クリエイターのための自転車ライフ[4]それでもやっぱりクロスバイクがおすすめだ
── 須貝 弦 ──

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短期集中連載の「クリエイターのための自転車ライフ」は、この第4回で最終回。今後は、まつかさコンビが『デジクリ別冊「自転車を楽しむ生活」』を画策されているとのことなので、そちらに譲ろうと思う次第だ。そもそも、デジクリの原稿枯渇危機を救うため“だけ”に生まれた連載でもあるし(笑)、デジクリには本来もっと相応しい話題があるはずだ。

●そもそもクロスバイクとは

今さら説明するまでもないが「クロスバイク」とは、MTBとロードバイクの中間に位置するジャンルだ。具体的には、MTBに近い形態かつ(それなりの)強度があるフレームに、ロードバイクと同じ直径のホイールを備え、タイヤの太さはMTBとロードバイクの中間──といったところだ。価格帯としては、5〜10万円くらいがボリュームゾーンと言えるだろう。



「はじめてのスポーツサイクルにはクロスバイクがおすすめ」という人と、「クロスバイクは結局のところ中途半端。後からロードバイクやMTBが欲しくなるくらいなら、最初からそれらを買えばよい」という人がいる。自分もクロスバイクを買って半年後にはロードバイクを買ったので、後者の気持ちはよくわかる。

しかし「自分はロードバイクが欲しい!」「折りたたみ自転車に限る!」というような明確な意志があれば別だが、やはり「はじめてのスポーツサイクルにはクロスバイクがおすすめ」だと思う。

クロスバイクは、生活の中で使えるスポーツサイクルだ。これが、クロスバイクのいちばんの利点だと思う。例えば、普段着で片道30分くらいの自転車通勤をする。ちょっと買い物に出かける。週末に20〜30kmくらいのサイクリングをゆっくり楽しむ。輪行(自転車を袋に入れて電車で移動すること)して観光地を訪れ、現地では自転車で行動する──そういった用途には「そこそこ軽く、そこそこ速く、わりと丈夫」なクロスバイクがぴったりはまるからだ。

そう、前々回の『自転車ライフ[2]自転車は日々の暮らしの中でできるフィットネス』に書いてあるようなことは、クロスバイクならばっちり満たせるというわけである。

●「際立ったキャラクターがない」のがクロスバイクのキャラクター

もちろん、クロスバイクを買った後でロードバイクやMTBが欲しくなることはある。しかし、もしはじめてスポーツサイクルに触れるというのであれば、クロスバイクで春夏秋冬を積んでからでも遅くはない。そして、ロードバイクやMTBを買ったとしても、置き場所さえ許すならばクロスバイクも残しておけば良いのだ。「週末のサイクリングはロードバイク、日常生活での移動はクロスバイク」といったような使い分けは、自宅での置き場所さえ許すなら便利だ。

何より、クロスバイクなら10万円で上等なものが手に入る。同じ金額で「上等な」ロードバイクは手に入らない。もっとも、近年では20万円を超えるようなクロスバイクを選択する人も、絶対数こそ少ないが増えてはいるようだ。ロードバイクでもなくMTBでもなく、ふつうの良い自転車が欲しい──という人にとって、そういったクロスバイクは魅力的に映るのだろう。クロスバイクというものは、それ自体が何か際立ったジャンルというわけでもなく、ごくごくふつうのスポーツサイクルでしかないが、だからこそとっつきやすいのかもしれない。

●たぶんクロスバイクの時代が来たのだよ

むかし「趣味は自転車」と言ったら、少し変態っぽい感じがしなかっただろうか。今は、そんなことはない。堂々と言えるし、なんだかアクティブでエコでカッコイイ感じすらするではないか。時代は変わるのだ。

自転車ブームは突然やってきたわけではない。しかしここ数年、一般誌で自転車特集が組まれたり、高いロードバイクがバンバン売れたり、まぁちょっとしたバブルという気はする。そしてココに来て、世界の経済成長が急速に減退しそうな雰囲気だ。アメリカはもちろん、ヨーロッパもマイナス成長の時代に突入するかもしれない。

自転車は世界的にブームだった。そのブームにおいてイメージリーダー的な役割を果たしてきた高いロードバイクは、来年あたり商売的には色あせてくるかもしれない。しかし、下支えをしていたのは、クロスバイクのような自転車たち。生活で使えて、なおかつ生活に彩りを与えてくれるような、ベーシックな自転車たちだ。

そういった自転車はヨーロッパにはそもそも根付いていたし、アメリカではフィットネス志向に乗って、そして日本でもフィットネスであったりオルタナティブな移動手段であったりという理由で広まり、少しずつ当たり前になろうとしている。

「クロスバイクは中途半端」などと、誰が言っただろうか。当たり前な、真っ当な自転車として、道具として、これから本当にクロスバイクの時代が来るのだ、たぶんきっと。

●ちゃんとした自転車に乗ってほしい

私は誰かに「高い自転車を買いなさい」とは言わない。しかし「ちゃんとした自転車に乗ってほしい」とは、切に願う。

・ちゃんとした店で
・ちゃんとした商売をしているメーカー&ディストリビューターの
・ちゃんとした自転車

……に、乗ってほしいと思う。

何をもって「ちゃんとした商売」と判断するかは難しいが、ちゃんとした店が扱っているブランドは、ちゃんとしていると思ってよいだろう。

海外の有名ブランドから商標の使用権を得て、日本で企画して台湾で作った商品(台湾製が悪いとは言わない。むしろ良い)に、あたかも海外の歴史も伝統もあるメーカーのように能書きを加えるのもビジネスとしては正当だ。「ちゃんと」の要件に「ブランドに対するプライオリティを持てるか否か」を加えてしまうと、欲しいものが買えなくなるので(笑)必要以上に気にしないことをオススメする。

まぁそんな話は脇に置くとして、いちばん重要なのはちゃんとしたお店で買うことだ。自転車は、乗りっぱなしではいけない。ギア付きの自転車なら、買ってしばらくすると変速ワイヤーが伸びるので、その調整が必要だ。ポジションが合わないと思ったら、ハンドルの高さを調整してもらう必要だってあるだろう。定期的な点検と調整が欠かせない「乗り物」であるということを、どうか意識していただきたい。

たかが自転車。
されど自転車。

本当にクリエイティブな仕事をされている方なら、良い店と良い自転車を選んでいただけるものと、私は信じている。

【すがい・げん】< http://www.macforest.com/
>
ということで、とりあえずデジクリでは自転車ネタを封印いたします。『デジクリ別冊「自転車を楽しむ生活」』の企画に賛同される方は、編集長、デスク、まつかさコンビに応援レターを送ろう! 私は……すみません、商業媒体でやらせていただきますので(笑)