ところのほんとのところ[2]ところスタイルのランドスケープ
── 所 幸則 ──

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元旦早朝から撮っていた渋谷のスナップシリーズ。コンセプトもおもしろく、読者が楽しめる企画ということで、老舗写真雑誌の副編集長も連載に前向きになっていたのになぜ迷ったのかというと、所幸則の新しい顔としてそれでいいのか? という懸念があった。風景を撮る、スナップを撮る、それ自体は構わないが、よくも悪くも僕はめだつ。

「ところが新しい事をやり始めた」というのが伝わるのは早い。「ところがおもしろい新しい事をやり始めた」でなければいけないところなのに、「ところが普通のスナップ撮ってるみたいだ」じゃあだめなんだ。予想を裏切りつつも、良い方に裏切らないと、と思うところです。



ちょうどその頃、中堅(?)カメラマンのグループ3人(33〜36歳っていうと若手?中堅?)が僕んちにやってきた。山田君と、川崎君と、米原君、どうも中堅から若手中心のフォトグラファーの発表の場を作って、みんなが刺激し合うのはどうかという発想で、まあそこからいろいろ広がるんだろうね。妄想も広がってる人がいて、ちょっとクスッとしちゃったりもしたが、そういうことをするって凄くパワーがいることだからまあいんじゃなかな、本音のところ。

とりあえずプレゼンテーションの3分企画に参加する事を約束して、当日行ってみるとなぜか3分ではなく僕ら、40オーバー世代は"大御所枠"とかいわれて5分持ちになってた。僕は若手じゃんかー! と思ったけど。

第一回目は開催者の思惑と違う学生達が集まって、19〜20歳くらいの人が非常に多かった。学校の先生やってるゲストが、生徒を授業の一環のように呼んだんだろう。教授や准教授や講師の方々にとって、こういった活気ある場所はぜひとも生徒を連れて行きたいだろう。

だけど、それは自分たちでその場を作るべきだよね。他人のフンドシで授業をしてはいけないんだよ。ところはそう思う。彼ら(山田君と、川崎君と、米原君、松川君)がやりたいのは、自分たちを刺激する仲間達とのプレゼンであり、それはプロで悩み苦しみもがいてる熱い人たちとの交流だ。学生にも悩む人はいるけれど、悩む内容が違うんだよ。

35歳プロと19歳学生じゃね。学生が多かったためもあり、100人キャパのところ130人以上の人が来て、30人以上の人が帰って行った。遅れて来た人達はほとんどが忙しい中をやりくりして来たデザイナーだったり、編集者だったり、プロの人だったようだ。

次回からは、対象を基本プロにするようだ。いろんな人に協力を頼むと、当然みんなの思惑がずれて行く。勉強になったよね。

僕は母校で展示禁止になった作品を使ってプレゼンしたけど、結構受けた。みんなが想像もつかないLOVE&SEXシリーズを好きだと言って、学生が何人も名刺をもって挨拶に来てくれてうれしかったなあ。

そこで横木安良夫さんにお会いした。横木さんと言えば、ぼくが20そこそこのころにコマーシャルフォトでの活躍を見た事があったあこがれの人だ。その方の個展が5月末前後に四谷で開催されていて、お邪魔してみた。

お話もしてみた。僕の普段のスナップに対する考え方ととても近しい考えで、とても共感できたのだが、それがのちに僕のターニングポイントになろうとは。5月末に我慢できずにSIGMA DP1を買った。使い方は相変わらずよくわからないけど何となく使ってた(じつは携帯もカメラも操作は苦手だ)。そのときに、はっとする写真が撮れた。いや、まだ完成していないのだけど、イメージが頭に流れ込んで来た。

これだ!! これなら、ところを知る人も知らな人でも、はっ! とするよ。うん、これだー。ところスタイルのランドスケープだ! それを現実に一枚に定着するにはどうすればいいのか? Adobe CS3で試行錯誤、数日悩む。ここは友人のAdobeの人に来てもらう事に。ランチでおびき寄せる。

ぼく:こういうイメージなんだけど、それに向いた技術はCS3にあるかな〜。K:こうやれば良いんじゃないかな。(とテキパキ教えてくれる)

できそうだ! ありがとう! ヒントはいただいた! そこから3〜4日ずっと実験。手応えあり! ところはいつもみんなに助けられてところでいられるんだなあと実感。

COMMERCIAL PHOTO (コマーシャル・フォト) 2008年 10月号 [雑誌]6月15日に一枚の写真が仕上がった。「合成」という言葉はチョット違うと思う。「凝縮」があってる。「コマーシャル・フォト」10月号の個展紹介の3枚並んだぼくの作品の真ん中のが最初の完成品です。本もってたら見てみてー。

