[2436] プリントゴッコよ永遠に

投稿:  著者:  読了時間:23分(本文:約11,100文字)


<多少不自由な方がいいんだよ、なんでも。>

■MKチャット対談
 プリントゴッコよ永遠に
 笠居トシヒロ&まつむらまきお

■グラフィック薄氷大魔王[138]
 三つの新しいノート
 吉井 宏

■展覧会案内
 ナンシー関 大ハンコ展


■MKチャット対談
プリントゴッコよ永遠に

笠居トシヒロ&まつむらまきお
< http://bn.dgcr.com/archives/20080604140300.html >
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かさい: まいどー、笠居です。先週末は、久しぶりに東京へ行って、F-Siteセミナーに参加してきましたー

まきお: まいど、まつむらです。寒いっすねぇ〜。F-siteはぼくも行きたかったのだが、今回は無理でしたぁ。今回はなんだったの?>お題

かさい: 3部構成で、野中先生のAS3初級講座、エーサクさん、徳久、沖君の職種別バナー事例、サブリンのディレクション講座、でした。オレはバナー事例にちょこっと作例出して、その後ちょこっと司会のまねごとしてきました

まきお: あいかわらず濃いなぁ。サブリン遅刻した?(笑)

かさい: サブリンは、ぎりぎりセーフでした(笑)

まきお: わははは(笑)関西もそろそろなんかやらんといかんかね〜

かさい: あー、だなあ

まきお: しかし、F-siteも長いね。よく続いている

かさい: そうだねえ、今回はすごい盛況だったんだよ。160くらい入ってた

まきお: 昔はこういうイベントしようと思ったら、会場おさえて、案内ハガキをプリントゴッコで刷って、と大変だったのだ

かさい: あー、プリントゴッコなつかしいねえ

まきお: そのプリントゴッコが販売終了だそうで

かさい: ええええー、終わっちゃうのか

まきお: いやあ、どっちかっていうと、まだ売ってるのを見て「がんばってるなぁ」と思ってたので(^_^;) おつかれさま、って感じかな

かさい: そやなあ、確かにこれだけパソコンやらプリンタやら普及したら、需要もなくなるわなあ。ゴッコの4色印刷キット持ってたわ、オレ

まきお: 1977年だそうですよ、最初の製品が発売されたの。えーと、高校んときか?

かさい: 中3やなあ、オレは高校か

まきお: それ以前は木版かゴム版だった>年賀状

かさい: 年賀状はプリントゴッコが出た後も、ずっとゴム版画でしたよ

まきお: おいらはすぐにプリントゴッコにしたなぁ、たしか

かさい: プリントゴッコで年賀状作ったのは就職してからだなあ。学生の時は買えなかったんだよ、高くて(笑)

まきお: うちは家庭で買ってもらったような気がする。でもいまひとつ、うまく作れなかった。最初のやつは、紙版で、あまり細い線とか出なかったんよね

かさい: 描いた絵をコピーしてフラッシュで焼くんだよな

まきお: コピーもまだ当時、それほど一般的ではなくて、どっちかってーと付属の顔料ペンで直接原稿を描くんだったよ

かさい: ああ、そうか。オレが始めたの遅かったんだよ。だからコピー

まきお: カーボンが焼けて、版に穴を開けるのだ。当時、コピーはまだ高かったのだよ。で、その後、ハイメッシュマスターといって、シルクに近い感じの版が出て、細い線まで再現できるようになった

かさい: そうそう、コピー機を有料で使わせてくれるところも少なかった。コンビニなかったしなー

まきお: このあたりからですな、それまでの「ゴッコ」だったのが、みんな本気(笑)だしたのは

かさい: 版の色が黄色のやつだっけ? ハイメッシュ。ブルーの方だったかな

まきお: 青いのがハイメッシュやね。ハイメッシュの版と、フラッシュ2個が、一回の製版に必要で、これで消耗品が300円。これ失敗するとかなり痛いのだ

かさい: 知らない読者もいるんじゃないか?>プリントゴッコ

まきお: 知らない読者もいるだろうねぇ。うちの学生なんか、絶対しらないこのまえ、「高校時代は家庭用ビデオがなかった」って言ったら、信じてくれなかった(笑)

かさい: (笑)なかったもんなあ。オレ大学には行ってすぐ月賦で買ったんだ>ビデオ

まきお: それもかなり早かった方じゃない? おいらは月賦でテレビ買いましたが

かさい: 出たばっかりで15万くらいしたなあ。重さも20kgくらいあった。まぁそれはともかく、プリントゴッコだが

まきお: その製版が、これがなかなか難しくて、濃すぎると、ヨゴレが出るし線つぶれるし。なんか青いフィルターがあったじゃない? 光を弱めるコピーの時はあれをつけるんだっけ?

