[2557] タブレットユーザーのための究極バッグ

投稿:  著者:  読了時間:24分(本文:約11,900文字)


<まさにブラックホールみたいなバッグです>

■ネタを訪ねて三万歩[47]
 新幹線5時間半で博多まで
 海津ヨシノリ

■グラフィック薄氷大魔王[163]
 タブレットユーザーのための究極バッグ
 吉井 宏

■デジクリトーク
 「マーベル・ワールド」に熱狂したアラフォー世代(笑)は
 ヨーロッパ漫画誌「ユーロマンガ」を支持するぞ、宣言
 鷺 義勝


■ネタを訪ねて三万歩[47]
新幹線5時間半で博多まで

海津ヨシノリ
< http://bn.dgcr.com/archives/20081217140300.html >
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●一番苦痛なのは新横浜─名古屋間

先月末に、生まれて初めて博多へ行きました。というより九州そのものが初めて。いや、姫路より南が初めてというありさま。東海道、山陽新幹線なら新神戸から西に行ったことはありませんでした。なんだかヒキコモリ丸出しのようですが、出不精とはよくいったもので、旅行が趣味の父への反動なのかもしれません。でも私自身も基本的に旅行は好きなので、案外勢いが必要なのかもしれませんね。

ところで、飛行機嫌い(※)の私は博多まで新幹線を使ったのですが、5時間半座りっぱなしだと、どれだけ苦痛なのかが気になっていました。しかし、実際に乗車してみると5時間30分の間で一番苦痛なのは、新横浜と名古屋間であることを確信しました。ノンストップ時間はここが一番長いのです。あとは1時間以内で適度に停車するため、気分転換になるので長いという感覚は生まれませんでした。

※初めて乗った飛行機が台湾経由の香港行きでした。30年ぐらい前の話。そしてこの時、少々怖い体験をしたことがトラウマとなっています。まっ、この先絶対に乗らないなんて公言できませんが、少なくとも列車で行くことが出来るところは、限りなく頑張って列車でというこだわりです。

実は当初、今回のキャラバンは、大阪〜東京〜北海道〜名古屋〜福岡という壮大な企画だったようですが、諸般の事情で大阪と福岡だけに絞り込まれました。ただし、年明けに予定されている東京は、内容が大幅に変更になるはずです。私にとって、年に二度も大阪に出かけるということだけでもびっくりなのに、福岡行きも付いてきて二度びっくりといったところです。

その福岡は、甘党(※)の私にとって禁断の聖地。お菓子のことを考えただけでグラグラきてしまう場所。随分お土産を買い込んでしまいました。ですから、本当はじっくりと旅行をしたい場所です。なにか理由を付けて企画してみたいと本気で考え始めました。まっ、考えればいいというわけでもないのですが、意識を持ち続けることは大切なことですからね。

※甘党と言ってもお菓子が好きという事で、たとえばコーヒーや紅茶等に砂糖を使うことはありません。そのお菓子も、どちらかと言えば和菓子が好みです。また、一般的な食事はきわめて薄味嗜好です。

●ラブリバーたまがわ子供絵画展

さて、これも先月末の出来事なのですが、毎年審査委員長に任じられている「ラブリバー多摩川を愛する会主催 ラブリバーたまがわ子供絵画展」の表彰式を、今年は多摩川の河原で開催しました。同会主催の清掃作業の後に行うという流れです。ボランティアとして毎年関わってくれる、NPO法人国際ボランティア学生協会の学生の皆さんの活動と、小学生のエントリー作品を見ると、生き生きとした若い人たちが「日本にはまだまだ沢山いるのだ」という嬉しい気持ちになります。

特に今回は、学校の図工の時間とは別に個別に多摩川に出かけ、じっくりと描いた子供が多かったようで、その素直な感性がそのまま作品から溢れていました。なんだか遠い昔、父と写生のために多摩川へ出かけたことを思い出してました。あの頃は既に汚れた多摩川でしたが、それでもまだほんの少しだけきれいさは残っていたような気がします。

本当は私も描きたいのです。例えば、造形科の学生に混じり、大きなキャンバスに思いっきり好きな絵を描くといった無謀なことにも挑戦してみたいのですが、どう転んでもそんな時間を捻出できません。つまり、時間さえ捻出できれば可能なのです。いや、可能にするつもりです。

