アナログステージ[2]1と0の中間に味は隠されている
── べちおサマンサ ──

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このコラムを書き終わる頃、某週刊少年漫画雑誌に連載中の、葛飾区を舞台にしたオマワリさん漫画で、偶然にも半分以上の内容が被ってしまいました。先にやったもん勝ちとはよく謂ったもので、世に送り込まれてしまったものは仕方ない、パクり・盗用と非難される前に、自ら被った内容を書き直しすることに。時事ネタでもないはずなんだけどなぁ。

「この針の動きといったら……生を主張し、呼吸をしているようだ。聞こえるよボクには聞こえるよ、ぴくん、ぴくんと動くキミの吐息が……。あ、いま95 Vまで電圧が下がったね、大丈夫だよ、すぐに100Vに戻るからね」

「なんていうことだ! この押したときの感触は、まさに乙女の肌そのものじゃないか! 押して戻ってくるこの手応え……くぅぅぅ、止まらない! カチカチ」



アナログならではの嗜好で、アナログメーターの指標の動きにウットリする趣味をお持ちの方や、タッチパネル(タッチスクリーン)では味わうことができない、押しボタンスイッチの手応えに萌えてしまう、押釦フェチな方など、人の嗜好性は実に幅が広いものです。

「ふん、こんな7セグメントで表示されるデジタルのメーターなんて、味も素っ気もないどころか、バカにされている気分だね。だって、0-9の数字しか表示する能力しかないでしょ? その点、アナログメーターをご覧なさい。目盛りと目盛りの間に指標が挟まり、3なの? 4なの? 3.5? いや、3.6くらい?って、こんなドキドキ感をデジタルでは味わうことはできませんよ、分かります?」

計器ファン(マニアと云うと怒られる)の中でも人気なのが、電流計・電圧計などのアナログメーター。ご家庭などに据え付けてある電力メーターは、クルクル回っているだけなので、まったく魅力が感じられないそうです。うーん、際どい。

日常に深く浸透し始めた、携帯電話・パソコンなどのデジタルツールで、唯一アナログな部分が、そう、キーボードであり携帯電話操作部のメインであるキーパッド。PDAやiPhoneのように、キーパッドを廃止したタッチパネル式の端末も出始めておりますが、まだまだメインは押しボタン。

ボタンの押し心地は、製造メーカーによって様々。カチッっと硬質な感覚を味わえるボタンから、フニャっとした蕩けるような感覚まで、実に多種多様です。とりわけキーボードに関しては、皆さん独自の拘りをお持ちかと思います。
カタカタカタカタ。うっとり……。カタカタカタカタカタ。ご満悦。
カチャカチャカチャ。はぁ。カチャカチャカチャカチャ。豊満な笑顔。

パソコンショップなどで、陳列されているキーボードの試し打ちをしている方の様子を伺うと、快適な作業性を一瞬で見抜く鋭い視覚、指先に触覚の神経を集中させ、キータッチの鼓動を確かめると同時に、研ぎ澄まされた聴覚で叩いた打鍵音を吟味する。興奮を醒ますように呼吸を整えると、キーボードを持ち上げ、鍛え抜かれた嗅覚で匂いを満喫する。

するとどうだろう、溢れんばかりの唾液が口元から流れて出ているではないか。最高のキーボードに出会えた瞬間、「いただきます。」と言い放ち、バリボリと食べ始めるわけはありませんが、それに近いオーラを撒き散らしているのは、よく見かけます。

「(心の声)ハァハァ、なんて高輝度なLEDなんだ、今までの高輝度LEDとは、輝度が全く違うじゃないか、この光の拡散具合といったら、まるで、宝箱を開けたときの黄金や金貨の輝きと同じじゃないか、ハァハァ、なんでこんなに光輝いているんだ、なにがキミをそんなに輝かせているんだ……そうか! 抵抗だな! 抵抗値を下げて輝度を上げているんだな! 憎い演出をしやがって、このぉ、でもこの拡散具合は本物だ、ハァハァ……」

先日、幕張メッセで開催された、CEATEC JAPAN 2008。毎年足を運んでいる展示会のひとつなんですが、電子部品・デバイス&装置ステージにて、取り分け目に付いたのがLEDの躍進でした。各社各々、幅広く開発を進めており、産業機器・家電に留まらず、癌治療などの医療分野まで用途を広げておりました。LEDや表示機を展示しているブースでは、上記のような、往年のランプファン(マニアと云うと怒られる)の方々が、特に楽しめた開催年ではなかったでしょうか。

【べちおサマンサ】 pipelinehot@yokohama.email.ne.jp

FAプログラマー兼秘密でいっぱいの、ナノテク業界の開発設計。
年齢に関係なく、アナログ器機に安堵感を覚える方が結構いらっしゃいます。
大体が、間違ってもやり直しが安易で簡易な操作などの、マン・インターフェイスに安心を見いだしているようです。
WEB SITE < http://www.ne.jp/asahi/calamel/jaco/
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