ネタを訪ねて三万歩[40]ゴム印作成マニアでもあった私
── 海津ヨシノリ ──

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●無意識に北北西へ進路を取る

昨年ぐらいまでの私の行動範囲は、二子玉川、自由が丘、渋谷あたりでしたが、最近は飯田橋、池袋、銀座、新宿あたりへと徘徊場所が変わりつつあります。明らかに北北西に進路を取っています。なんとなくこの近辺に出かける事が多くなってきたからなのですが、当然ながら場所が変わると見えてくるものが違ってきます。同じ東京の中なので、それほどの違いはないはずなのですが、かなり違うと感じます。空気も違うし。まっ、私自身も少し(いや、かなり?)疲れ気味ということも影響しているかもれません。

ちなみに徘徊といっても、飲み歩いているわけではありません。宴席にでも誘われない限り、自発的に飲むことは皆無なので。要するに、私はお酒がなくても生きていけるタイプであり、あれば飲むというアバウトな性分といったところです。一応お酒の嗜好は日本酒の熱燗かウイスキーのオン・ザ・ロックです。ビールは乾杯程度。焼酎やカクテル類は嗜みません。それ以外の難しい名前のお酒もパスです。しかし、こうして整理してみると、かなりわがままですね。

話を戻すと、そんな徘徊の習慣に、最近は「衝動的な美術館めぐり」というものが加わりました。東京には沢山の美術館が常時様々な展示を競っているので、気まぐれで立ち寄っても新しい発見があり、とても楽しい気分になります。銀座界隈にひしめいている画廊の大きいのが沢山ある、といった方がニュアンスとしてはいいかもしれませんね。ちょっと乱暴ですけど。とにかく造形科や映像演劇科の学生と触れる機会が多いので、アナログ系の展示には敏感になっています。



もっとも、個人的にはアナログ、デジタルという切り分け方は好きではないし、不毛だと思っていますが、そんな考え方はまだ一般には通用しないみたいですね。そもそも一歩間違えると、どちらに対しても排他的と受け取られかねないので慎重に発言しなくてはなりません。だから、だんだんと文章が面白くなくなってしまうのですが……。

で、私が新しい街で最初にさがすのが和菓子屋さんです。和菓子屋さんは昔から営業している店が多いので、店内のさりげない装飾や、昔の写真等から、その街のかつての息吹を少しだけ感じることが出来るからです。店主が若かりし頃、店頭で撮影した記念写真といえばわかりやすいかもしれませんね。ちょっとした私の拘りといったところです。

●半手書きのカレンダーノート

そんな変な拘り例として、いつも持ち歩いているスケジュール帳があります。学生の頃から、随分色々と使っては一喜一憂の繰り返しでした。そして、数年前から無印良品のポリプロピレンカバーダブルリングウィークリーノートA6・120枚というのを愛用しています。ウィークリー部分が全体の1/3で、残りは無地のノート。また、ウィークリー部分も見開きで右側が無地のノートで、左側が1週間分の項目となっているのでわかりやすくて、一発で気に入りました。ただし、日付はユーザーが書き込むタイプのために少々面倒です。

本当はウィークリー部分が最初から印刷されているといいのですが、そういったタイプはノート部分がなかったりするので「パス」。で、このスパイラル綴にしたのは、色々と紙を貼り付けたりする関係で無線綴だと都合が悪いからです。しかし、週によっては貼り付けなくてはならないメモが多すぎてノートは爆発寸前。そこで思い付いたのが半紙。薄くて丈夫なので、こんな用途にはぴったりです。もともとメモ用紙として持ち歩いており、直ぐに活用できたので、そのままこのスタイルを続けています。

汚らしい状態は否定できませんが、きれいに見せるために作り込むノートでは意味ないですからね。ただ、カレンダーのタマを手書きするのだったら、クロッキー帳にカレンダーを週別に書き込んでしまってもいいかもしれないと考え始めました。そして、カレンダーの部分はゴム印で遊ぶのも面白いかも……と。ついでに、頻繁に登場するメーカー名、あるいは講義のある日の印なんていうのも必要ですね。自分だけに分かればいいわけですから、かなり面白いデザインで遊べそうです。

●むかし拘っていた木版画

実は、高校2年ぐらいからゴム印を随分手づくりして遊んでいました。漫画同人会に所属していた頃は、ステーショナリーやサイン代わりのハンコみたいなものを沢山作っていました。私のペンネームは「のらねこ」。猫が大嫌いな私が、何故こんなペンネームにしたかは忘れてしまいました。とにかく、対で二つ作成した「のらねこ」のゴム印は、今も部屋のどこかに眠っています。