そもそも私は、B0(1030mm×1456mm)よりも大きな絵を描いたことがありません。絵画の世界から見たら、屁みたいに小さなサイズです。最近、自分の腕の長さを思い切り使うような描き込みをしてみたい衝動に駆られています。デジタルでは、それほど大きく腕を動かさなくてはならない絵を描くことは現状では無理ですからね。100型ぐらいの巨大タブレットモニターがあると面白いかも。でも、描くサイズに見合うCPUのパフォーマンス向上と、搭載メモリーの容量アップにはもう少し時間が掛かりそうですね。

実は、多摩美術大学造形表現学部でのコンピュータ画像処理論の中で、希望する学生にデジタルペイントをやってもらう時間を設けています。これは、私の中でのちょっとした研究テーマみたいなものですが、少しずつ独自性を加味した方向にシフト出来ればと画策しているところです。どちらにしても、操作方法などまったく知らず、初めてコンピュータに触れる人でも描けてしまうようなインターフェイスが理想ですね。そう考えると、現状ではArtRageがある意味理想型かもしれません。

ところで、表彰式は本当に緊張します。子供達にとってもかなり緊張する舞台。もちろん親御さん達にとっても。そこで私が一番神経を使うのは、子供達の名前の読み間違い。人名は説明してもらわないと絶対に間違えます。それは、私自身が紛らわしい名前で今まで散々苦労してきたことなので、嫌でも気になる部分です。大人なら笑って済まされることでも、子供にとっては大きな傷となっていつまでも引きずってしまいかねません。

どちらしても、来年こそは多摩川の清掃作業から参加したいと強く感じる表彰式でした。
・NPO法人国際ボランティア学生協会
< http://www.ivusa.com/ >
・ラブリバー多摩川を愛する会
< http://www.loveriver.ne.jp/ >

とにかくこのイベントが終わると、慌ただしい年末です。昨年は元日もなく、InDesignでの怒濤の作業に明け暮れていた年末年始でしたので、今年は少しは自分のことに時間を費やせそうです。本当は、こんな時こそが旅行に最適なのかもしれませんね。多分、雑用で終わってしまうのがオチだとは思いますが。

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◎今月のお気に入りミュージックと映画
"Juvenileのテーマ 瞳の中のRainbow " by 山下達郎 in 2000
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"The Mammy" by Stephen Sommers in 1999(USA)
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◎アップルストア銀座のセッション 1月26日(月)19時より
Made on a Macとして画像処理セッション『海津ヨシノリの画像処理テクニック講座Vol.30』Adobe CS4による画像処理テクニック/前編』Adobe Photoshop CS4の可能性として、リリースされたばかりのAdobe Photoshop CS4に搭載された新機能の検証と、それらの可能性を独自の視点で整理いたします。
予約無用・参加無料・退席自由ですので、気軽に参加してください。

【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター
yoshinori@kaizu.com
< http://www.kaizu.com >
< http://kaizu-blog.blogspot.com >
< http://efgra.blogspot.com >
< http://web.mac.com/kaizu >

ここ数年、学生と飲む機会が増えてきたのは立場上当たり前なのですが、今年は例年になく回数が多かったように記憶しています。別に学生としか飲まなくなったというわけでもないのですが、旧友からはあまり誘われなくなったので、もっぱら学生と飲む回数が増えています。もちろん学生としか飲まないという意味ではありません。全体の回数が、どちらかといえば学生寄りといったニュアンスです。

ところで、大学では年末になると授業ごとに飲み会が乱立するので、学生ばかりでなく教員も体力勝負。私は今のところ自主的には飲み会を設定していませんが、嬉しいことに色々と個別に誘われるので、少々疲れ気味。もっとも誘われなくなってしまったら終わりですからね。この心地よい疲労感を楽しめるうちは大いに楽しみたいと思っています。学生の視点や価値観を肴にして飲む酒は格別です。

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■グラフィック薄氷大魔王[163]
タブレットユーザーのための究極バッグ

吉井 宏
< http://bn.dgcr.com/archives/20081217140200.html >
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「液晶タブレットCintiq12WXの専用バッグ」として秋に発売になった、WACOMオリジナル「プロフェッショナル キャリングケース」というバッグ。製品ページに載せるレビューをWACOMさんから依頼されまして、一個いただきました。