かさい: あったっけか。もうだいぶ記憶が薄れてるなあ

まきお: 最初の頃はかなり試行錯誤で、何枚も版をダメにした憶えがあるよ〜コピーも当時、街中でやってくれたサービスは汚かった。あれ、多分オフィスからの払い下げ中古だったんだな〜

かさい: 基本的には、孔版の一種なんで、シルクスクリーンの親戚なんだよなどっちかというと、ガリ版の方に近かったけど>クオリティは

まきお: 紙版はガリ版、ハイメッシュがシルクって位置づけでしたね。実際、スキージで刷ったこともあるよ、おいら

かさい: やぶれんかったか?>版

まきお: ハイメッシュは大丈夫。どっちかってーと、折れる。枠がボール紙だから(笑)

かさい: (笑)いや、スキージなんかでこすったら、インク出過ぎて絵がつぶれるんじゃないかと

まきお: そうそう(笑)出過ぎ(笑)

かさい: やはりw

まきお: 丁度当時、マンガを描き始めて、その後同人誌をやり始めた頃で、大学時代ね。その頃は年賀状以外に、同人誌のDMやら封筒印刷やら片っ端からプリントゴッコでやってたです

かさい: オレ就職してからだったしなあ、年賀状だけでしたねえ

まきお: プリントゴッコの特徴として一回のプレスで多色が刷れるのだが

かさい: 完全に場所が分かれてる場合ね

まきお: そそ、完全に場所が分かれてる。が、これをやるには、インクが混ざらないように、スポンジでブロックしなくちゃいけないのよね

かさい: だんだん混ざってくるんだよね

まきお: ブロックを作ると近接していても混ざらない。これをいかに細くブロックするか、混ざらないようにしっかりブロックするかが職人技なわけよ

かさい: オレは仕事が印刷だったので、ゴッコもちゃんとした多色刷りがしたくて、部分部分で色が分かれてるんじゃなくて、色を重ねてすりたかった

まきお: 重ね刷りもやったー。でもノーマルのプリントゴッコだと位置合わせが難しいのよね

かさい: なので、4色刷キットを買ったわけだが

まきお: インクがCMYKのキットね

かさい: そうそう、普通に4色分解した写真とかが刷れる

まきお: あのキットって単体で分解できるの?

かさい: 無理無理、普通の人には写真の4色分解ができないだろ。オレは会社でできたけど

まきお: うん。おいらはPhotoshopでやったよ。かなり後年だけど

かさい: Photoshopが使えるようになった頃だと簡単にできるよね。そのままレーザープリンタで出力すれば原版になるし

まきお: うん。丁度その頃は、カラープリンターが普及してなかったころで、フォトショはあるがカラーで出せない(笑)ので、4色分版やってみたことがある

かさい: カラープリンターがまだまだ高価だったからなあ

まきお: hpのデスクジェットのカラーを買ったけど、遅かったんだな、たしか

かさい: その頃のカラープリンタは、遅いし、はっきり言ってたいして綺麗じゃなかった。ゴッコのほうが綺麗だった、とは言わないが(笑)

まきお: その後EPSONのMJ720だっけ? キレイで手頃なのが出て、一気に普及しだすのだが、これも遅かった>カラープリンタ

かさい: あぁ、インクジェットは遅いもの、というのが常識だったねえ

まきお: PC-98時代に使ってた。NECのインクジェットはB6サイズ刷るのに15分かかってたよ。で、4色はうまくいったの?

