気になるデザイン[5]「環境に配慮した紙」のホントのところ。/津田淳子

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●古紙配合率と環境問題

ニュースや新聞で、再生紙年賀はがきなどの古紙配合率偽装について随分と話題になっていますね。昨年、ミートホープや不二家、船場吉兆など、さまざまな偽装のニュースを見てきましたが、紙にもそんな偽装が潜んでいたなんて、非常に驚きました。

紙について、自分がつくっている書籍内で触れることがしばしばあり、実は今週納品される新刊『デザインのひきだし vol.4』でも「環境にやさしい印刷物って何?」という、なんだかタイムリーな記事を掲載したりもしているため、他の食品偽装のニュースより、かなり興味を持ってニュースや各社発表を見ています。

そんなものをいろいろと読んでいると頭に「?」が浮かび、新たに疑問に思うことがいろいろとあるのですが、そのひとつが、日本製紙と大王製紙が出しているPDFに書いてあること。日本製紙のものがわかりやすいので引用します。


(「弊社製品に関する社内調査結果」より引用)
葉書用紙が再生紙化された平成4年当時、工場内発生損紙も古紙として認識し、
古紙パルプ6%と合わせた30%でテスト生産した結果、近い将来の技術革新で
配合率40%の実現が可能と営業判断し受注を開始しました。その後、工場内発
生損紙が古紙パルプとして認められないことがわかり、本来は古紙パルプを増
配すべきところ、古紙由来のチリ、墨玉等の夾雑物が多くなるため品質を確保
することができずに、古紙パルプ配合率が低いまま生産しておりました。
(後略)
< http://www.np-g.com/news/news08011601.pdf >

日本製紙も大王製紙も、損紙を古紙として計上していたため、それが古紙に含まれないとわかって配合率が結果的に低くなっていた。ということが理由のひとつとしてあげられている。でも工場内発生損紙、つまり、紙をつくるときに出たヤレ紙は、古紙パルプとして認めないってことなの?

どうにもわからないので、方々問い合わせてみると、損紙は、その中に使われている古紙分だけ古紙パルプとして換算するよう通達があったとか、「容器包装リサイクル法」に則ると損紙は古紙パルプにそのままは含められない、という答えがあったりして、やはり損紙は古紙としてそのまま計上できない、ということらしい。

……なんだかなぁ。非常に乱暴なことを言えば、どれが古紙だとか古紙じゃないとか言ってるより、損紙だって、そのまま捨てちゃえば無駄になるんだし、印刷された古紙から脱墨(漂白)するより、損紙を再利用する方が環境負荷が少なくすんで、結果的に環境にかかる負荷が少なくなれば、それでいいではないか。

こんなことを書くと、製紙会社の肩を持つのかと思われるかもしれないが、そんなことは思っていない。一番の問題は、もちろん製紙会社が実際に発表していた古紙配合率と、かなり、それもすごく乖離した古紙配合率だったのが悪いと思う(それに損紙を含めても、発表されている古紙配合率と乖離があったし)。今回の問題も「偽装」していたことが問題なわけだし。

でも、古紙配合率をどのくらいに上げよと要求する側や、環境負荷を考えてリサイクルペーパーを使用していますと声高に主張する側は、古紙配合率が高ければ、それが環境に対する負荷軽減になるのか。真に環境問題を考えるなら、なにが一番いいのかということを、もう少し自分たちでも考えてみないといけないのではないかとも思う。

古紙配合率が高ければ高いほど、環境負荷が少ないように思えてしまうが、実はそうとは限らず、古紙のインキを漂白する「脱墨」という作業は、場合によってバージンパルプを使うより環境負荷がかかってしまう場合もある。

なので、そもそも古紙配合率だけで環境問題を考えるのがおかしい、ってことだし、間伐材(間引きした木)を使ったり、FSC(森林管理協議会)が推進する、「認識材」と「管理材」という木材からつくられる、環境に配慮した「F SC森林認証紙」というものもある。そんなことも含めて、ただ単に聞こえがいい「古紙配合率」を謳うだけでなく、総合的に考えていくべきことだと思う。

とかなんとか思っていたら、あるデザイナーから電話がかかってきて「無駄な紙を使わないってことが一番重要なんじゃないの?」と言われた。……うっ、それって、つまんない本つくってんじゃねーよ、って、遠回しに言ってるの(苦笑)? いやでもそれも非常に重要ですよね。精進します、はい。

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp
「環境にやさしい印刷物って何?」を掲載した『デザインのひきだし vol.4』は来月頭には全国書店店頭に並びます。ちなみに特集は「折り/抜き/紙の加工でこんなことできる!」です。
最近作った本は『デザインのひきだし vol.3』『田名網敬一 デイドリーム』『デザイン・制作のセオリー』『しかけのあるブックデザイン』など。
< http://www.graphicsha.co.jp/ >