「僕はCintiq12WXを持ってないけどいいんですか? intuos3 PTZ-631Wならありますけどね。」と申し上げたんですが、結局intuos3を入れて使う前提でレビューを引き受けました。

Cintiq12インチ専用のバッグの紹介文にintuos3でホントにいいのかな? と思いましたが、バッグが届いて納得。これ、特にCintiq専用というわけじゃないんですよ。たいていのノートパソコン用バッグって、緩衝材で保護された大きな区画がありますよね。おおざっぱに言うと、その区画が2つあるのが特長のバッグなんです。2つの区画に、タブレット(主にCintiq12インチ)と最大17インチのノートパソコンを入れられるわけです。

intuos3 PTZ-631Wを入れてみましたが、ちょうどいいサイズ。もうひとつの区画には、17インチのMacBook Proがスッポリきれいに入ります。

従来のノートパソコンバッグで、タブレットの収納が考慮されているものを見たことない。それだけでも貴重だ。探してたんですよ。僕らタブレット使いにとって、タブレットが入れられないバッグなんて何の役にも立たないんだもん。また、大型のノートパソコンを2台収納できるバッグでもあるんですよ。それだけでもかなり珍しい。

本来、Cintiq12インチのコンバータボックスや電源アダプタ・ケーブル類を入れるためのポケットがごっそり空くため、もともと多いポケット数がさらに多くなる。

付属のWACOMのペン数本を入れるケースはそのまま利用するにしても、MacBook Proの電源アダプタやマウスなど細々した機器やケーブル、外付けHDドライブを2台、作品ファイルや書類ケース、雑誌等々。バッグの外側にあるiPod用のフック付きケースや、ペットボトルホルダーも使ってみた。

これだけ詰め込んだのに、空いているポケットがまだ9個も残ってる。普通に仕事に使うであろう機器や出かけるときに持っていくモノはみんな入れたのに、これ以上何を入れたらいいのか思いつかないほど。まさにブラックホールみたいなバッグです。

実際のところ、気合いを入れて大きなタブレットを含む仕事道具全部を持っていく必要がある場合に、こんなうってつけのバッグは今までなかったかもしれない。ノートパソコン2台を持ち運ぶのにもお勧め。せっかくのバッグなので応援の意味で書いてます。

WACOMさんが、12インチCintiq専用というニュアンスでアナウンスしちゃったのは失敗かなと。Cintiqを持ってない人は「関係ないや」って視野からはずれてしまったかもしれない。タブレットも収納できる汎用のノートパソコンバッグ、と言い換えることを進言しました。まあ、ガジェット好きにとって「専用ケース」はとても惹かれるアイテムだからなあ。「汎用ケース」にお気に入りのガジェットを入れるのは屈辱ってこともわかるし。

以前、「スーツケース一個に仕事道具が全て収納できるのが理想」と言ってましたが、このバッグに全部収納して持ち運べたら最高。残念なことに、すでに「全部ノートパソコン化計画」は挫折していて、メインマシンはMac Proに移行してしまってます。でも、このバッグを利用して「仕事道具ワンセットをひとつのバッグで持ち出し可能化計画」をやってみようと思います。

製品ページ< http://tablet.wacom.co.jp/store/campaign/pcc/ >
(「イラストレーター吉井 宏さんからのコメントを読む」のところに短いレビューといろんなものを詰め込んだ写真があります。)

◇お知らせ

JPC定例セミナー『表現力を高めトラブルをなくすイラストレーション作成法』
第6回 仕事を広げるアニメーション&3Dにトライ」
< http://www.jpc.gr.jp/jpc/seminar/081225.html >

日時:12月25日(木)13:30〜16:50(13:00 受付開始)
会場:アップルジャパン株式会社 セミナールーム(東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティータワー32F)京王新線「初台駅 東口」徒歩5分(東京オペラシティビル直結)

───に出ます。「Painterで2Dイラストだけやっていた僕が、3DCGを始めたことでアニメーションから立体制作まで、仕事の幅が拡がっていった話」を中心に、多数の作例やムービーをお見せしながら語る、といった内容になる予定です。非公開アニメーションやフィギュアの実物も見れますよ。

