[2492] 「液晶絵画 STILL/MOTION」を見て

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<金持ちじゃないと作れないじゃん!>

■武&山根の展覧会レビュー
 現代における「絵画」とは何か?
 ──「液晶絵画 STILL/MOTION」を見て
 武盾一郎&山根康弘

■グラフィック薄氷大魔王[149]
 騒音吸い出しノイズキャンセリング・ヘッドホン
 吉井 宏


■武&山根の展覧会レビュー
液晶絵画 STILL/MOTION

武盾一郎&山根康弘
< https://bn.dgcr.com/archives/20080910140200.html
>
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武:さて、こんばんみ!

山:古っ! どーも。

武:いやー、ホント最近わけがわかんないですよ、いろいろ。天気はヘンだし、頭もヘンだし。

山:ようやく気付いたんか。

武:お、てことは俺に自覚が芽生えた、ということか、それは喜ばしい事だ。フォッフォッフォ。っつーか、どうやったら結婚出来るんだ?

山:結婚? 簡単やん。書類にはんこ押して役所に出せばええやん。

武:役所手続きの話しじゃなくて! ワーキング・プアは現代日本じゃ結婚出来ないっていうんかっ!

山:これでもやってみたら?
< http://goisu.net/cgi-bin/psychology/psychology.cgi?menu=c069
>

武:やってみたぞ! 結婚する確率は【53%】だ! フィフティーフィフティーだぜ。ん?「あなたが結婚する予想年齢:29〜34歳頃」、もう過ぎてるがな!!

山:わはは。残念でした。

武:あー、あの時、もっと勇気を出していれば。。。こうなったら、デスクのハマムラさん! 俺とk(編集長判断で以降の発言はカット)。

山:…それはそうと、こないだ僕が長野の松本から帰って来たら、僕の家で酔っぱらいが宴を開いてたんですよ! しかももう帰った人までいるなんて! なんでやねん!

武:わはは! あれはひどい。デジクリ編集長の柴田さん、「うちゅうじん通信」の高橋里季さん、「Otakuワールドへようこそ!」のケバヤシ、じゃなかったGrowHairさん、「武&山根の展覧会レビュー」の俺、の4人で家主の山根抜き宴会で大盛り上がり!!
  詳細はGrowHairさんの「Otaku ワールドへようこそ![79]ぼくの夏休み'08編」に掲載されてます。
< https://bn.dgcr.com/archives/20080829140100.html
>
  ありあえないシチュエーションだった(笑)。楽しかったっす。デスクのハマムラさんに来て欲しかった。。。って、大阪なのか!

山:こうなったらまたやりましょー! 皆さん雑司が谷に遊びに来て下さい!つまみはそんなにいらないので、お酒いっぱい持って来てね〜。GrowHairさんに持ってきて頂いたお酒は最高でした!

武:真澄「夢殿」でしたね! で、ところで! フェアが始まってますよー。
  『山根康弘 と 武盾一郎 の仕事』
< http://www.nadiff.com/news/swamp_fair.html
>
  9月20、21日、武盾一郎『ダラダライブドローイング』やります!
< http://www.nadiff.com/news/swamp_fairevent.html
>
  文字通りダラダラとドローイング描いてるだけなんだけど(笑)。あ、ちなみに21日途中中抜けしません。2日間ずっといますよー。

山:8月30日エモリハルヒコ&NoB『エシバイ』
< http://swamp-publication.com/archives/2008/09/nadiff_apart.php
>
  8月30、31日山根康弘『LIVE PUBLICATION』無事終了しました!
< http://swamp-publication.com/archives/2008/09/_live_publicati.php
>
  ちょっと説明すると、本屋さんの店内で家庭用コピー機を使用して、描いたドローイングをコピーします。コピーは赤、青、緑、黒の四色のトナーを別々に使います。いわば多色版画ですね。それを部数分刷って、製本する。そしてそのまま納品してしまう、という一連の流れが『LIVE PUBLICATION』という作品なのです! 『PRAY』『SHRINE』2タイトル、都合8冊作ったんですが、なんと! 7冊売れました! いやー、ほっとしますな〜。

武:『公然藝術罪』、『Questo e' non un libro(これは本ではない)・銀盤』、そして、俺のドローイングも買ってくれーっ! 買って下さい。 買って頂けないでしょうか。

山:まだまだフェアは終わってないですよ! 奥さん! お得ですよ! おねーさん!おじょーちゃん!

