ローマでMANGA[12]野放しにしすぎたか……/midori

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●工房の参加者は半分の4人に

長い長いと思っていた夏休みも、終わってみればあっけなく、あっという間に9月。工房の締め切りは9月5日で、午後4時にメンバーとアポを取って学校で待ち合わせをした。

工房が始まった時の参加者は8人。原稿を仕上げて、5日のアポに来たのはその半分の4人だった。甘いRとどもりのあるロベルト。ダークのルチアーノ。絵のうまいエミリア。表情がうまいバルバラ。

落ちた4人のうち、2人はいつの間にか来なくなり、ダークな「不思議な国のアリス」を描き始めたサーラは4月に学校の授業用原稿と工房の原稿をいれたバッグを地下鉄に置き忘れて紛失し、学年末に備えて原稿を描き直さなくちゃいけなくなって脱落した。疲れていても荷物の管理はしっかりしましょう。

感情を押し殺してしまうバレリアは、経済的な理由でウエイトレスをしていて、原稿を描く時間がとれない、とメールがあった。ただ仕上げるだけならできるけど、納得のいくものを仕上げたいから、次の締め切りに合わせるという、半分だけ脱落。

どちらにしても、一作を仕上げるというのは、重労働なんだなと思わせる半分脱落状況でした。コンピューターを使うロベルト、ルチアーノ、エミリアの3人はデータにして持って来て、バルバラは生原稿を持って来た。

とりあえず、皆をBARに招待し、フルーツジュースで乾杯した。初めて作品を完成させた、という経験がすごく重要だと思う。と4人に演説をぶった。作品を完成した。でも、これで終わりじゃない。これが始まりなんだ、と。



達成感で高揚したみんなの顔を見るのは嬉しかった。でも、ぱっと見た彼らの原稿は、正直言ってとても素人臭いものだった。エミリアが期待持てるかな。

しかも、なまじデータにしてくれたおかげで、プリントアウトするためにデータを処理するのが大変だった。350dpiにと言ったのに200dpiにして来たロベルトとルチアーノ。まぁ、どうせ賞を取って原稿印刷、とまでは行かないだろうからいいか。条件を気に留めてしっかりクリアする、というのも大事なことなんだ、というのも教えないといけないんだ。

ルチアーノは原稿が一枚欠けていたし、ロベルトはテキストも入力して来たけど、余白を全く考慮にいれてないので、プリントアウトするためにA4に入るように処理するのに工夫が必要で時間がかかった。

エミリアは問題なし。マンガ学校に通っていたとき、成績が良かっただけのことはある。原稿の大きさも、解像度も問題なく、入稿もしっかりとしてくれた。スキャンから始めなくちゃいけない、バルバラの生原稿入稿は逆に処理が楽だった。

●満足感にあふれた顔はみてて気分がよかったものの…

4人の出来上がった作品を見て、それぞれのやりたい事、というのを能力を考えずに野放しにしすぎたか……という反省がある。能力以上の大きな物語を想定しているのだ。というより、頭から出て来たストーリー案が自分の描画能力を超えている……ということに気がついてない、と言った方がいいかな。

でも、『この話ではなく、もっと身近な話題から始めたら?』というのも違う気がする。モチベーションというのも、作品制作に大事な要素だから。

ヨーロッパではストーリー作家と作画家が別、というケースがほとんどなのだ。出版社に持ち込みをする(ほとんどの場合フランス)という場合、ストーリーの粗筋とキャラクターデザインと、完成原稿4〜5枚というセットが普通だ。

それでオーケーなら作画に入る。作画家が新人、あるいはフランス人ではない場合、フランス人の作家がつくということになっている。

学校では作画の仕方を教えて、作品を一編丸々作ってみることはしない。だから、今回のように新人賞応募で初めての作品制作という事になるわけ。4人が見せた高揚は、すべて自分一人で作った、自分の世界を表に出した、という高揚でもあるわけ。

マンガ家がストーリーも作るのが普通の、日本の漫画界から見るとなんとあまちゃんな……ということになるのかもしれない。

満足感にあふれた顔はみてて気分がよかったものの、これでは日本の新人賞にイタリアの若者が引っかかる事はないだろうね。なんだか知らないけど天賦の才能があって、ぱっと作った作品がレベルの高いものだった……というのを待たないで、手助けする方法を探さなくては。

学校では、本年度の工房は一旦停止ということになった。ものすごく利益があがったわけではないけど、そのせいじゃないそうだ。今年、宣伝に力をいれた。その結果、入学希望者が増えてクラスが足らないのだそうだ。だから、MANGAセミナーも10月からではなく来年1月から。授業を見直す時間が増えた。

何かがシンクロしてるらしく、イタリアのさる出版社が「MANGAの描き方」を企画してそれに参加する事になった。MANGAを人にこと細かく教える、それを週刊で否応なく考える状況になったわけだ。

だから、学校のセミナーが少なくなっても報酬には困らない。今、記事を書きつつ、イラストレーターとして参加しているイタリア人若者のMANGA風の絵をあれこれ批評しながら、改めてMANGAを外から見ている。

イタリア人が描くMANGA風の作品は、イタリアの既成の出版社は見向きもしない。でも、描きたい方のエネルギーはすごい。いつか、それが何かの形で噴出するのではないか……と思っていたけど、いよいよその時が近づいているのかもしれない。それだけ力のある絵を見させてもらっている。

本格的なMANGA作品ではないけれど、イタリア人が描いたMANGA風の絵がこうして公に出版される機会が出て来たというのを、すごく興味を持って見ているところである。

ますますわくわくの今年度であります。

【みどり】midorigo@mac.com
昨年、マンガ学校の教務課長とNeko no Ashiというコミックスエージェンシーを開設した。実際の行動は名刺とカタログのみで、どう動こうか……と悩んでいたけど、本文で触れた企画に参加する事でその一歩を踏み出した。こちらもわくわく。教務課長は30歳。だから、ネットのサービスをどんどん使う。
例えば↓ プロもどんどんネットワークに参加してくれてる。
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