そもそも、小学生の頃から木版画が好きだったことの延長かも知れません。また、幼稚園ぐらいの時、アルファベットと平仮名のゴム印を父に買ってもらった事が、少なからずその後のゴム印も含めた「スタンプ」好きに影響しているのでしょう。色々と組み合わせ、そしてどのような使い方が面白いかを黙々と研究していたことを思い出しました。

木版画といえば、学生の頃、本格的な木版画にチャレンジしようとしましたが、金銭的な問題からシナベニアに甘んじ、思ったとおりにならずに落ち込んだことがありました。別にシナベニアでも悪くはないのですが、細部の処理はさすがに辛いですからね。その後、細部処理の拘りのためにゴム板も使いましたが、ある程度彫りは満足出来ても、刷りの時に絵の具の染み込みが木のような具合にならず、またまた落ち込むという有り様。

でも、そういった問題のある環境での試行錯誤が、結局は思わぬ発見に繋がっていったりするわけです。やはり制約という名の「縛りがあるから工夫しなくてはならない」という訓練は必要ですが、最近は完全に軽視されていますね。ちょっと残念です。便利なものは取り敢えず捨ててしまってから考えるって、素敵な経験だと思います。少なくとも学生さんにとっては。

そんなことを考えていたら、思い出したのがオリジナルポストカード。仕事をするようになってから、自分で撮影した写真を暗室操作で調整し、ポストカードにして不定期に交友関係に送付していた時期がありました。その時、幾つかのオリジナルゴム印を特注して使っていました。デザインしたものをモノクロ原稿として、ゴム印を作成した本格的なものです。そんな部分への拘りは、その後も永遠と続くことになるのです。だから疲れちゃうんですよね。

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今月のお気に入りミュージックと映画
"Anything But Ordinary" by Avril Lavigne in 2002
"プールサイド" by 南佳孝 in 1991
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"How The West Was Won" by Henry Hathaway in 1962 (USA)
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【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター

●低価格DVDの虜

授業で使う資料として、500円を中心に安いDVDを仕込みました。かなりの数です。もちろん全部を使うわけではなく、吟味対象としてなのです。また、ムキになって安いDVDに拘っているわけではないのですが、古い作品はこれでしか見ることが出来ないものも少なくないので、逆に絞ってしまうほうが見付けやすかったりします。ただし、何故か古い日本映画は1000円になっています。とにかく、マニアックな作品がお手ごろに鑑賞できるのは嬉しい限りです。

実は、過去にVHSなどでコレクションしていたタイトルがかなりあったのですが、友人に貸したが最後、二度と戻ってくることはありませんでした。20年ほど前に一眼レフカメラやLPレコード、美術書を貸した途端に音信不通になった某友人達の時と同じです。正直者はおもいっきり馬鹿をみています。学習できていないというか、基本的に性善説で行動している私は、いい年して大人になりきれていないのかもしれませんね。

チープDVDに話を戻すと、アニメ系は日本語吹き替え版でお子様ランチ。それ以外は英語台詞でも、字幕は日本語オンリーという救えない仕様もチープということで我慢。でも誤字脱字がかなり多いのには、思わず「お前もか!」と同情する始末。

で、私は、これら古い映画の背景を舐めるように見ています。その当時の時代・世相がそれなりに反映されているからです。例えば50年ほど前の映画で、病気見舞いなのにいきなりベッドの横でタバコを吸ったりするシーンは衝撃的です。50年後になれば、現在公開されている映画の多くのシーンが不適切表現ありで、公共の場での上映は禁止されてしまうかもしれませんね。

●mixiにあるという「絵風蔵」について

三年ぐらい前からmixiに絵風蔵(えふぐら)が存在するそうです。私はmixiの会員ではないので見ることは出来ませんし、今後も参加する予定はないので、ある意味どうでもよいのですが、「絵風蔵(FGRAPHIC)」と無断で名乗っている神経が理解できません。絵風蔵そのものは商標登録しているわけではありませんが、短時間に苦労してひねり出した名称であり、ロゴタイプやシンボルマークまで作成してニフティーに申請したのは紛れもなく私です。そこで何が行なわれているのかは知りませんが、そこでの活動イコール私の活動と誤解されるのは不快です。少なくともそう感じていた人が数名いました。とにかく前記したように、今後もmixiに入る予定はありませんが、絵風蔵と言えば、現在私自身が公開している絵風蔵Blogだけであることを、ここで改めて宣言させていただきます。

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