ネタを訪ねて三万歩[41]哀愁の名犬ロンドン物語
── 海津ヨシノリ ──

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●InDesignのセミナー

今月の頭に開催された「富士ゼロックス東京どこでもフェア」で、InDesignのセミナーを五回行ないました。同じ内容といっても、私にとってInDesignと銘打ったセミナーは初めてのことで、かなり緊張してしまいました。もっとも、普段使っているソフトなので、いつものように私なりの使い方を整理しました。それが一番ですね。ここが重要なわけです。私はInDesignを仕事で使っています。教科書的な使い方ではないかもしれませんが、そんな使い方を常時している方は少ないでしょう。

で、以前どこかで揶揄された「海津さんは画像屋」というイメージが及ぼした影響は大きく、困ったものです。また、どなたが発した言葉だったか忘れてしまいましたが、しばらくは「海津さんもページものやるのですか?」といわれ続けて、対応に疲れました。InDesign的な処理は、アナログ時代のグラフィックデザイナーは誰もが行なっていたわけで、別に珍しくもなんともないわけです。もはや、時代はグラフィックデザイナーと言っただけでは通じなくなっているのかもしれませんね。



さて、肝心のセミナー内容ですが、InDesignはどちらかというと地味な処理のソフトであることは否定できないので、はじめはかなり苦慮しました。セミナーってある程度のショー的要素が不可欠ですから。しかし、タイムリーなことに、雑誌広告デジタル送稿推進協議会が「JMPAカラー準拠PDFワークフロー」策定し6月1日に公開したことに連動し、PDF/Xの話とIllustratorの補完ツールとしての個人的な使い方に絞ってみました。

※雑誌広告デジタル送稿推進協議会
< http://www.j-magazine.or.jp/information/pdf_format.html
>

ところで、そんなセミナーが終わった後で、いろいろな方と名刺交換したり質問を受けている中から、突然後輩が現れてびっくり。私が卒業して一昔経過したぐらいに入学してきた方ですから、通常ではあり得ない出会いです。でも、関わった教職員は同じでしたので、話は一気に加速し、不思議な盛り上がりを見せました。実は、同じ科の見知らぬ後輩に会うのは初めてだったのです。その後の私は学生の頃に戻り、思い出の湧き上がりが止まらず、そして芋づる式に様々な記憶がよみがえり、その先に、私が子供の頃に影響を受けたドラマが突然浮かび上がってきました。

●名犬ロンドン物語

Littlest Hobo : TV Series Collection Vol.1 (2pc)唐突に「名犬ロンドン」のDVDを二枚も衝動買いしてしまいました。正確なタイトルは「名犬ロンドン物語」ですが、原題は"The Littlest Hobo"であったことを改めて確認しました。これは、1958年に公開された同名映画のヒットにより作成された、1963年のTVシリーズですが、映画は合衆国制作なのに対し、このTVシリーズはカナダの作品であったことも今回確認しました。

見知らぬ街に現れ、困っている人を助け、静かに別の街へと去って行くロンドンの姿は、哀愁漂うテーマソングとともに永遠に頭の中から消えませんでした。50年ほど前の北米の良心、そして哀愁との再会というわけです。しかし、どうもロンドンは一頭ではないような気がします。エピソードにより顔つきが明らかに違うのです。

ちなみに、どうして邦題が「名犬ロンドン物語」であったかというと"The Littlest Hobo"の主役が、"London"という犬だったからのようです。冒頭のテロップにも"Starring London"と出てきます。これも初めて気が付きました。

このDVD、偶然発見したものでした。実はアマゾンである調べ物をしていて、突然画面に出てきたのです。ただし、出てきたのは正式に日本で販売されているらしいもので、価格的にわざわざ買うほどでもないと思った次の瞬間、完全英語版がかなり安く出ていることを知り、衝動買いしてしました。当然リージョンコードは1番なので、強引ではありますが、パソコンでしか見ることは出来ません。

しかし、今後もそんなDVDを見る機会を想定し、思い切ってリージョンフリーのDVDデッキまで買ってしまいました。ただし、それでも国内DVDを二本買う程度で済んでしまったので、かなりお得だったかも知れません。

