[2511] カメラをぶん投げる

投稿:  著者:  読了時間:24分(本文:約11,800文字)


<毎日が増え続けるモノとの格闘>

■デジアナ逆十字固め…[85]
 カメラをぶん投げる
 上原ゼンジ

■ショート・ストーリーのKUNI[46]
 ムッシュの店で
 やましたくにこ

■買物王子のモノ語り[3]
 欲しいモノを手に入れるために必要なのは、減らし続ける努力。
 石原 強

■イベント案内
 クリエイティブビジネス・マーケット「大阪創造取引所」


■デジアナ逆十字固め…[85]
カメラをぶん投げる

上原ゼンジ
< http://bn.dgcr.com/archives/20081009140400.html >
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前回はドリルドライバにカメラをくっつけてグルグルと回す、という話を書いた。これは、企画倒れでろくな写真が撮れなかったのだが、柴田編集長から扇風機を使ってみてはどうかというメールが届いた。私としては回転方面からはもう足を洗いたかったのだが、編集長からジキジキに提案されたら断れまい。ということでやってみました。

まず、工作の仕方を考える。一番簡単なのは扇風機の羽根にカメラをくくりつけてしまう方法。でもしっかりくくりつけないと、どこかにカメラが飛んで行ってしまいそう。それにピッタリくっつけてしまうと液晶画面が隠れてしまうし、何の操作もできないんだよな。

で、羽根を外して、回転軸に切ってあるネジに、ナットを使って留めるという方法を考える。前回はこういう工作をする時には現物を持って行って、合わせてみると確実、という話を書いたが、羽根のない扇風機を持ってウロウロしているオジさんというのは、かなり怪しい。そこで今回はノギスで測っていくことにする。

ホームセンターに行って、8ミリのネジに合うナットと、カメラを固定するためのL字の金具を購入。しかし家に帰って付けようとしたら扇風機のネジにナットが合わない。「だから、扇風機を持ってけって言ったじゃん!」と弱虫の自分を責める。やはり、扇風機を持って行って合わせてみるべきだろうか? でも恥ずかしい……。心は乱れ、仕事も手につかない。

考えに考え抜いた末、扇風機本体ではなく、羽根を留めていたキャップの方を持っていけばいいのだと思いつき、一人ニンマリする。早速ポッケにキャップを入れてホームセンターへ。金物のコーナーに行ってネジを合わせてみるのだが、残念ながら合うものがない。

このホームセンターのネジコーナーはかなり充実していて、ミリネジだけでなく、インチネジも扱っているような店だから、ここで合うものがないということは規格外なのかもしれない。そう言えば扇風機のメーカーは、まったく聞いたことのない会社だった。困ったなあ、ちゃんとしたメーカーの扇風機を買うべきだろうか。

●どのカメラを投げるべきか?

扇風カメラの工作はちょっとお休みして、今度はカメラを放り投げることに挑戦。「カメラトス」については前回もちょっと書いたが、少しちょっかいを出してみることにする。カメラトスというのは空中にカメラを放り投げ、空中で撮影を行う方法だ。

たとえば、セルフタイマーを使い、自分に向けてシャッターを押す。撮影の直前にカメラを放り投げれば、空撮したセルフポートレイトが撮れる……かもしれない。シャッタースピードを遅くして放り投げれば、大地が歪んで写る……かもしれない。いずれにせよ、トライ&エラーを繰り返し、偶然を呼び込むようにして撮影する方法で、うまくいけばなかなか面白いイメージが得られる。

カメラトスにはいろんな手法があるが、一番きれいなのは、暗い場所で様々な色の発光体を撮影する方法。シャッタースピードを遅くすれば、点光源がきれいな光のラインとなる。投げる時のひねりの加え方で、さまざまな模様になる。

私はこのカメラトスを知った時に、カメラを受け止めそこなった時用の命綱をどうやって付けたらいいのか、ということをまず考えた。まあ、普通はカメラが落ちて壊れたら大変だから、誰でも落下防止策というのを考えて当たり前だ。でも、命綱を付けて放り投げるのは真のカメラトスとは言えないようだ。