武:売れないと、結婚出来ない!

山:そうか。じゃあもう自分で買えば?

武:お、名案! 早速明日ナディッフへ行こう。って何にもならんジャマイカ!

山:本題行きましょう。。。

武:結婚こそ俺の本題だ!

山:そうか。じゃあ今日のテーマは「武盾一郎は結婚できるか、結婚してもいいか、そもそも結婚したいのか?」。結論、結婚は無理。わはは! さよならー。

武:あー、神様、か弱き迷える子羊に結婚と云う社会的ステータスを。。。

神様:「稼ぎなさい。売れないアートなんぞ早くやめて、まともな職に就きなさい。そうしたら許してあげる。お酒もやめなさい」。

悪魔:「おい、何言ってるんだ、アートがお前のやりたいことなんだろう?お金なんてどうでもいいじゃねーか。へっへっへ。ほら、アートやれよ、アート。もっと呑め呑めー」。

武:アーーーーーーーーッッッッッッッッッ!!


●【液晶絵画 STILL/MOTION】東京都写真美術館


山:さ、行ってきました! 東京都写真美術館!
< http://www.syabi.com/index.shtml
>

武:(気を取り直して)恵比寿ですねっ。ナディッフもある街。

山:【液晶絵画 STILL/MOTION】。

武:いやー、「プレハブ酒場」良かったな。

山:いやー、いいとこ見つけちゃった、ってそっちかい!

武:酒が高いのが最大の欠点だけどな。

山:そうやな、あれで酒がもうちっと安ければなあ、ってまだそっちか!

武:はは、本題行きましょう。会場はB1、2Fの2フロアー使っての展示だよね。14人の国内外のアーティストの作品が展示されている。

山:僕は5月に大阪でも観てるんですねー。国立国際美術館。
< http://www.nmao.go.jp/japanese/kako.html
>

武:ほう、展示的に大阪と東京で違いってあったんかな?

山:ほとんど違いはなかった。ただ国際美術館の方がでかいんで見やすかったかな。

武:なるほど。

山:作品は全く一緒か。

武:全員を取り上げるのもメンドクサイので、印象に残ったの行ってみよか。


●B1フロア


山:よっしゃ。じゃあサクサク頭から行ってみよう。まず、入ったところにあるミロスワフ・バウカの『Blue Gas Eyes』2004年。

武:なんじゃい、全部やるんかっ。ミロスワフ・バウカは『壁』が面白かった。壁に壁を写してるってヤツ。まあ、ただそれだけだけど(笑)。

山:壁に壁やからね。壁かい! ってね。

武:俺たちのアーティストブック『Questo e' non un libro』は、紙に紙の風合いをコピーしてるページがあるからね、俺でも思いつくよ。わはは! 俺の勝ち。

山:意味わからん。じゃあ次。やなぎみわ。

武:忘れた(笑)。

山:『Fortunetelling』2007年です。

武:パンフレットには2005年って書いてあるぞよ。

山:ほんまや。どっちがあってんねん。で、これはね、大阪の時じっくり観たんですがね、うーん、ビル・ヴィオラを思い出した。。ってビル・ヴィオラは後に出てくるんで後にしよう。

武:記号性をどう処理(表現)するか、ってことだと思うんだよね。俺はなんかこういう記号及び寓意の用い方はタイプじゃなかった。それから、14分28秒って観るのかったるいんですよ。冷房が効いてて、トイレ行きたかったんすよ。

山:知らんがな! じゃあ次。千住博。『水の森』2008年。

武:これは面白いと思った。

山:パンフレットによると、「芸術というのは、その時代の科学の最先端と結びついている」と考え、「日本画といわれている表現にはこんなにもいろいろな可能性があるのだ、ということを伝えたい」、、とありますね。