かさい: それがですね、やっぱり位置あわせがうまくいかないんですよ

まきお: 刷り機は通常のB6? B5だったらトンボつけて、あとで裁断って手があるが

かさい: いや、ガイド枠がついてる、専用の刷り機があるんだよ

まきお: CDプリンターのことかね
    < http://www.riso.co.jp/pg/sale_end/index.html >

かさい: ああ、そうそう、これだこれ

まきお: 透明板の上に一度刷って、ステージが雲台状態になってて、刷ったものにあわせて、ステージを位置合わせするという、とんでもない機構!よくかんがえたよなぁ、こんな仕組み(笑)

かさい: ただですね、最初に刷るのがイエローだから、わかんねーんだよ>位置(笑)

まきお: ああ、そうだったそうだった(笑)

かさい: なので、最初にマゼンタを刷ってみたり、最終的には、多少版ずれしてるのがおしゃれっぽく見えるデザインにして、刷るときは適当にしたり

まきお: そうそう。さっきのブロックもそうだけど、最終的にはもう、限界をふまえた図案のアイデアで、限界を克服してきた。なまじっか、版画や印刷の知識があると、「できそう」な気がして挑戦するんだけど、やっぱり「ゴッコ」なので限界が…orz

かさい: だよなー(笑)

まきお: 色々やってうまくいかなくて、結局はマニュアル通り素直につくるればけっこうそれなりにできることに気が付くという(笑)

かさい: ま、スペックに見合った作成法ってものがあるわけだ

まきお: デジタルになっても、未だにスペック以上に挑戦して挫折してるよなぁ、おいら…

かさい: スペックを克服できる場合もあるけどなw ごくたまーにw

まきお: だから、ついつい、余計なことに手を出して、結果手間どる場合の方が多い(^_^;) あ、あと、プリントゴッコって印刷終わったらインクが大量にあまるじゃない? 版の上に

かさい: 余りますねえ。全部使い切るのは不可能な構造だからなあ

まきお: だからといって、盛りをケチるとかすれるから、ケチってはいけない

かさい: もったいないけど、最後は捨てるしかないね。2〜3日なら版の上にのせたままでも保存できるけど。ラップかけたりすれば

まきお: おいら、ラップで保存してたよ。ペインティングナイフで版からこそいで、ラップに二重につつんで保存。特に混色して特色つくる場合は、途中でインクがなくなると悲惨だから大量に作る。数ヶ月保つよ

かさい: オレの場合、年賀状なので、そんなに長く保存してもしょうがないのだった(笑)

まきお: 普段からよくやってたから、グレーなんかは大量に作って保存してたー。貧乏性だったからなっ。あ、思い出した

かさい: なにをじゃ

まきお: インクが薄くなってきて、でもあともう10枚くらい、って時は版の上のフィルムの上にティッシュを折ってはさんで、圧を調整してたー

かさい: びんぼーしょうだなー(笑)

まきお: これやるとインクがあまっているところはブロックからはみ出すのでかなり高度なテクニックが必要だったのだ(笑)

かさい: まぁ高校生くらいだったらしょうがないか

まきお: いや、このあたりは大学です。高校の頃はそんな面倒なことはやらなかったよ(笑)

かさい: びんぼーなのはかわらんだろう(笑)

まきお: 下宿だったので大学の方がビンボーだった(笑)

かさい: しかしまあ、すごく味のあるものはできてたよなあ>ゴッコ なくなるとちょっと寂しい感じもする

まきお: 色刷りは味のあるものができてたし、単色ならガリ版よりずっと精度のある印刷が可能だった。オリジナル封筒とか作ってたもん

かさい: この先使うことはまずないと思うけどねぇ

まきお: うちの押入には、先のCDプリンターと、大量のインクがまだあって、何年か前に、やってみようと思ったんだけど、なぜか肝心の本体がなくて、製版ができない(^_^;) 版も丁寧にクリーニングすれば、保存できたんだよ。なので、オリジナルの封筒なんかは版も保存して、何度も使ってた

かさい: ウチのゴッコもまだどこかにあると思うんだけどな。今度探してみようか

まきお: 子供にはやらせるべきだよ、プリントゴッコ。最近は最初から親のMacとプリンタをあてにしとる(笑)

かさい: うちの子は年賀状手書きしてるよ

まきお: えらいなぁ

かさい: そんなに枚数書かないからだろーなー(笑)

まきお: 今回の販売終了は、年賀状そのものがメールにとってかわってきている、ってのも大きな要因だって

かさい: そうそう、メールがだいぶ増えてきてるね。オレらの世代でもそうなんだから、下はもっとだろうな

まきお: デジクリを毎号、プリントゴッコで発行……

かさい: 濱村デスクに殴られますよ(^_^;

まきお: プリントゴッコは乾かすのに時間がかかるんだよね。後年は電話帳にはさむというワザを知ったので効率的になったけど、最初は部屋中、印刷物ひろげて、大騒ぎだった

