伊豆高原へいらっしゃい[16]ドラマ「HEROES」を見終えて……/松林あつし

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HEROES / ヒーローズ Vol.1最近はあまりアメリカのドラマも見ることがなかったのですが、「HEROES」のTVCMを見るうち、ちょっと見てみたいなという気分になり、一話目を借りて観てみました。そうしたところ結構おもしろく、一気にシーズン1を見終えてしまいました。

今まで、同じSFでも超能力ものはあまり真剣に観たことはなく、映画の「X-MEN」や「ファンタスティック4」も時間つぶしで観る程度でした。根本的に、超能力映画をSFと呼んでいいかどうかという疑問もあります。宇宙ものに比べて超能力ものは科学的根拠が希薄で、とても「サイエンス・フィクション」とは呼べそうにありません。もちろん、すべての超能力映画がSFというジャンルでくくってあるわけではなく、サスペンスやサイコホラーに属する作品もたくさんあります。

この「HEROES」は、SFというよりはサスペンスに近い超能力ものと言えるのかも知れません。ただ、登場する特殊能力者がタイムトラベラー、テレポーター、予知能力者、飛行能力者、肉体再生能力者、読心術者、放射能発散者、透明人間、怪力人間、壁抜け人間、サイコキネシス能力者、発火能力者などなど、派手な能力者ばかりが登場するところは、アメリカドラマだな、と感じます。もう少し身近でも起こりそうな、地味な能力+サスペンスの方がよりリアリティが出たのではないかと思います。

それでも、それぞれの個性を生かした人間ドラマとしての完成度が高いのか、かなり集中して観られました。続きを早くみたいと思えるドラマとしては、「ツインピークス」「Xファイル」「スターゲイト」などが挙げられますが、この「HEROES」もあっという間に全話見終わってしまった、という感じです。


まだドラマを見ていない方のために、簡単に内容を紹介します。

何気ない普段の生活を営む人々の内、一部の人間に特殊能力が芽生え始める。どんなに傷つけられても決して死なない体の少女、鏡の中のもう一人の自分と入れ替わった時に、とてつもない力を発揮する母親、自分は空を飛べると信じている青年、人の心が読める警官、時空を飛び越えてヒーローになれると思いこむ日本人サラリーマン、能力者の脳を切り取り、その仕組みを吸収する殺人鬼。……それらはまるで違う世界の話のようで、少しずつひとつの方向へと導かれて行く。味方かと思えば裏切られ、敵かと思えば味方に転身する人間関係。彼らはなぜ能力を持っているのか、ニューヨークの壊滅を防ぐのは誰なのか。それぞれの思惑と能力が入り乱れ、彼らを最終決戦の場へと導いていく。

この物語でおもしろいな、と思わせてくれる部分は、なんと言ってもキャラクターのバリエーションが豊富だということです。ある者は能力に戸惑い、ある者は世界を救おうと本気で取り組み、ある者は犯罪に手を染める……しかし、それぞれの人生の背景を描くことによって、単なるエンターテイメントではなく、深みのある人間模様が描き出せているのではないでしょうか。

そして、ドラマはこんな能力を持ったら自分だったらどうするだろう……と考えさせてくれます。ひたすら隠すのか、金儲けをするのか、人助けをするのか、世界を征服するのか、スーパーマンになるのか……どのパターンもこの物語の中にあるのです。つまり、単独主人公の存在しないドラマだからこそ、観る側の感情移入できるキャラもそれぞれ違ってくるという訳ですね。

僕だったら誰だろう……やはりマシ・オカ演じる「ヒロ」でしょうか。時間をあやつり、時を止め、テレポートし、タイムトラベルをする能力……ほしいですね〜。逆に絶対ほしくない能力もあります。クレッグ・グランバーグ演じる警官、マットが持つ人の心を読む能力です。聞きたくなくても人の考えが聞こえてしまうなんて、気が変になりそうです。

キャストとして気に入ったのは、なんと言ってもヘイデン・バネッティーア演じる不死身の少女クレアです。かわいいです! 調べたところ、なんと生後11か月でデビューし、そのまま売れっ子の子役になってしまったということで、18歳とはいえ経歴は長いんですね(安達祐実もビックリ?)。

逆に、これは変だろうというキャストとして、マシ・オカ演じるヒロを挙げさせてもらいます。まあ、いかにも日本人らしいオタクっぽいサラリーマンが時間を操る能力を持ち、ひょうきんな行動をする、という設定は良いとして、なんといっても彼に関わる日本の表現がおかしすぎ! 以前映画「コンタクト」の紹介の際、変な日本人について書きましたが、この「HEROES」に登場する日本は“変の極地”です。未だにハリウッドは、日本をこんな感じにしか表現できないのかと思うとがっかりします。