武:何が面白いかと言うと、こういうことって誰でも思いつくじゃん。けど、金がかかる。コネが要る。ってことは権威がないと難しい。千住博っていう作家はそこをクリアしてる。巨大液晶を屏風にして、絵のような動画、モノクロの風景のような夢のような絵というか映像というか、を作りたいもん、俺。

山:ヒロヤマガタを思い出した。なぜか。
< http://ja.wikipedia.org/w/index.php?oldid=21001043
>

武:ただ、波の表現がちょっとチープ(笑)。風景画(映像)と完全にマッチングしてない。けど、好みで言うとこれは好きだった。液晶はSHARPだったよね。SHARPが俺に巨額を投じてくれたなら、もっと面白いもの作ってやる!!! てことで俺の勝ちだな(笑)。

山:どないやねん。じゃあ次。ジュリアン・オピー。

武:画風は好き。けど、フツーにペインティングでいいんじゃん(笑)。あるいはアニメに向いてると思うのでアニメ作品になるといーなーって思った。

山:でもこの作品ね、面白いんですよ。なんやろ、なんてことないですよ、別に。だけど面白いんですよ。

武:それこそ、FLASHかなんかでさくさく作ってWEBアニメ作品にしたら面白いなあって思った。

山:合うでしょうな。じゃあ次、楊福東(ヤン・フードン)。『雀村往東』2007年。

武:これはね、犬が死んでるんですよ。

山:そのまんまやな(笑)。

武:コンセプトは面白いよね。「(前略)どの家もほとんどが犬を飼い、犬たちは家を守りながら、人に依存して生きている。雀村は百ほどの家々があるそれほど大きくない村で、多くの犬もまたここに生活し、病気になり、死んでいき、売買されることも放棄される事もある。(中略)犬たちは結局知る事がない。雀村の東に、下界へと続く唯一の道がある事を(パンフレットより)」。

山:ふむ。ドキュメンタリーやね。犬の。

武:そうそう。非常に意味は面白いんだけど、20分50秒。犬が白骨化の犬だか家畜だかを喰ってたでしょ。もう、腹が減ってきちゃって。途中退席しました(笑)。

山:とりあえず飯をちゃんと食え! で、次。イヴ・サスマン。『浮上するフェルガス』2006年、20分00秒。

武:これね、西欧古典絵画を基盤にした、動きの超スローってことなんだが、ね。残念ながらビル・ヴィオラ観た方がいい(笑)。

山:ビル・ヴィオラは後で出てくるから、あとにしよう(笑)。

武:てかね、西欧古典絵画モチーフってどうよ?

山:ロンドン生まれですから。次。サム・テイラー=ウッド。

武:同じく西欧古典絵画アプローチなんですけどね。『スティル・ライフ』2001年、3分44秒。古典西欧画、静物画の果物が腐っていくってことだけど、吉村蘭洲『解体図』じゃん。
< http://clendening.kumc.edu/dc/jm/woman.html
>

山:九相図ね。
< http://images.google.co.jp/images?q=%E4%B9%9D%E7%9B%B8%E5%9B%B3
>

武:おう! そだね。それが西欧古典絵画ベースの現代最先端技術映像で表現されてる、という事なんだろうけど、なぜか俺には驚きがない。

山:そうかな? 僕は単純に映像としてそれを見せられた場合、おーー、って思うけどな。

武:東洋画の勝ち(笑)。あごめん、でもちょっと面白かった。観てしまった。

山:で、次。小島千雪。『リズミカルム、砂の陸』2007年。今回の展示の中で、大阪でもそうやったんやけど、一番印象に残らなかった。

武:まず、俺が大好きな文字の構成で出来てる名前なんすよ。「小」っていう字が名前に入ってるとキュッてなる。あと「千」っていう字が名前に入っててもとても親近感が湧く。そしてとどめは「雪」。名前に雪なんて入ってたらもうグッとくるワケですよ。だから擁護派にまわる(笑)。でね、あー、なるほどーって退屈な感じを我慢しながら観たんですよ。

山:なんやそれ(笑)。

武:名前に惚れた。「そういうの大切よ。アタシ、わかっちゃうの」。

山:…何を求めてるんですか?

