音喰らう脳髄[57]カステラの味わい方
── モモヨ ──

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カステラが好きだ。

以前、島原市の災害復興工事にたずさわっていたおりには、二週間に一度くらいのペースで長崎空港を利用していた。その際、空港の売店で、今はなき(?)ハウステンボス関係の玩具類をチェックして、子供たちへの土産物をあさったものだが、その後は、かならずカステラを買い、さらには皿ウドンを食べ、待ち時間をつぶした。

カステラは私個人の嗜好品である。嗜好品というからには、ほんの少し、こだわりだってある。ちゃんとしたカステラの場合、底敷きの薄紙ちかくに結晶化してザラメ状になりかけた糖分の層ができる。紙に付着したあれを人知れず舐める。これがたまらないのである。

ブランドは問わない。時に、紙と蜜・糖分の微妙な関係が保たれていないような、カステラもどきも売られている。単なるパンケーキのような類、これはいけない。NGである。似て非なるものというべきか。



また、出先などで、こじゃれた皿にのせられ紅茶などと一緒に出されることがある。が、時に例の底敷きの薄紙が剥がされていることがある。これは、いけない。相手は気をきかせたつもりでした行為だと思うが、破壊行為というしかない。出先で紙をぺろぺろ舐めるわけにはいかないが、底に紙のついていないカステラなどカステラと呼ぶに値しないのだ。無残で見ていられない。

そんなカステラだが、先週末、現首相がデパート視察のおりに購入したという映像をテレビで見た。なんでも彼はカステラが好きだというのである。値上げの現状チェックということらしいが、総理がカステラをチェックしたのは適切だと思う。

私の場合は、いつも買っているカステラ7個入りが、10月にはいってから6個いりで売られるようになっていた。メーカーによっては、値段据え置き、内容量を調整して物価の高騰に対処するとニュースで言っていた。6個になったのが、それ、であろう。

ポテトチップスなどでも同様の対処がなされているようだが、アチラはさして気にならなかった。量の増減を直感的に把握するには、常日頃から口にしていなければならないが、残念なことに私はさほどのポテトチップスファンではなく、気にすることもなかったのである。

だが、7切れが6切れになる、それも毎日、食べているカステラが、となれば、気にならないはずがない。同じ値段で一切れ少なくなったのだ。つまりは、その分高くなったことになる。パックで普段は300円、特売日には280円だったから、特売値段の方で考えれば一切れが40円、つまり300円弱の商品で40円の値上げが行われたことになるわけだ。こういう計算が得意でない私にも、それが一割以上の値上げであることくらいはわかる。まず、多少とも計算能力がある人間ならば気にならないはすがない、大変な値幅の動きといえる。

むろん、首相が好きだというカステラは九州由来のブランド品に相違なく、私が語るパックとは別物だろう。私のような庶民の食品がこんな価格変動をしているのだ、という事実を私は、同じカステラ愛好家として首相に訴えたいものである。

総理が真のカステラ愛好家であれば、私の、カステラの底に凝集した糖分に対する愛惜の情をわからぬはずがない。庶民のこの些細ではあるが絶大な慰謝をうばわないでいただきたい。ここにそう訴える次第である。

《お知らせ》
今週末、10月25日(土)、午後5時よりHMV渋谷店3Fにてミニライブとトークイベントを行います。映画『ロッカーズ』(完全版)公開記念です。入場は無料。私だけでなく、恒松正敏、マッちゃんも出演します。近隣にお立ち寄りの方、是非、のぞいてみてください。ほかにもどっさり関連イベントがあります。詳細は下記サイトにて。
< http://www.punkmovie.net/
>

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< http://www.babylonic.com/
>

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