で、現物が届いて大ショック。リージョンコードは1ではなくてAll(フリー)でした。アマゾンの記載ミスです。つまり、どの国の環境でも再生可能だったのです。でも、それでも今後リージョンコード1のDVDを必要とする場合もあるでしょうし、価格も安かったので落ち込み度は軽くて済みましたが、もっとも期待していたクローズドキャプションシステムに未対応であったのはがっかりでした。カナダ製(?)なのでADA法とは無関係だからかもしれません。

※クローズドキャプション(closed captioning)とは、米国のNational Captioning Institute(NCI)が開発し、米国の連邦通信委員会が承認した米国方式の文字放送。

※ADA(Americans with Disabilities Act)法とは、1990年、障害などによるあらゆる差別を禁止した法律。その中で、13インチ以上のテレビにクローズドキャプションデコーダーの内蔵を義務づけており、日本の地上デジタル放送よりも早い段階から普及していた。そのため、日本では馴染みがなかったが、例えば通常の字幕と異なり、擬音や無音状態の説明までもが画面に表示されるといった具合に、語学学習者に密かなブームを作っていた。

話を戻すと、古いTVドラマを見て喜んでいるなんて、懐古趣味だと思われるかもしれません。否定はしません。でも、こんな心温まる作品を最近見ていないような気がします。『相手の立ち位置で態度を豹変、あるいは使い分ける人』『何事も損得でしか考えない、交際しない人』『組織の中で自身は何もしていなかったのに、何かトラブルがあると、あたかもそこの重鎮であったように振るまう人』……。すべては、尊敬という心を失ってしまった人のなれの果てなのかもしれません。

本当に素晴らしい人は地味で目立たないということを、誰もが忘れてしまったような気がします。そんな嫌な現実も、古くからの友と定期的に呑み交わす酒が適度に中和させてくれます。こんなときは完全にオジサンモードですが、心優しい友に恵まれていることに感謝しています。そんな癒しでもなければ、ストレスで身も心もズタズタになってしまいますからね。

●変わらない風景から

遠い昔のTVドラマで思い出したことがあります。何十年経過しても変わろうとしない身近な風景。それは私の生活に何の意味も持たないガード下や、古い建物の階段だったりします。前に話した下北沢の一角のような感じです。そんな場所に迷い込むと、子供の頃にその場で起きた様々な出来事が昨日のように蘇ります。凛として変わろうとしないその場所からは、安易な変化だけを求めている現代に対して、大切なものが何であるかを警告しているかのように感じられます。

それは、決して美しくもなく、話題に登ることもない普通の場所だから生き続けているのかもしれません。もちろん、現代を否定しているわけではありません。多感な子供の頃に感じた様々なモノが、年を重ねる毎に少しずつ消えてしまうことへの危機感といったところです。ですから、今現在、違和感を覚える真新しい世界は、今を生きる子供たちにとって脳裏に焼き付く風景なのです。彼らが数十年か後にその風景と再会できるかは別として。

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今月のお気に入りミュージックと映画
"I'm a Believer" by The Monkeys in 1966
"フワフワ・WOW・WOW" by 石川セリ in 1975
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"となりのトトロ" by 宮崎駿 in 1988(日本)
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7月21日(月・祝)19時からの、アップルストア銀座のセッション
Made on a Macとして画像処理セッション『海津ヨシノリの画像処
理テクニック講座Vol.24 Photoshopフィルタ塾/後編「低解像度画
像の活用法」どうしても使わなくてはならない時の対処方法と、一
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【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター

・エポックメイキング的なTVアニメ
大学の講義の最後に、昔のTVアニメやドラマのさわりを必ず見せるようにしています。本当は一作品を完全に見てもらいたいのですが、時間が許してくれません。単なる私の趣味の世界と誤解されそうですが、昭和30年代、40年代の作品は広告業界やその後のドラマ等に影響を与えたエポックメイキング的な作品が目白押しで、その背景や関連性等について知っておいて損はないでしょう。そんな気持ちで、昨年から少しずつ始めていたのです。もし受けなかったら止めちゃえばいいわけですから。ところが意外に受けているようで、最近はヒートアップぎみです。

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