グラフィック薄氷大魔王[152]アウトラインプロセッサとマインドマップ/吉井 宏

投稿:  著者:  読了時間:8分(本文:約3,500文字)


え〜と、念のため、書いておきます。この連載やブログなどで「こんな面白いものがあった」「革命的に便利だ」とか書いているアプリやサービス、それに仕事法モドキなどなど。そんなに便利ですごいなら、仕事や生活がどんどん便利に楽しく効率的になっていってるかといえば、たいして変わってないです。

というのは、試してみた驚きや感想を書いてるのであって、その時点で「こりゃ革命的だ!」と思っても、それが定着するかどうかは続けてみないとわからないので。たぶん、定着率は2割くらいかな。先週のPC切替器だって、一ヶ月後に使ってるかあやしい。そのうち「その後どうなったか」特集します。

ところで本題。以前から「発想法」には興味があった。昔、Painterの記事の連載などでアイディアに詰まったとき、ラクにネタを思いつけたらいいな、と。締切りは迫る、アイディアはまとまらない、焦る焦る。ギリギリになってやることを決め、徹夜覚悟の突貫工事で記事を仕上げる、というパターン。今はこの連載がそれに近い(まあ悩んでも数時間だけど)。

アイディアやネタが決まらないときって、長い時間を焦りまくってるのに、具体的な進行がまったくない状態。数日にわたって苦しんでいたとしても、振り返ってみればボーッとしていただけに等しい。何か手を動かしたり、少しでも進んでいる実感があれば救われるんだけど。



アイディアをまとめるにはアウトラインプロセッサを使うのが定番らしいのだが、僕にはあまり向いていなかった模様。それでも、古くはActa7、一番活用したのがKacis、最近はTreeやOmni Outlinerなど、いろいろ使ってきた。アウトラインプロセッサの利点は、思いつくまま書き出した項目の下位にどんどん項目を追加してツリー構造にでき、階層や位置関係などをブロックごとに入れ替え編集できること。その利点を生かして、Kacisで1ファイルで本まるごと一冊書いたりしてました。

ただ、僕の場合、テキスト原稿って一本の連なりとして展開させることが多い。アウトラインプロセッサ的に並列で書いたものを、後で一本にまとめる必要があまりなかった。また、階層がついてしまうと、その位置から動かせない部品になってしまい、逆に発想を広げにくくなってしまう。僕だけかもしれないけど。あと、階層を畳んで全体の構造を見渡せるのはいいのだが、畳んだり広げたりがとても面倒だし、畳んだ箇所に何があるか気になってしまうので広げっぱなしにしておくのだが、それだとアウトラインプロセッサの長所が半減してしまう。

なので、最近はアウトラインプロセッサは使わず、単にテキストエディタで最初から一本として書くか、ブロックごとに書いて順序を入れ替えて整える方式でやってきた。っていうか、ちゃんとしたネタがなくても、何か書き始めればそのうちテーマが決まり、なんとなく一本にまとまったように見える、って感じの書き方が最近の主流。

で、最近流行りのマインドマップ。専用のソフトがいくつもあるし、Omni GraffieやIllustratorでも似たような構造のマップは書けるので、アイディアに苦しんでるときなどに発想の助けになればと試みたことがあります。きちんとルールに従って試したわけじゃないので、ちゃんと実践して役立てている人には非常に失礼な書き方になって申し訳ないのですが、……なんか、ダメです。あんなカラフルなマップを作って遊んでる場合か、ってどうしても思ってしまう。新興宗教的でうさんくさい、という人もいますね。すいません。でも、人知れずマインドマップを使えば、抜け駆け的に超人的にアイディア量産ができるんじゃないかと期待もしたのですが。

で、何が僕的にダメだったかというと、上記のアウトラインプロセッサで書いたように、階層やツリー構造で考えると、かえって要素が固定してしまってアイディアが広がっていかないんです。ツリー構造が項目同士の結びつきを強くしてしまって、意外な組み合わせによるヒラメキを起こりにくくしてしまってる感がある。項目を線で結ぶだけでもダメ。止まってしまう。ツリー構造は、一つのテーマに基づく項目を網羅していくには非常に有効にちがいないんだけど。マインドマップの形式でアイディアを誘発させるには、人間の脳って記憶容量が膨大すぎると思う。マインドマップに思いつく全てを書き出すなんて不可能じゃないかな。

