わが逃走[27]昔の◯◯◯とヨリを戻すの巻/齋藤 浩

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浮気をした。というか、昔の女とヨリが戻ったというか。と言っても相手は人間ではない。カメラである。デジタル時代に突入して以来、一眼レフはずっとEOSを使っているのだが、まさかここへ来てαとヨリを戻すことになろうとは。まったく人生とは奥が深いものよ。と思う今日このごろな俺だ。


1●出会い

αと出会ったのは忘れもしない、高校2年の夏。友人がバイトして買ったというミノルタα7000(35mm-70mmズームレンズ付)を触らせてもらったときだ。驚愕だった。絞り優先AE、シャッター優先AEはもちろん、プログラムAEもついている。が、そんなものはもう当たり前か。

なんといっても驚くべきことに、ピントが自動で合うのである!!! そんなことしたら、カメラマンは構図を決めるだけじゃないか! なんじゃそりゃ!ピントまで機械任せになったらこの世はおしまいだね。と思ってシャッターボタンを半押ししてみると、ウィーンというモーター音とともに、すげえ! ホントにピントが合った!!!

うわっ、これほしい! いくら? うわー、買えねえ!!! その頃すでに巷で話題になっていたα7000だが、実際に触ってみて、カメラという道具の行き着くところ、完成形が見えたような気がした。

男は“新型メカ”に弱い。私もそんな少年だった。自力での購入はさっさと諦め、なんとか父に買わせる訳にはいかないものかと、いろいろ考えた。その日の夜、父に「α7000というカメラはスゴすぎる。買いなさい」と言ってみたところ、「それならじいさんが持ってるよ。でも、操作が難しいといってもてあましているみたいだから、こんどもらってこよう」

スゴイ! 人生の運を全て使い果たしたのではないか? そんな訳で17歳の私は全く苦労することもなく、あっさりとその新型メカ『α7000』を使える身分になったのである。

そして、その後30代半ばまで使い続けたのだった。このカメラからは多くのことを学んだ。そして、デザインの道を歩む者にとってこのα7000というカメラは、ものすごく使いやすいカメラだった。

第一印象で「カメラマンに残された自由は、構図を決めることだけになってしまった!」とネガティブに捉えたオレだったが、使い始めるとすぐ、構図を決めることに思い切り集中できることのスゴさを知った。「間違いのない写真を撮る」ことではなく、「伝えたいことを伝えるための絵作り」の大切さを、このカメラから学んだのである。

2●破局

ところが。世の中の一眼レフが続々とデジタル化されはじめた2000年代初頭、待てど暮らせどαデジタルは発売されない。

おかしい! そんなはずはない!! αは常に最先端じゃなければいけないのだ。AF一眼界をリードし続けたブランドが、なぜここで遅れをとるのか。……やっぱ不景気だからかねぃ。そう、この頃の世の中は、どうしようもない程景気が悪かったのだ。そうこうしているうちに、コニカとミノルタの合併が発表される。……やっぱ不景気だからだねぃ。

αデジタルが発表されないのは、きっとこのごたごたが原因なんだろうな。開発者もそれどころじゃないんだ。しょぼーん。そうこうしているうちに、仕事でどうしても高性能なデジタルカメラが必要になってきた。

ちょうどそのタイミングで、あの伝説の価格破壊デジタル一眼レフ『EOS Kiss DIGITAL』が発表されたのだ。切羽詰まってた私はここでミノルタαとの縁を切り、キヤノンEOSへと鞍替えしたのだった。

3●新生活

EOSは、言ってみれば優等生なカメラだ。現在までに3台買い替えて、今はEOS 40Dを使っている。

特に不満はない。挙げるとすれば、初期不良にあたりやすいところくらいかな。安くて質の高いレンズが各社から発売されており、レンズ選びの幅が広い。これはとてもイイことだ。オプションも充実している。

そんな訳で、仕事の写真や、自主制作ポスターなどの素材写真はほとんどEOSで撮るようになった。その間αは大変なことになっていた。キヤノン、ニコンに遅れをとるもなんとかコニカミノルタからα7 DIGITALが発売されたものの、コニカミノルタはすぐにカメラ事業からの撤退を発表、αブランドはそっくりそのままソニーへ譲渡されることになったのだった。

4●再会

そして5年あまりが過ぎて、今年の夏だ。ひょんなことから再びαに興味をもちはじめた私は、某カメラ量販店に行ってソニー製のαをいじくってみたのだ。第一印象はあまり良くなかった。清楚だった昔の女・αは、なんかケバくなっていた。

わかりやすく言えば、シックな黒を基調とした落ち着いたデザインだった光学機器・ミノルタαに比べ、家電っぽいのだ。脇に斜めに「14.2MEGA PIXEL」とか書いてあったりしてダサイ。当たり前だが、おでこ(ペンタプリズム部)にデカく『SONY』書かれていることにも違和感を覚える。

ソニーは家電やオーディオでは一流ブランドだが、カメラでは新参者なのだから仕方ないといえば仕方ないが。まあ『Canon』ロゴの入ったアンプがあったら、同じように感じるのだろうから。とはいえ慣れは必要だな。

で、α350というモデルを手にとってみた。小さいのにしっかりホールドできる。形状はかなり良い。しかも軽い。EOSのエントリーモデルだった Kiss Digital Xは、小さいけどホールドしにくかったので、わざわざグリップを付けて使っていたのだが、そんなことをしなくてもよさそうだ。

操作系統も良い。勘でほとんどの操作ができた。銀塩αを長年使っていたからなのかもしれないが、EOSよりも体で理解しやすい印象だ。ファインダーも見やすい。さすがに銀塩35mmのものと比べれば小さいが、充分実用的。

しかも、驚いたのがライブビュー機能だ。正直、私は一眼レフにライブビューなんて……と思っていた。ところが、実際使ってみるとスゲー楽しい。何故か??

