うちゅうじん通信[33]うちゅう人は勉強不足/高橋里季

投稿:  著者:  読了時間:7分(本文:約3,300文字)


前回テキストで、シニフィエをシニフェと書き、シニフィアンをシニファンと書きました。それで、柴田編集長から確認のメールが来ていたのに、私ったら気づかずに、結局、訂正が間に合わなくて、そのまま掲載ということになりました。
前回テキスト
< http://bn.dgcr.com/archives/20081031140200.html >

だけど、私は学生の時から、何十年も、ずっとシニフェ、シニファンと間違えて覚えていたんです。それで今回、びっくりして、ソシュールの本とか取り出してみたけど、どの本にだって、ちゃんとシニフィエ、シニフィアンと書いてあります。

どうして間違えて覚えたのかなぁ。しかも私は、前回思いついた「シニフェな太陽」という語感がすっかり気に入って、「なんか、個展や本のタイトルにしたいくらいだわ〜」とご満悦だったのです。う〜ん「シニフィエな太陽」では、ちょっと違う感じ。パティシエとかマロニエみたいな感じで読むのかしら?



覚え違いと言えば、私は「携帯」をずっとスイタイだと思っていました。何回も間違いを指摘されても覚えずに、またスイタイと読んでしまって、「携帯電話」をケータイと言うようになってからやっと覚えることができました。

脳を活かす仕事術今週は、茂木健一郎さんの本、「脳を活かす仕事術」と「脳を活かす勉強法」を読みました。この本の中では、仕事の能率アップのために「英語を習得して」って書いてある。私は、英語習得については、苦手意識があります。

私が高校生の時に、アメリカで暮らしている伯父が、子供たちを連れて日本に遊びに来ました。私と同じ年頃の、イトコの女の子は、チアガールをしていて、髪は金髪だし、目も青くて、すごく奇麗でした。その両親は二人とも日本人なのに、どうして目が青いのか、まったくアメリカ人に見えました。コンタクトだったのかなぁ。

私と父が、その家族の泊まっているホテルに会いに行って、ホテルのレストランで食事をしました。そこでは、ピアノとヴァイオリンかなにかの演奏があって、その頃の日本の流行歌を演奏していました。それで私は、その女の子に話かけようと、「この曲は、日本で今、一番流行している曲です。」って英語で言おうとしたんです。

ところが、どうしても「ミュージック」の発音が通じないの。私は、自分では英語が話せると思っていました。学校の成績は良かったんです。だけど、どうしても通じなかった。その頃の私は、将来はクリエイティブ系に進むべく、なんだってやるわと思っていたので、「ミュージック」が言えなくてどうすればいいの? という感じ。

小学校の時から英語の本は独学で読んでいたし、少なくとも、その時までに、10年くらいは英語の教科書みたいなモノには触れていたのに、がっかりして、「英語を将来の仕事のツールにはできないな」と思いました。ダメだな。と思ってしまったんです。その時からかも? 受験用の勉強はしても、英語を実際に使って、旅行をしてみようとか、作詞をしてみようとかいう気持ちはなくなってしまいました。なんだか微妙で。初めて外国人と会話をしてみた、というのとも違う、だって、そのイトコは、アメリカで育った日本人なんだし、簡単な日本語の方が、伝わるみたいでした。

どうなんでしょう? お互いに外国語の言葉は、書けない読めない話せないけど、聞けば意味は判るから、お互いに自国語で話せば大丈夫とかいうことにはならないのかなぁ?

実際に、その頃の日本の音楽(ポップス)の流行という面でも、そういう動きはあったと思います。一時期、ポップスのサビの部分だけ、簡単なカタカナ英語で、っていうオキマリのパターンが、それだけで、もうナンカ変じゃない?っていう風潮があって、「日本語の詩で作る」ことだったり、「いっそ全部英語」とか、日本語だけど英語やフランス語みたいなイントネーションになるように曲をつけると洋楽っぽいとか、インストゥルメンタルの方向性とかいうことがありました。この時期というのは、私としては、日本人としての劣等感を意識しだした頃でした。(劣等感を乗り越えるためにガンバル! というよりは、割り切りの早い性格だったかも、私?)

