グラフィック薄氷大魔王[138]三つの新しいノート/吉井 宏

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HPやDellのミニノートPCについても書きたいけど、今回は紙のノートの話です。最近、興味を引かれて入手した二製品+おまけの一冊。関連の記事を下にまとめてリンクしておきましたが、モールスキンのノートにあこがれるところから始まって、紙の手帳廃止宣言まで、紆余曲折ありました。

「紙のスケッチブックや手帳を人生の記録として残そうなどと思わず、デジタルを補完する道具としてだけペラ紙やメモパッドを使う」という考え方。半年以上続けてきた感じからすると、非常に有効。紙に描いたスケッチはスキャンしてフォルダにまとめ、Flickrにも上げておく。大切なメモはMail.appのメモに書き写し、.Macシンクする。最終的にMacとWebに全部入っているというのは安心だ。身の回りがスッキリしたような気がする。

ただ、ちょっと弊害もある。スキャンしてフォルダに入れてある単品のスケッチは、通し番号(日付+番号)をつけて整理してしまうと、その時点でアイディアが固定化されてしまう傾向があるようだ。グジャグジャのラクガキ帳の上ではいつまでも新鮮な生ものなのに。

それと、スケッチブックやノートにギッシリびっしりラクガキやアイディアスケッチを描きまくりたい気持ちも確かにあるのだ。今まで実用にこだわるあまりに「モールスキン丸ごと作品」みたいにカッコよくノートを使うことを避け続けてきたけど、逆にわざとモールスキン作品を作るつもりで楽しんで描くのもアリなのではないか。ノートのラクガキをファームというか養殖場というか、アイディアの初期段階を作る場とし、ペラ紙やMacを選抜アイディアのブラッシュアップ場とするのもいいな。

とか、そんなことを考えていた矢先に出会った三冊の新製品ノート。順にレビューします。製品についての詳細はそれぞれのサイトをご覧ください。



●ミドリ MDノート
< http://www.midori-japan.co.jp/md/notebook/ >

2月頃、渋谷ロフトで見つけた。文具ファンの間でけっこう話題になってるらしい。同社のMDペーパーという評判のいい紙を使用した糸かがり綴じノート。文庫、新書、A5の三つのサイズがあり、それぞれに透明のビニールカバーがオプションで用意されている。

すごいのは、ページが軽々と完璧に180度開いて真っ平らになること。モールスキンに興味を持ったきっかけは、ページが平らに開くことだった(モールスキンの開きについては後述)。以来、大きな文房具ショップに行くたびに平らに開くノートを探し続けてきたけど、ここまできっちり平らになるノートは今まで見たことがない。また、モールスキンのように分厚くないので、段差が低いのも僕好み。

MDペーパーの書き味もいい。色鉛筆もイケる。一般のノートにありがちなスルスル滑らかな感じではなく、芯の先が滑らずにしっかり描ける。素の状態では革のカバーつきの高級ノートの中身を取り出したような外観(パラフィン紙が巻いてあるけど、これは速攻で捨てた)。市販のブックカバーも使えるけど、ビニールカバーもなかなか良い。カバーの内側に絵を描いたりシールを貼ったりしても楽しい。

こんなノートが国産で存在することがうれしい。ずっと売れ続けて定番商品になってほしい。気に入ってます。

●モールスキン ソフトカバーXLARGE
< http://www.moleskine.co.jp/shop/soft.html >

シンセサイザーのモーグをムーグと呼び続けるのと似て、モレスキンと書くのはなぜか抵抗があるモールスキン。二冊目を使ってる途中で方針変更したため尻切れトンボ状態だった。二冊目に使っていたのは、厚紙のスケッチブックタイプのラージ版。ページが平らに開く度合いはダントツだった。

ただ、ラージ版でもサイズがA5より一回りほど小さいのが不満だった。もう少し大きなサイズのものがあれば、気持ちよく使い続けられるのにと思っていたら、なんと! 出ました。ほぼB5サイズの大型モールスキン。