僕にとってひとつの理想型は、以前書いたように「星新一氏がショートショートのネタを考える方法。アイディアの断片をメモした無数の紙片をかき回し、並べ、思わぬ組み合わせから発想」ってもの。そういうふうに、ツリー構造によらず、思いつきや要素をできるだけ手間をかけずにランダムに並べるソフトがあれば、と。

で、最近試した「MiND PiECE」というマインドマップソフト。新しく思いつき要素を作るのが非常にラク。returnキーを押すだけで次の項目が作成される。書いてはreturn、を繰り返すだけで、ものすごい勢いで項目を増やしていける。returnで作成した段階では、すべての項目は同格の並列状態。それらをドラッグ&ドロップで組み合わせてツリーにしたり切り離してマインドマップを作っていけるのだが、それはおいといて、無数のアイディアの断片を作る目的には超最適。星新一方式をやるには、今まで見てきたソフトで一番簡単。売り文句が「アイディアの粘土細工」で、なるほど〜。最近の僕のテーマ「自前のコンテンツを持つ」ための、ストーリー作りにも役立ててみたい。

10日の試用期間は過ぎちゃったんだけど、保存できない他はまだ全機能を試せる。しばらく迷って購入を決めたい。かなり有力っぽい雰囲気。

MiND PiECE < http://mindp.kantetsu.com/ >

余談。上記は主にテキスト主体の発想の話でしたが、形状や絵の場合はどうするか? 1990年に大崎のO美術館で見たウイリアム・レイサム展にすばらしいお手本がありました。コンピュータ・グラフィックス中心の展示だったのですが、その中に、形状のバリエーションを模索するための手書きスケッチがありました。球体や立方体をルートに置き、ちょっとずつ形を変更しながらツリー状にバリエーションを増やしていく方法。枝の末端では、元の形が何だったのかわからないくらい複雑な形状に進化。

この方法なら、いくらでも形を作れるし、アイディアに詰まることはない。今でも時たまウイリアム・レイサム方式でキャラクターのバリエーションを考えたりしてます。実は、マインドマップを初めて知ったとき、なんだその方法なら知ってるぞ、と思ったものでした。
< http://www.doc.gold.ac.uk/%7Emas01whl/media/images.htm >

余談2。項目を線で結ぶとダメ、と書きました。僕的には、項目をランダムに置いた上で自由に組み合わせ(距離を近づけるだけ)を試せるほうがいい。MiND PiECEはそれに近いことができるけど、もっと重層的に奥行きを持つことができれば理想。平面の机の上で紙片をかき混ぜるより、部屋中に紙片を浮遊させて、つかまえては組み合わせたり、ゆるいグループを作ったりできれば。つまり、素早くメモ書きを作って3D空間に浮かせられるソフトがあれば。以前、バイオLXに付属していたソフト(名前忘れた)で、画像のサムネールを空間にぐるんぐるん飛ばしてブラウズできるものがあったけど、あんな感じのテキスト版があったらおもしろい。

【吉井 宏/イラストレーター】 hiroshi@yoshii.com

「あたしブログ」。URLを入れると、そのサイトをケータイ小説風に変換してくれる。数語ごとに行替えされ、行間が空き、「みたいな」が時折挿入される。雰囲気出てる。おもしろい〜。
< http://labs.spicebox.jp/p/atashi/ >
ところで、Adobe CS4が発表された。CS3で間に合ってるのでアップグレードを初めて飛ばすつもりだったのだが、Photoshop CS4に「画面の回転機能」が搭載されるそうで、もう楽しみでしょうがない。早く使いたい!
< http://www.adobe.com/products/photoshop/photoshop/features/?view=topnew >

HP < http://www.yoshii.com >
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/ >