「ああ、ナンだ。君はヒモを付けて放り投げたんだ。でも、そんなのカメラトスって言って欲しくないんだよねー」ということらしい。カメラを手に持ち、振り回しながら撮影する、というジャンルはあるようだが、「トス」と一緒にしてはいけないということらしい。

被写体の方は豆電球やLEDを使ったイルミネーションみたいなものが向いているようだが、パソコンモニタに映し出した画像でもいいらしい。これは簡単そうだが、もし放り投げたカメラがモニタに激突したら……とか、キーボードやパソコンの上に落ちてきたら……なんていうことを考えると、心が折れそうになる。しかし俺は今、勇気を試されているのだ!

結局弱虫でチキンな私は、テレビの前にお布団を敷いて撮影することにしました。まあ、これでもどうにかなりそうな気がする。まず、カメラトスの定番である携帯電話を使って撮影に挑む。しかし、なかなかうまく撮影することができない。マニュアルが効かないから、シャッタースピードのコントロールが難しいのだ。

夜景モードで撮影すれば、シャッタースピードを遅くできそうだが、なぜかテレビ画面がしっかり写ってしまう。いやしっかりというのは嘘で、画像はブレてはいないが、多重露出のような感じで、2重3重に写ってしまう。これが携帯電話の限界なんだろうか。

しかたないので、コンパクトデジカメで撮影することにする。まずリコーのGX 100。これならマニュアルでシャッタースピードの制御も可能。しかし、ボディを振ってみると中でなにか動く感じ。この間ドリルドライバの先に付けられてグルグルやられたもんだから、脱臼でもしてしまったのだろうか? さらに衝撃を与え、複雑骨折でもしたら大変だから、しばらくは安静にしておいたほうがいいかもしれない。

リコーには、工事現場など屋外でハードに使うことを想定して作られた、防水デジタルカメラG600という機種がある。これは「1.5mの落下テストもクリア」という衝撃に強い製品なのだが、カメラトスに向いた製品と言えそうだ。防水・防塵・耐冷仕様ということで、この機種じゃないと撮れないような作品というのもありそうだな。でも、ちょっと高い。

ニコンのCOOLPIX5000は最近使っていないから投げてもいいかな、と思ったのだが、ちょっと重いから落ちた時の衝撃は強そうだ。それに液晶画面が動くようになっているので、つなぎ目が折れて液晶画面だけ外れてしまうという事故は充分に考えられる。

最終的に今回命を賭して貰うことになったのは、キヤノンのIXY DIGITAL 810 ISだ。携帯電話よりはかなり重たいが、出っ張りのないデザインでしっかりとした造りだ。いい仕事をしてくれるんじゃないかと期待している。ちょっと不安そうではあったが、お布団を2枚敷くということで納得してもらった。

まず、シャッタースピードを2秒に設定して放り投げ、テレビ画面を撮影してみる。しかし、ブレないでちゃんと写る。何回か試してみるが同じ。2秒もシャッター開けてるのに、それはないでしょう。なぜだ? そうか、テレビというのは走査線がビュンビュン走って表示してるから、長時間露光でも瞬間しか写らないのか。じゃあ、わざとブレさせるカメラトスの被写体としては失格じゃん。

私はそのことに気づくと、カメラトスに向いた被写体を求め、またあてのない旅に出たのだった。
(つづく)

◇流し展
現在、「街道」の流し台を借りて、写真と手作りレンズを少し展示しています。街道というのは写真家・尾仲浩二さんが運営するギャラリーです。現在、尾仲さん、叶芳隆さん、坂巻剛好さんの写真展を開催中。私の写真はショップスペースの流しにあります。コンナ感じ↓
< http://kitschlens.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/post-ca3f.html >

◇街道
< http://kaido.mods.jp/ >

【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
◇上原ゼンジの新刊
「うずらの惑星 身近に見つけた小さな宇宙」(雷鳥社刊)
< http://www.zenji.info/profile/uzura.html >
◇上原ゼンジのWEBサイト
< http://www.zenji.info/ >

