買物王子のモノ語り 新連載[1]優等生のアイロン台は週末労働の救世主となるか?/石原 強

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この春に転職をして、職場環境が大きく変わりました。毎朝通勤ラッシュに巻き込まれるのも苦痛だけど、いまさらながら戸惑ったのは服装です。

新卒の頃から、自由な服装が許されていた職場だったので、ラフな格好で通していました。たまに顧客のオフィスに行くときだけスーツを着用していましたが、今度ばかりはそうはいきません。オフィスで着る服としては「Tシャツ」と「ジーンズ」は望ましくないとの服装規定があるのです。



基本的には、襟のついた「Yシャツ」を着ていなければなりません。そのくらいは大したことではないと思ったのは間違いでした。同じシャツでも「T」と「Y」の異なる点は、色だとか襟の有無だとかの見た目だけはなく「シワ」があってもいいのかダメなのかということなのです。洗いざらしで着られるTシャツと違って、Yシャツは「アイロンがけ」が必須です。一日一枚、一週間で五枚がたまります。

これをすべてクリーニングに出せれば簡単なのだろうけど、それはもったいない。無駄遣いをやめれば……という家人の指摘もあるけれど、それは無理。という訳で、週末に自分でアイロンをかけることになってしまいました。

毎週末に五枚をノルマとしてこなさなければならない。しかも一回サボると翌週には倍に増える。これが結構重労働。いくらきれいにかけたって、一回着たら終わりなんだから、シワがあったっていいじゃないかと愚痴ってみたり……。

なかなかキレイにかけられないので道具を変えてみようと、探し求めてたどり着いたのが通販生活の「立体アイロン台」です。値段が一万円を超えているのに、発売から12年のロングラン商品というのが信頼できる。この先一生、買い換えることなんてなさそうだし。キレイにアイロンできるならと、給料三か月分ならぬ、クリーニング代三か月分をはたいて買ってみた。

特徴としては、横から見ると台が平面ではなく真ん中が盛り上がった曲面になっている。そして肩の部分に出っ張りがある。ブティックの店頭にあって服をディスプレイする「トルソー」を半分に切って開いて潰したような形。使い方は台に服を乗せるのではなく「着せる」感じです。ぴたっと「着せる」とぴしっとかかる。このアイロン台だと急にアイロンがけがうまくなったみたい。

シャツを人間の丸みにあわせた台に沿わせればシワのない状態になり、そこにアイロンをあてれば、そのままシワがのびるということ。当たり前なのかもしれないけど、アイロンがきちんとかかるかどうかの鍵を握っているのはアイロン本体ではなく、アイロン台の方だと気がついた。というのも、アイロン台と同時にスチームがたくさん出ると評判のアイロンを買ったのですが、それまで使っていた安いアイロンでも十分でした。

このアイロン台を開発したのは、知る人ぞ知る大正13年創業の「斉藤アイロン台工業」。アパレルメーカーやクリーニング店など、プロが昔から愛用している「まんじゅう」と呼ばれる、丸く盛り上がったアイロン台に似せてつくられたのだそうです。

さらに、突起のあるボードに厚いフェルトを乗せてカバーする三層構造になっていて、スチームはすぐに抜けるけど、熱だけはこもる。生地に残った湿気で戻りジワになることを防いでいるということ。老舗メーカーが工夫をこらした、いわば「育ちが良い優等生のアイロン台」なのです。

しかしこの「優等生」には融通のきかないところがあります。それは価格相応に「キレイに仕上がる」けれども「ラクに仕上がる」わけではないということ。いちいち着せたり脱がせたりするのは面倒ですが、横着すると余計シワになってしまう。だから、手を抜くことができません。ネットには「ものの5分で仕上がる」と書いてあったけど、それはちょっとオーバーで一枚最低10分、手を抜かずにやると15分くらいかかります。

それに、アイロンがけそのものがキツイことに変わりはない。特に今年のように暑い夏の夜のアイロンがけは汗だくになる。クーラーをかけても手元に熱源があるのだから無駄だ。終わった思ったら、シャツに点々と丸いシミが。自分の汗か……。熱くないアイロンというのは、やっぱりできない話なんだよなあ。

通販生活「立体アイロン台II」
< http://kayoudayo.jp/customer/ServletB2C?SCREEN_ID=K_SHOHINDETAIL&hMoushikomi=1100200 >
斉藤アイロン台工業「マダムサイトウアイロン台」
< http://www.airondai.jp/ >

【いしはら・つよし】tsuyoshi@muddler.jp
しばらく連載はお休みしておりましたが、その間も買い物は増え続けています。宅急便が届くたびに、「いいかげんにして」という視線を向ける家人をよそに、さらなる高みを目指してモノ探しの旅に出ます。おつきあいくださいませ。
・ウェブアナ
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