グラフィック薄氷大魔王[148]スピーカーとヘッドホンと、iGeek Hear/吉井 宏

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Pioneer 増設用デジタルコードレスヘッドホン SE-DIR1000集合住宅では、いいスピーカーは無駄だと思う。迷惑になってないか心配で大きな音が出せない。時速300キロ出るクルマを時速30キロでしか運転しないようなもの。で、5年ほど前からパイオニアのサラウンド・コードレス・ヘッドホン(SE-DIR1000)を使っている。DVDを観るときにサラウンドを効かせると、映画館で観ているような臨場感がある。音楽もホールで聴くような拡がりのある音になる。

普通のヘッドホンでは、ステレオの音場は頭の内側にある。右耳から左耳の間に楽器が並べてある感じ。長時間聴くと、頭の中に音がぎっしり詰まって疲れてしまう。ところがサラウンドヘッドホンでは、ちゃんと頭の外から音が聞こえるのだ。リアルな音場ではないかもしれないけど、頭の中で鳴らないだけで、すごくラク。疲れないのです。

ただし、このヘッドホン、とても大きくて重い。音楽ノリノリで首を振ることもできない。姿勢を変えるとズリッと動いたりして不快。本体にヘッドホンジャックがついているので、イヤフォンを繋いでしのいでいたのだが、最近は安い軽量コードレスヘッドホンを繋いでいた。つまり、コードレスヘッドホンの直列二段重ね状態。さすがにバカバカしいのでなんとかしたいと思っていたところ、いいソフト発見。



HeariGeek Hearというサウンドエンハンスソフト。こういったソフトはiTunes向けにはあったけど、HearはMacの音全体をカバーする。サラウンド効果も搭載。一ヶ月使える体験版をインストールしてみた。音楽や映画のジャンルに対応した100種類以上のプリセット設定があり、自分で作った設定を保存することもできる。

iGeek Hear
< http://www.igeekinc.com/products/hear.html >

プリセットを次々に試してみたけど、う〜〜〜ん、音にまったくうるさくない僕が聴いても、ほとんどの設定がイマイチな気がする。音がバリバリに割れたり、風呂場に巨大スピーカーみたいな音空間、極端にイコライザーがかかって聞こえなくなる音も。何気なしに聴く分にはそれほど変じゃないプリセットも、原音をよく知ってる聞き慣れた音楽や自作曲では、非常に変に聞こえてしまう。空間の拡がり具合やイコライザーなど、非常に細かく音質設定ができるので、慣れてくれば不自然でない設定もできるんだろうけど。

で、効果の控えめなプリセットを選んで設定をさらに弱めにしてみると、まあそこそこイケる。説明書を読んだら、プリセット名にSのつくものはステレオ、Hのつくものはヘッドホン、らしい。そのつもりで聴いてみると、なるほど、悪くない。サラウンドヘッドホンの音質には遠く及ばないものの、気軽に音楽や映画を楽しむには十分。机の上のサラウンドヘッドホンユニットとスピーカーを片付け、軽量ワイヤレスヘッドホンだけにしちゃいました。快適です。

●おまけ iPhone/iPod touchアプリ「PaklSound1」

TENORI-ONのお手軽真似っこソフトとでもいうのかな。音はピコピコシンセ音とドラム音の2トラックのみで音色は固定、シーケンスは1小節を2パターンだけ。機能はお話にならないくらい少ないけど、TENORI-ONを初めていじったときの楽しさのダイジェスト版って感じでけっこう楽しめる。お値段は本物の千分の一以下の115円! しかし、低価格や無料でおもしろいオモチャ的iPhoneソフトがどんどん登場するのはいいんだけど、次々インストールするから8GBのiPod touchじゃ容量が心配。

< http://pakl.net/iphone/PaklSound1/ >

【吉井 宏/イラストレーター】 hiroshi@yoshii.com

崖の上のポニョ サウンドトラック「崖の上のポニョ」、観てきました。大人的には突っ込みどころ満載なのですが、やっぱポニョのキャラクターの魅力と「手書き」アニメーションの映像。特に、ポニョが波の上を走るシーン。こりゃあもう、何か神々しいものを感じました。そして、涙腺こわれました。なんちゅーか、昔、教科書の端っこにパラパラマンガ描いたじゃないですかー。何時間もかかって最初のページから最後のページまで描くでしょ。で、パラパラやると動くわけです。紙の上では止まってる絵が滑らかに動くこと自体に大感動するわけですよ。あのシーン、パラパラマンガで感動したのと同じ快感が1000倍に増幅されて脳ミソに降り注ぐ感じ、と言えば、わかってもらえるかなあ。あの映像を作るため、制作費を工面するため、しかたなく「劇場映画」という入れ物を用意したのかも。伊集院光氏が以前言ってた「『いぬのえいが』は涙グショグショになるけど、泣かせるからいい映画かというと、そうとは限らない」と似た意味で、ポニョの映画としての出来は評価の分かれるところかもしれない。たぶん、破綻なくきっちりまとめるのは最優先事項でないのかも。でなきゃ、ストーリーの後半が未定のまま制作スタートなんてできないはず。全編に渡ってこれでもかと動かしまくる絵のとんでもない密度は圧倒的で、それで十分だと思いました。この絵のパワーを維持するためなら、ストーリーや設定など破綻しててかまわないです。僕的には「千と千尋の神隠し」と並ぶ大傑作(「手書きだからすごい」とは意地でも言わないぞ。「Mr.インクレディブル」で、自分の能力を初めて解放した少年が、森や水面を猛スピードで走るシーンも同じくらい感動したからね〜)。あと、無駄にロマンチックっぽい「人魚」ではなく、ちゃんと「人面魚・半魚人」として扱ってるところがすごい好き。そうそう、エンドクレジットが短くてすばらしいです。

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