グラフィック薄氷大魔王[132] アニメ制作中に気がついたいろいろ(前編)

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3月の3週間を費やして、仕事で30秒の3DCGアニメーションを作った。具体的な内容については書きませんが、自らの体力気力技術力の限界に挑戦な仕事をやると、いろんなことに気がつく。あらかじめ気がついていれば、作業時間を大幅に短縮できたに違いない。制作中の気分も含めて記録しておきたいので、今回と次回の二回に分けてちょっと書きます。


●FBX形式

最近モデリングに使っているのはほとんどmodoだけ。最初の粗いポリゴンモデルの原型を作成するのにZBrushを使うこともあるけど、ポリゴン、UV編集、テクスチャペイントまでの全工程にmodoを使用する。実は、3年前にアニメーションを始めた頃から3ds Maxに読み込むためのキャラクターは、すでにほとんどmodoで作成していた。

modoはLIGHTWAVE 3Dとの親和性は高いのだが、3ds MaxへはOBJなどの汎用形式で書き出す必要がある。面倒なのはキャラクターの表情など(アエイオウの口、しかめっ面、笑顔、眉の上げ下げなどなど……)を変えたモーフターゲットとして使うモデルの書き出し&読み込み。

modoはモーフターゲットを「モーフマップ」としてモデル内部に保持しておけるのだが、3ds Maxではモーフターゲット用モデルを必要な数だけ読み込んで設定しなければならない。多いときには30個以上の表情を用意して、一つずつOBJ形式で書き出す。一個のキャラクターの表情を変えられるようにセットアップするのに、丸一日かかったりする。

で、今回の発見。っていうか、3DCGやってるプロなら普通だれでも知ってることなんだろうけど、FBX形式というのがある。様々な3DCGアプリケーション間をやりとりできる便利なファイル形式なのは知っていたのだが、以前試したらうまくいかず、「楽々ファイルのやりとりなんて、そんなことができりゃ誰も苦労しないよ」とあきらめていた。

たまたま別の用事でFBX形式で読み込んだところ、modoのモーフマップが3ds Maxのモーフモディファイヤに変換されて、そのまま読み込まれているのを見つけてビックリ!! ありゃ〜っ、そんなことできちゃうんだ! 多少の調整は必要なものの、質感設定やライト・カメラなども読み込める。おまけに、MAYAなどとキャラクターアニメーションの動きそのものまでやりとりできるらしい。あー、これがわかっていたら、これまでのアニメ制作日数が合わせて2週間くらい短くなっただろうな〜。

●3ds Maxのユーザーパス

10年以上使ってりゃ「Windowsは不慣れで」って言い訳など通用しないのだが、アプリからドキュメントや設定を読み込むとき、どのフォルダが最初に開くかがマチマチで、これもWindowsの不便のひとつと思っていた(OSXでもマチマチなんだけど、目的のフォルダへアクセスしやすいユーザーインターフェイスなのとエイリアス駆使のおかげで、不便はそれほど感じない)。3ds Maxもいろんなファイルを読み込む機会が多いし、Vistaでは(マイ)ドキュメントフォルダさえ開くのが面倒だったのだが……。

今回の発見。ふと3ds Maxのカスタマイズメニューで見つけた「ユーザーパスを設定」。

この機能を使ってプロジェクトフォルダを設定してみたところ、モデルをインポートしようとするとimportフォルダが開く。シーンを合成しようとすればsceansフォルダが、テクスチャの読み込みにはimagesフォルダが、書き出そうとすればexportフォルダが開いてくれる。いちいちフォルダを探し回ることなく、一発で何でも開いてくれる。すげー便利!

あ〜あ、今まで目的のファイルが入ったフォルダにたどり着くだけでも、どれだけ面倒で苦痛だったことか。Windowsのせいにしててごめん〜。

●グローバルイルミネーションでアニメーション

従来、3ds Maxでアニメーションを作るときは「既定値のスキャンラインレンダリング」(デフォルトのレンダラー。間接光やラジオシティは無効)でやっていた。VGAサイズ程度なら1フレームが数十秒くらい。今回はCore2Quadマシンがあることだし、mental rayレンダラーを使って間接光バリバリのグローバルイルミネーションでやってやろうと。周囲からの光や回り込んだ間接光を有効にすると、現実世界のように存在感のある映像になるのだ。

キャラクターが床に映るため、時間がかかるレイトレースも有効にしなければならない。ファイナルギャザー(間接光をコントロールする機能)の標準設定では1フレームのレンダリングに20〜30分くらいかかってしまう。ノイズフィルタを最低にするなど設定を下げても1フレームに5〜10分くらいかかる。それでも一応きれいに見えたので、16時間もかかって6秒のカットをレンダリング。再生してみたところ、静止画ではわからなかったボッコボコの斑点状ノイズの嵐。こんなの汚すぎて使えない。間接光を処理するポイントの数が少なすぎるのだ。最高値にすればノイズは見えなくなるんだろうけど、たぶん1フレームに1時間以上かかっちゃう。

結局、今まで通り「既定値のスキャンラインレンダリング」でやることに。う〜ん、最近は当然のように間接光を効かせたCGアニメをよく目にするのだが、よくあんな時間のかかるレンダリングをやるもんだ。ネットワークレンダリング用に速いマシンを10台くらい用意しなきゃとても無理だ〜。

……次回は技術じゃない話と、効果音・音楽関係の話。

【吉井 宏/イラストレーター】 hiroshi@yoshii.com

1か月間の禁・手がきブログ期間を経て、復活。最初に同時期に入った人たちはいなくなっちゃった。でも残ってる人たちや新しく知り合った人たちと細々とやってます。最近ハマってるのは、コメント欄にどんどん続けてラクガキする「マラソン」。消したり修正が面倒なので、基本的に一発描き瞬発力の世界。ずっと前から(小学生時代から!)出まかせのラクガキを次々描ける人にあこがれていたのだが、最近ちょっとできるようになってきた。2年くらい前までは「即興演奏みたいに手が動くままラクガキ」って全然できなかったんです。
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北京五輪。今のところ参加自体をボイコットする国はあんまりなさそうだけど、中華人民共和国建国以来の中国自身のボイコット史がすごい。1952年のヘルシンキ大会に初参加以降、14回中7回もボイコットしているのだ。56〜76年は台湾問題を理由に6回連続ボイコット。こりゃ、メンツをつぶされるとか他の国のボイコットをあーだこーだ言える立場じゃないな。僕は日本を含めてまともな国はボイコットあるいは何らかの手段で主張すべきだと思います。選手がかわいそうってレベルの話じゃないかも。政治とスポーツを絡めるなって、オリンピックは9割方商売ですやん。また、チベット問題の陰に隠れてダルフール問題がかすみがちだけど、こちらも桁違いに大きい。いや、ホントはこういった話は連載で書きたくないんだけど、「あのときおまえは何も主張しなかったくせに」と言われるのはヤダ。16000名読者様に向け、ひっそりとですが書いておきます。チベットの次は台湾。その次は……。アメリカはおそらく介入してこない。
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