装飾山イバラ道[14]パリ旅行記(4)グルメ編 牡蠣とムール貝と/武田瑛夢

投稿:  著者:  読了時間:6分(本文:約2,700文字)


旅行はおいしいものも楽しみのひとつ。行ったのが3月で、チケットが安い以外に良いところがなさそうなことを書いたけれど、まだ寒いうちに行きたかった理由のひとつに、牡蠣の季節ってのがある。Rがつく月のうちに生牡蠣を食べたい。パリで牡蠣というのはあまりピンと来ないかもしれないけれど、パリの街角には海の幸をずらりと並べたレストランがいくつもあって、生の貝類が豊富なのだ。

しかし、何もあてもなく良いお店を選ぶなんて自信がないので、事前に調べておいた。パリの食事ガイドとして良さそうなものを探しているときに、「パリでひとりごはん」というカジュアルな感じの本があったので買った。そんなに気取らずに入れそうなお店がたくさん載っていて、おしゃれな雰囲気の本だ。



・「パリでひとりごはん とっておきのおいしいお店72軒」(単行本)
カイエ・ド・パリ編集部(著)
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797341890/dgcrcom-22/ >

本の中で紹介されている牡蠣のお店の「Huitrerie Regis ユイトルリーレジ」というのが目に入って、フセンを立てた。私たちは夫婦で二人とも牡蠣好きなので、よくオイスターバーにも行く。食べ方は、やっぱりレモンをしぼった生牡蠣が最高。

旅行中は雑誌のレストランにいろいろ目移りしてしまって、結局このお店に行ったのは旅行の最後のディナーになった。そこは小さいけれど、生牡蠣を必死で開けるおじさんたちの活気があって気持ちの良い店だった。白を基調にした店内は清潔感があってモダン。店に入ったとたんに、海〜って感じの磯の香りがする。新鮮ですがすがしい方の磯の香りね。決して生臭くないのです。

生牡蠣を一人1ダースのコースに、白ワインとデザートをつけるのが一般的みたい。デザートは、その日はリンゴのタルトしかないとのことで、店に来ている人のほとんどは同じようなものを食べていた。メニューも牡蠣の産地とサイズと個数、値段といったシンプルなもの。私たちも王道の食べ方で一人12コづつにした。

牡蠣がテーブルに来た。大きなお皿に海藻と氷がたっぷり敷き詰められ、丁寧に開けられた生牡蠣がずらりと並んでいて壮観。ここではレモン、赤いソースの他にパンが添えられている。

・Regisの生牡蠣
< http://www.eimu.com/dgcol/kak.jpg >

フランス西海岸マレンヌ・オレロン地方の牡蠣だけを使ったお店で、二種類の牡蠣はどちらも新鮮。ひとつめにレモンをしぼってつるりと頂く。さわやかで甘い牡蠣の味がおいしい! ほどよい塩っけも海の味そのもの。うちのだんなさんは、旅行中はあまり食欲がないんだけれど、生牡蠣だけはするする入るようで白ワインと共にがんがん食べ進んでいた。

人は蟹を食べるときは静かになるというけれど、牡蠣もそんな感じで、どのテーブルの人も牡蠣を食べることに集中している。地元の牡蠣好きも納得のお店なんだと思う。私はまだ通ではないので、パンを食べるタイミングがいまいちわからなかったけれど、牡蠣の味には感銘を受けた。もう少し早めにこのお店に行っていれば、旅行中何回か行っていたかもしれない。

そして、Regisはそれを目指して行かないとたどり着かないようなお店だけれど、パリの街を歩いていると頻繁に目にする貝のお店がある。

「Leon レオン」というムール貝専門のレストランだ。シチューポットに入れられたムール貝のハーブ蒸しのような料理で、ベルギーから来たお店とのこと。チェーン店なのでいくつかの地下鉄の駅の表通りでみかけた。生牡蠣と違ってムール貝は一年中食べられるのもいい。

日本でムール貝というと、海の幸の漁師風スパゲッティなんかに2コくらいついてくるようなイメージ。ついてればカッコイイけれど、入ってなくても怒る人はいないという。

でも、レオンではムール貝が完全に主役だ。ここではムール貝でおなかをいっぱいにすると思っていい。ほとんどのお客が一人一鍋食べている。一皿でなく一鍋。黒い金属製のココット鍋いっぱいに、蒸されたムール貝は熱々でおいしそう。私のは海老入り。下の方にはスープが入っている。
・Leonのムール貝
< http://www.eimu.com/dgcol/mur.jpg >

ひとつめはフォークで食べて、二つ目からは最初のムール貝の殻をハサミがわりに使ってつまんで食べるんだそう。まわりのお客も両手にムール貝を持っている。やってみると殻は適度なバネが効いていて、やわらかい身をつまみ出すのにほんとにちょうどいい。まさかムール貝も、そんな用途に殻を使われるとは思っていなかったろうな。これも黙々と食べてしまうおいしさだった。旨みたっぷりのスープに、フランスパンをひたして食べてもいい。

なんだか貝ばっかり食べていたようなコラムになってしまったけれど、実際あまりフランス料理風のコースで出てくるものは食べずに過ごしていたかも。食事ももっと下調べが必要だったかと反省している。

けっこう行き当たりばったりで、食欲のないだんなさんがパリでの最後のディナーを「サッポロラーメン」にしようとしたのを、何とか阻止して生牡蠣に切り替えて良かった。胃が疲れてくると日本食が欲しくなるのもわかるけれど、あとちょっと我慢すれば日本のおいしいラーメンが食べられるじゃないの。

ただ途中で胃を休めるのも必要とつくづく思った事件もあった。今回一日だけイギリスへ列車の旅(ユーロスター)をしたのだけれど、昼に食べたフィッシュ&チップスのせいか、屋根なしの二階建てバスの寒さのせいかで、帰りの電車のディナーを食べられないほどダウンしてしまった。一日だけだったので、急いで周りすぎたのも悪かったかも。

だんなさんは、私にも何も食べられない状態があるというのが発見だったようでなぜか嬉しそうに見えた(謎)。食欲があるって幸せなことだったんだな。次回もパリ旅行記がつづきます。

【武田瑛夢/たけだえいむ】 eimu@eimu.com
GWに行った浅草では日本の昔ながらの町を堪能した。おやつ関係では満願堂の芋きんがヒット。お芋でできたきんつばです。

装飾アートの総本山WEBサイト“デコラティブマウンテン”
< http://www.eimu.com/ >

「やさしいデザイン」誰でもかんたん、レイアウト・配色・文字組
エムディエヌコーポレーション発行 インプレスコミュニケーションズ発売
< http://www.mdn.co.jp/content/view/3983/ >