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■ショート・ストーリーのKUNI[46]
ムッシュの店で

やましたくにこ
< http://bn.dgcr.com/archives/20081009140300.html >
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その店はとても変わっている。

階段を上がった2階には海がある。板張りの床の足元から海が始まり、少しずつ深さを増しながらはるか沖で空と交わるまで続く。水面がたぷたぷと揺れる程度で波がほとんどないのは陸に入り込んだ内海なのか。水は澄んで、かすかに青みを帯びて美しく、手で触れるとやわらかな感触もある。でも、水からひきあげたその手はぬれていない。揺れる水を透かして見える貝殻もつかめはしない。海は幻影なのだ。時折カモメの姿も見えるし、空に雲が生まれては消えもするのに。

店の存在は限られた人にしか知られていない。
ある日、ごく簡単な招待状が届く。

 私の店にどうぞお越しください。
                  ムッシュ

私の元にも招待状が届き、そこに添えられた地図を頼りに店を訪れると、ムッシュと呼ばれ、自分でもそう名乗っている男が2階に案内してくれた。

私はすぐに店が気に入った。海辺のテーブルにひじをつき、ぼうっとしているだけで心が安らぐのを感じる。しばらくそうしていると目の前にザザのグラスが置かれ、ムッシュが「あちらの男性からです」と、ひとりの男を示した。

やがて、その男は実在しない浅瀬をざぶざぶと横切って私のテーブルにやってきた。そしてにこりと笑った。感じのいい人、と私は思った。

私とザザ------その男をザザと呼ぶことにする------はその後、店に行くたびにテーブルをともにし、おしゃべりを楽しむようになった。私たちはなぜかとても気が合い、ごくささやかな話題でも楽しかった。

「ぼくがこどものころはこうだった」
「私もよ。不思議ねえ」
「なぜみんなそう思わないのか理解できなかったんだ」
「そうそう、とてもよくわかるわ」

会う回数が増えるにつれ、ザザの顔が変わっていくことに気づいた。最初はなんとも思わなかったが、どんどん目鼻立ちが整い、端正になっていく。笑ったときの顔が特に、魅力的だ。私はその笑顔が見たくて、ザザが笑ってくれそうな話題を用意していく。

ムッシュは店のすべてを仕切っている。私たち客はムッシュに案内されて一人ずつ入店し、ふたたびムッシュとともに一人ずつ店を出る。私たちはみんな、ムッシュによってだけ、結びつけられているのだ。

ムッシュがこの店のオーナーなのか、単に雇われているのかはわからない。それでも、私たちにとって、その店は「ムッシュの店」である。

ある日ムッシュが
「いかがですか。お楽しみいただいてますでしょうか」と言うので私は答えた。
「それはもう、とても。でも」
「でも?」
「彼、少しずつ顔が変わっていくような気がします」
「それはもちろんです」
「どういうこと?」
「この店ではすべてが幻影だからです。海も、空も、あなたも、彼も、そのほかのお客も、ここでの外見はすべて幻影です」
「幻影? それはだれが操作しているの?」
「あなたが彼と話しているとき、彼の外見はあなたの心が創り出している。彼はどんなふうに見えますか?」

ムッシュはにたりと笑った。私はしばらく意味を考え、それから言った。
「では、私の外見も?」
「彼が見ているあなたは、あなたが会社の洗面所の鏡に見るあなた自身とは似ても似つかぬ姿です」
「私はどんなふうに見えているの?」
「それは彼の表情から読み取ればいい。いえ、ふたりでいる時間が楽しいものかどうか、それでほぼ判断できるといえるでしょう」
「見る人によって顔が違ってくると?」
「その通りです。あなたが見る彼の顔はほかのお客が見る彼の顔とも全く違うはずです」

