電子浮世絵版画家の東西見聞録[37]仁寺洞はアートの街
── HAL_ ──

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●インサアートセンターを中心に

韓国ソウルでアートを楽しむためには、様々な方法があります。以前お話ししたように、大きな美術館に行くのも良いでしょう。ツアーバスに乗るのも良いでしょう。でも、手軽に時間の空いた時にちょこっと行って楽しめるのは、なんと言っても仁寺洞の街で、私は大好きな街です。

地下鉄3号線アングッ(安国)駅から、仁寺洞のメインストリートに入って行くことが多いのですが、今回で迎えてくれたのが大きな金属製のロボットくん。ちょっと古びた感じがノスタルジックで、とても愛嬌のある顔立ちをしていて、胸にハングルで何か文字が書かれています。お店の宣伝をしているようなのですが「ラウン コンデンシン」なんのことでしょ??


その他の店々も皆その風情に凝っていて、店構えを見て歩いているだけでも楽しむことが出来ます。なかには「これっていったい何の店?」と考えてしまう所もあり、小さなギャラリーも数えると20以上も。あとで調べてみたら、裏路地や建物の上の方、二階三階にある目立たないギャラリーも多く、50件以上は数えられるそうです。でも、私がお気に入りのメインストリートにあった大きなギャラリーは閉鎖され、建物まで新しくなり、土産物屋になっていたのはかなり寂しい。

さて、今回はインサアートセンターを中心に見てきました。このインサアートセンターは、メインストリートを進むと右側にある黒い建物で、一階から六階までのギャラリー集合型の建物です。とてもモダンで「かっこいい」建物です。

今回、一階には石の抽象彫刻が展示されて、その内の半数が予約済みになっていました。彫刻は、7〜8センチ厚のスライスされた色の違う石を積み重ね積層にして、さらに磨き込まれた表面とラフに削られた表面とがコントラストを成し立ちすくんでいる様子は、そのものは暖かさに満ちているのに、回りにクールな空間を生み出し、都市の中の現代人そのものを表しているようで素敵でした。ちょっと欲しいかも。って、何処に置くんだよ!

二階にあったのが厚塗りの顔料で描かれ、ちょっとコミカルな絵を繰り返し使い独特の世界観を作り出している作品で、これは自分の制作に役立てようとこっそり写真を撮ってきてしまいました。ベースには白、黄、緑、など明快な色のうち、一色が強く前面に出され主張しているのですが、顔料の素材自体にあるラフな質感が凹凸面を作り表情を与えています。

画面全体は黒い色により7〜8センチの小さなブロック分けされ、その一面に犬のようなキャラクターが単色で描かれていて、それが上下左右に繰り返される作品です。軽いユーモアとブラックな側面が同時に描かれ、額装もボックス状のもので興味深い作品でした。

絵や彫刻だけではなく、伝統的な茶器の展示や工芸品的な味わいのある作品も展示され、このビルだけを廻ってもかなり時間を費やしてしまします。そのため四階にはテラスが用意されていて、ちょっとした休憩をとることが出来るようになっています。このテラスから下を見下ろすと、メインストリートを歩く人々の動きが、まるでビジュアルアートのように見えてくるから不思議です。

・お出迎えのロボットくん


・「スギ3コンカン」行書だと詠むことも出来ない。いったいなんの店かな?


・インサアートセンターのテラス


・仁寺洞(インサドン)のアート文化空間「サムジキル」


●明日は個展「Jazz香る・版画展」のオープニング

いよいよ「Jazz香る・版画展」がはじまります。場所は清澄白河から徒歩5分の「SAKuRA GALLERY」です。このギャラリーは、昨年オープンしたばかりのかけ出しギャラリーですが、ギャラリーとしての姿勢にこだわり抜いたとても良い所です。

クリアーな強化ガラスの扉を開けギャラリーに入ると、まず一面真っ白な真新しい壁が目にしみます。今まで国内ではチープな壁紙を貼った所ばかりを目にしてきましたが、絵を掛ける大切な壁にこだわっています。ギャラリーの絵を掛ける壁は、個性があってはだめなのです。お客様が絵を気に入って下さる壁は、ご自分の家の壁を想像できる癖のない壁でなくてはなりません。

多くのギャラリーにあるクロス張りの壁は、汚れが目立たなくて良いという、レンタルギャラリーの姿勢です。壁面のピクチャーレール等もってのほかです。これも絵を掛けるのには都合が良く、壁が汚れることもない、レンタルスペースの安直な姿勢だとしか言いようがありません。ピクチャーレールを知らない人もいると思いますので少し説明します。

絵を掛けるには、壁になにかしらフックのような物が必要です。絵を掛ける一番簡単な方法は壁に釘を打ち付け、その釘に額を掛けていきます。ただし、固定的な物なら構わないでしょうが、ギャラリーに掛かる額は展示ごとにサイズがバラバラです。そのため、展示する度に壁には無数の穴があいてしまうことになります。

それを避けるために、天井付近にカーテンレールのような物を付け、そのレールからフック付きの金属のワイヤーを垂らします。このフックは、上下に自由がきくので、カーテンレールと合わせて上下左右自由な場所にフックを付けられるという寸法です。これは非常に便利なようですが、この方法の欠点は絵の上に無骨なワイヤーが一本出てしまうということです。たまに、ワイヤーが下にまで垂れている額もあります。これが惨めでみっともないのです。

そうです。真っ白な無癖な壁は展示毎に穴が空いてしまうのです。手がつけば汚れるのです。そのため、毎回展示会を行うたびに、穴は埋め、埋めた痕を隠すため全てを塗り替えなくてはならないのです。これは安直な経営を行うギャラリーでは、手間がかかってしかたがありません。レンタルスペースでは、そんな修復の時間さえも惜しんで貸してしまうことになります。

SAKuRA GALLERYでは、その手間を惜しまず毎回壁を塗り替えています。だから、目にしみるような白さが保てるのです。そう言えば、むかし行ったことのあるロサンゼルスやニューヨークのギャラリー、前回廻ったソウルのギャラリーでもピクチャーレール等、見たことがありませんでした。もちろん、経営が楽でないギャラリーは毎回塗り替える手間を惜しんでいるところもありましたが、それでもワイヤーで吊すという方法は見たことがありません。もしかして、日本だけの仕様なのでしょうか?

「Jazz香る・版画展」
< http://hal-i.com/ex/jazzkaoru.html
>
会期:5月27日(火)〜6月8日(日)11:00〜18:00 最終日16時
オープニングパーティー5月27日(火)19:00〜21:00
会場:SAKuRA GALLERY(東京都江東区常盤2-10-10 TEL/FAX:03-3642-5590
< http://kiyosumi-gallery.sakura.ne.jp
>


【HAL_】横浜在住アーティスト hal_i@mac.com
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>
Web < http://lohasfood.exblog.jp/
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>
Sound Drawing グループ「ZIetZ」の公式サイト
< http://zietz.hal-i.com/
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