マシ・オカは、今やアメリカで最も有名な日本人と言われています。「HEROES」の中でもキーパーソンとしての役割を果たし、彼のストーリーでシーズン2へと突入します。最近、日本人が活躍する映画やドラマが少なくなったと感じている今だからこそ、これは嬉しいことではあります。しかし、マシ・オカの演技ってどうなの? 滑舌の悪さはどうなの? と思ってしまうのです。

マシ・オカは東京生まれの日本人となっていますが、6歳でアメリカに渡っており、その後どれだけ日本と関わってきたのかわかりませんが、日本語のイントネーションがおかしかったり、滑舌がすごく悪かったりという部分を見る限り、生活の基盤はアメリカであったと思われます。元々俳優ではなく、本業はジョージルーカスのスタジオで働くVFXスタッフなのだそうです(IQ180の天才少年だったそうですが)。

とはいえ、マシ・オカは今ではアメリカで大人気。演技力というよりも、ネイティブな日本人にはないユニークさが受けているのかも知れません。しかし、しかし! だからといって、アメリカ人のイメージに合うように、わざわざ日本のイメージをねじ曲げて表現するというのはどうなんでしょうか。サラリーマンは全員グレーのスーツで七三分け、ビルの屋上で変なラジオ体操、繁華街はどこかの安っぽいアトラクションのような造り、カラオケバーでは変なダンサーが踊り、道行く女子高生は皆変な制服を着た東南アジア系の人たちばかり。日本人の話す言葉は、駅の構内放送に至るまですべてが「カタコト」(唯一、ヒロの姉だけはネイティブな日本語を話していましたが、言動はやはり変でした)。

メイキング映像を見ると、日本語はマシ・オカが自ら翻訳している、と話しています。……う〜む、なぜ日本人の翻訳家に依頼しないんだろうか……それよりも、なぜ本物の日本人を使わないのだろうか……これが、アメリカ人の見る日本のイメージなのかも知れません。逆に本当の日本人を使うと、違和感を覚えてしまうのでしょうか……(少なくともヒロの親友役であるアンドウくんを韓国人のカイソン・リーが演じるより、日本人俳優の卵を探してきた方が良かったのでは? と思いますが)

変な日本人の表現にはマシ・オカも気がついているようで、シーズン2からはそのへんを是正したいと言っているようです。期待しましょう。

そして、日本人繋がりですが、個人的に「おお!」と思ったのが、ヒロ・ナカムラの父親であるカイト・ナカムラです。最初「どっかで見たことのある人だなあ」と思っていたら、なんとスタートレック・宇宙大作戦のミスター加藤役、ジョージ武井ではないですか。懐かしい! 相変わらず日本人離れした渋い声です。

もう一点、「HEROES」で気になるのが、ストーリーの整合性です。全体としてはなんとなくうまくまとまっているように思えますが、よく考えたら、あの時登場した、あの能力者はどこ行ったんだろうとか、あの時こうしていたら問題は解決したはずなのに……という部分が随所に見られますし、根幹を成す闇の組織が何なのか、最後までさっぱり解りませんでした。シーズン2以降に課題として残しているということでしょうか。シーズンをまたいででも、シナリオの整合性はしっかり押さえてほしいものです。

日本でこの手のドラマや映画を作ると、どうしても子供向け作品になってしまいます。大人でも楽しめるSF作品を作れるという点では、やはり日本とアメリカの制作者と視聴者双方の、成熟度の違いを感じずにはいられません。当分はアメリカのドラマに楽しみを求めることになりそうですが、日本のドラマも頑張ってほしいものです。

最後に、水野晴郎さんのご冥福をお祈りします。

【まつばやし・あつし】イラストレーター・CGクリエーター
< http://www.atsushi-m.com/ >
pine4980@art.email.ne.jp

photo
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マイロ・ヴィンティミリア.マシ・オカ.ヘイデン・パネッティーア.センディル・ラママーシー.アリ・ラーター.エイドリアン・パスダー.サンティアゴ・カブレラ.グレッグ・グランバーグ
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン 2008-03-20
おすすめ平均 star
star面白かったですよ。
star日本人には……それ程、うけないと思う
starLOST、プリズンブレイクに次ぐ作品
star漫画みたいな映画
starありがとう、楽しめました。

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by G-Tools , 2008/06/12