かさい: 遅乾性の油性インクだからねー、部屋中インクの臭いがこもってひどかったねえ。オレは部屋に洗濯紐張り巡らせて、洗濯ばさみでつるしてました

まきお: そんなに洗濯ばさみ買えなかったよ(^_^;) 臭いね〜。製版の時のフラッシュが焼ける臭いに、インクの臭い。インクジェットや、コンビニ販売の年賀状はキレイなのでみんなそっちに走ったけど、わしらみたいに、印刷でも作り込む人はともかく、家族写真やディズニーの絵ばっかで、こりゃすたれるわなぁ、年賀状

かさい: まぁ何にせよ、手作りを楽しむ道具が消えていくのは、悲しむべきことなんだろうなー

まきお: デジカメをはじめ、だれでもプロ並みのモノがつくれるのはいいことはいいんだが、工夫しないと作れない状況ってのは必要じゃないかね〜? モノ作り心を育くむには。Flashも出た当初は、工夫が必要だったので燃えたんだけどなー

かさい: だな。多少不自由な方がいいんだよ、なんでも。

まきお: じゃあ、明日からケータイも無線LANもAirもデジカメもネットもやめるってことで〜

かさい: ソレハムリデス(^_^; オマンマクイアゲデス

【笠居 トシヒロ/WEBクリエイター・デザイナー、デジハリ大学院客員教授】
梅雨入りしてしまいましたねー。自転車にはつらい季節です。テニスはインドアコートがあるからまだマシですが、コート予約の争奪戦が激化するんだよな
< http://www.mad-c.com/ > < mailto:kasai@mad-c.com >

【まつむら まきお/まんが家、イラストレーター・成安造形大学准教授】
大阪の児童文学館の閉鎖が決まった。実に腹立たしい。店子をまたひとつ失うことになった万博公園の将来も心配。
< http://www.makion.net/ > < mailto:makio@makion.net >

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■グラフィック薄氷大魔王[138]
三つの新しいノート

吉井 宏
< http://bn.dgcr.com/archives/20080604140200.html >
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HPやDellのミニノートPCについても書きたいけど、今回は紙のノートの話です。最近、興味を引かれて入手した二製品+おまけの一冊。関連の記事を下にまとめてリンクしておきましたが、モールスキンのノートにあこがれるところから始まって、紙の手帳廃止宣言まで、紆余曲折ありました。

「紙のスケッチブックや手帳を人生の記録として残そうなどと思わず、デジタルを補完する道具としてだけペラ紙やメモパッドを使う」という考え方。半年以上続けてきた感じからすると、非常に有効。紙に描いたスケッチはスキャンしてフォルダにまとめ、Flickrにも上げておく。大切なメモはMail.appのメモに書き写し、.Macシンクする。最終的にMacとWebに全部入っているというのは安心だ。身の回りがスッキリしたような気がする。

ただ、ちょっと弊害もある。スキャンしてフォルダに入れてある単品のスケッチは、通し番号(日付+番号)をつけて整理してしまうと、その時点でアイディアが固定化されてしまう傾向があるようだ。グジャグジャのラクガキ帳の上ではいつまでも新鮮な生ものなのに。

それと、スケッチブックやノートにギッシリびっしりラクガキやアイディアスケッチを描きまくりたい気持ちも確かにあるのだ。今まで実用にこだわるあまりに「モールスキン丸ごと作品」みたいにカッコよくノートを使うことを避け続けてきたけど、逆にわざとモールスキン作品を作るつもりで楽しんで描くのもアリなのではないか。ノートのラクガキをファームというか養殖場というか、アイディアの初期段階を作る場とし、ペラ紙やMacを選抜アイディアのブラッシュアップ場とするのもいいな。

とか、そんなことを考えていた矢先に出会った三冊の新製品ノート。順にレビューします。製品についての詳細はそれぞれのサイトをご覧ください。

●ミドリ MDノート
< http://www.midori-japan.co.jp/md/notebook/ >

2月頃、渋谷ロフトで見つけた。文具ファンの間でけっこう話題になってるらしい。同社のMDペーパーという評判のいい紙を使用した糸かがり綴じノート。文庫、新書、A5の三つのサイズがあり、それぞれに透明のビニールカバーがオプションで用意されている。

