グラフィック薄氷大魔王[135]新しい電子楽器「TENORI-ON」/吉井 宏

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先日、あるセミナーの懇親会で、目の前をあのTENORI-ONが通り過ぎた! 開発したヤマハの人が来てたのでした。

< http://www.yamaha.co.jp/design/tenori-on/index.html >
< http://www.yamaha.co.jp/tenori-on/ >

TENORI-ONは、メディアアーティストの岩井俊雄氏が考案した新しい電子楽器。10年くらい前、に坂本龍一氏とのコラボレーションコンサートを見に行ったことがある。そのときにいくつか演奏された中で、碁盤のような板に光るポイントを置いていき、ポイントが音を奏で、次第に複雑な音楽になっていく作品があった。それがTENORI-ONの原型だそうだ。


最近、コルグのKAOSSILATORが面白そうとか話してたんだけど、僕自身は本格的なサンプラーのほうが興味あった(注1)。先日、TENORI-ONの発表のビデオをWebで見て、こりゃ意外とおもしろいなと。以前テレビで紹介されてたのは、のんびりピコピコした音のデモばかりだったのでそういう楽器かと思ってたけど、かなり激しいクラブ系みたいなテクノもバッチリできそう。っていうか、そういう使い方のほうがメインっぽい。atom heartなど様々なプロミュージシャンのデモ演奏があるし、YouTubeなどにもそういった動画がアップされている。「その場でテクノを作りながら演奏」ができそう。

ヤマハのサイトに詳しい説明があるけど、16のトラックがあり、それぞれに16パターンを記憶しておける。音色プリセットは253個(ノーマル音色:239、ドラム音色:14キット)、サンプラーとしても256個の音をSDカードで外部から取り込める(と聞いたけど、サイトによれば3音色?)。

筐体はマグネシウムの鋳物で、近くで見ると凄みがある(ヤマハ史上最大のマグネシウム鋳造だそう)。LED部分のボタンはエアキャップのプチプチをイメージした、「触ってキモチイイ感じ」にしたそうだ。歴史に残る楽器を作ろうとのことで、50万円の電子ピアノ内蔵音源チップを採用するなどコスト度外視で作ってるとのこと。

僕もいじらせてもらいました。操作は左右のボタンの意味だけ教えてもらえばとても簡単。いろんなモードがあって楽しめる。音も迫力がある。本格的にいじって、慣れれば演奏者それぞれの得意ワザみたいのができるだろうから、何人かで連続して演奏したら楽しいだろうなあ。

5月12日発売開始とのこと。イギリスでは先行発売されてるそうだけど、すごい人気で2か月待ちらしい。↓のリンクはロンドンでの発表イベントの様子。他にベルリンや東京でのラウンチイベントのムービーもある。ビョークが5台買ってステージで使ってるとの話も。
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定番のパフォーマンス用楽器になるかも。手で持つよりスタンドに取り付けてのパフォーマンスがカッコイイと思った。正直言って、よく知る前はのんきな音が出るメディアアート作品の製品化って印象だったけど、これすごいわ。気合い入ってます。ウォークマンみたいに、日本が生み出した新しいジャンルの製品の一つになるかもしれない。新しい楽器の誕生にぜひ立ち会いたい。

12日午前11時にWebで発売開始とのことで、時計を見つつ待ちかまえて「発売中」に切り替わった瞬間「カートに入れる」ボタンをポチッとな! アンケートに答えて購入手続きへ入ったものの、そこからぜんぜん進まない。読み込み中のまま止まったり「応答がありません」と出たり。

そのまま15時くらいまで何度も読み込みなおしたりしたけどダメ。届け先入力画面まで行くこともあったけど、そこから進まない。夕方近くになって空いてきたのか多少は動くようになったけど、それまでに連打した分がダブって何個分も注文になってるため、それをクリアしたりまたカートに入れたり動かなくなったりを繰り返すこと十何回。結局、17時頃にあきらめた。

その後、夜になって「アクセス多数により、アクセス・購入手続きができない状況がつづき、お客様に多大なるご不便・ご迷惑をおかけしましたことお詫び申し上げます。この時点をもちまして、販売受付を一時中断させていただきます。」だってさ。おまけに、さきほど「初日をもちまして、初回分を完売いたしました。」だと。せっかくの購入意欲っていうか勢いが著しく低下。しくじりましたね、ヤマハさん。

(注1)
KAOSSILATORのYouTubeを観てるうちにたどり着いた、コルグのELECTRIBE・SXという赤いマシン。これで即興(に見える)でテクノを演奏してるのを見て、すげ〜カッチョイイなあと。それで火がついて、他のAKAIやローランドのサンプラー製品やYouTubeのムービーをたくさん観た。それで、長年の謎が解けた。

テクノ好きではあったけど、ヒップホップ等を含めてああいったダンストラックをどうやって作ってるか謎だった。もちろんDTMや普通のレコーディングでも作ってるにちがいないけど、僕が好きな系統の超シンプルなミニマルテクノ等は、本格的なレコーディングで作ってるとは思えないことが多かった。サンプラーを操作してその場で鳴らしてるのなら、非常に納得できるものがあったのだ。本格的サンプラーでパッドを叩いて演奏ってのをやってみたくなった。

さらに、大昔のローランドTR-909というマシンをライブで鳴らしている動画を発見。スタートしてからリズムやベースを打ち込んだり、ツマミをグリグリひねったり、マシン的には非常に原始的なのだが、ライブ感バリバリのプリミティブなテクノが生み出される。ハウスやデトロイトテクノはこうやって始まったんだ〜って、今さらながら実感。

【吉井 宏/イラストレーター】 hiroshi@yoshii.com

その懇親会の本編のセミナーの最中、メモパッドにボールペンでラクガキしてて気がついた。こういうときに描くラクガキってちゃんとおもしろいものが描けて楽しいのに、普段はノートに描くのが苦手ってどういうこと? ノートの善し悪しやペンの持ち方もあるけど、気分の問題も大きいかも。帰ってからセミナー中の気分を思い出しながらお蔵入り中のモールスキンなどのノートを引っ張り出して描いてみると、割と気分良く描ける。どういうこと? またまたノートとペンの研究が始まってしまったのであった……。

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