ローマでMANGA[5]「MANGA工房」発足!/midori

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それは2007年10月12日のことであった。

同日午後4時から2時間の「MANGAセミナー」を終え、コーヒーでも飲みに行こうかと財布をさぐっていると、「Ciao, Midori!」の声。

教室ににこやかに入って来たのはエミリアだ。親しみをこめて両ほっぺをつけるご挨拶。エミリアは3年前に、つまり一年生の時に私のマンガセミナーに参加した。絵がすごくうまい。

その年、ローマのコスプレ大会で優勝して、名古屋のコスプレ大会に招待され、グループ部門の一位を獲得したコスプレイヤーでもある。日本に行く前に、話が聞きたいとエミリア宅の昼食に招待されて、ご両親と妹とも知り合ったという経緯がある。今年、コミックスコースを終了してのワークショップ参加だ。

次々に入って来た8人。バルバラ、ロレンツォ、ルチアーノ、ロベルトはエミリア同様、3年前にマンガセミナーに参加して顔見知り。男子3人、女子5人の精鋭達なのであった。

偶然というのがある。偶然は必然ということもある。金曜日の午後6時半から3時間、有料、という条件をクリアできない人だっていると思う。それを偶然クリアできた八人なのだ。よし! このグループでワークショップ(日本の新人賞に殴り込み隊)発足!


●私たちはどこへ行くのか

工房の案を出した時は、参加者それぞれのテーマや作風に合いそうな出版社や雑誌の新人賞に振り分けるつもりでいた。筏で大洋に漕ぎだす。わずかな食料と飲料水だけを持たせて荒野に送りだす。そんな荒涼としたイメージを持って臨むことにたくさんの不安があった。

でも、誰かが始めなければ!
そんな気負いで始めたのだった。

ところが、9月になってから講談社国際マンガ新人賞のサイトをよく読むうちに、この新人賞を企画した島田さん、という編集者の名前が目に留まった。
< http://e-morning.jp/mimc/result/japanese.html >

この島田さんとはあの島田さんか? 「モーニング」の海外支局から、ドイツの作家とその日本人奥さんとドイツ担当編集者が、ローマの我が家に遊びに来たことがあった。

普通にパスタ、肉、サラダと進んだところで、何となく物足りなそうな編集者。「もう一枚ステーキをあがりますか?」と聞いたら、うれしそうに「はい!」の返事。コースを平らげるだけでも並の日本人にはきついのに、さらにお肉のおかわりとは! 日本人離れした胃の持ち主よ! と印象に残ったお方でした。

MANDALA Vol.1 (2007) (1) (講談社MOOK)「MANDALA」を企画した新泰幸さんにたずねると、まさしくその御仁だということで、ステーキの恩を着せようとメールを出してみた。

MANDALA
< http://bn.dgcr.com/archives/20070328140100.html >

マンガ学校で「日本の新人賞に応募する工房」を立ち上げるつもりでいること、国際マンガ新人賞第一回総評の「マンガが各国で起こること」に賛同することを書いた。「ステーキな方ですか?」も忘れずに。

すぐに返事をもらい、なんと、国際マンガ新人賞は、今後も続けるつもりで、しかも年に二回。6月末と12月末に締め切りを設けることにしたというのだった。

6月末! 一回目は5月末の締め切りだった。工房はイタリアの学校年度に準じるから、6月が最終月。

ああ! 国際マンガ新人賞はこのワークショップのためにあったのか!!

かつて10年にわたってヨーロッパの漫画家達とつき合った編集者が立ち上げた新人賞、しかも、いわゆるMANGAにはこだわらない。ガイジンと付き合いのない、日本の市場のみを相手にしている編集部に送るよりもずっと近道だ。島田さんの「お待ちしてます!」に筏はボートになり、荒野を歩くためにロバが出て来た。

●用意はいいか??

写真は「工房」。学校の一室である。

前列奥サーラ、隣ユーリ。
二列目奥バレリア、隣バレンティーナ


前列左ロベルト、隣ルチアーノ、
二列目バルバラ
もう一人エミリアは
写真に写ってない。

そしてワークショップ第一日目。モーニングの「国際マンガ新人賞」に応募するものであること。第一回目でアメリカの女性が大賞をとり、連載が始まることを言って精鋭達を鼓舞して始まった。

ちょっと肩ならし。島田さんの特徴を言葉で言って、皆に想像で似顔絵を描いてもらった。11月に体験留学生をつれて東京へ行く時に、島田さんへのお土産にしようと思ったのだ。

わくわくニコニコしながら、皆が思い思いに描くのを見て回る。ん? 大丈夫?3年間、しごかれたのじゃなかったか? 鉛筆の線が、描きなれた手から出てくるものじゃないのが約二人ほど。

「これ見たら、『この人の作品は落とすことにしよう』なんて決められちゃうんじゃない?」なんて冗談が飛び交ったが、ほんとに見せない方がいいかな…と言う似顔絵も出て来た。大丈夫かい?

マンガは絵の質だけではない。物語の切り口、キャラクターの設定も大きな要素だ…と思い直す。

さ、テーマを決めよう。ストーリーのアイデアを出そう。スケッチブックを出して! 鉛筆を持って! 文でも絵でもいいから、何か描いてみて!

8人のうち、7人がすでになにがしかのアイデアがあった。
残る一人のバルバラは、うんうんうなりながら、二等身の動物を描き始め、「農場にしよう。動物以前のこのコ達が、みんながんばってちゃんとした動物になるの」と言い出した。

それでいい。何かとっかかりを出して行こう。

6月までに、いや、その前のネーム作りの段階で、このコ達の持つものを引き出すこと。

さらに、いたずらにMANGAの構築法に持って行くのではなく、ヨーロッパ風で持ち味が出せるなら、それを壊さないようにすること。

レベルが低いコに対しては、マンガ構築法がいいのか、グラフィックノベルがいいのか、見極めること。

お役目は思っていた以上に大きそうだ。

【みどり】midorigo@mac.com
「MANDALA」2号は(キャラの名前みたい)予定通り(?)どんどん発売予定が後退中。各国の作家達の作業が遅れているから。でも出ます! 先月、私も…と書きましたが、今回はパスです。あはは。間に合いません。でも諦めません。

ハンターのダンナがイノシシ狩りに行ってきた。22人で7頭のイノシシを倒したとか。そのうちの一頭はダンナのライフルのみで倒しており、慣習に従って頭をもらって帰って来た。牙を抜いて保存するのだ。切り口はおぞましく血で汚れた肉塊。スポーツとして動物を殺すハンティングには基本的には反対だけれど、こう言うのを目の当たりに見ると「ああ、私たちは生きているものを食べて生き延びているんだ」と実感する。

イタリア語の単語を覚えられます! というメルマガだしてます。
< http://midoroma.hp.infoseek.co.jp/mm/menu.htm >