すごいのは、ページが軽々と完璧に180度開いて真っ平らになること。モールスキンに興味を持ったきっかけは、ページが平らに開くことだった(モールスキンの開きについては後述)。以来、大きな文房具ショップに行くたびに平らに開くノートを探し続けてきたけど、ここまできっちり平らになるノートは今まで見たことがない。また、モールスキンのように分厚くないので、段差が低いのも僕好み。

MDペーパーの書き味もいい。色鉛筆もイケる。一般のノートにありがちなスルスル滑らかな感じではなく、芯の先が滑らずにしっかり描ける。素の状態では革のカバーつきの高級ノートの中身を取り出したような外観(パラフィン紙が巻いてあるけど、これは速攻で捨てた)。市販のブックカバーも使えるけど、ビニールカバーもなかなか良い。カバーの内側に絵を描いたりシールを貼ったりしても楽しい。

こんなノートが国産で存在することがうれしい。ずっと売れ続けて定番商品になってほしい。気に入ってます。

●モールスキン ソフトカバーXLARGE
< http://www.moleskine.co.jp/shop/soft.html >

シンセサイザーのモーグをムーグと呼び続けるのと似て、モレスキンと書くのはなぜか抵抗があるモールスキン。二冊目を使ってる途中で方針変更したため尻切れトンボ状態だった。二冊目に使っていたのは、厚紙のスケッチブックタイプのラージ版。ページが平らに開く度合いはダントツだった。

ただ、ラージ版でもサイズがA5より一回りほど小さいのが不満だった。もう少し大きなサイズのものがあれば、気持ちよく使い続けられるのにと思っていたら、なんと! 出ました。ほぼB5サイズの大型モールスキン。

黒い表紙のしなやかな紙の束。ハードカバーとちがってすました感じが少なく、使い倒すための道具という雰囲気が良い。モールスキン独自の中性紙の書き味は変わらず素晴らしい。

残念なのは、きっちり平らに開いてくれないのだ。開くことは開くのだが、ハードカバー版より開かない。完璧に開くMDノートとは比べるべくもない。よく開く厚紙のスケッチブックタイプで、このサイズのものがあればいいのだが。

ところで、(一般のモールスキン好きの人はどうか知らないけど)僕の偏向した価値基準ではモールスキンの良さの8割は「平らに開く」こと。造りが悪くても品質が落ちてきても、平らに開くことが最も重要。ところが、ソフトカバータイプも含め、最近流行のモールスキンのシティノートブックやダイアリーなどの新製品は、ことごとく平らに開かないのはどういうわけ? あれじゃあ普通の国産のダイアリーと変わらない。モールスキンという名前で売れているのなら、ただのブランド品じゃないか?

とか文句言ってますが、6月下旬にヴォランノートブックという新製品が出る模様。XLARGE版はないけど、4色のカラーバリエーション。写真で見るかぎり綴じの構造は同じでページ数が半分。ということは、180度開いてくれさえすれば段差が低くて使いやすそう。ちょっと期待させる。また試しで買っちゃうんだろうな。

●ツバメノート Thinking Power Notebook
< http://www.reudo.co.jp/tp_note/index.html >

こちらは、特に吟味して購入したわけじゃなく、YOUCHANさんが表紙の絵を描いてることが主な入手動機、っていうか個展会場で本人から購入。でも、僕的ツボを刺激するあなどれない特徴をいくつか備えているノートだ。竹村譲氏(富山大学芸術文化学部非常勤講師)とアスキーの遠藤諭氏が「自分たちがほしいノートを作りたくて大学ノートの老舗メーカーに持ち込んだ企画」からスタートした製品。

まず、僕がいちばんノート向きでないと考えている「中綴じ」であるにもかかわらず、割とちゃんと180度開いてくれること。ページが少ない薄手であることと、切り取り用のミシン目が入っているおかげだ。B5・A5の横位置(短い辺が綴じ)なのでノドの部分が短く、紙が拡がりやすいのも要因だろう。薄い色で印刷された5mm方眼もとても使いやすい。モールスキンやロディアの方眼は、濃すぎて絵を描くのにジャマなのだ。

見開きではかなり広大なパノラマだ。びっしり描き込みたい誘惑に駆られる。縦位置で使えばレポート用紙的・メモパッド的にも使える。むしろ、大学ノートのような体裁を採ったレポートパッドと言っていいかもしれない。

「COBUつばめジョッター」という専用のプレートも発売予定。A5サイズ用のものをいじらせてもらったが、こういったパッドでいつも困る「手の置き場」問題が単純な仕掛けで解決されており、書きやすい。こういった細かい配慮も魅力。