黒い表紙のしなやかな紙の束。ハードカバーとちがってすました感じが少なく、使い倒すための道具という雰囲気が良い。モールスキン独自の中性紙の書き味は変わらず素晴らしい。

残念なのは、きっちり平らに開いてくれないのだ。開くことは開くのだが、ハードカバー版より開かない。完璧に開くMDノートとは比べるべくもない。よく開く厚紙のスケッチブックタイプで、このサイズのものがあればいいのだが。

ところで、(一般のモールスキン好きの人はどうか知らないけど)僕の偏向した価値基準ではモールスキンの良さの8割は「平らに開く」こと。造りが悪くても品質が落ちてきても、平らに開くことが最も重要。ところが、ソフトカバータイプも含め、最近流行のモールスキンのシティノートブックやダイアリーなどの新製品は、ことごとく平らに開かないのはどういうわけ? あれじゃあ普通の国産のダイアリーと変わらない。モールスキンという名前で売れているのなら、ただのブランド品じゃないか?

とか文句言ってますが、6月下旬にヴォランノートブックという新製品が出る模様。XLARGE版はないけど、4色のカラーバリエーション。写真で見るかぎり綴じの構造は同じでページ数が半分。ということは、180度開いてくれさえすれば段差が低くて使いやすそう。ちょっと期待させる。また試しで買っちゃうんだろうな。

●ツバメノート Thinking Power Notebook
< http://www.reudo.co.jp/tp_note/index.html >

こちらは、特に吟味して購入したわけじゃなく、YOUCHANさんが表紙の絵を描いてることが主な入手動機、っていうか個展会場で本人から購入。でも、僕的ツボを刺激するあなどれない特徴をいくつか備えているノートだ。竹村譲氏(富山大学芸術文化学部非常勤講師)とアスキーの遠藤諭氏が「自分たちがほしいノートを作りたくて大学ノートの老舗メーカーに持ち込んだ企画」からスタートした製品。

まず、僕がいちばんノート向きでないと考えている「中綴じ」であるにもかかわらず、割とちゃんと180度開いてくれること。ページが少ない薄手であることと、切り取り用のミシン目が入っているおかげだ。B5・A5の横位置(短い辺が綴じ)なのでノドの部分が短く、紙が拡がりやすいのも要因だろう。薄い色で印刷された5mm方眼もとても使いやすい。モールスキンやロディアの方眼は、濃すぎて絵を描くのにジャマなのだ。

見開きではかなり広大なパノラマだ。びっしり描き込みたい誘惑に駆られる。縦位置で使えばレポート用紙的・メモパッド的にも使える。むしろ、大学ノートのような体裁を採ったレポートパッドと言っていいかもしれない。

「COBUつばめジョッター」という専用のプレートも発売予定。A5サイズ用のものをいじらせてもらったが、こういったパッドでいつも困る「手の置き場」問題が単純な仕掛けで解決されており、書きやすい。こういった細かい配慮も魅力。

以上です。ところで、この三冊のノートはそれぞれ自前の用紙を使っているのがすごい。さすがこだわりの老舗だ。

●ノート・紙関連の記事(新しい順)

グラフィック薄氷大魔王[116]ポストイット〜手帳廃止
< http://bn.dgcr.com/archives/20071212140200.html >

グラフィック薄氷大魔王[115]究極の紙の使い方
< http://bn.dgcr.com/archives/20071205140300.html >

グラフィック薄氷大魔王[113]ドローイング用の紙やモールスキン関連の続編
< http://bn.dgcr.com/archives/20071121140200.html >

グラフィック薄氷大魔王[74]モールスキン、レビュー記事風レポート
< http://bn.dgcr.com/archives/20061101140200.html >

グラフィック薄氷大魔王[71]モールスキン
< http://bn.dgcr.com/archives/20061011140300.html >

【吉井 宏/イラストレーター】 hiroshi@yoshii.com

コンビニに行くたびに流れている歌。「にゃんにゃんこーでハオハオ、セブンセブン」。なんで猫? なんで中国語?? と思ってたけど、最近ようやくわかった。「nanacoで買お買お」だった。

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