うちゅうじん通信[14]うちゅう人の作品解説
── 高橋里季 ──

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今回は、昨年末の「ディジタル・イメージ」の展覧会出品作品の事を書きます。

昨年のデジクリ連載は、一昨年の作品のコンセプトノートのことを一年遅れで文章にまとめたような感じでしたが、今年は、なるべく早いテンポで作品のコンセプトや、クリエイティブの不思議とか、書けるといいなと思っています。

さて、展覧会とかコンクールっていうのは、会場や主催者の都合で、展示スペースや見せ方がだいたい決まっている。これが、私としてはとっても楽なのね。展示スペースをどうするか、個展の時なんかは、自由だからこそそこから考えなくちゃいけない。


決められた部分があると、自由な部分で、いろんなことをやってみようという気になります。この展覧会の時期に、コンクールに何枚か絵を出したり、仕事で使う絵が決まったりして、あとね、年賀状はどういう絵にしようかな〜とか、一度にアレコレ考えていたら、ひとつ試してみたくなったことがありました。

以前にA3サイズでやったことのある、手描きで筆のタッチを入れた普通紙に、エプソンの顔料プリンターで上からデジタル画像をプリントするというもの。そのやり方でB1サイズを二枚、作れないかしら? って思って。

一番新しいオリジナル作品を小さいサイズで、まずこのやり方で一度試してみたら、あら、いい感じだわ。だけど大判出力を発注するとなると、やってもらえるお店を探すのも大変。やりたいことを説明して、お返事を待っていると、それだけで数日が過ぎそう。

なにか、自分でうまくできる方法はないかな〜? 失敗したら諦めて、急いで普通に大判プリントしてもらおう。でも、お店に大判プリントを発注するのも、半年前にはあったサービスがなくなっていたりするので、いつでもお願いできるお店を調べておくのも、大切なんですが。

いろ〜んなことを考えると、失敗したら時間も料金もB1サイズだけに痛いな〜。2万円くらい、一週間くらいは平気でやりなおしにかかっちゃうわよね〜。でも、うまく行きました!



ここで起こった不思議なことは、私がエプソンのアイロンプリント用紙が染料プリンタ対応だということにまったく気がつかずに、顔料プリンタで試してみたこと。千鳥格子をアイロンプリントして、その上から手芸店などに売っているラインストーンで鳥の形をキラキラ作る。もちろんアイロンプリント用紙の使い方が間違っているんだから、全然思い通りにならないんだけど、その失敗がどういうわけか想像以上にきれい。

なんだか「化学変化で出来たような模様」が、グリーンのハズなのに、金色っぽいイエローになったり、失敗した部分にアクリルのゴールドオレンジって、使ったことのない色を試したら、どんどんカッコヨクなってしまった。なぜか、細かい花の部分も熱で融けて見えなくなりそうなのに、わりと良い感じで残っているし。アイロンをググッと押し付けると、すごく細かいシワで、だんだん思い通りの方向に模様を作れるようになったりして。大きいうねりもグググっと良い感じ!

途中で、アイロンプリントが染料対応だということに気がついた。前に使っていた染料対応プリンタ、使ってないけど持ってるので、間違えなければ千鳥格子はどんな具合になったかな〜? でも、とにかくこの間違いには大感謝。すごく楽しかったです。

運が良い時って、失敗が逆に良い結果につながったりするのよね。この感じがある時と、失敗がどうしてもヤリ直しに繋がってしまう時がある。今回はラッキーが重なった感じ。

私ね、どうもこういうラッキーで生きてきた感じなの。自分の意志で良い評価を勝ち取ったことがあんまりないので、失敗に気づいた時って、ワクワクするの。これは、ラッキーの入り口かもよ? って思う。ワクワクしながらミスをカバーするアイデアがポンポンうまく運ぶと、思わず頭の中で、「絶好調だわ私!」とか言ってる。そういう時にひと休みして飲むコーヒーって、おいしいんだ〜。

瞑想に出て来た光る鳥をね、どうしても素敵に描いてみたかったので、動機の強さってラッキーには大事なのかも? 「どうしても、一番素敵に描く方法が欲しいんだもの。失敗したらやりなおすわ!」って、新しいアイデアを実現するために、毎日のように秋葉原やお茶の水に画材を買いに走ってしまったけど、楽しくて仕方ない感じで。

「B1パネルにラインストーンを貼っただけ」に見えたら、みんなに笑われちゃう。そういう、みんな(気兼ねなく見てくれる友人知人)も、ラッキーを呼び込む大切な存在かも? 「和の雰囲気」「一点物の価値」で、とっても素敵だって、みんなに褒めてもらって、ご機嫌な一週間でした。

うまく描けた絵をみんなに見せたくて、案内状を送るのも楽しかったな〜。だけど、新しく試した色面って、剥がれたりの強度が心配で、展示までドキドキでした。

「ディジタル・イメージ」展は、たぶん今年も開催予定。素敵な作品、インタラクティブ作品やゲームもあって、「私もがんばる!」っていう気持ちになれる感じで、グループ展って、楽しいです!

ディジタル・イメージ
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【たかはし・りき】イラストレーター。 riki@tc4.so-net.ne.jp
・高橋里季ホームページ
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