「3Dキャラクターから動画&立体への展開」15:50〜16:50(60分)
 イラストレーター 吉井宏
・3DCGでキャラクターを作るきっかけと動機・3Dアニメーションへの展開
・バーチャルからリアルへ 〜フィギュア制作の足がかり

【吉井 宏/イラストレーター】 hiroshi@yoshii.com
HP < http://www.yoshii.com >
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/ >

Photoshop CS4、手に馴染んでしまって仕事に欠かせなくなってます。試用期間残りあと10日の間に、ちゃんとアップグレード版は届くんだろうか心配。ところで、AliasからAutdeskに移ったきり忘れてたけど、SketchBook Proの新バージョンが出てるんですね。機能アップは、インテルMac対応とPSD形式対応になったくらい。残念ながらアップグレード版はないそうです。

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■デジクリトーク
「マーベル・ワールド」に熱狂したアラフォー世代(笑)は
ヨーロッパ漫画誌「ユーロマンガ」を支持するぞ、宣言

鷺 義勝
< http://bn.dgcr.com/archives/20081217140100.html >
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●これまでにも「紹介」されてきた海外のマンガ文化

アラフォー世代(笑)の私らは、1970年代後半に光文社より続々と発刊されていたアメリカのマーベルコミックスの翻訳版で、映画評論家でアメリカンコミックスにも大変造詣の深い小野耕世氏監修による「スパイダーマン」や「ファンタスティック・フォー」、「ハルク」等、いわゆる「マーベル・ワールド」に熱狂したものでした。

特に「マーベル・ワールド」の醍醐味というと、それぞれの作品のヒーロー達が作品の壁を越えて登場し、ただ敵として対決するというだけではなく、互いが持つ超人的能力から生まれる苦悩等を相談し合える尊い仲間となったり、描かれている世界観も大宇宙からゴーストタウンまでと、いかにもアメリカらしいステージでストーリーが繰り広げられるところでした。

ここまでお話しますと、例えば日本の「ドラゴンボール」等も様々な舞台でストーリーは展開されるのですが、「マーベル・ワールド」の醍醐味というのは「作品間を貫き通すある種の倫理観に、ヒーロー達がいかに向き合っているのか?」といったメッセージがストレートに伝わって来る点なのです。

日本のマンガで言うと、石ノ森章太郎氏の「仮面ライダー」シリーズと「サイボーグ009」、「人造人間キカイダー」等が、それぞれの能力を駆使して様々なステージでストーリーを展開させるとしたら、貴方はどのような作品を描きますか? 等身大ヒーローが秘密結社と戦いを繰り広げるというだけではなく、仲間同士やキャラクターの非常にプライベートな部分にまで伏線が張られるような魅力が「マーベル・ワールド」には展開しているのです。

映画化されている作品も多いのですが、私は正直申しましてコミックスの方が比較にならないくらい面白かったです。特に「ファンタスティック・フォー」にシルバーサーファーが登場した時などは、あまりの完成度の低さに二度と3D CG映画は見るまいとさえ思いました。

コマ割りとキャラクター達の感情表現の関係性等も、アメリカンコミックスの伝統からか、非常に高いレベルまで引き上げられていると言えます。決して翻訳されていなくても、日本のアニメ製作になくてはならない絵コンテが、まるで一冊のコミックスに昇華されているような楽しみ方にも独特の魅力を感じます。カット間を繋ぐことで動きを表現することが多い動画に比べ、マンガはコマの繋がりによって動きや感情を表現している分、説明的な堅苦しさが少なく、次の展開に吸い込まれるような醍醐味も味わえると言ってよいのではないでしょうか。

「凄い」動画表現は、数知れず存在するように思われますが、口惜しく感じられるのは作品表現である前にまず「凄いCG」といった感覚が、鑑賞の前提として認識されるという歯痒さに、昨今のCG制作は憤りを感じているとも言えるでしょう。

当時のアメコミは、ディズニーさえもメインカルチャー扱いされていた中で、確固としたサブカルチャーのポジションを必然的に獲得していたことも、表現力を向上させる為の土壌作りに貢献していたに違いありません。