こういうのが撮りたかったんだ。横木さんの個展のスナップと、ぼくの元旦から撮ってたスナップはまさに王道なスナップだ。その場の出会いに反応して、自分の目とカメラで素早く切り取り定着される。もちろん、みんな同じ写真は撮れない。だけど、王道であるが故に個性はマニアにしか見分けがつかないだろう。

僕は一目でわかる、自分の体の中を通って行ったスナップであり、風景、ところスタイルを探したかった。そしてこの写真は今、このカメラじゃないと撮れない(理由は今度書くかな)。

6月末に4〜5枚の写真が仕上がって、渋谷で有名雑誌のADやってる知人のいる編集部に電話して、面白い事やってるんだけど見に来ない? って言ったらその日の夕方に編集部を抜け出してやってきてくれた。面白いからもっといっぱい見たいという。新作できたらいつでも見に来たいと言って帰って行った。

自信が出て来て突っ走る事に。念のためもう一人の渋谷の写真の目利きに電話。彼女はハーフでかつて上○◎彦さんが売れてビッグになるまでマネージャーをしていた。正統派の目利き。

彼女も「これはまるで、渋谷という街のポートレートね。」「渋谷と、ところさんの狂気が見えるわ。」といって帰って行った。

次の日、近所にいるから会おう、ついでに昼飯でも! っと電話をかけて来たのがMOGRAの大将だった。彼はアートコーディネーターをしている。彼にも見せてみた。「これは……、渋谷で個展やる気ないすか?」

ん? これはベルリンかパリに持ってくつもりなんだけど(これも長くなるから次回!)日本なら確かに渋谷が一番だよね。

渋谷なら思う場所があるので、話をしてみていいすか! とのこと。その2週間後に個展が決まった。その時点で作品数8枚……。

日にちが決まったのが7月31日。9月28日(日)から10月4日(土)だ。7月31日は「アイデア」8月9日売りの校了日、たまたま編集長立ち会いで撮影をしていた。そのとき差し替えで個展のために表3をくれた。感謝です!その時点で作品数まだ半分かな(苦笑)

今回時間もギリギリのなか、お盆前に9月売りの本にページをくださった、
「フォトグラフィカ」発売中
「コマーシャル・フォト」発売中
「アサヒカメラ」20日
「日本カメラ」20日
「キャパ」20日
「デザインの現場」27日
みなさんに感謝です。

●「渋谷1sec(ワンセコンド)瞬間と永遠」写真展

テーマは「ワンセコンド(1秒)瞬間と永遠」
渋谷の駅周辺の風景(あくまで主役は風景、建築物)のなかで、自分自身では一瞬もそこにとどまれない儚い存在である人間や(人間が走らせてる)車を使って、建物は動かないけれどそこに生きて存在する人間たちを空気のように扱う事で生き物のように変貌して行く今の街を表現するために、ところスタイルのランドスケープ1sec(ワンセコンド)というシリーズを撮り始めました。詳しくは会場で見て体感してください。瞬間と永遠がそこにはあります。
その序章としての「渋谷1sec(ワンセコンド)瞬間と永遠」写真展を開催します。時代の証人になっていただければと思います。

日時:9月28日(日)〜10月4日(土)11:00〜23:00
場所:Gallery Conceal Shibuya 4F(ギャラリーコンシール渋谷)
東京都渋谷区道玄坂1-11-3 4F TEL/FAX:03-3463-0720
渋谷駅から徒歩3分です。A-ROOMとB-ROOMです。
A-ROOMではバライタプリントによる作品の展示。B-ROOMでは特殊な大型出力による部屋の3方向の展示で渋谷の臨場感を演出。
最終日10月4日(土)19:30から対談(渋谷と写真)&クロージングパーティ
ーがあります。1,500円(対談の相手は有名音楽雑誌のAD他予定)
協賛:東京リボン シグマ supported by MOGRA
展示作品のオリジナルプリントも予約販売します。50限定です。
冬以降ヨーロッパで展開して行く予定。
< http://www.renovationplanning.co.jp/gallery_conceal/shibuya4f/
>

【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則
< http://tokoroyukinori.seesaa.net/
>
所幸則公式サイト
< http://tokoroyukinori.com/
>

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CHIAROSCURO 天使に至る系譜
所 幸則
美術出版社 2006-02
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star『CHIAROSCURO 天使に至る系譜』…私の宝物!
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by G-Tools , 2008/09/19