グラフィック薄氷大魔王[137]タミヤプラモデルファクトリー/吉井 宏

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作業場を確保しなくちゃならない。塗料スプレーやエアブラシをベランダで吹くと、風向きによっては隣部屋を直撃する。なるべくならやりたくない。うちは角部屋なので条件がいいときには吹き放題なのだが、雨や風の日、暑い日、寒い日、夜には作業できない。また、気合いの入り具合や仕事の状態など、よほどタイミングがよくないとダメ。排気付きのスプレーブースも持ってるのだが、部屋でエアブラシするのもできるだけやめたい。

昨年の夏に50個複製したまま放ってあったフィギュア「piyora」。扱ってもらってるショップがタイペイ・トイフェスティバルに出展・販売するため、急遽仕上げることに。が、例によってベランダで作業する気がしない。いつでも安定した状態で使える作業場がほしい!



「レンタル工房」で検索してみると、横浜のららぽーとにある「玄創工房」という時間貸しの工房があった。多数の工房があるうち、「模型小工房」にはエアブラシ&コンプレッサー、ドライブース、集塵ブースなど道具完備。ただ、遠い。うちから片道一時間半くらいかかりそう。
< http://www.gensoukoubou.com/ >

また、知人が教えてくれた新しい施設「トレッサ横浜」にもそういう工房があるとのこと。「タミヤプラモデルファクトリー」。タミヤ直営ショップ内にアトリエコーナーがあり、塗装室や撮影室もあるって! ドライブースや各種道具も完備。ショップの中なら、塗料が足りなくなったり道具が必要だったら買えばいい。それは便利だ! ただ、ここも遠い。ららぽーとより近いけど、バスにも乗らなくちゃならないので、トータル移動時間は同程度。問い合わせてみたら、良さそうなので試しに行ってみることにした。
< http://www.tamiya-plamodelfactory.com/ >

大荷物をキャリーに載せて東横線綱島へ。南棟が3月末にオープンしたばかりのトレッサ横浜は、トヨタが母体の巨大ショッピングモールだけど、これについては省略。1Fにあるタミヤプラモデルファクトリーは、初の直営ショップだけあって、品揃えが充実。たぶん、プラモ、ツールからTシャツまで、タミヤブランドのほとんどがあるんじゃないかな。

受付を済ませ、アトリエに入る。かなりカッコイイ。仕切りのある広い机を使える。お客は、ママが買い物中らしい子供が数人いた程度(土日はミニ四駆関係で混雑するそうだ)。工房のマスターとして有名モデラーの長谷川氏(長谷川迷人、と呼ぶらしい)が常駐し、いろんな質問に答えてくれる。

下地のラッカーのエアブラシ作業に取りかかろうとしたところ、重大な誤算が発覚! ここはタミヤのショップなので、当然ながらタミヤ製の塗料しか売ってないのであった。つまり、タミヤの塗料とは水性アクリル系とエナメル系であって、ラッカー系の瓶入り塗料はない。ガーン!

しかたないので、新しく色を調合するのはあきらめ、持参した塗料とスプレーで作業をすることに。スプレーブースはタミヤ製なのだが吸い込み力が弱く、缶スプレーにはほとんど無力。自前のスプレーブースより明らかに吸いが弱い。マスターに聞いてみたところ、このスプレーブースはタミヤ製コンプレッサー向けに開発されたもので、缶スプレーには向かないとのこと。近々、業務用の強力なスプレーブースに交換される可能性大だそうです。一方、ドライブースは単なる小さな食器乾燥機で、つんのめりました。うちには専用のドライブースが二台あるんだぞ。

とはいえ、近所迷惑や部屋の汚れを気にせずにスプレー吹き放題というのは気分がラク。仕事もはかどる。ただ、作業中のフィギュア(底部分に穴を空け、小さな板にアルミ棒で立て、直接手で触らないようにしてある)を3〜4個ずつ持って塗装室とアトリエを往復するのがたいへんだった。50個を三度塗りするには最低でも45往復(90回のドア開閉含む)する必要があるのだ。これで腰をひどくやられてしまった。四時間ほどで疲れ切ってしまい、切り上げることに。

プレミアム会員は有料ロッカー(一か月間有効)を借りられる。試しに来てみただけで会員になるつもりはなかったけど、塗料が乾燥しきってない重いフィギュア50個を持って帰る気になれず、会員登録し、ロッカーに突っ込んで帰途に。

数日後、再びファクトリーへ。前回の反省を踏まえ、東急ハンズで数枚の端切れ板を買ってアルミ棒を差す穴をあけ、7個くらいを立ててラクに運べるようにした。両手で持てば14個を同時に運べる。しかし、ステンシル塗り分けエアブラシ作業を始めたところ、いくつも立て続けに失敗。準備と移動の大変さも相まって、全部ゴミ箱に放り込んで帰りたい衝動におそわれた。気分がダメ。三時間ほどで帰ることに。

まとめ。アトリエ部屋は落ち着いた雰囲気が良い。塗装室はエアブラシ吹き放題。各種工具はもとより、使い捨て手袋やマスクまで用意してあるのもありがたい。うまくすれば手ぶらでアトリエ入りできるロッカーも素晴らしい。店員のおねーさんが、塗料で汚れた道具をていねいに手入れしているのにちょっと感動。こうやって気持ちよく使えるようにしてるんです、って。

ただ、やはり遠い。移動時間と出かける準備と帰宅後の後片付け、加えてファクトリーでの荷ほどきと荷造りなどに時間がかかりすぎ。たった数時間の作業のために結局丸一日を費やしてしまうのは、どう考えても効率悪い。

フィギュア制作が本業なら、もちろん作業場を借りるべきだろうけど、数か月間に数日程度しか使わないのではそんなわけにもいかず。当面は自前のスプレーブースと最大限の筆塗りで何とかしなきゃならない。近所のどこか、町工場みたいなところの隅っこに道具や材料を常時置かせてもらって、必要なときに行って塗装や複製などの「汚れ系」作業をするという感じにできたらな〜。世田谷区あたりで、そういうとこ知りませんか?

日経トレンディネットにくわしい体験記事が。
< http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20080415/1009383/ >

【吉井 宏/イラストレーター】 hiroshi@yoshii.com

サザンオールスターズ活動停止。アルバムを聴いたのは「ステレオ太陽族」と「人気者でいこう」の二枚きり(それもレンタルレコードで)で特にファンでもないんだけど。1978年、「勝手にシンドバッド」で出てきたときは衝撃的だった。高校の帰りにいつも寄ってたプラモ屋の有線放送でよく流れてた。その後、ラジオやテレビでヒット曲を耳にするたびに、いいなあ〜、そのうち全アルバムをちゃんと聴こうとか思ってるうちに、活動停止か〜。桑田佳祐氏には特別な才能があるんだろうけど、サザンに限らず思うこと。鮮烈なデビューを飾ってずっと活躍する人もいれば、デビューがパッとせずに消えていく人もいる。大器晩成型の人もいる。ただ、最初を失敗したために活動を続けることができず、仮に数年間続けていたら歴史に残るようなものを生み出すことができたのに、って人もたくさんいるにちがいないのがもったいない。サザンがコミックバンドと誤解されたまま消えていたら、その後の数々のヒット曲は生まれなかったわけで、ぞっとする。続けていられる、というのは非常に重要。
今、Wikipediaで知ったんだけど、「勝手にシンドバッド」のホーンセクションはスペクトラムだったとのこと。どうりで! 僕はそっちのファンでした。

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