武:結婚。

山:ハイ次。

武:いや、ちょっとまって。でね、自然をボヤーッとした映像にしてるんだけど、マンデブロ図形観た方がいいじゃんとかって思ったよ。
  『A Mandelbrot the size of the known universe』
< http://jp.youtube.com/watch?v=ATWrMlIKRBk
>
  自然法則美、ですか。

山:たぶん、彼女は自分の個人的心象風景をとらえたかったのではないかな、と思いましたけど。

武:詩(私)的映像ってことか。

山:自然を扱うことで普遍的にしようとしているのかもしれないが、そこに個人の感傷が垣間見える、のは僕だけだろうか。創造ではなく、感傷ね。

武:「小」「千」「雪」という文字にほろ苦くロマンチックな恋情を妄想するのは俺だけだろうか。

山:じゃあ小雪とかどうなん?
< http://panasonic.jp/viera/gallery/dl/download/wp_b_1280x1024 >

武:うーん、趣味じゃない。。。

山:選べる立場か! で、次。邱黯雄(チウ・アンション)『新山海経・二』2007年。

武:ちょっとオモロいと思った。っていうのは、アニメーションの元の水墨画が面白かったってことなんだけど。意味っぽさが強いんで、そこがどうなんかっつーのはあるけど。

山:僕は正直あの手の作品は見飽きたという感じ。いっぱいあるからねーああいうの。

武:『ファンタスティック・プラネット』ですか。
< http://jp.youtube.com/watch?v=fTwQlfKpi-A
>

山:絵画っていうかアニメーションなんよな。

武:まあ、モノクロのアニメーションなら、こっちの方が面白いと思うけどね。
  ウォール・ペインティング・アニメーション『MUTO』BLU
< http://www.blublu.org/sito/video/muto.htm
>

山:モノクロちゃうやん(笑)

武:ビデオ作品としてはそうだけど、アニメーションは白と黒で描かれてるから。

山:これはおもろい。すごい。次。


●2Fフロア


武:で、ここまでがB1の展示です。そこから2Fに昇ると、まずはドミニク・レイマン。

山:『Yo Lo Vi』2006年。これ、ほんまおもろいと思うよ。それこそ誰でも考えつくようなことなのかもしらんけど、やっぱり見せられると面白いもん。

武:トリッキーな作品ですな。面白かった! 作品を観る者が時間をずらして作品内に入り込んでしまう。で、そういう仕掛けが嫌みじゃないんす。何処にカメラがあるんだ? ってついついカメラ探しちゃうし。

山:作品の前をうろうろしてしまうよな。

武:次行っちゃう? 鷹野隆大『電動ぱらぱら』2002/2008年。「上半身、下半身が分けられ、様々な人物が服を脱いでいく過程の写真作品を繋げた映像作品です。」

山:昔NADiffが表参道にあったころに展示やってたね。

武:ほう。

山:ゲイなんだよね、確か。この人。

武:なるほどー、だから男女様々織り交ぜて服を脱いでいってるんかあ。なんか、じんわりとしっくりくる感があったんすよ。映像映像してないっていうか。

山:映像でヌードって難しいとこあるじゃないですか。裸見せときゃいい、みたいになってしまうとこあるし。でもそれが自然に見えるんだろうな。

武:そうそう。アイデア作品と言えなくはないけど、この人の言いたい事がなんか自然な感じで分かるっていうか。観る者が作品に入り込む手法もとってるけど、そのやり方はドミニク・レイマンの方が面白かったけどね。じゃ、次。ビル・ヴィオラ。

山:お、ようやく出て来た。いやー、今回も飛び込んでましたねー(笑)。

武:『プールの反映』1977-79年、初期作品。
『森美術館「ビル・ヴィオラ:はつゆめ」を観て』
< https://bn.dgcr.com/archives/20061108140200.html
>
  で、ビル・ヴィオラには言及してますけど、スクリーンが部屋の真ん中にあって両面見えるってやり方なんだけど、初期作品らしく荒削り感満載。