「あなたと彼との関係が変われば、お互いの外見もそれにつれて変わるのです。現実世界でも幾分似たことはあるでしょう。好ましい感情を抱いていると、その人の外見さえ好ましく思えることが。ここで起こることは、それを純粋化し、明晰にしたものです。幻影と言いましたが、それはある意味真実なのです」

私はムッシュの言うことが半分くらいしかわからなかった。

確かに、店にはほかにも客が何人も来るし、会釈したり簡単な会話を交わすこともあるが、その人たちがどんな顔をしているか、まったく印象に残っていない。私も、その人たちから見れば同じことなのだろう。特に親しくない人たちにとって、私の顔はたぶん灰色の石塊、それともプラスティックの安物の玩具のようなものか。

次に店に行ったとき、ザザはますますハンサムになっている。髪はつやつやとした紫色で睫毛が黒々と長く、ほほは少年のようにバラ色だ。
「でも、ここで見るものはすべて幻影なんですって?」
「そうとも。ムッシュが言ってただろ?」
私はうなずいた。
「ぼくは、すばらしいシステムだと思っているよ。外見にしばられない、本当に心から理解しあえる人を探すことができるんだよ、ここでは。ちがうかな」
「そうね。きっとそうだわ」

ザザは笑った。なんてかわいい笑顔。私はとろけそうだった。

夜が更けて、私はひとりのアパートに帰り着く。浴槽に湯を満たし、衣服を脱いで裸になる。鏡の前に現実の私が映る。背が低く、ぶよぶよと太った醜い中年女。子供のころから「かわいい」と言われたことのない不器量な顔。左ほほには生まれつきの大きな痣がある。それだけでなく、右目の上に大きな傷跡があり、その傷の治療がまずかったせいか顔が左右でゆがんでみえる。若いときにつきあっていた男から殴られたときの傷だ。まぶたが切れて血がたくさん出たこと、その血が目に入って痛かったことを覚えている。なぜあんな男と何年も一緒に住んでいたのだろう? あの男はどんな顔をしていただろう? 思い出せなかった。私はいつまでも、鏡を見続けた。

「ぼくは野球選手になりたいと思っていたんだ」
「私は歌手よ。踊りながら歌うの」
「それはいい。君ならきっとスターになれただろう」
「私が?」
「うん。君はきれいだし、声もすてきだから」
「ほんとに?」
「最初からすてきだと思ったけど、どんどんきれいになる。今日のすみれ色のドレスもとても似合っている」
現実には私は10年以上前に買ったベージュの無難なワンピースを着ていた。
もちろん、私の持ち合わせではいちばんまともな服だったけれど。
「あなたは野球選手にならなくてよかった」
「どうして?」
「今でもこんなにすてきなのに。スター選手になれば私なんかサインさえもらえなかったわ」
「君には特等席を用意しておくよ」

ザザは見るたび、体格もよくなっていた。仕立ての良いスーツに包まれた堂々とした身体は厚い筋肉に覆われていそうだ。これがすべて幻影なのか。

朝、私は残り物を詰め込んでこしらえた弁当をバッグに入れ、アパートを出る。電車に乗って20分、そこから歩いて15分ほどの職場に向かうために。電車はいつも混んでいて、私は奥へ奥へと押され、弁当の入ったバッグを抱えたままドアのガラスに押しつけられ、つぶされそうになるのをこらえて立っている。電車はいくつもの駅に着き、反対側のドアが開いてはまた閉まり、発車する。と思っていると、不意に電車が止まった。
「信号待ちです」

ふと外を見ると、線路のすぐそば、飲食店らしい店の裏口の光景が目に入った。ポリペールや段ボールが積み上げられている横で、背が高く肩幅も広い大きな男が何やら怒鳴っている。私の目が釘付けになったのは、怒鳴られている方の男だ。その男は無惨なくらいにやせて哀れげで、背筋が曲がっていた。着ているものも粗末で、ぼろぼろに見えた。髪は半分以上が白髪だ。大きな男に何かを責められ、謝っているらしい。そう、多分その男はこれまでいつも誰かに謝り続け、それで背筋も曲がってしまったのだ。でも、大きな男は目の前で顔を醜くゆがませ、泣きそうになりながら懇願する男をも、容赦しない。何か言いながら、やせた男を殴る。殴られた男はよろめいて、後ろへ倒れ、段ボールの山が崩れる。さらに、大きな男は倒れた男の肩を踏みつける。底の分厚い、汚い靴をはいた足で。

