デジクリトーク/アナタが望めば降臨する漫画『MANDALA』 鷺義勝

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MANDALA Vol.2 (2008) (2) (講談社MOOK)どんな方にも、読むべき刻に発刊されていた書籍というものが在るのではないでしょうか? 残念な事に、社会、経済、文化といった様々な影響によって気付かれる事も無く埋もれてしまう良書も在るのでしょうが、実際には発刊されている書数は言われている程、減少している事は無い様に私は思います。ただ、「MANGA」と読者の向き合い方が、時代と共に育まれ急速に土壌が形成されている最近の状況に、これまでの既視感覚が通用しにくくなっていると言う事は出版側・読者側共に良くも悪くも有るのではないでしょうか。またこうした変容によって「MANGA」が解消してくれる日常の眼の肥やしを果たしてくれる書籍に、私は久しぶりに出会う事が出来たので是非皆様にも御紹介致したいと思います。それは、講談社「モーニング」特別編集『MANDALA』(マンダラ)です。


世界八カ国の作家陣、290ページオールカラーといった体裁も然る事ながら、ここに描かれている「宇宙」は、正に読み繰り返す事で読者の創造空間を無限に解き放つ非常に希有な「核」だと申し上げる事が出来ると想います。「美麗革命」と銘打たれた第二号の発刊の意図も作品のフルカラー化に留まらず、それぞれの作品に作者が投げかけた描写の動機が、これ程迄に混沌と且つ強固に陣を成す「MANGA」に事勿れ主義な姿勢も在るが故、不勉強な私は嘗て出会った事が有りませんでした。各作品を楽しむ順序を数度に渉り変えている内に、書籍と向き合う感覚から何故か次第に食事を楽しんでいる様な感覚に、体が打ち震えている自分に気付く様にも成りました。映画、音楽、アニメ、ゲーム、はたまた旅行等、様々な「快楽の奇跡」を辿らせてくれた『MANDALA』。

では個々の作品に付きまして「こんな絡み方では如何でしょう?」といった視点から、お話してみたいと思います。まず今号の表紙として「MANGA」の心象空間から「物語」を起動させ、色調によって独自の哲学性をも訴え得ている中国出身の作家、BENJAMIN氏。描き下ろし短編作品「救世主」では所謂カラーノベルズ的に成りがちな表現感を、漫画ならではの多次元性を自在に描写する事で、制作を目的化する事無く「一つの作品」として完成させる段階に到達している様に感じました。今後が非常に楽しみな作家です。

続いて、当誌の造本上の特徴でもある、表4側から左開きする事で楽しむ、2作品を御紹介致しましょう。イタリア出身の作家、DE LUCA氏の「ピックマンのモデル」。この作品は数作ある絵画調の当誌の作品の中でも、特にストーリー観を繊細な作画による空間表現によって、際立った魅力を引き立たせています。作者はこの作品の土台として、思春期の頃より敬愛している小説家の作品をオマージュとして使用しており、その事からも作家としての姿勢が筆致より伝わって来ます。そして感動は更に深淵へと向かうのです。

ドイツ出身の作家、SCHULTHEISS氏の「河をゆく女」。作品を楽しんでいる内にこのタイトルが、主人公の「魂の渇望感」が如何なるものなのか、読者の探究心を鷲掴みにします。色感と線質が織り成す豊かな心象描写が何と言っても魅力的なこの作家を、暫くは追い続けたくなりました。

3作品紹介させて頂きましたが、残る12作品の中から個人的にこの『MANDALA』誌を今後も購読したくなった然るべき動機を産むに至ったと思われる2作品のみをあえて御紹介させて頂く事で、不透明な部分は皆様が必ず御持ちになっている「審楽眼」を発動され、当誌と接触されます事を切に願います。

御一人目は日本出身の作家、王欣太氏の「三界のスサ」。作画上の粗密感と物語が展開される「間」の取り方に、ここまで独自性を追求されている様な傾向の作品に魅力を持たれる事が日本の漫画界に望まれる事は、これまで如何程の頻度で在ったでしょうか。この作品はキャラクター性や風景観にも、同様の説得力を垣間見る事が出来ました。言ってみれば「世界観の創画」に囚われる事無く「MANGA」の魅力を追求なされている様な表現観の姿勢に強く打たれる作品だった様に想います。是非次回は、全く異なった観念を表現の動機に立脚された作品を、楽しみに待たせて下さい。

遂に最後の作品となりました。フランスの作家、SERA氏の「Bar」。この作品より作画をフルデジタル化されたとの事なのですが、物語が産み出される発端を描写する然るべき方法として自ずと導入されるに至った経緯が、強い説得力を通じて読者に魅力を与えている様に感じ、俯瞰的な視野から完成度の高さを追求されている点にこれまで無かった読後感を深く味わう事が出来ました。「日常上の危機感」といった恒に我々の存在の傍らに憮然として横たわり得る、自我の孤立、訪れ得ぬ未知、意思への謀反、見返り無き変容、こうした問題を「MANGA」によって解決する事が作家の使命であり、希望ある指針の役割足り得る唯一無二の方法論として駆使し、凡ゆる「尺度」を統合させる事で、「ヒト」という「有象無象の意図」に決着を着ける為に『MANDALA』と言う「MANGA」が降臨した様に、私には映りました。

早速第一号も入手せずには居られません!
頑張って下さい、微弱ながら応援致します!

【さぎ・よしかつ】sagi@gol.com
DIGITAL CREATOR
1997年度[第一回文化庁メディア芸術祭]デジタルアート[ノンインタラクテ
ィブ]部門優秀賞受賞。個人制作による唯一の静止画作品でもありました。
< http://plaza.bunka.go.jp/festival/1997/degital_none/000038/ >
ASIAGRAPHをサポートして頂いて居ります、ロフトワーク様のサイトです。
< ハhttp://www.loftwork.com/user/2492/portfolio/ >

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MANDALA Vol.2 (2008) (2) (講談社MOOK)
講談社 2008-03
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by G-Tools , 2008/04/08