ローマでMANGA[6]日本行き/midori

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11月を休んでしまったのは日本にいたからだ。そうなのだ。だから、MANGA工房もお休み。それでも「イタリア」と「日本」と「マンガ」の三題から離れていたわけではなかった。第二回目体験留学のための日本行きだったから。今回はそのお話。

今回の体験留学はテーマが二本立てだった。その話を始める前に、フラッシュバックで日本へ出発する前のローマへちょっと来てください。ビュン!


●10月末のローマにネコノアシがやってきた

学校の教務課長ジョルジャが「二人でイタリア人の作家を日本へ紹介するエージェンシーを作らない?」と言い出した。ちょっと前なら数々の困難を数え上げて拒否しただろうけど、なんだか歯車が動いている気がしている昨今なので、困難があるならそれを乗り越える方法を探ればいいだけ……と楽観して「やろうよ!」と返事をした。

ジョルジャはイタリアのマンガ世界の中で生活しているので、マンガ家をたくさん知っている。知識としてではなくて、ナマ身の漫画家をよく知っているのだ。私は講談社海外支局からナマ身の編集者を知っているし、漫画事情も知っている。何よりも日本語を知っている。この二人の知を組んでイタリアと日本の橋にならなくては世間様に申し訳ないではないか!!

10月末のコミックスフェアが終わるのを待って、用事から解放されてエージェンシーを設立。物理的な事務所はこれからね。とりあえず学校を住所とする。エージェンシーの名前……「橋になる」ことを含んだ、イタリア語でも日本語でも発音しやすいもの。うーーん。

デジクリが縁で知り合った川井拓也さんという人がいる。今はデジハリの教授もされている。
< http://gs.dhw.ac.jp/teacher/new_details/ >

川井さんが作った会社の名前が「ヒマナイヌ」。この名前がいたく気に入っていた。覚えやすいし意外な感じがいい。インスパイアを受けて、日本人が好きな「ネコ」を使おうよ。しなやかで鋭敏な感じもいい。

いろいろネコネコ言ってる間に、話を聞いていたジョルジャのダンナで漫画家のサベリオが、ボールペンで湾曲した体を持ったネコの絵を描いて「neko no asi」と付け足した。Hはイタリア語では発音しないので、「橋/Hashi」をH抜きで書いてしまったのだ。

「それいいじゃない! ハシじゃなくてアシ。ネコの手も借りたいというし」というわけで決まり。「コミックスエージェンシー・ネコノアシ」の発足だ。

ジョルジャと私が知っているイタリア内外の日本に興味がある作家に声をかけて、画像を集め、カタログを作った。と、ここまでが11月半ばのローマ。そして、そのカタログと留学生を連れての日本滞在20日間、ということになったわけ。

●体験留学


今回のメンバー。
(BD研究会の二次会)


現代マンガ図書館
普段は公開しない天国、
いや、書庫


東京アニメーター学院入り口の
トーマス(左)とアレッシオ


ヤンキンアワーズの副編集長が
アレッシオのアートブックを見ている

今年の体験留学生は二人。ナポリ出身ローマ校のトンマーソ(もっぱらトーマスと呼んだ)と、ミラノ出身フィレンツェ校のアレッシオ。陽気なナポリのイメージとは裏腹に、トーマスは控えめでおとなしい。絵がすごくうまい。マンガに対するモチベーションが非常に高い。家を助けて子供の頃から働きながら学校へ通ったそうだ。そんな大変さを超えて、なおかつ、将来の保証がないマンガへの道を求め続けている22歳。

アレッシオは32歳。一度社会人になってから「やっぱり漫画家になりたい」とマンガ学校へ通った。他の生徒より10歳は年くっている。アレッシオもモチベーションが高い。

昨年同様、東京アニメーター学院での授業は、デジタル・コミック、スクーリーントーン、キャラクター、イラストレーション科の課題、アニメーション科のデッサンという内容だった。

二人が持って来た作品集を見せる度に「わあ!」の声があがる。ストーリーよりも絵の完成度で見せるヨーロッパ方式だから、各コマが独立したイラストのようで、日本の記号化したマンガの描き方に慣れた目には、描き込み度が卓越して見える。

縁を頼って講談社のモーニング編集部や、海外支局時代に築いた縁故を頼って、エス編集部を訪れる。
< http://www.asukashinsha.co.jp/s/ >

