わが逃走[28]モテる男と映画の話の巻/齋藤 浩

投稿:  著者:  読了時間:4分(本文:約1,700文字)


さいとうです。なんか本業が激しく忙しくて、月日が経つ感覚が麻痺しておりました。本日掲載の『わが逃走』ですが、締切はまだ一週間先だと思っていたのです。そんな訳でいま慌てて書いているのです。どうにも情けない話です。

さて、こんな困った状況に陥ったときの強い味方は夢の記録であります。私は一風変わった夢を見るタチでして、今までも名作『トクホン』や『竹輪宇宙人』、『明太子ボクサー』などをこの場を借りて発表してまいりました。今回は寝苦しい夏に見た新作夢、『映画館』と『モテる男』をご紹介いたします。



『映画館』

極親しい間柄の年上の女性Aさん(年齢非公開)と、渋谷に映画を見にいく夢を見た。劇場はホール1と2に分かれていて、1は大スクリーンだけど屋外。2は屋内だけどスクリーンが小さい。ちょうど温泉における内湯と露天の関係に似ている。上映している映画の内容自体は一緒である。

最初は大スクリーンのホール1に行ってみたのだが、昼間の屋外ゆえ、画面がぜんぜん見えない。国道246沿いにあるため車の騒音もひどく、セリフも全く聞き取れない。なので、屋内のホール2に行こうと極親しい間柄の年上の女性Aさん(年齢非公開)に言ったところ「あたしは大スクリーンで見たいの」とキツい口調で言われてしまった。仕方なくひとりでホール2へ移動した。

屋内の映画館は静かで広く、落ち着いていた。ただ、部屋の面積に対しスクリーンはかなり小さい。500人入れるホールに対し、17インチテレビ程度のサイズだ。しかも、何故か全ての椅子がスクリーンに対して逆に(後ろ向きに)設置されていた。

なので、画面を見るには体を180度ねじって後ろを向かなくてはならない。よく電車で子供が窓の外を見るようなポーズで、シートに膝を立てて画面を見ることは、この映画館ではカッコワルイとされているようで誰もやっていない。ほとんどの観客は、オープンカーでバックするようなポーズに似た体勢で映画を見ているのだ。私も体をねじってスクリーンに向かった。最初はいいのだが、だんだん首と肩が痛くなってきた。

痛くて目がさめたのだが、そのとき私はかなり体をねじった状態で寝ており、さらに着ていたTシャツが思い切りよじれていて、右肩から左裾にかけて引っ張られた状態だった。だから何だ、と言われてみればそれまでだが、往々にして夢とは意味不明なものである。

『モテる男』

男には二種類ある。ヤリティンとドーテーである。私の知人のモテ男ヤリティン君は、夢を見ると大抵の場合、「これは夢だ!」と眠りながら理解するそうである。そうとわかれば遠慮は無用! と、上司をはじめ著名なエライ人をぶん殴り、出演している好みの女性といいことをしまくるのだそうだ。

私は生まれてこのかた、一度もそのような夢を見たことがない。是非一度、女にモテモテな夢を見てみたいものよのう……と思い続けたところ、ついに俺がめちゃくちゃモテるという意味合いの夢を見ることができた。

4畳半の窓のない部屋に机と椅子。そこで私は考え事をしている。何をそんなに熱心に考えているかというと、今年一年で、何人のおねいちゃんとイイ仲になれたか、ということを思い出しているのだ。

「えーと、あれは確か2月……いや、3月だったかな。うーん、確かにおねいちゃんとイイ仲になったのに、どんな子だったか思い出せないなあ。うーん……」「あ、確か4月にも誰だったかおねいちゃんから声かけられて、そのまま、あーんなことや、こーんなことをしたと思ったんだがー。いや、したのは事実!さて、どんな娘だったかなあ。うーん、思い出せないなあ……」

と、ひたすらメモ帳とにらめっこするという内容。結局最後まで女性は一切登場しなかった。確かに『モテる夢』なのに、メモ帳とペンと机と椅子しか登場しなかったのだ。

そんな訳で、今日は過去最高に短い『わが逃走』でした。悪いけどもう寝ます。おやすみなさい。次回はちゃんと書きます。

【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。
< http://www.c-channel.com/c00563/ >