わが逃走[20]自分で書いた文章に触発される。の巻/齋藤 浩

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そんなつもりはなかったのに、すっかりハマってしまいました。今まさに、私の中でランボルギーニ・カウンタックがマイブームです。

そうなのです。前回スーパーカーブームの思い出を書いてみたところ、改めてカウンタックの美しさに惚れてしまい、カウンタックの本数冊とカウンタックのプラモデル2個、そしてカウンタックのDVDを買ってしまいました。

私はもともといろんなものに影響されやすい方だと自覚していたものの、まさか自分で書いた文にまで影響を受けてしまうとはびっくりだー。

ノーギャラで書いてるこんな文章でも、少なくとも経済効果10,000円程度にはなってる訳だ。すごいですね。そういった訳で、今週もランボルギーニでいきます。


1◎俺様は、ランボルギーニ社の成り立ちが好きだー。

そもそもスーパーカーを作るきっかけになった出来事というのが、イイ。伝説によれば、当時農業用トラクターなどをメインに生産していたランボルギーニの社長はフェラーリが大好きで、当然のごとくフェラーリオーナーだったのだが、自社のトラクターに乗ってフェラーリの社長に会いに行ったところ、門前払いにあってしまった。

で、頭に来た社長は「オレがもっとすげえ車作ってやるわい」と意気込み、あのようなスーパーカーを生産するメーカーになったという。エンブレムも跳ね馬に対して牛! いいねえ。いけ好かないお貴族様、フェラーリに対する意地みたいなのが好きだ。

こうして「永遠のライバル」といった図式が成り立った訳だが、あくまでもライバルだと思っているのはランボルギーニ側であり、フェラーリははなっから相手にしていないという。そのへんの事情も面白い。

2◎荒っぽい感じが好きだー。

エレガントな曲線で構成されるフェラーリやポルシェに対して、直線的なラインのランボルギーニ・カウンタック!! リトラクタブル式ヘッドライトも目立つし、ドアが跳ね上がるように開いちゃうんだから、もう、目立つー!!

なにもそこまでしなくても……と言いたくなるくらい、うさん臭いところが好きだー。ハッタリかましまくってる!!

勝手な解釈ですが、そのハッタリ感というのが1920年頃に一世を風靡した美術様式“未来派”に通じるような気がするのです。当時マリネッティらが思い描いたような高層建築が立ち並ぶ都市に、爆音を轟かせながら走る黄色いカウンタック!! 想像するだけで鼻息がもれます。

3◎流線型が好きだー。

私はいろんなマニアックなことを広く浅くかじっているのですが、自称流線型好きでもあります。

私は流線型をふたつに分類しています。「ホントっぽい系」と「ムリヤリ系」。前者は、64型ポルシェやドイツの05型蒸気機関車など、空気抵抗を研究してます! と語りかけてくるような曲線・曲面で構成されたプロダクト。実際速く走ったもの達。

後者は、速く走ることよりも“速く走りそうな感じ”を優先させた、1959年型キャデラック・エルドラドや日本の蒸気機関車C55型など。曲面や曲線を機能としてではなく装飾として使っているプロダクト。

どっちが好きかといえば、どっちも好きなんですよ。時代背景やら、当時の人達が思い描いた未来像なんかが見えてくるので。

で、カウンタックだ。カウンタックは実際速い。時速300キロ! あのスタイリングは速く走るための技術を研究しつくした結果の機能美の極致か、といえばそうなんだろうが、味付けがやや不真面目というかケレン味があるというか、そのあたりが良いのです。

「ホントっぽい系」で突き進んだ後、ほどよく「ムリヤリ系」の味付けを加えて俗っぽくしている。絶妙なバランスだと思う。

エッジの効いた直線と平面の構成は空気抵抗を抑えるというより、空気を切り裂く感じだ。実に攻撃的。これがもし軍用車両のデザインだったらイヤミになるんだろうけど、あくまでも乗用車のデザインなのでアリなのだ。

4◎所有したいか、否か。

で、思い出した。以前ウチの前に黄色いカウンタックが違法駐車していて、バイクを出せずに困っていたら、警察が来て「そこの黄色い乗用車、すぐに移動しなさい」とか言われていたのだ。わはは! 乗用車だってさ。ざまーみろって感じでした。オレはカウンタックは大好きだが、乗ってる奴は嫌いなのだ。

