音喰らう脳髄[45]謝意謝意謝意(あめあられ)/モモヨ

投稿:  著者:  読了時間:3分(本文:約1,400文字)


今年も桜の時節となった。例年、寿命がどうたらとかごたくを並べる季節である。その前兆というか、今年は、愚痴を垂れ流す前におおきく体調をくずした。

他人の体調不良など、読んで楽しいものじゃないので、ここでは詳らかにしない。とにかく体調不良であちこちに迷惑をかけたのは確かだ。で、そうした被害者の中にはデジクリの編集に携わっている皆さんがいる。もちろん読者のかたがたもいる。そうした方のためにあれこれと症状を並べて、平身低頭、とにかく謝意を雨あられと振りまきたいところではあるが、今は遠慮しようと思っている。


だいたい、私は病気を観察するのが大好きで、というより、そんな野次馬親父を脳内に飼っていて、少しでも珍しい病にかかったり症状をていしたりすると、その親父がもぞもぞと起動して、あれこれと分析をはじめ、観察し、あるいは実験をするのである。たとえば、点滴速度と手足の角度、位置との相関関係を実証的に検討したりもする。

娘が小学校にあがる直前の話だから今から六年前になるが、ひょんなことから病院送りになった。その時のことである。腕をベットの外側、床近くまで垂らすと、点滴のスピードが倍増することを発見。それを面白がって眺めていたら、予定所要時間の半分で点滴を終えてしまった。

むろん体によいはずがない。こめかみが膨張したような気がして目玉が破裂しそうだったし、看護師さんにも思いっきり叱られた。しかし、点滴というものが高低差に左右されるものであることを実証したことが妙にうれしかったものだ。それも、かの親父の仕業である。

とにかく、病気になれば、むしろ筆まめになるのが私の常なのだが、今回は、思うところあって遠慮させていただく。なにしろ桜がちらほらとほころびかけている季節。そのうえにお彼岸である。

関東地方は、先週末の雷雨以来、不気味なほどぽかぽか陽気が続いている。ここのところ昼寝をするのに最適な陽気である。であれば、少々風流に染まりたいではないか。

先日、裏通りを歩いていたら、塀のうえを歩いていた猫が梅の花の香りをかいでいるのを見かけた。猫ですらそんな調子だ。人間が風流をめでずしてどうする。そのうえに、かの病院送りの年に入学した娘が、この春、小学校を卒業するという個人的事情もある。卒業といっても、所詮は直後に入学が控えている。何がめでたいのか、何がめでたくないのか、定かではないものの、それなりにTPO(のようなもの)は尊重したいと思っている。というか、複雑な心境なのである。

私の病気はさしたる問題ではないものの、世の中の病理については、そうも言ってられない。あれやこれやと相当に深刻だ。国内を見ても陰惨な事件が続き、海の外では飢餓や殺戮がくりひろげられている。思えば、娘たちは、そうした惨状の後の世界を生きていかなければならない。それを思うと、めでたいのか、めでたくないのか、さらに判断がつかなくなる。

それでも生きていく、そして自分なりの決着をつけるのが人間なのだろう。彼女が成長した果てのある春の日に、咲く桜、散る桜に目をとめて、春の日差しを美しいと感じられればいい。そんなことを思う、呆けた春の昼だった。

Momoyo The LIZARD 管原保雄
< http://www.babylonic.com/ >

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