武&山根の展覧会レビュー ふたつの見えにくい「暴力」/武 盾一郎

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首都東京。憧れに胸をときめかせて来る人、働き場所を求めて来る人、様々な大量の人間たちを飲み込みながら息づいてる巨大な生き物。今回は東京という都市における、二つの見えにくい暴力を紹介します。


●新宿ルミネから退店勧告されている個人営業喫茶店「ベルク」

一つは、ベルクという喫茶店。
< http://www.berg.jp/ >
JR新宿駅東口改札を出て左に曲がってすぐの有料トイレを越えたところ、地下に降りる階段の手前、左側にその喫茶店はあります。

個人営業といっても場所が場所だけに大勢のお客さんが入るし、スタッフも多く働いている。新宿西口地下道で、段ボールハウスペインティングをしていた頃からのお気に入りの喫茶店だ。

大型チェーン店並みの安い値段でこだわりのコーヒーやホットドックを提供し、壁はギャラリーになっていて作品も楽しめる。なにより、スタッフの感じとか店の雰囲気とか、なんていうか、人間力の素晴らしさを感じさせてくれるお店なのだ。ゆえに常連も多く、新宿らしい様々な業種の人たちがしばしのくつろぎを求めてやって来る。かく言う僕もその一人である。

そんなお店が今立ち退きを迫られているのだ。きらびやかに見える駅ビル「ルミネ」、テレビCMも面白いし、誰でもふらふらとウィンドウショッピングを楽しんだりした経験はあるだろうし、ルミネが嫌いな人はそうそういないだろうと思います。

けど、是非これを多くの方々に読んで頂きたいのです! そして、ベルクを知ってる方、好きな方、またはこれを読んでベルク存続して欲しいと思う方、ブログやHPをお持ちの方、こちらへのリンクを貼ってこの事態をさらに多くの方々に知らせたいのです!

「ベルクをご利用のお客様へ」
< http://www.berg.jp/l/l01.html >

今宵も、新宿は12月のクリスマス気分も加わり、さらにいっそうキラキラと輝いていることでしょう。そんな都市の喧噪の中、お客から支持されてる小さくステキな店が静かに消されようとしてる。この暴力は個人店に向けられてるだけでなく、客にも向けられているわけなのだが、とても見えにくいのである。

システマティックに、ドラスティックに変態をし続ける化け物のような都市を楽しむは悪くはないことだけれど、そのこと自体、見えにくい暴力の一端を担ってたりするんだ。いじめを傍観する人も、そのこと自体がいじめに加担してるように……。

……とにかく、僕はただ、好きな店がなくなるんが嫌なんだ!

※追加情報です。
ベルク・ファンのHP立ち上がってるようです!
ベルク・ファンの方は是非コメントして下さい!
LOVE! BERG!
< http://ameblo.jp/love-berg/ >

●ホームレスとグラフィティーを排除する「アートプロジェクト」

今から11年前の1996年、僕は東京都が「オブジェ」と称したホームレス排除用の突起物に絵を描き逮捕され、22日間拘留された経験がある。
< http://cardboard-house-painting.jp/mt/archives/cat5/index.php >

今読むと相当恥ずかしい言葉遣いだが……。
そしてこのオブジェと僕らの行為に対するこんな考察も見つけました。
< http://d.hatena.ne.jp/aesthetica/20070322 >

僕がポイントとして引用したいセンテンスは、

「……(前略)……だが再開発をもくろむ行政か鉄道会社かは知らないが、そこに住む人やダンボールハウスを撤去しようとした。そこで、冒頭にあげた武盾一郎や吉崎タケヲといったアーチストはダンボールに絵を描いて抵抗した。しかし結果的にこの抵抗が、目には目をではないが、狡猾な「オブジェ」の発想を行政の側に与えてしまったように思う。……(後略)……」
(《aestheticasive critica》presented by 吉田寛「新宿西口のオブジェのどこが問題なのか?」より)

ここで僕がすぐに思ったのは電車の車両外側の広告だった。電車の車両をキャンバスとして捉えたのはグラフィティーがまず最初である。グラフィティーは犯罪と呼ばれるが広告ならなんでもオーケイであるらしい、というか世の中とはそういうもんだ。しかし、車両外側広告はどう考えたってグラフィティーのアイデアをパクってる。そして見た人はほとんどいないだろうが、この突起物に僕が絵を描いた面
< http://www.cardboard-house-painting.jp/html/tokkibutu.html >
に広告が貼ってあったのを目撃したことがある。写真を撮れば良かったとつくづく後悔した。

と、ホームレス、グラフィティー、排除というキーワードが揃ったところで、現代に話を戻します。

これは都内某公園に暮らす、ホームレス・アーティストの小川てつオ氏のmixi日記を引用するのが最も分かり易いので、ご本人の許可を得て転載する。
< http://mixi.jp/view_diary.pl?id=630933384&owner_id=1265354 >