そんなこんなで、少年の頃の夢。オヤジの居酒屋における同世代トーク。これらに必ず出て来る話題が、『カウンタックを所有したいか』。

死ぬまでに一度でいい、あの跳ね上げ式のドアを開けてみたい。という願望はありますが、オレは全く所有したくないです。分不相応な車です。そもそも日本人が日本国内で運転することなんか設計思想にはまるでない。そんな車には乗れんよ。

フェラーリも同様。あれはヨーロッパのお貴族様が乗る車であって、極東の島国で黄色いお猿さんが乗るものではない。って絶対フェラーリ乗ってる奴らは思ってるに違いない。むかつくー。大金持ちになっても絶対買ってやるもんか!

子供の心に戻って、子供の頃に好きだった車を見るのは本当に幸せだ。でも、特に最近のスーパーカーってなんか純粋に車としての魅力というよりも、金銭的価値ばかりが前面に出ているような気がするのです。私の心が荒んでしまったのでしょうか。

話はそれるが、あえて乗りたいスーパーカーを挙げるとすれば、私はロータス!と答えます。なんといっても本国仕様は右ハンドルです。私は日本国内における左ハンドル信仰ってのが全く理解できません。危険ですよ、あれは。その点ロータスは、少なくとも右ハンドルの国で使われるってことを設計者が念頭においていると思うのだ。そのへんがまずイイ。

そして、なんといっても小さくて軽いこと。重たいボディを動かすためにバカでかいエンジンを積む『足す思想』に対して、『そぎ落とす思想』により設計されている。エンジンが小さくても車重を軽くすれば勝てるじゃん! といった考えに基づいて、ライトウェイト・スポーツカーなるジャンルを確立してしまったところがエライ。

エラン、ヨーロッパ、エリーゼ。どれも小さく美しい(どーでもいいけどロータスの車名はみんなEで始まりますね。なんででしょ?)。例えるならツイッギーみたいな感じ?

そんな中で、俺様がこれぞ! と思うロータス車はエラン、特に二代目エラン(Elan SE)がスゲー好きなんですよ。FFでいすゞのエンジン積んでて、なんて理由から超不人気車と言われているけど、純粋に美しい車だと思う。もちろん乗ったことないからエラそうなことは言えないのだが。

そのうち大金持ちになって、車を何台も所有できるようになったらポーンと買っちまいましょう。色は黄色かなー。妄想はいつまでも続く。

5◎走ってるカウンタックを運転中に見たときの話。

学生のときだったか。学校から重たい荷物を引き上げるんでカローラIIに乗って青梅街道を走っていたところ、黄色いカウンタックとすれ違ったのだ。当時はバブル期にさしかかっていたとはいえ、まだ乗用車といえば白いセダンという時代。おまんじゅうのような車とすれ違い続ける中、突然スライスチーズが現れたので仰天したのを覚えている。

「薄い!」
思わず声に出してしまった19歳のオレ。その時の様子を文字で表現してみよう。

饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 スライスチーズ 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 饅頭 …

それまで、カウンタックの実車はスーパーカーショーでしか見たことがなかったので、ホンモノが普通の道を走っているという事実を目の当たりにした私は、まさに「クンタッチ!」でした。

6◎ネーミングのこと。

カウンタックとは「びっくりしたなぁもう!」を意味するイタリア語、クンタッチを英語読みしたものなのだそうです。

我々は普通にゴールデンゲートブリッジを直訳して金門橋とか言ってるので、この車もランボルギーニ・ビックリシタナァモウ! とか言ってみるのも乙なものかもしれません。カウンタックはスタイリングだけでなく、ネーミングからして飛ばしてたんですね。そのへんのうさん臭さも好きだー。

そういえば80年代の終わり、東京モーターショーにて、富士重工(?)かどっかが発表したスポーツカーに『キャスピタ』なんていう名前がついていた。

ちなみにキャスピタという言葉も、イタリア語で「あー驚いた」という意味だという。結局この車は市販化されることなくお蔵入りしてしまったのだが、そもそもネーミング自体が二番煎じくさいんだから、ポシャっても仕方ないじゃん。なんて思う。名前って大切です。

てな感じで、今週も結局カウンタックになっちゃった。次回は別のネタにしますね。前回の感想を送ってくださった皆様、ありがとうございました。スーパーカー少年の夢は不滅です。ではまた〜。

【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。
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