私はガラスに顔を押しつけられ、身動きもできない満員の電車の中から、まばたきもせず一部始終を見ていた。すると、私の大きく見開いた目と踏みつけられた男の目が合った。悲しげなその目は、私がよく知っている人のような気がした。

電車が動き出した。私は、自分が涙を流していることに気づく。まるで自分が汚い靴で踏みつけられたように。

4日間、ザザは店に現れなかった。私はひとり海辺のテーブルで、雲の動きを飽きることなく目で追いながら過ごした。

5日目、私のテーブルにムッシュが来て「お越しになられましたよ」と言った。やがてザザが現れ、私のそばに立った。おそるおそる目を上げると、そこにはひとりの落ち着いた感じの紳士が立っていた。紳士は「おひさしぶり」とささやき、それから私の向かいに腰を下ろした。身のこなしは軽いが、肩をかばっているように感じられた。

「今日、ぼくはどんな風に見えますか? 今までと違って見えますか?」
私は少し間をおいて答えた。
「ええ、違うわ」
ザザは一瞬緊張した。私はにっこりとほほえんで、言った。
「いままでよりずっとすてき」
それは本当だった。ザザはこれまで以上に美しく、繊細で、輝いていた。
「よかった。あなたも、今までで一番きれいだ」

ザザは笑い、つられて私も笑った。私たちは何もおそれることはなかったのだ。そのことに感動していた。いつの間にかムッシュがそばに来ていた。私たちは乾杯した。ムッシュの店のために。

【やましたくにこ】kue@pop02.odn.ne.jp
みっどないと MIDNIGHT短編小説倶楽部
< http://www1.odn.ne.jp/%7Ecay94120/ >

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■買物王子のモノ語り[3]
欲しいモノを手に入れるために必要なのは、減らし続ける努力。

石原 強
< http://bn.dgcr.com/archives/20081009140200.html >
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モノを買うのは楽しいけれど、モノの増加に家の収納力が追いつかなくなってきます。床が散乱してくると黄色信号。かきあつめて適当に積み上げていると、ある日雪崩が発生して、もっとヒドい混沌状態に陥ったり、大事なモノが壊れたり取り返しのつかないことになります。

毎日が増え続けるモノとの格闘です。そんなことを続けていては気持ちも荒んでしまいます。家をキレイにすることと、モノを捨てるすることとほぼ同義です。新しいモノを買うためには、涙を飲んで今ある何かを捨てなければなりません。そんなわけで、うちでは衣替えの時期にあわせて春秋の年二回、大掃除をすることにしています。

世間では、年末に大掃除をしていますが、すぐにモノが増えてしまうから、年に一回では間に合いません。収納場所を確保しなければ、魅力あるものを沢山見つけても安心して買い物を楽しめなくなってしまいます。それに冬の寒い日に掃除なんて、考えただけでやる気が失せてくる。面倒な掃除だからこそ、季節がいい時期に気持ちよくやりたい。

いざやろうとしても、やっぱり嫌だなあと気持ちがぐらつきます。その心の壁を越えて成し遂げる為の秘訣は「家にお客さんを呼ぶ」ことです。先に招待する人の日程を決めてしまい、後戻りできなくするのです。見栄もあるから、絶対に終らせようという気になります。しかも、そのお客さんに振る舞うワインや日本酒は、ちょっと買いすぎてしまったお酒を飲んで片付けるという、大掃除の一環なのです。