以上です。ところで、この三冊のノートはそれぞれ自前の用紙を使っているのがすごい。さすがこだわりの老舗だ。

●ノート・紙関連の記事(新しい順)

グラフィック薄氷大魔王[116]ポストイット〜手帳廃止
< http://bn.dgcr.com/archives/20071212140200.html >

グラフィック薄氷大魔王[115]究極の紙の使い方
< http://bn.dgcr.com/archives/20071205140300.html >

グラフィック薄氷大魔王[113]ドローイング用の紙やモールスキン関連の続編
< http://bn.dgcr.com/archives/20071121140200.html >

グラフィック薄氷大魔王[74]モールスキン、レビュー記事風レポート
< http://bn.dgcr.com/archives/20061101140200.html >

グラフィック薄氷大魔王[71]モールスキン
< http://bn.dgcr.com/archives/20061011140300.html >

【吉井 宏/イラストレーター】 hiroshi@yoshii.com

コンビニに行くたびに流れている歌。「にゃんにゃんこーでハオハオ、セブンセブン」。なんで猫? なんで中国語?? と思ってたけど、最近ようやくわかった。「nanacoで買お買お」だった。

HP < http://www.yoshii.com >
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/ >

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■展覧会案内
ナンシー関 大ハンコ展
< http://www.parco-art.com/web/factory/nancy0806/ >
< http://bn.dgcr.com/archives/20080604140100.html >
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会期:6月5日(木)〜6月15日(日)10:00〜21:00
会場:パルコファクトリー(東京都渋谷区宇田川町15-1 パルコパート1 6F TEL.03-3477-5873)
入場料:一般300円・学生200円・小学生以下無料
内容:消しゴム版画の原版であるハンコ計5,000個強が全個集合したブース。コラムニストとして健筆をふるった雑誌などの紙面が一気に俯瞰できるブース。TVウォッチングや消しゴム版画を行った仕事場の再現。ナンシー・チルドレンを自負する若きクリエイターたちからのコメントを紹介。

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■編集後記(6/4)

RISO プリントゴッコ PG-11本体・MKチャット対談で語られているように、31年の長きにわたった「プリントゴッコ」のメーカー販売が終了する。若い頃からミニコミマニアだったわたしにとって、強力な印刷ツールになるかと思われたが、印刷サイズが小さかったので、結局ハガキくらいにしか有効に使えずに終わった。数年前の引っ越し時に処分してしまったが、15年間くらいは使っていたのでいまでも愛着はあり「ありがとう、プリントゴッコ」と言いたい。もっと愛用していたのが謄写版で、学生時代には中古の印刷器(どこから入手したか不明)を使って、所属していたふたつのクラブの機関誌をはじめ、ひとり雑誌をいくつも作っていた。みんなひとりでせっせとガリを切っていた。もちろん、編集の方法も知らない自己流であった。謄写版セットは就職したときに処分した。「ありがとう、堀井謄写版」と言いたい。当時は自己満足で得意になっていた成果物だが、後になって見るとなんたる幼稚な代物であったことか。(汗)と表現しなければならない。それら恥多きミニコミ類は、引っ越しの時にすべてシュレッダーにかけて証拠隠滅した。ミニコミマニアがマスコミ編集者になったのはわかりやす過ぎる人生だが、50歳を機にネット上での雑誌制作に転じたのは、自分でもよくわからない人生だ。先駆的と自負するふたつの雑誌を手がけるも成功せず……その後、こうしてメールマガジンを10年以上続けている。でも、いままでの編集者生活で、一番読者を獲得しているのが現在なのでマニア冥利とも言える。処分するわけではない(笑)が「ありがとう、みなさん」と言いたい。(柴田)

・電話帳に挟めば良かったのか。階段中に並べ、乾いたものから回収しつつ、また並べるという手を使っていた。プリントゴッコ(黄色)は捨てることにしたが、Tシャツくんは買ってしまった。しかし一度も作っていない……。紫外線が入ってはいけない、と説明書に書かれてあったのを読んで、じゃあどこで版を作るのよ、と億劫になってしまった。プリントゴッコの拡張版ぐらいにしか思ってなかったんだよなぁ。(hammer.mule)
< http://www.taiyoseiki.com/silkt.html >  Tシャツくん
< http://www.taiyoseiki.com/support-t.html >  使い方