気になるデザイン[6]美しさも大切だけど、機能もね。/津田淳子

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私は仕事の依頼や、お礼、またちょっとしたことをお伝えする時も、緊急の用だったりでなければ、手紙やハガキを書くことがけっこうよくある。メールや電話もいいですが、私だったら手書きの手紙をもらうと嬉しいし、その時の気分や、相手の方に合わせて、便箋やハガキを選ぶのが楽しいのも、その一要因かもしれません。

そんなときに気になるのが、便箋やハガキの「書きやすさ」について。見栄えの美しさやかわいらしさももちろん重要なのですが、ペンや万年筆を使って、そこに文字を書き込んだとき、あまりにインキの吸い込みが悪くて、かなりの時間乾燥させても、手で触るとシュッとインキが擦れてしまうものだったり、逆に吸い込みすぎて文字がにじんでしまったり。


写真のポストカードなどに多く見られる気がするのですが、文字を書く面にまでかなりテッカテカのコート紙が使われていると、文字も書きにくいしインキも乾かないしで最悪です。紙の中には、ハガキや便箋に適した、書き心地が良くて、筆記具のインキを塩梅良く吸ってくれるものがあるので、そういうものを使って欲しいなぁ。

便箋にもいろいろありますね。書き心地はいいんだけど、見栄えが好みじゃなかったり、逆にどうも書きにくいというものだったり。

以前、かなり有名なデザイナーがデザインしたレターセットを購入したことがあった。見栄えとしては申し分なく美しくって、凝ったギミックもあり、非常に好みなのですが、……いかんせん書きにくい! なぜ書きにくいかというと、問題は紙の使い方。

便箋によく使われるステーショナリー用の紙に、「ボンド紙」というカテゴリのものがある。これはペン書きに適した紙で、ウォーターマーク(透かし)が入っていたりする。その中でも「レイド」と呼ばれる簀目が入っているものがあるのだが、ご存知でしょうか。光に透かしてみるとよりわかりやすいのですが、1mm間隔くらいで細いストライプが見える紙、見たことありますよね。それです。

先述の有名デザイナーが作った便箋にはこのレイドの入った紙が使われているのですが、細いストライプのレイドが縦方向に入っている。だからすごく書きにくい!!!

って、それだけじゃわかりにくいですよね。言葉が足りなくてすみません。ご説明しますと、この便箋、筆記具のインキが滲んだり乾きが悪い、というような欠点はないのですが、見栄えとしてはどう考えても横書き用の便箋なのに、そこに縦方向に細かいストライプの透かしのようなレイドが入っているので、横書きで文字を書くと、文字列がまっすぐ書きにくいのだ。結果として手紙を書き終わって見返してみると、どうも美しくない(お前の文字がきたないせいでは? というツッコミはなしで……)。

昨年、ある活版印刷屋さんに、私用のレターヘッドをつくってもらったのですが、そちらではこのレイドが横に入っているお陰で、紙の下にガイドとなる横線入りシート(よく罫線が入っていないレターセットに入っているヤツです)を使わなくても、横書きの文字がまっすぐかけて、非常に使いやすい。

紙問屋さんに聞いてみたら「ウォーターマークが入っているものは、そのウォーターマークが正しく読める方向に紙取りしないといけないけれど、入っていない場合には、レイドがどちらの方向にきても、特に間違いだ、とは言いきれない。ただし、横書き用のレターヘッドの場合には、一般的にはレイドが横方向にくるものが多い」とのことだった。

そりゃそうだよなぁ。だって、実際に使ってみればすぐにわかるけど、横書きを想定しているなら、レイドが横に入っていた方が、圧倒的に使いやすいもの。まあ、私が文字の書き方が下手で斜めになってしまうせいだ、と言われればそれまでなのですが……。いやいや、でもどうせ作るならより使いやすいようにデザインして欲しいなぁ、と思ったり。

とここまで書いて読み返してみたら、なんだか小うるさいおばさんの独り言みたいになってしまいましたが、……いいんだ、いいんだ。だって使いにくいと思うんだから。うむ。

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp
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最近作った本は『デザインのひきだし vol.3』『田名網敬一 デイドリーム』『デザイン・制作のセオリー』『しかけのあるブックデザイン』など。
< http://www.graphicsha.co.jp/ >

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デザインのひきだし 4
グラフィック社 2008-02-12

by G-Tools , 2008/02/05