山:前にがっつりビル・ヴィオラを観たせいか、ビル・ヴィオラが出てくるとなんか安心するんですよ(笑)。もう僕ビル・ヴィオラのファンやな。

武:俺も(笑)。

山:僕の中ではもはや映像の古典やな(笑)。

武:西欧古典絵画モチーフ、激しい動きの超スロー、あと、水ね。

山:もう飛び込もうとしてる時点で笑える(笑)。

武:ずっと飛び込んでるもんなー。

山:持ちネタやな。パチパチパンチみたいなもんやな。
< http://ja.wikipedia.org/w/index.php?oldid=21537389
>

武:そういうの強いよな(笑)。島木譲二の芸とアート、真面目に考えちゃうなあ。
< http://jp.youtube.com/watch?v=6N9CDuTe_hQ
>
  やる事って同じ人間だから「全く出来ない事、全く新しい事」なんてほとんどなくて、けど、ずっとずっと消えないテーマがあるアーティストや芸人は残っていくんじゃないかなあ。

山:飛び込み続けて50年! みたいな(笑)。

武:譲二は叩く(笑)、ヴィオラは飛び込む(笑)。山根は呑む。

山:ああ呑むさ。次行こう。ブライアン・イーノ。

武:あうん! 憧れの、イーノさまぁっっっっっっっっっっっ! なんで液晶絵画でブライアン・イーノさまなのーん?

山:こんなん作ってたんやね。

武:、、、しかし、、、つまらんかった。。。。

山:元々美術やってたんか。
< http://ja.wikipedia.org/w/index.php?oldid=21684918
>

武:まあ、イーノだからいーの。

山:次。森村です。

武:おおとりですね。森村泰昌。『フェルメール研究』シリーズって言っていいんかな。森村作品は言い尽くされた感も否めないけど、どこかやっぱり興味を惹かれるものがあった。フェルメールの『画家のアトリエ』を再現して、画家のアトリエを描いたであろうフェルメールの立ち位置に、フェルメールに扮した森村がいる、と。「入れ子」。で、登場人物がみな森村、なんか笑いの要素があるんだよね。
  発想としては、『浜省だらけの野球対決』にも通じる。
< http://jp.youtube.com/watch?v=4eWR2X42bRI
>
  というか森村と逆の発想になるんか。フェルメールという記号に森村が入り込む、芸人がみな浜田省吾という記号に身を纏う。その時生じる「ズレ」、落差とでも言ったらよいのか、そこに可笑しさが生じるっつーことになるんかな。

山:森村の場合、笑かそうとしてるわけではないやろうけど(笑)。そのズレを見せる、ってことでは共通している。

武:そだね。


●絵画─映像


山:さて、ざざーっと観てきましたが、考える点も見えてきた。

武:うん。例えば森村作品の場合、「絵画」「写真」「映像」という3つの媒体を駆使してる。この3つの違いと共通点が溶解してしまい、絵描きの自分としては「絵画」ってなんなんだろう? って思う訳ですよ。千住博の作品も「絵画」「写真」「映像」のどれでもあり、どれでもない、みたいなのを感じておもしろかったんすよ。森村は写真ベース、千住は日本画ベース。どちらも映像出身じゃない。

山:展示のタイトルは「液晶絵画」やね。絵画と言ってるわけだ。

武:「液晶」っていう言葉はスポンサーがシャープだから都合付けたんだと思う。現代における「絵画」とは何か?

山:
「この実験的なプロジェクトのタイトルとして、私たちがあえて“絵画”とい
う伝統的なジャンルを指す言葉を持ち出したのは、そうした新たな技術が切り
開きつつある表現の一つに、絵画と映像という、これまで空間芸術と時間芸術
として明確に弁別されてきた二つの領域の境界を横断し、さらにはジャンルの
概念そのものを組み替えてしまうような世界の可能性があると考えているから
なのです。
時間軸が絵画に介在し、映像に絵画と同質の空間が立ち現れるような、時間芸
術と空間芸術とが相互に融合したような、不思議な世界を私たちは目の当たり
にする──。本展の実験的な作品群はそのような従来にない経験をもたらして
くれるに違いありません。
単にディスプレー装置としての利点を表現手段として利用することをはるかに
越えた発想が、鋭敏な感受性に恵まれたアーティストたちによって繰り広げら
れること。本展の会場は、観客の皆さんにとって、おそらくそうした新鮮な世
界の発見の場となることでしょう。(三重県立美術館サイトより)」
< http://www.pref.mie.jp/BIJUTSU/HP/jp/index_exhib.htm
>
  この展示を企画したキュレータは、まさに「現代における「絵画」とは何か?」を考えた訳やな。

