デジクリトーク 編集人よ見よ! あれがマンガ人の星だ!/鷺 義勝

投稿:  著者:  読了時間:5分(本文:約2,200文字)


今、マンガ界が弛んでいる。作者、読者、そして何より出版社だ。単行本とマンガ雑誌の部数格差、いたずらなまでのアニメ・実写化。もはや、破綻の域に達して居ると言っても過言では無いゲーム化。一体、マンガ界はどこへ向かうのだろう。

かつて社会でマンガ雑誌が果たしてきた役割の、変遷を繙いて見ようと思う。現在30〜40代の男性の通勤・通学時の暇つぶしの一翼を、マガジン、サンデー、ジャンプを筆頭とした多数のマンガ雑誌が担って来た時代が厳然としてあった。

言ってみれば、「来週の展開は一体どうなるんだ!?」といったある種のライブ感を味わせるストーリー物や「相変わらず下らないな」と苦笑いさせてくれる読み切り物等、発売日が生活のリズムに影響を与える程の傑作が、いつ最終回を迎えても困らない程ごろごろしていた。


寄生獣―完全版 (1)先日、ある方のブログで「歴史に残ると思う名作漫画」という調査があった。一見して確かにネット世代の心象風景と言った感じの結果だったのだが、個人的に非常に興味深い作品が上位に入選していたので御伝えしたいと思う。それは岩明均さんの「寄生獣」が、1ランク差で「MONSTER」「MASTERキートン」「YAWARA」「20世紀少年」の浦沢直樹さんを抑えて、6位に入賞したと言う事実だ。

どんな点が興味深かったかと言えば、それは上位20作品の内、作品が一つも多媒体化されてない原作者が岩明均さん只一人だったと言う結果だ。私も連載当時は非常に引き込まれ、その魅力を敢えて邦楽界に準えるなら岩明均さんが中島みゆきとするなら、浦沢直樹さんは松任谷由実と言ったところか。

汎ゆるマンガ雑誌に然るべき創刊の動機が仮に有るとしたなら、それは「如何なる媒体にも成し得ない日常生活における危機感の創出」ではないだろうか。バックナンバーといった発行形態も含め、「何れ無化されてしまう作者の意思を会得するタイミングを確実に見切る千里眼」に果たして私達は刺し違えるだけの覚悟を見出せるのだろうか。

作品の伝達手段に要する生産過程が様々な試みにより多種多様化され、言わば「描き逃げされて行く広大な意思の原野」と化し、あたかも「作者の表現の動機」がデジタル化されて行くかの様に誤伝され続け、本来の「見返り無き変容」と言ったマンガならではの挑戦すべき課題に今一度真っ向から対峙して行かねば、生涯を通じて解決せねばならない「暇つぶし」という現実も決してその刃を収める事は無いだろう。

最後に、読者、作者、編集人にエールを送る形で愚文を閉じたいと思う。まず読者に突き付けられた「クイズ」は、「あなたがプライベートで楽しんだマンガを同じ位楽しんでいる人は実際にどれ位居るのでしょう? またその人達と御友達になってくれたら作者はどれ位嬉しいと思いますか? 一人でも増えてくれたら作者は本当に幸せになれるでしょうか?」

次は作者さん。「原作、絵コンテ、レイアウト、作画。それぞれに作業上の役割は在ると思われますが、「制作上の意思を表明するに当り、制作の動機が会見等行わずとも読者に伝わらないのは失礼に当る」と思われますか? また、読者や編集人から学ぶ事を制作に反映させる時、「マンガ雑誌の創刊の動機」はどの様に育まれて行くべきだと思われますか? もう一つだけ、「御自身が読みたいマンガが世に溢れていた時、御自身の意思表明のポジショニングは社会的尺度で模索すべきだ」と思われますか?

いよいよ編集人様の出番です。現在のマンガ雑誌に最も欠如している「創刊当時より育まれ続けて居る研ぎ澄まされた読者に対しての牽引力」を根絶やし、或いは甘い蜜を吸い続ける事で身を成り立たせ「優等生」足りうる至福の刻を御満悦する事は御所望なされますか? また生涯「マンガ」と言う「暇つぶし」の方法に何ら関心を持つ事も無く、聴覚からも伝え聞く事の無い方々は今後も増加の一途を辿るものかと思われますが、この様な現状はどの様な尺度から、産まれ得るべくして後を絶たないのでしょうか?

「ブーム作品のラッシュ攻め」の付けが回って来たと言ってしまえばそれ迄ですが、夕方の駅の売店にマンガ雑誌が山積みになっている光景を世代を問わず憂う事の出来る世の中にして行けたなら、少なくとも皆様の意識はスポーツ紙の見出しよりは先に、右脳が手を伸ばしてくれると思いますよ。

御参考迄に「社団法人日本雑誌協会」のWEBサイトです。
各誌の発行部数・読者層等、様々なデータが記載されています。
< http://www.j-magazine.or.jp/ >

【さぎ・よしかつ】sagi@gol.com
DIGITAL CREATOR 1997年度[第一回文化庁メディア芸術祭]デジタルアート
[ノンインタラクティブ]部門優秀賞受賞。個人制作による唯一の静止画作品
でもありました。
< http://plaza.bunka.go.jp/festival/1997/degital_none/000038/ >

ASIAGRAPHをサポートして頂いて居ります、ロフトワーク様のサイトです。
< http://www.loftwork.com/user/2492/portfolio/ >

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寄生獣―完全版 (1)
岩明 均
講談社 2003-01
おすすめ平均 star
star未だに全巻持っている漫画
star最高。
star人間の取り柄
star大傑作
starホラーなのに怖くない! ふしぎ!!

寄生獣―完全版 (2) 寄生獣―完全版 (3) (アフタヌーンKCDX (1680)) 寄生獣―完全版 (4) 寄生獣―完全版 (5) 寄生獣―完全版 (6)

by G-Tools , 2008/04/01