このα350の液晶モニタはマルチアングル機能とやらが付いていて、かなり自由に角度が変えられるのだ。カメラを高く持ち上げて下からモニタを見れば、塀の向こうの風景もきちんとフォーカシングできるし、普通に首から下げた状態でモニタを90°傾ければ、ウエストレベルカメラとして使える! すげえ!これって二眼レフの感覚で撮影できるってことだ。しかもデジタル1460万画素。αマウントは健在だからミノルタαレンズも使えるし。αレンズ、オレ持ってるし。

で、値段いくら? 欲しい!! そこで衝動買いをしたかというと、しませんでした。1ヶ月ほど悩みつつ、ネットでいろんな情報を調べてみたのです。するとどうでしょう、α350の平均価格はどんどん下がっているではありませんか! ついにレンズキットが7万円を切った!と思ったら、1万円キャッシュバックキャンペーンが始まったのだー!! これは実質5万円台ってことです。

メインで使うカメラはEOS40Dだけど、EOSとは違った使い方できそうだし。こっちの方が画素数、上だし。なんか言い訳っぽい独り言が増えてきたところで、ネットでポチッと買ってしまいましたとさ。

5●復縁

で、α350が手元に届いた。早速いじくってみた。形状は文句なしなんだけど、やはりグラフィックが少々やりすぎな感じだ。レンズキャップを付けた状態で前からると、「SONY」「α350」「α」「α」「14.2MEGA PIXEL」って、うるさすぎだー。なので、「SONY」と「α」だけを残して黒テープで覆ってみた。お。なかなか美しい。

ストラップは派手すぎる感じだったので、以前購入したツァイスの双眼鏡用のものに変更した。これで赤い部分はαロゴとマウントのラインだけで、あとは全て無彩色。なかなかかっこいい。ちょっとしたことだけど、こうやって自分好みに仕上げると俄然愛着がわいてくる。



撮ってみた。自然な描写。アップにしてもなかなかジャギが出ない(=解像度が高いってことか)。もはや画素数至上主義な世の中でもないだろうが、確かにすごい。写真1枚の情報量が40MBオーバーというのも、ちょっと前の普及機ではありえなかった。

えー、私はその昔デジタル画像処理創成期の頃(90年代初頭)、イギリスはクオンテル社の『グラフィック・ペイントボックス』を使って仕事をしていました。その当時B1ポスター用に必要な画像の大きさが、だいたい40MB程度でした。それをデータ入稿なんかまだできなかったもので、4インチ×5インチのポジに出力して入稿したもんです。

そんな訳で、納得のいくクオリティでポスターが作れる自分なりの基準が、40 MBなのです。シャッターを押すだけで40MBの画像が得られる機械をお手頃価格で手に入る時代になってしまったんですね。ちなみにその当時、『グラフィック・ペイントボックス』は1億5000万円もしたのです。21世紀ってすごい。ちなみに、先述したウエストレベル機として使うと、こんな感じになります。

銀塩αで使っていた望遠ズームをつけてみた。このカメラのスゴいところは、ボディ内に手ぶれ補正機能がついているところだ。これにより、昔のレンズも全部、手ぶれ補正レンズになっちゃう。

α350のセンサーはAPS-Cサイズなので、35mm換算で焦点距離が1.5倍になる。つまり、300mmの望遠レンズは、450mmの超望遠レンズになっちゃうのだ。向かいの家の瓦屋根を撮ってみると、瓦を止めてある針金までぶれずに撮れた。手持ちなのに。


そういった訳で、αかなりイイかも。初期不良もなかったし。正直、クヤシイです。違和感を覚えながらもここ数年、私はEOSのためにどれだけ尽くしてきたことか。それ即ち、どれだけEOS用レンズやらアクセサリーやらを増やしていったか。今さら後戻りはできない程度の出費と言えましょう。

でも、ソニーαからは、近日中に35mmフルサイズのフラッグシップモデルが登場するとの噂も聞きます。フルサイズってことは、銀塩αで使っていたレンズが同じ画角で使えるってことだ。15年以上も愛用していた標準ズーム28-85も、まだまだ使えることになる。中古市場にはミノルタ製αレンズも豊富にあるし。

とはいえ、いきなり全てのEOSを売っぱらってαのシステムを揃え直すのも無駄が多いよなあ。甲斐性さえあれば、二股かける人生もいいよなあ。などと、一般人からはどうでもいいと思われることで悩み続ける齋藤浩なのであった。

6●これから

仕事はEOSデジタル、趣味は銀塩BESSAと心に決めていた俺様だったが、ここへ来てα愛が再び目覚めるとは、人生わからんね。夏休みもまだとってないことだし、α片手に、撮影旅行なんかに行きたいです。

近日中にウエストレベル・ファインダーで撮影したワビサビのある写真を紹介できたらいいなあ。と思う今日このごろ。

【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。
< http://www.c-channel.com/c00563/ >

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by G-Tools , 2008/08/21