二人の作品集の他に「ネコノアシ」のカタログも見せて、生まれたばかりのエージェンシーに栄養を与える。

エス編集部の天野氏は海外に興味をお持ちなので、四時間もかけて丁寧に作品集とカタログを見て話をしてくださった。

やはり海外支局時代に知り合った谷口ジローさんも、里帰りの報告をすると、夕食に誘ってくださる。お忙しいだろうに、本当にありがたい。漫画家志望者にとって、プロの仕事場訪問は大きな刺激になるはず。学生とネコノアシを連れてお邪魔すると、編集者を紹介してくださった。すぐにどうにかなるという具体的な話にまではならないけれど、ネコノアシの日本へのアプローチに関するサジェスチョンをいただいた。

Mixiで知り合ったBD(ベーデー・フランスのマンガ)を研究するグループと交流会を設けて、現役漫画家さんや編集者や大学の先生とも出会った。コンテンツ制作配信の会社の方とも知り合って、事務所に訪問したりした。
< http://www.toenta.co.jp/ >

授業以外にも実のある日本滞在だった。そうそう、早稲田にある「現代マンガ図書館」で、幼い頃読んでいた貸本に再会したのは予定外の嬉しいハプニングだった。館長の内記さんは元貸本屋経営者で、特にマンガに力を入れていたそうだ。絶え絶えの昭和50年代60年代のマンガ本を買い集めていらっしゃる。普段は公開しないという書庫を見せていただいた。天国だ!

こうして、学生もネコノアシも栄養をもらううち、それが訪れた。

●それマル

YOUNGKING OURS (ヤングキングアワーズ) 2008年 01月号 [雑誌]それは東京アニメーター学院での最後の授業の11月30日のことだった。授業の一環として、ごく近所にある「少年画報社」の編集部を訪ねた。「ヤングキングアワーズ」の副編集長の具体的な編集者の仕事の話の後、各自持って来た作品を見てもらう時間になった。アレッシオとトーマスのところに編集長自ら一番に来てくれた。トーマスの作品集を見て、

「こういったアクションはウチの雑誌に合うので、まず30ページくらいの読み切りを描いてみませんか?」

ええっ?

編集長の言葉を訳すと、トーマスの顔が赤くなって、額に血管が浮かんだ。1月の始めにネームを見せてもらえませんか、というかなり具体的な話で、血管の浮かびもうなづける。アレッシオの作品も、携帯配信のショートに使えそうだとのこと。

去年のティーナの時は、絵柄が違うせいもあっただろうけど、ガイジンは問題にしてない様子だったのに、この一年でこの違い。嬉しい誤算だ。

トーマスの作品がアワーズに載れば、日本の漫画界にとっても異例なことだし、イタリアの漫画界にとっても快挙だ。イタリアマンガが日本に通用する! ネコノアシの出番も多くなろうというもの。

ああ、どうしよう! 夢の実現か?!

・トーマス
< http://www.ombra-tomas.blogspot.com/ >
< http://www.kelevracanerabbioso.blogspot.com/ >
< http://myspace.com/tomas_art >

・アレッシオ
< http://www.scarrabocchio.blogspot.com/ >

ネコノアシのサイトはこれから。

【みどり】midorigo@mac.com
約三週間の里帰りは去年同様忙しかったぁ。東京にいるとあちこちで面白い展覧会にぶち当たって、見たいものが増える。当然全部は見られない。鳥獣戯画展だけはどうにか組み込んだ。日曜だったので人がいっぱいで、一番有名なウサギとカエルの相撲場面がある巻物(正式名称・鳥獣人物戯画絵巻 甲巻)はほとんど見られなくて残念。人の頭越しに見た感じでは、後世に名を残すものって、それだけの完成度を持ってるなという印象を持った。「鳥獣人物戯画絵巻 丁巻」では投石の軌跡や勝絵絵巻(室町時代)のおなら合戦での屁の軌跡などの効果線がすでにあった。人の表情も豊かで、マンガの先祖といわれる戯画って思ったより子孫に近いんだ。

里帰り中は「娘」をした。朝起き出すと母がいそいそと「何食べてく? パンもご飯もあるわよ。あ、お餅にしてあげよか?」と世話を焼いてくれる。それが心地よくて、お腹が空いてなくてもちゃんと朝ご飯を食べた。体重、二キロは増えた。

イタリア語の単語を覚えられます! というメルマガだしてます。
< http://midoroma.hp.infoseek.co.jp/mm/magazine.html >