武:俺さ、ドローイング描いてる時、この線たちが生き物で、勝手に動き出してくれたらいいなあっていつも思うんですよ。で、制作中ってそう言う状態でさ、俺が描いてるんだけど、線たちが勝手に生きて増殖してる、っていう感触を持ちながら描いてるのね。

山:自然な発想やと思う。アニメーションの面白さって、「絵が動く」といういたってシンプルな欲求を満たしてるから面白い訳で。絵が動いてるところをみんなみたいんやな。で、「絵画」という言葉を使うということは、歴史を考えるってことやろ。関係なけりゃ、新しい言葉を使えばいいし。

武:それはあるかも。ただその場合「西欧絵画」の歴史に偏ってるってとこが、まあ、俺としては気になってしまう。だからなのか、千住作品に面白みを感じたのかも知れん。

山:でもそもそも「絵画」を考える場合、西欧抜きにしてもしょうがない。

武:そらそうだ(笑)。それから、記号をこねくり回すやり方ももうあんまし使いたくない。だから、森村作品に惹かれたけど、なんかしら批判的な気持ちになる自分もいる。鷹野作品も、男女、ジェンダーってことなんだろうけど、掴める感じがあって、単に記号として男女を扱ってるだけには見えなかったンすよね。

山:僕はこの展示を見て思ったのが、絵画であろうが新しい技術であろうが何でもよくて、おもろいもんはおもろい、と。新しい技術を使ってもおもしろくないものはおもしろくないしな。

武:おもろさってなんだろな? 難しいぞよ。確かに最新技術を使えば良いって話じゃないよね、むしろ最新技術が見えない作品になってた方が面白かったりする。

山:言葉で切ることはいくらだってできると思うんですよ。コンセプトなんて、その時代に合ってるっぽいことを言っときゃ、なんとなくみんな納得したりとか。だけど、実際の作品はコンセプトなんていうそんな上っ面なことだけでは終わらない、終われない。だから内容が必要な訳で。内容に到達できてる作品って、意外と少なかったりするじゃないですか。

武:そだねー。今回の作品群はトリッキーなイリュージョンを観た、という感じじゃなかった。絵画の原初というより、絵画の現在、とでも言ったら良いのか。そして俺たちは何をする?

山:酒を呑む(笑)。

武:あー、もう予想通りのボケじゃん!

山:ボケてない。素です(笑)。

武:そんじゃあ、いつもの黒霧島でっと。。。かんぱーい!(こうして結局いつも通りなにも解決しないのであった マル)


●展覧会評


山:☆☆☆☆☆ 星5つ。おもろいもんはおもろい。でも大阪の方が良かった。
広いから。

武:☆☆☆ 星3つ。面白かったけど、「液晶絵画」は金持ちじゃないと作れないじゃん! という僻みから。

【液晶絵画 STILL/MOTION】東京都写真美術館
< http://www.syabi.com/details/still.html
>
■会期:2008年8月23日(土)〜10月13日(月・祝)
■休館日:毎週月曜日(休館日が祝日・振替休日の場合はその翌日)
■会場:2階・地下1階展示室
■料金:一般1,000円、学生800円、中高生・65歳以上600円
※小学生以下および障害者手帳をお持ちの方とその介護者は無料
※第3水曜日は65歳以上無料

【山根康弘(やまね やすひろ)/ 芸人になりたい。】
yamane@swamp-publication.com
SWAMP-PUBLICATION
< http://swamp-publication.com/
>
交換素描
< http://swamp-publication.com/drawing/
>

【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/ 結婚したい。】
take.junichiro@gmail.com
246表現者会議
< http://kaigi246.exblog.jp/
>

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■グラフィック薄氷大魔王[149]
騒音吸い出しノイズキャンセリング・ヘッドホン

