笑わない魚[231]何が私をして書かせるのか/永吉克之

投稿:  著者:  読了時間:6分(本文:約2,500文字)


やあ、みんな元気? ぼく病気。すごーく病気。とっても具合が悪くて、こうやってパソコンの前にじっと座ってるのも辛いくらいなんだよね。もう、めまいがひどくて、だるくて、腰が痛くて。このまま、仕事もなにもかも放り出しちゃおうかな。なに言ってんのさ、そもそも仕事なんかないくせに。

それに食欲もぜんぜんないんだ。おかげで四キロ痩せたよ。シェイプアップして痩せたんじゃなくて、食べられなくて痩せたんだから経済的っちゃ経済的だよね。でも栄養不足のせいか指先にも力が入らなくて、インスタントラーメンの袋を開けることもできないってんだから、もう老人だよ、老人。

そうだ。誤解されちゃ困るんだけど、病気だから今回のコラムは出来が悪くても仕方ないなんて言ってんじゃないんだよ。病気してたってケガしたって、全力で、みんなに楽しんでもらえるものを見せようとするのが、ほんとうの芸人なんじゃないかな? みんなはどう思う? え? 自分は芸人じゃないから、そんなこと分らないって? けっ、おととい来やがれ!


《芸妓・桃千代姐さん》
うちらかて、そうどす。芸者はお客はんに同情されるようになったらお終いどすさかいな。うちらが若いときは、ややこができてお腹が大きゅうなっても晒をしっかり巻いてお客はんに気づかれんようにして、お座敷に出たもんや。

《殺陣師・市川段平さん》
なに、女房が危篤やさかい帰れ? 澤田先生、わての女房は殺陣だす。立ち回りだす! (『殺陣師一代』より)

《ペルシャ絨毯輸入販売・片岡宗佑さん》
永吉さん、頑張ってください。病気になったときにいちばん大切なこと、それは頑張ることです。頑張っていれば必ずよくなります。ぼくも頑張ります。妻も娘も頑張りますから、永吉さんも絶対にとっても頑張って欲しいと思います。頑張れ、永吉さん。

《トルコ絨毯輸入販売・片山壮介さん》
病気なんかで仕事ができなくなるなんてのは、大和魂の精神力が気合と根性で肝っ玉に心意気の執念のガッツがないからだ。私はこれまで幾度も病気やケガに遭ったが、常に大和魂の精神力が気合と根性で肝っ玉に心意気の執念のガッツで切り抜けてきた。子供たちにもいつも言っている、どんな困難に遭っても、大和魂の精神力が気合と根性で肝っ玉に心意気の執念のガッツがあれば、必ず克服できると。

《アフガニスタン絨毯輸入販売・片平総輔さん》
病気になるのは、体のどこかが悪いからじゃないかと思うんです。体のどこかが悪いと病気になるんじゃないか、そんな気がします。つまり、病気になるというのは、何か悪いことが体のどこかに起きているからではないでしょうか。違う言い方をすると、病気は体のどこかが悪いときに起きるということです。

こんな励ましメールをたくさんもらったんだけど全部でっち上げだよ。ついでに断っとくけど、以下の文も全部でたらめだから、そのつもりで読んでね。

●モーティベーション

今、病気で気息奄々としている私に、あくまでデジクリコラムを書かせようとしているものは何なのだろう。いったい何がモーティベーションになっているのだろうか。

原稿料は出ないから、経済的必要性によって書いているのではない。またDTPやWEBといった専門的内容ではないから、頑張って書いていれば、ある方面から出版の話が来るだろうという期待もできない。今後へのステップアップというニンジンが目の前にぶら下がっているわけではないのだ。

また、たびたび休載することで、私の印象が薄くなってしまうのを心配して書き続けようという気持もない。このところの自分のコラムを読み返すと、印象だけでなく、名前も、どんな文章を書いていた奴なのかも忘れ去ってほしいと思ってしまうほどである。

にもかかわらず、私はいったいなぜ肉体の軋みに耐えながら書いているのか?

《謀略説》

私が、北朝鮮のスパイなのではないかという説である。このメルマガを利用して、日本国内にいる仲間に暗号を送ったり、日本人を洗脳しているのではないかとも考えられる。特に、洗脳しているという疑惑は信憑性が高い。私のコラムを連載第一回から検索してみるとわかるが、どの回にも、以下のいずれかの文字が必ず含まれている。

「し」「ょ」「う」「ぐ」「ん」「さ」「ま」「ば」「ん」「ざ」「い」

今回のコラムも調べてみたが、なんと上の全ての字が含まれていた。このようなサブリミナル効果を利用して日本人を北朝鮮に対して無防備にしようとしているのではないか。

《死亡説》

私が執筆中にすでに病死していて、代りのライターが書いているという説だ。たしかに、今回のコラムのなかで、前半と後半で言葉遣いが微妙に違うことを考えると、説得力がある。

しかしながら、なぜ死者の代筆をしてまで原稿を書かなければならないのか。死んだ私になりすますことによって、どんな利益があるのか。いや、ちがう。利益など求めてはいない。この代筆者は私を愛し、その面影を原稿のなかに求めるうちに、いつしか自分自身が私になってしまったのだ。

「土色の顔をしたあなたは、もう話しかけてはくれない。息もしない。笑いもしない。でも目だけは大きく開いて、わたしが原稿を書くのをじっとみつめていてくれる」

こんな一文がメモ用紙に書いてあるのが発見されている。多分、女性と思われるその人物が、死んだ私のことを書いたのだろう。

《源義経ジンギスカン説》

源義経が生き延びて、モンゴルに渡りジンギスカンになったという説だが、これには無理が多い。まだ、紫式部ムッソリーニ説の方が筋が通っている。

【ながよしかつゆき/棍棒】katz@mvc.biglobe.ne.jp
映画「HERO」。セリフを言う部分は情け容赦なくカットされてたけど、一応、画面には映ってました。ばんざい。

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