装飾山イバラ道[17]パリ旅行記(7)ノートルダム寺院の塔に上る/武田瑛夢

投稿:  著者:  読了時間:6分(本文:約2,500文字)


前回の続きで、パリのシテ島にあるノートルダム寺院の塔へ歩いて上るの話。塔へは、寺院の外の塔入り口にできた長い列に並ばなければならなかった。

行列中、ベビーカーで赤ちゃんを連れてきた夫婦がなにやら係員ともめている。どうやらベビーカーは上に運べないし、赤ちゃんを抱いて上るのもダメ、一人は必ず下で赤ちゃんを見ていなさいということらしい。この理由は実際に階段を上り始めるとはっきり分るのだけれど、歴史的建造物は厳しいんだなぁと思って見ていた。

長い列がゆっくりと消化されて、やっと自分たちの番が来た。一列になって階段を上り始める。石造りの階段の幅は思ったよりずっと狭く一方通行だ。しかも、螺旋階段の半径がとても小さくて、カーブが急なので辛い。階段は当時のままの石造りで、人が歩く中央部分が磨り減ってへこんでいる。いったい今まで何人の人が歩いてきたのだろう。



こりゃ思ったより甘くないな、そういえば何段あるんだろう。上る前に調べなかったことを悔やんでも今更遅く、自分の後ろにはどんどん人間の列が続いていく。上る速度もタンタンタンと一定のリズムで行くので、自分の前に空間を作るのは申し訳なくてがんばって上るしかなかった。

タイミングが悪くて最上階へ行けなかった、エッフェルの悪夢がよぎる。細長い筒状の螺旋階段が延々と続き、アリになったような気分。

こんなに厳しい階段上りだとは、たぶん待っていた人のほとんどは知らなかったと思う。話しながらなんてとんでもなく、黙々と行く。途中に灯りが点されているのがせめてもの救いだった。ちょっとした足場で休む人がちらほら出始めたけれど、一人がやっと立てるくらいの場所だし、そんなところで止まってしまったらかえって怖いと思う。だって、あと何段上ったら広い所に出られるのか分らないのだから。

私は軽い閉所恐怖があるので、できるだけそのことは考えずに上へ上へと足を進めた。やっと空気が新鮮になり、自然光が射し込んで広い場所に出た。ちょっと生き返ったような気持ち。

塔の3分の2ほどの高さにあるキマイラの回廊から見られる景色は、家々が絵のように美しくて素晴らしい。手すりの石像ガーゴイルがかっこいい。この怪物像は何種類もあり、ゼルダなどのゲームに出てくるお城のようなムードだ。和で言うと鬼瓦やシャチホコのようにも見えるけれど、元々は排水口の役割もあるという。

・塔の中ほどから見た景色
(手すりの石像ガーゴイル)
< http://www.eimu.com/dgcol/nok1.jpg >
 拡大(640×480)
< http://www.eimu.com/dgcol/nok2.jpg >

この階ではおみやげ屋さんがあって、皆をいったん休ませるらしい。一番上の展望台へ向かう階段も狭いので、人々を消化するのに時間がかかるし。

寺院のショップにはロザイオやゴブラン織りの小物があって、とても趣味が良かった。手作りのような雰囲気のものが多く集められ、大量生産品にはないイメージのもの。素朴でおみやげによさそう。

・ショップに飾られたノートルダム寺院の模型
(二つに分かれた一番高いてっぺん部分を目指している)
< http://www.eimu.com/dgcol/nom1.jpg >
 拡大(640×480)
< http://www.eimu.com/dgcol/nom2.jpg >

人々が集まってきて、いよいよまた階段上りが始まる。今度はさらに幅の狭くなった階段で、全く人とすれ違うこともできないくらいになった。そういえば、塔というのは上が細くなっているからな。ここまで来たからには上に行かないと、そう思ってがんばる。後で調べたら、階段は全部で387段あるらしい。

とうとうノートルダム寺院の模型写真にある一番上の部分へ出られた。素晴らしい眺めと達成感できもちいい。展望スペースは石造りのバルコニーのような形状で、やはり人が一人づつしか通れない。こんなに狭いのかというくらい。確かにベビーカーは無理だし、階段のことを考えてもとんでもないことだ。

・展望スペースから見た景色
< http://www.eimu.com/dgcol/top1.jpg >
 拡大(640×480)
< http://www.eimu.com/dgcol/top2.jpg >

落下防止のためか、手すりから安全のための金属のネットが張ってあった。何か狭い入り口があったので入ってみると、有名なノートルダムの鐘があった。危うく見逃すところだ。ものすごい厚みの金属製で、手で触ることもできる。

さて、降りましょうと思っても、また同じだけの螺旋階段で降りるんだな。自由がきかないというのは、都会ではなかなか感じないストレスだ。しかし、下りは上りよりもずっと楽で、あっという間に感じた。地面につくとホッとする。

ノートルダムは中の装飾も素晴らしいし、さすがに世界遺産だと思う。塔へ上るのは、ちょっと覚悟がいるけれど、作られた当初のままの建造物という味がある。内部にはステンドグラスを透かして見る外からの光の緻密さがあり、塔の上から見た景色では街全体が何かの細工のように感じられる。人が作るものの美しさを実感できる場所だった。

次回もパリ旅行記がつづきます。

【武田瑛夢/たけだえいむ】 eimu@eimu.com
行方知れずだった商店街のネコが戻ってきたかと思えば、まただんだん太りはじめている。いなかった時の分の愛情をもらってしまっているのだろうな。

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武田 瑛夢
エムディエヌコーポレーション 2007-09

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by G-Tools , 2008/07/08