グラフィック薄氷大魔王[156]中空レジンフィギュア工法/吉井 宏

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しばらくフィギュア制作休止中でした。年に一度くらい数十個複製して細々と販売してたりするのですが、笑っちゃうほどぜんぜん売れないです。ワッハッハ。飛ぶように売れまくるとはさすがに思ってませんが、作った分の半分程度は売れてくれないと、次を作る気力が出ないのが困りもの。

毎回ヒーヒー言いながら、レジンキャストを注入したり塗装で気が狂いそうになったりして作業してます。どの工程も前半は楽しいんだけど、後半は地獄。なんでこんな大変なこと始めちゃったのかと後悔しながら何十個も作業。部屋がめちゃくちゃになるし。でも、出来上がっちゃうとそんな修羅場はすっかり忘れてしまうのです。まあ、なるべくなら自家製フィギュアから足を洗わなければと……。

とか言いつつ、キャラクター仕事絡みで「展示用フィギュアが少数必要」とか言われると、ホイホイ引き受けてしまうことになるわけですが。だって仕事でフィギュア作れるなんて楽しいもん。今やってるのもそういうケース。期間と予算に余裕があれば普通にソフビフィギュアを作るところを、ハンドメイドフィギュアで間に合わせようというもの。まあ、最初はウキウキ、やっぱ大変。

今回のフィギュアはデカい。ずんぐり体型で高さ15cmといえば、かなりの量感。これを普通にレジンキャスト注入で作ると、材料代もかかるし、ずっしり重くなる。重いということは、倒れたときのダメージが大きい。できれば軽く作りたい、というわけで、以前に試した「中空レジンフィギュア」の工法でやってみることにした。



昨年の実験の様子
< http://yoshii-blog.blogspot.com/2007/01/toys.html >

ここで言う「中空レジンフィギュア」とは、もともと「手製のソフビフィギュアもどき」を実現するためのアイディアだったもの。他に同じことをやってる人がいるかわからないけど、要するに、レジンキャスト樹脂が熱がこもらない末端部分で硬化が遅い性質を利用し、シリコン型の内側にいきわたらせて硬化させようというもの。

レジンキャストを型の内部にいきわたらせるには、一カ所に溜まらないように「ウリャ〜〜〜!」ってシェイク。二液混合の直後はチャプチャプだが、注入後2分で硬化し始めると粘度が上がってドロドロになってくる。まんべんなくレジンキャストがいきわたるように、5〜6分間必死でひたすらシェイクする。

硬化中のレジンキャストはカンカンに熱くなる。膨張した空気の逃げ道を作っておかないと、シリコン型の合わせ目から「ブブブッ」と液が飛び散って危険。空気抜きパイプを工夫してみたけど抜けなくなってしまうため、単純に型に小さな穴を開けることにした。逆に、冷えると内部の空気が収縮してベコッと凹んでしまうこともある。20分くらいして完全に硬化してから型からはずすほうが安全。

肉厚がコンマ数mmでもピンポン球くらいの強度がある。注入量を多くすれば厚みは数mm以上になり、頑丈だ。硬化の具合によっては重心が著しく偏ってしまうこともあるけど。

軽くできる以外の利点もある。まず、原型の形状によってはレジンキャスト注入口の位置や注入後の空気の逃げ道を作るのに苦労するのだが、中空の場合はそれらがまったく必要ない。また、シェイクしてゆっくり固まるからか、細かい気泡ができにくいようで、ツルツルの表面にできるのも利点。

15cmのフィギュア、無事10数個を中空で複製に成功しましたが、これがまた大変でした。というのは、大きなシリコン型は3kgもある重量級。これにレジンキャストを注入したものを両手でギュッと挟み、5分以上もシェイクするわけです。めちゃくちゃ体力いります。それを10数回繰り返し。プラス、別部品のシリコン型も10数回シェイク。へろへろの筋肉痛です〜。

この工法が意外にうまくいったので、また変な欲が出てきた。1mとかの巨大レジンフィギュア(っていうか彫刻?)をこの方法の応用で作れそうだ。数十kgのシリコン型をシェイクするのは無理としても、型自体を薄く作る方法も考案済み。ほとんどFRPの製作みたいなもんだけど。こりゃ部屋でやるのは無理だな〜、また作業場探しかな。

【吉井 宏/イラストレーター】 hiroshi@yoshii.com

部屋で塗装。窓とドアを開けて空気の通りをよくし、噴霧と溶剤を強力ファンで外に吸い出してくれるスプレーブースを使ってます。あれ? なんか目の前が白くかすんできた。このきついシンナー臭はどういうことだ? と思ったら、空気吸い出しのホースがはずれた上に、ドアをうっかり閉めてしまってたのでした。部屋が白い塗料の粉で真っ白に。あっそうそう、塗装のステンシルの作り方でいい方法を見つけたのでまた書くかも。

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