装飾山イバラ道[21]白物家電と色いろ家電
── 武田瑛夢 ──

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NationalがPanasonicにブランド統一されるというニュースで、「白物家電」という言葉を最近よく耳にしたけれど、家事用の電化製品は良さそうなものが出るといつも気になる。と言っても、結婚して家事らしきものをするようになってまだほんの2年くらいなので、買い替えが必要なほど古くなったものはあまりない。だから、ちょっとの差でずいぶん進化した機能の製品が出るととても悔しい。

「白物家電」といっても、白くなくてもいいらしい。最近の電気製品はかなりカラーバリエーションがあって楽しい。うちは炊飯器と洗濯機とトースターがゴールド系ベージュ色。メーカーはバラバラだけれど色はだいたい揃った。

本当は食洗機もゴールド系ベージュで揃えられそうだったけれど、当時新しく発売されたバージョンでは消えてしまった色だったのであきらめた。これは家電のカラー選びの宿命で、自分の好きな色が次期バージョンで残るとは限らない。アパレル界が作るカラーの流行と同じように、次々に主流なカラーとちょっと目立ってカッコいい差別化カラーが移り替わっていく。



ネットで廃番の電気製品のカタログを見ていると、気まぐれに作ってしまったように見えるカラーがあったりする。過去のどんな流れにも属さない、斬新で突飛な色。冒険であり失敗。それはそれで突然変異のようなもので、枝分かれして発展する可能性もあったのかもしれない。消費者に選ばれなかった色が、淘汰されるのは自然界の法則のようでもある。

実は私が家電を揃えた頃のゴールド系ベージュという色は、既に出尽くした感のある終焉の時期だった。だからこそ、商品の種類は豊富で揃えやすいのだけれど、目新しさはないのでどっちを取るかといったところ。シルバーもゴールドも定番色として根付いたので、金ピカのイメージは消えて、もはや無難すぎるのかもしれない。

掃除機は、なぜかその機種だけ安く売っていた紫色のダイソン(DC12 plus)で、ちょっとハデなのが日本人には受け入れられなかったのかも。デコラティブなトラックにありそうな、メタリックバイオレットだからな。ダイソンの場合は色選びで付属品が変わるので、単に色の違いだけでは売れ筋が決まらないかもしれない。紫色は思いのほか気に入っている。

・ダイソン
< http://www.dysonjapan.jp/
>

積極的に色を選ばせることにおいては、やはりAppleの製品を外しては語れない。今は懐かしい透明iMacの頃から、無機質なPCの世界に「色選び」を持ち込んだのだから。しかしながら新しいiPod nanoのように、たくさん並んでいるとどれも素敵だけれど、一色だけ選ぶとなるとその色選びが自分のセンスを決めるようで迷うことがある。

・iPod nano
< http://www.apple.com/jp/ipodnano/
>

週末に、iPhone用のシリコンジャケットを探しに銀座のAppleストアに行った。一階に出ていたカラフルなiPod nanoを触ってみた。すごく小さいのにみっちり詰まっている感じ。あれだけカラーバリエーションがあるのに、みんなはすぐに色を決められるのだろうか。せっかく色数が多いのに、なぜか会社の人と同じ色でカブってしまいそうだったり。人気が集中している色、あまり選ばれていない色、自由に選べるからこそ難しそう。

どんなものでも色が認知される時には、背景や周囲の色の影響を受ける。iPodのように家の中だけで使うのではない製品の色選びでは、電車の中の状況や他にiPodを使っている人全体が背景となって、自分の手の中にどんなカラーのiPodがあって欲しいかを考えているのだと思う。ちょっと浮くかなぁ、ハデかなぁ、地味かなぁっとシミュレーションしてみる作業を、カラフルな商品見本を持って考える。みんな楽しそうだ。

ある意味、カラーバリエーションがあるからこそ、選んだ一色が素敵に見えるしくみ。選ばなかった他の色すべてが、自分が選んだ色の背景になる。

私は買う予定はないけれど、選ぶならグリーン。金属質でグリーンというのはなんとも綺麗。コガネムシや玉虫的なイメージで。それに手帳が緑色なのをきっかけにして、財布も緑になってだんだん色が揃ってしまった。長く使う小物の色に他の小物の色が揃っていき、選んだ色が自分の周辺環境を作っていく。きっかけはわりと何でも良かったのかも。

しかし、商品にどんな色展開があっても王道なのが「白と黒」。結局は「白」が永遠に飽きず廃れずに残る色だと思う。白物家電に限らず、白い電気製品もかなり選んできた。iBookや任天堂DS Lite、iPhone。電気製品の場合は汚れにくい材質のものも多いし、洗練されて見える。もちろん白に洗練の価値を与えたのもAppleで、その影響で白く進化したものがたくさんある。

白いものと言えば、どんどん増えて最近置き場所に困っているものがある。任天堂Wiiの周辺機器だ。WiiハンドルもWiiザッパー(銃型コントローラ)も夫婦で遊ぶ用に2個づつあるし、ヌンチャクとかバランスWiiボードも含めるとかなりの物量だ。どんなにまとめてもごちゃごちゃしているけれど、唯一救いなのが「色が白」ということ。遊び道具としての華もある。

カラーバリエーションも、白い製品の洗練感も、それまでになかったものだからこそ「進化した感じ」を出せる。そういう意味では色で驚かす時代はもう終わってしまっているのかもしれない。それでもまだ見たことのない色展開を期待して、未来の製品を想像してみるのも楽しい。

私はその日の服に合わせて、ボタンを押すだけで外観の色が変わるものが欲しい。色を変えるためだけにエネルギーを使うのも何なので、エネルギーの要らない方法は可能だろうか……。

今回は本体そのものの色の話をしたくせに、自分のiPhoneは保護のためにもシリコンジャケットやハードケースか、何かを着せてしまおうと思ってる。綺麗な本体の色を隠すなんてもったいないけれど、キズをつけてしまうのも嫌なんだからもどかしい。

【武田瑛夢/たけだえいむ】 eimu@eimu.com
メールで贈れるiTunesのギフトカードを、自分宛に送信してみるという寂しいことをした。この方法をだんなさんに教えたら、だんなさんも自分宛に送っていた。お互い、相手に送れば少しは嬉しかったかもしれないのに残念だ。

装飾アートの総本山WEBサイト“デコラティブマウンテン”
< http://www.eimu.com/
>

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エムディエヌコーポレーション発行 インプレスコミュニケーションズ発売
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やさしいデザイン―誰でもかんたん、レイアウト・配色・文字組
武田 瑛夢
エムディエヌコーポレーション 2007-09

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by G-Tools , 2008/09/30