やる気が出てきたら、まず手始めにいらないものを捨てます。そもそも「いらないモノ」なんてないのだけれど、背に腹に代えられません。大きな収納スペースを必要とするのは、本と洋服と相場は決まってます。うちのルールでは、お互いに決められたスペースに収まらなくなったら、購入した方が処分することになっています。雑誌は最新号を除いて有無をいわさず廃棄。マンガはシリーズが完結したら、最後に一度読み返してブックオフへ。二度は読まないと思う小説やビジネス書も同時に出します。いくらにもならないのは悲しいけれど、マメに売り買いする暇もないのでまとめて処分してしまいます。

洋服は着なくなったものから捨てます。選択基準は、前シーズンに一度も袖を通さなかったもの。その中から、自分として諦めてもいい服をピックアップします。スペースが許す範囲で生き延びた服は、もう1シーズン様子を見ることになります。迷ったら「どうしようか?」とお互いに確認することにしています。相手のものは興味がないので、冷静な判断か返ってきて捨てられます。スペースも足りないけど、どうしても残して置きたい服は、最終手段として実家に発送。それだけ処分しても、現時点で自分スペースはちょうど満杯、すぐに溢れ出すことになるでしょう。

次は、整理して詰め込みます。モノが多いので、捨てるだけでは限界があります。しかし、家具を購入して収納スペースを拡げるのは最後の手段です。ドーピングのようなもので、手をだすと今度は収納家具で家が埋まることになりかねません。これまでの収納を見直して、限られた空間にどれだけ効率的に収納できるかが腕の見せ所です。入れる順番や箱の大きさ形などを見直して、さながらパズルのように詰め込んでいきます。工夫すると思った以上に入るのですが、調子に乗ってあんまり複雑にすると、今度は取り出せなくなります。次の大掃除まで一回も動かせない「塩漬けモノ」も発生します。

詰め込んでいく上で、東急ハンズなどで売っている収納のお助けグッズも使ってみます。下駄箱が一杯になっていたので、一足分のスペースに二足入るという便利品を買ってみました。靴を横並びではなく縦に納めるので、確かに一足分のスペースで二足入ります。これはいい! と思ったけど、これは幅の話で高さが二倍は必要になるのです。結局、収納数はかわらないのに、二段になって取り出しにくくなっただけです。無駄にゴミを増やすことになってしまいました。

普段は滅多に開かないけど捨てられないのが、収集している絵本や写真集です。スペースだけでなく重量も相当なものなので、トランクルームを申し込もうかと思っています。記録のための目録を作るのが面倒で先送りしていましたが、そろそろ限界に近づいています。でも、今のところ保留します。今回は、大きなゴミ袋に五袋分のモノを処分して、なんとか家の秩序を取り戻すことができました。

大掃除はやり始めるまでは億劫だけど、やり終わると達成感もあるしスッキリして気持ちがいい。いつも狭いなあと思っていた家も、こんなに広かったんだと再認識できます。モノを一点一点確認して、どれを残してどれを捨てるかの選択をしていると、自分にとって何が大事なのか分ってきます。それは自分自身を見直すことにもなるのです。

なんてカッコつけてみても、結局は新しいモノが欲しいだけなのです。せっかく減らしたのだから増やさなければいいのに、喉元過ぎればなんとやらで、早速ネットでブックマークしていたお店をチェックしてまわります。また半年後に混沌状態になることはすっかり忘れて、購入ボタンをポチッと押してしまうのです。

【いしはら・つよし】tsuyoshi@muddler.jp
ノーベル賞の4人受賞のニュースには正直驚いた。しかも大発見ではなく基礎研究のようなものに与えられています。学者を志す人には励みになるのではないかと思いますが、受賞者が歳をとってしまっているのは残念。
・ウェブアナ < http://www.muddler.jp/ >

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■イベント案内
クリエイティブビジネス・マーケット「大阪創造取引所」
< http://www.cbf-web.jp/market/ >
< http://bn.dgcr.com/archives/20081009140100.html >
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特徴あるコンテンツ、デザイン、先端技術、アイデア等多様な分野、様々な企業や団体がブース展示。総合マッチングセンターも開設。専用商談スペースを設けています。取引先開拓や提携先、パートナー探しなど商談をご希望の方はもちろん、一般的な興味でお越しいただいてもお楽しみいただける内容です。どなたでもご参加いただけます。(サイトより)
特別展示:海洋堂 人気のフィギュアワールド