私は本などに書いてあることは、なんでも試してみたくなるんですが、英語で海外の最新の論文を読みこなすというのは、やっぱり無理だと思うので、茂木健一郎さんのような方が、海外の科学の論文の成果などをなるべく早く、日本語でわかりやすい本にして教えてくれるといいなぁ、と思います。でも本当は、日本がなんだって最先端だから、日本の著作を読んでいれば大丈夫! だったら一番いいなぁ。

もうひとつ、学生の頃のことを思い出したのは、筑紫哲也さんの訃報で「朝日ジャーナル」のこと。学生の時に、この雑誌をいつもバッグに入れていました。

デザイン学校では、とにかく時間が足りませんでした。一週間で何10時間は必ず眠ると決めていて、平均4時間くらいで、休日には6時間くらいは眠れるの。そうやって、毎日課題をやるんですが、学校帰りに資料を集めたり、画材を準備して、帰宅してから、どんなに早くても課題に4時間はかかるんです。絵の具の扱いなどで失敗したら、必ずやりなおすので、朝までということも度々。

本も、記号論だとかソシュールだとかで、一週間に4冊くらいは先生が薦める本を読まなければならなかったし、私は、とにかく「やった方がいい」と教えられたことは、全部やることに決めていたから、毎日が睡魔との戦いでした。

睡眠不足とは言っても、シンセサイザーで曲を作ったりしていたので、データ入力とか、勉強することが他の学生よりも多かったのかもしれません。眠っていたようなのに、ハッと気がつくと曲が完成していたり、デザインの課題が机の上に出来上がっていたりするので、私は、いつも本当に「私が眠っているあいだに、神様がやっておいてくれたんじゃないかしら?」と思うほどでした。

そういえば、学生の頃は、眠くてウワゴトのように私が何かをしゃべっても、ちゃんとフォローしてくれる友人が、側に居たような気がします。たとえば、「シニフェとね、シニファンがね、よくわからなくってね……。」「うんうん、シニフィエとシニフィアンね、あれ難しいよね。」とかね。

それで、社会問題については「朝日ジャーナル」のみ。あとは電車の中吊り広告を見るだけと決めていました。芸能人の名前は知らなくてもいいと決めて、流行の曲は一度聞いてコード進行がわからない時だけ確かめて、曲名などは覚えませんでした。流行色はCMYKの数値を色見本で確かめるだけ。ファッションのブランド名は覚えなくても、新しい服のラインはカッティングだけ確かめるの。

そんな感じだったから、時代感覚とか、社会問題のムードは、「朝日ジャーナル」で知る雰囲気に頼っていて、そして学生の私は、デザインの課題に没頭していても、社会と繋がっている気がして安心でした。コンセプトに使う言葉や、使わない方がいい言葉は、だいたい「朝日ジャーナル」の文体から推察していたと思います。私は、「朝日ジャーナルは、違うな。私より前の世代の感覚だな。」と感じていて、そのズレを意識するのが大切だったんです。なんとなく「朝日ジャーナル」が懐かしく、さびしい気持ちです。

だれでも天才になれる脳の仕組みと科学的勉強法今回は、自分の勉強不足を反省したせいか、茂木健一郎さんの本を読んだのですが、勉強法の本としては、池谷裕二著「脳の仕組みと科学的勉強法」「記憶力を強くする」も面白かったので、オススメです。

【たかはし・りき/イラストレーター】riki@tc4.so-net.ne.jp

・高橋里季ホームページ
< http://www007.upp.so-net.ne.jp/RIKI/ >

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茂木 健一郎
PHP研究所 2007-12-04
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by G-Tools , 2008/11/14