycamera/plus.html
>
そこでコップの底だけ切ってみようと思ったんだけど、まあいろいろあって……。今度はガラスを溶かしてみることを考えた。ただ板ガラスを温めて歪めてもいいのだが、小さく砕いたガラスを板ガラスの上に乗せ、上のガラスだけを溶かしてしまえば、全体を歪めるよりも簡単なんじゃないかというのが、私が考えついたこと。
ガラスを切るためのカッターを買ったのは「ガラスカッター.COM」。検索したら一番に引っかかったのと、動画による説明などが分かりやすかったので、ここで買うことにした。ほかにもいくらでもガラスカッターを売ってるところはあるし、お洒落ではないんだけど、ページの作り方がよく考えられている。ネットで商売をする場合に参考になりそうだ。
< http://www.g-tonya.com/cut/
>
購入したのは「ガラス暦20年のプロがお薦めするガラスカッター/スポイド付き」(インターネット特別価格2,380円)という製品。潤滑油が注入できるというところがポイントらしい。ただ、あいにくうちには灯油がなかったので、とりあえず潤滑油なしで切ってみることにした。8センチ角の板を作り、それをベースに後から細工をするつもり。
●ついにガラスを切る
動画を参考にとにかく切ってみる。定規を当ててチーッとガラスカッターを滑らせ、その後ペリンと割ればいい。
一回目。カッターでスジを付け、カッターの後ろの金属部分でガラスをコツコツと叩いてみる。これでヒビが入れば後はおせんべいを割るように、ペキッとやればいいらしい。しかし、いくらコツコツと叩いてもヒビは入らない。あまり強くやりすぎるとバラバラに割れそうで怖い。結局、このスジは薄すぎたと判断し、別の部分を使うことにする。
二回目。今度は少し力を入れながら、カッターを滑らせる。そして、カッターの後ろでガラスをコツコツとやってみる。またダメかと思った瞬間、ヒビが走った。でも少し曲がってしまった。潤滑油を使ってないせいかなあ……。
しかし、なんとなくコツはつかえめたので、最終的に8センチ角の板を三枚作ることに成功。多少曲がってしまったがまあいい。あとは砥石を使って切り口を滑らかにすればおしまいだ。危険と隣り合わせの作業を終えたことにより、心地よい充実感に包まれる。
小学生のころ、不忍池の脇で十徳ナイフを商うオジさんに遭遇したことがある。十徳というぐらいで、ただナイフの機能だけでなく、耳かき、ドライバー、ヤスリ、缶切り、栓抜き、マグネット、キリ、ヒモ通し等々、10の機能を持つ素晴らしい製品だ。最近はアーミーナイフの台頭で、十徳ナイフなんて言葉も聞かなくなったが、アーミーナイフとはちょっとニュアンスが違う。
その十徳ナイフの目玉機能がガラス切りだ。テキ屋のオジさんはテンポよく、ひとつひとつの機能を紹介していくんだけど、クライマックスはガラスを切るところ。直線ばかりでなく、曲線も自由自在に引いて、ナイフでカチッとやると簡単にガラスを切ることができた。そのナイフさばきが見事で、500円ばかりのナイフはよく売れていた。
その時買ったナイフでガラスを切ったのかどうかという記憶はない。たぶん、何かのガラスにちょこっとキズを付けた程度で、きちんとガラスを切ってはいないはずだ。それが40年後の今、こうして見事にガラスを切り倒したというわけですよ。こんな実験をしてみようと思わなければ、一生ガラスを切ることのないまま生涯を終えるところだった。写真の神様にお礼をしておこう。
●そしてガラスを溶かす
ベースのガラス板を切ったら、後はガラスのかけらをまぶし、炎で溶かせばいい。余った板ガラスをスーパーのレジ袋に入れてトンカチでコツコツたたく。しばらくすると粉々になったガラス片の完成。これを板ガラスの上に乗せてあぶるのだ。
作業は台所の流しで行った。板ガラスの上に乗せた小さなガラスのかけらに、「ウインドガードターボ(341円)」を使って炎をかざす。しばらくするとガラス片が溶けてくるはずだ。しかし、ガラス片にはいっこうになんの変化も起きなかった。
なおも炎をかざし続けると、「ビチッ!」と音を立て、板ガラスは割れてしまった。「オーマイガッ!! どーして〜!」。いや、分かるよ。ガラス片を置いた真ん中あたりだけ膨張したけど、周りがついていかなかったんだね。でも、どうしたらいいのさ……。
いいこと思いついて、ずーっと温めてきたアイディアだったのに……。どきどきしながら、板ガラスを切ったあの日。素敵な写真が撮れることを夢見て、砥石でガラスの端っこを研いだあの頃。流し台の前で呆然と立ちつくす私の脳裏に、楽しかった日々が、今走馬燈のように蘇る。って、すべて今日一日の出来事だけど。
さてどうしてくれようか。諦めがつかない私は、もう一度チャレンジした。しかし、今度は周囲も一緒に温めて、なるべく同じように膨張するように注意を払った。しばらく炎をかざしていたが、何も変化は起きない。なおも炎をかざしつづけると、「ビチッ!」と音を立て、板ガラスは割れた。
あと一枚ガラスは残っているが、実験は中止することにした。そして、そのまま私は傷心の旅に出たのだった。
【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
◇上原ゼンジ写真研究所
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>
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< http://www.maminka.com/toycamera/plus.html
>
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- 上原 ゼンジ
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by G-Tools , 2007/09/06