▼転載始め
ギャラリー246による追い出しに注目!(イベントのお知らせ)

渋谷駅の東口と南口を結ぶ246号、東横線の高架下に、以前からダンボール小屋などで、10人前後の路上の人が住んでいる。その246号の両脇と、地下道に、壁画が描かれた。

日本デザイナー学院のホームページによると、「渋谷桜丘周辺地区まちづくり協議会より、汚れの激しい高架下を安全に楽しく通行出来る「アートギャラリー」に変えて欲しいとの依頼があり、学生たちがアイデアを提出。テーマは、かつて近くを流れていたという「春の小川」。童謡にも歌われた春の小川を、デザインの力で取り戻す大プロジェクトに挑戦しました。」ということで今年の3月に完成。(ただし、日経などの新聞記事では、公募したコンペに入賞したようにかいてある。これって、公募って言わないだろうと思うけど。)
< http://www.ktr.mlit.go.jp/toukoku/04topics/h18/20070314.htm >

ここを見ると、以前の様子がわかるが、今もダンボール小屋がある。(この壁面に落書き、薄暗いイメージ、というキャプションもいやらしいなぁ。わざと、ダンボール小屋に言及しない感じが。)

今、ここで、追い出しが行われようとしている。10月の終わりころに、滞在者各位に対する「移動のお願い」という張り紙がされた。渋谷区2丁目、3丁目、道玄坂一丁目、渋谷アートギャラリーの連名である。口頭でも、そう言ってきたらしい。

ぼくとして、一番腹が立つのは、アートの名において、追い出しが行われていることである。こういうことは、たしかに、よくある。彫刻物と称するものを作るために、追い出しがあったこともあった。しかし、今回は、製作者ははっきりしている。なんらかの行動を起こしたいと思っている。

日本デザイナー学院は、、そんな一方的で想像力の欠乏したものをアートと呼ぶのか。無自覚すぎるのではないか。行政や法律に認められて、絵を描いたらアートである。というそんな基準でいいと思っているのだろうか。アートって、もっと自立的な価値基準を持っているのでは、と少しも考えないのか。壁画の上から落書きがされて、それを消して、描きなおしているが、そもそも、そこに描かれてあったものを自分たちは消して描いたのだ、という自覚がないのか。消された方から、見たら、落書きしたのはあなたたちになるのかもしれない、という想像は働かないのか。落書きに対するのであれ、路上生活者に対するのであれ、共通するのは、想像力のなさである。そういうものを平然と、アートであると思っている日本デザイナー学院や製作者の態度に、なんとも腹が立つのである。

ちょっと熱くなってしまった。ともあれ、支援団体も動いて、10月30日に、町内会や東急、交通省、などと話し合いが持たれ、ただいま、平行線のようだ。住んでいる人に聞いても、どうなるか分からないねぇ、と言っていた。

状況をよく分からないで、書いている部分もあるので、分かりしだい補足していきたいと思います。誤認している部分は教えてください。ただ、この追い出しは、ほとんど知られていないように思うので、注目してほしいと思っています。

イベントのお知らせ
11月23日14時からいちむらさんによるパーフォマンスが、このギャラリー246で行われます。ぼくも手伝います。お暇なかたはいらしてください。
▲転載終わり

                ◆

1996年1月24日早朝、東京都は新宿西口地下道ホームレス村の強制撤去を行った。最前線で殴り合っていたのは、ホームレスと、バイトの警備員たちだった……。後ろの方で都の職員たちが見ていた。そしてその後に機動隊が突入してきた。暴力はいつもこうだ。

【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/ 好きな人からとうぶんおはなしできませんと言われてへこんでます】
take.junichiro@gmail.com

通常は武&山根のチャットレビューなのですが、怪我をしていた右足をほったらかしてた山根が蜂窩織炎になってしまい療養中、禁酒・通院を命じられてます。なので展覧会に行けず、ピンの原稿になりました。
暴飲キャラは今年いっぱいとして、来年からフレッシュでクールでオシャレでキッチュでセクシーなチャットレビューにしたいと思っておる次第です。
「Live Publication / SWAMP PUBLICATION」
< http://jp.youtube.com/watch?v=e0RKo3PeUMg >
< http://iddy.jp/profile/Take_J/ >


(追記 12月26日)
本文中に「日本デザイナー学院の生徒が路上生活者に「出て行く」ように説得に回ったという話もある」との記述がありましたが、調査したところ、日本デザイナー学院の生徒が路上生活者に「出て行く」ように説得した事実は確認出来ませんでした。よって、その一文を削除するとともに、誤った事実に基づく話を記載したことを、日本デザイナー学院、生徒の方、読者にお詫びします。 武 盾一郎

(2008年1月16日)
ふたつの見えにくい「暴力」その後/武 盾一郎
< http://bn.dgcr.com/archives/20080116140300.html >