日時:10月28日(火)〜29日(水)10:00〜18:00 最終日17時
会場:マイドームおおさか2F(大阪市中央区本町橋2-5)
入場料:無料
詳細・申込:サイト参照

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■編集後記(10/9)

・連日、日本人科学者がノーベル賞受賞のうれしいニュース。日本人としてまことに誇らしい。勝手に一人で食卓で催行したお祝い会で、いつものビール(第三の、だが)に加えて純米吟醸酒もしこたま飲んでしまい、じつは今日少し頭がぼーっとしている。クイズ番組では定番の日本人受賞者名と分野、これをちゃんと覚えておく必要はあると思い(クイズに出るわけじゃないが)、ウィキペディアを見たら早くも最新の4人まで掲載されていた。ノーベル賞のエピソードが興味深い。受賞が当然なのに受賞できなかった北里柴三郎、野口英世、鈴木梅太郎がいる。知らなかったが、ガン発生は刺激説を唱えた山極勝三郎もいる。日本人はかつて不当な扱いをされていたのだ。くやしい。それにしても、テレビ局のアナウンサーによる受賞者インタビューは、奥さんに何と伝えたかといった愚にもつかない問いかけや、ちぐはぐなやりとりで、聞いていて居心地が悪くて仕方がない。簡単な脚本は用意すべきでないか。できれば、小川洋子のような科学に恋する人をインタビュアーに立ててもらいたいものだ。/以下、たびたび書くことながら。姉妹誌「写真を楽しむ生活」は写真展情報がメインのコンテンツである。だから日々、ギャラリーや美術館のサイトをチェックしている。そしていらいらしている。多数のサイトを次々に見て行くのだから、ひとつのサイトに長い時間かけるわけにはいかない。できれば最初のページで基本情報がすべて掲載されていて欲しい。もっとも、わたしのような短気な、実用一点張りを求めるユーザーばかりでは、Webデザイナーの腕の見せ所がないかもしれぬ。動かすな、飛ばすな、スクロールやらせるな、文字は画像にするな、あまりクリックさせるなというんだから。そんなわけで、デザインはよくできていると思う「大琳派展」みたいなサイトは、逆にいらいらさせられて苦痛だった。わたしみたいなユーザー、少数派か。(柴田)

・本気で日本の地位を上げたいなら、国が論文の英訳もしくは助成すべき。英訳されていない眠っている論文が大量にあるはずだ!/続き。電話では結構失礼なことを言われ、記録の読み取りもあやふや。こんなので大丈夫なのか? と早々に切り上げる。で、翌日、特別便と国民年金手帳、厚生年金手帳を持って、社会保険事務所に行って来た。わざわざ遠くまで行くのは面倒だったが、近くに大きな本屋があるので嬉々として出かける。1人20〜30分かかると書いてある。担当者は1人。4人待ち。2時間かかるのなら本屋行ってこようかな〜などと思い始める。会議室での相談だったが、相談している人の事情が丸聞こえというか、その手の配慮なし。ああ、この人は離婚されたのね〜とか、○○で働いてらしたのか〜とか。聞きたくなくても狭い会議室なので声が響く。記録を引き出すのに、いちいち会議室を出て、コンピューターに向かう。これを全員分、人によっては数回。なんという効率の悪さ。これを一年以上やってるのよね? 17時前に数人の職員が帰宅。30分後、8人待ちになった。途端に担当者が「応援を呼んできます」と。え〜、なら最初から呼んでおいてよ〜。応援が来てすぐに番号が呼ばれる。若い女性。用紙を見せて、厚生年金がと説明しはじめたらすぐに理解してくれ、記録を見るために出て行き、しばらくすると出力を持って戻ってきた。てきぱき。あれ? 厚生年金手帳の番号を控えないで出力してきたよ。(hammer.mule)