吉井 宏
< https://bn.dgcr.com/archives/20080910140100.html
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●ノイズキャンセリング・ヘッドホン

「耳をふさがずに街の音を聞こう」ったって、騒音はガマンの限界を超えてます。うちは大きな交差点の近くで、窓から国道が見える。窓を閉めていればそれほど気にならないけど、初夏と初秋の季節に窓を開けていると、何も考えられないくらいやかましい。仕事どころじゃないです。そんなところに住んでいるのが悪いんだけど、ガマンできないのは窓を開ける季節だけなので、まあ、なんとか耐えてます。

あと、道を歩けば無駄にうるさいクルマやバイクの音。駅のホームや電車内だって相当大きな騒音。渋谷など街に出ればお店などのやかましい音楽。スタバでさえ店内音楽や食器ガチャガチャ音やジュースかなんかを作る機械の音……。

ガマンならないときは、密閉型ヘッドホンや低反発スポンジの黄色い耳栓などで対処してきたのだが、最近流行の「ノイズキャンセリング・ヘッドホン/イヤホン」なら静寂を手に入れられるかもしれないと、店頭で試してみた。

BOSEやSONYなどの最高級ノイズキャンセル・ヘッドホンの消音効果は本当にすごい。スイッチオンしたとたん、ひゅううっと耳から騒音が吸い出されて消えてしまう(本当に吸い出される感触がする)。警報やアナウンス声などが聞こえるように安全上残してある高音域を除き、無音ではないもののやかましい音が消えてなくなる。

BOSEのQuietComfortが最高峰らしいのだが、密閉型とはいえヘッドホンは意外に音漏れする。レビューにもそういう話が出ているし、僕も持ってるTriPortは手で塞いでもかなり音漏れする。ずっと電車内で大音量で鳴らしていたので、それに気づいたときは大ショック。僕自身がヘッドホンシャカシャカ野郎だったんだあ〜。その点、インナーイヤー型は耳穴にフィットしている限り、音漏れはほとんどない。いろいろ試して、audio-technicaのQuietPointという製品を購入してみた。

電池の入った本体がジャマなことと、ケーブルが服に擦れるゴソゴソ音の他は、おおむね満足。高級ノイズキャンセル・ヘッドホンには及ばないものの、消音効果は絶大。クーラーやパソコンのファン音も気にならない。街や地下鉄でイヤフォンをはずすと、どれだけひどい騒音の中にいたか分かってビックリします(後で気がついたんだけど、騒音を消すだけだったら、エンジン音や銃の発射音から耳を守る「ヒアリングプロテクタ」ってのがいいかも。電池不要だし。ハンズにあるのは知ってるんで今度試させてもらおう)。

●セピア色っぽい映像

高度成長時代の昭和を再現する映像に、セピア色っぽい色調処理は似合わないと思う。昔だから古い写真の色(または、「このシーンは昔です」というお約束?)のつもりなんだろうけど、セピア色じゃ昔すぎる。昭和初期の写真なら合うと思うけど、昭和30〜40年代ならせいぜい退色したカラー写真の色か、逆に、僕的な印象ではキッチュなくらい派手な色が似合う気がする。大阪万博の頃の記憶は、けっこうケバケバしい色だなあ。あと、昔の街の再現は、たいてい年期が入った古さを演出している。でも、当時は新築ピカピカなのもあるはずなんだよなあ。ピッカピカの昔を表現した映像も見てみたい。

●DS-10の訂正。6トラック使えます

ちょっといじったきりで放置中のDS-10ですが、先日の雷でPCの電源を抜いたときにDS-10を久しぶりにやってみたところ、判明。「ドラムとモノフォニックシンセ2台の計3トラックしか使えないけど」と書きましたが、訂正します。

ドラムに指定されている4音色は、それぞれ音色を割り当てて普通に音階をシーケンスできるのだった。つまり、小細工なしでストレートに使っても、シンセ1・2と合わせて計6トラックを6声のパートとして使えるのでした。すごいです。まあ、6トラックをフルに使った曲を作る気力はないですが。昔やってたスイッチト・オン・バッハの真似みたいの、作ってみようかな。

●mixiの新機能

なかなか良い。特定の日記やコミュの新しい書き込みをトップに表示させないようにできる。極端にプライベートな内容の日記や、荒れたコミュは見たくないのです。ついでにmixiのブックマークをブラウザから削除。mixiを見るときはURLを打ち込まなきゃならない。そしたら、1〜2日くらいは平気で見なくなってしまった。今まで1日に何回も見てたのに。mixi中毒を自覚する人は試してみて。

【吉井 宏/イラストレーター】 hiroshi@yoshii.com

ぜんぜん本文とは関係ないけど、ポケモン。ちゃんと見たことないです。っていうより、努力して見ないようにしてます。テレビに映っても目をそむけてます。影響されちゃいそうでこわいから。ただでさえ僕のキャラクターは、外国人に「Oh! Pokemon!」とかコメントされちゃうのに。でも、新しい「シェイミ」ってポケモン、かわいいなあ。ピカチュウはほっぺたが赤いところが苦手。

HP < http://www.yoshii.com
>
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/
>

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■編集後記(9/10)

・政府の中央防災会議「大規模水害対策に関する専門調査会」は、埼玉県から東京都内にかけて流れる荒川が氾濫した場合の、死者数、孤立者数等に関する被害シミュレーションを初めて公表した。その氾濫とは、200年に一度の発生確率の洪水によるものである。1947年9月のカスリーン台風と同程度の台風が来襲したことを想定し、堤防の決壊場所ごとに、住民の避難率や排水ポンプ場や水門が機能するか等の条件を加えて、被害の規模を計算したそうだ。その想定堤防決壊個所は、川口市、北区、墨田区である。川口市ってお隣だ(わずか下流だ)。被災者数が最も多いのは、その川口市の荒川左岸の決壊時であるという。下流で決壊したときはあまり影響はないだろうと思っていたら、川口市の場合でわが地の最大浸水深は2.1〜5.0メートル、北区の場合でも1.1〜2.0メートルになるというから、わが家は完全に水没だ。以前から戸田市のハザードマップを見て知ってはいたが、シミュレーションを見て不安な気持ちが増大してくる。直近で決壊したときは直後に市内全域が深いところで4メートル以上になり、上流、下流で決壊したときは数時間後に水が来るとされる。その数時間で、何を上階に避難させるか優先順位を今から考えておく必要に迫られている。本は重いしなあ。嗚呼、そのときのことを考えるだけで疲労困憊だ。最近の気象がおかしいことを考えると、200年に一度とやらが来る可能性は低くない。毎日の散歩で、ゆったり流れる荒川の景観に心が和むが、こいつが不安のもとなのだ、ってほど深刻に思ってはいないけど。(柴田)
< http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/suigai/080908/080908_shiryo_2.pdf
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荒川洪水氾濫時の人的被害想定結果(概要)

・武さん、私も同じ結果でした〜。53%。向いてませんなぁ、お互い……。/MUTO凄い。どこまでいくのだ。面白い。/原田知津子さんの本、「すぐする すぐすむ 快速家事」。22年前に発行された本。本棚を整理していたら出てきたのでスキャンしつつ斜め読み。ここで紹介されている朝食セッティング方法に、前夜のうちにお皿をトレーの上に並べておく、というものがある。去年あたり、雑誌の収納整理特集に原田さんが出ていて、この本と同じ方法が紹介されていた。写真には同じセッティングのお皿とトレー。22年以上、同じ生活を続けてらっしゃるのだなぁ、日常をきちんと過ごされているのだと思った。あと印象的だったのは、パッケージの表側を見えるように並べるというもの。調味料や洗剤などは裏面に説明書きの細かな字が入っているけれど、それを見えるようには置かず、表側を見えるように並べると、目から入る情報量は多くともスーパーのようにすっきりした印象になるとのこと。すっかり忘れていたよ。/電子ペーパーに動きあり。(hammer.mule)
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> この本です。81歳に
< http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0809/09/news033.html
> 雑誌より薄くて軽い
< http://journal.mycom.co.jp/news/2008/09/09/004/index.html
> 来年前半
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