安易なメディア依存に屈することなく、あくまでも次代のヒーロー像の多様性や社会に対するメッセージ像を追求することで、ビジョンを研ぎ澄ませて来たアメリカンコミックス。一見「繊細な感情表現は苦手」なように思われがちですが、実際には作者と読者が共有している社会観から来る「コミュニケーションの基盤」が直感的に意志を疎通させる働きを担うことで、表現力もより洗練され続けるのでしょう。

アメリカンヒーローの象徴する意志や能力は、言ってみればリアルタイムに描かれているアメリカの「光と影」のようなエピソードではないでしょうか。機会がありましたら、ぜひ読み直してみて下さい。皆様の「世界観」に一石投じる何かに巡り会えるかも知れません。再販を待ちかねている方も、少なからずおられるとネット上にて耳にします。

●フランスの代表的マンガ文化「バンドデシネ」(通称BD)

ジャン・ジロー=メビウスや、エンキ・ビラルといった、フランスを代表する「バンドデシネ」(通称BD)作家の作品はこれまでも幾度となく紹介され、特に洋書店を中心に販売も行われて来ました。日本のマンガとの最大の特徴の違いは、敢えて外見上の差異ではなく、読者に対してどのようなエンターテインメント性をもたらすのかを言えば、「大人と子供が互いに感想を述べ合うことによって、観点の違いを語り合える楽しさ」がBDからは根強く伝わって来ます。

BDのコミュニケーションの役割としては、日本の絵本に近いポジションを果たしている印象も受けます。確かに、ビジュアル面での完成度は、日本の映像表現をマンガを通して発表し続けている作家達にも、多大なる影響を与え続けていると言えるでしょう。

ここまで魅力を持った素晴らしい作品が、国内で相応の評価を得ているとは言い難い最大の要因は、一つには「母国の文化の土壌を大切に育む意志の強さ」で、他国の文化を溢れんばかりに分別なく受け入れ続けているという点では、恵まれた状況におかれ続け、自身の尺度で作品本来の持つ魅力を推し量る能力が著しく劣った、我が国の国民性にも要因があるようにも思われます。

特にBDのような作家が作品を描く動機が個々の作品によっても非常に多様で、その演出力を読み解く面白さに気が付く迄に時間を要する文化に、馴染みがたい一種のトラウマの様な感覚を、私達はこれまで受けて来たのかも知れません。

端的に「マンガである前に海外の作品」といった印象を手に取られた際に受けられたとしても、全く不可思議なことではありません。理由を挙げればきりがないとも思われますが、紹介される作品が必ずしも日本人に「人気」を求めるのか、あるいは「名作」と呼ばれる作品なのか、どちらかに絞り込むというのは非常に難しいこととも言えます。

抽象的な言い回しですが「豊かな表現力」と言った発言を社会・経済・文化の面から解釈するにしましても、決して切り崩すことの出来ない「個の壁」というものがあるように思います。あるとするなら、それは何の見返りも持たない行動であったり、目的のない意思の表明といった方法が有効かもしれません。

例えば一冊の書籍を読む際に、全く文章として捉えず、いわば五十音表を暗唱するように意識しながら、最後の文字まで認識したとします。その後、もう一度読みたくなる方もいれば、そのうち暇な時にでも再読しようと思う方、一度読んだのだからもうよいだろうと思われる方、厳密に問えばどの方にも「動機」はあるでしょう。しかし、考えても見て下さい。マンガに限らず何らかの意志を決定する際に「たまたま目に入ったから」といった状況も事実上生まれているのではないでしょうか。一冊のBDを手に取り数ページ捲っただけでも魅力ある一冊に出会える時とは、えてしてこんな場面であることが多いようにも思います。

本来つまらない本などはないくらいのお気持ちで、棚に向かわれるのも一興に存じます。少々堅苦しいお話が続きましたが、マンガから諭される様々な叙情に日々の様々な鬱憤を晴らすも良し、日頃から鬱積していたお悩みごとに終止符を打たれてはいかがでしょう。癒しをお求めになるのは、また別のノウハウを(笑)。

今回紹介させて頂きます、飛鳥新社刊の日本初のヨーロッパ漫画誌である「ユーロマンガ」は、一冊の書籍としてはまだまだ手探りの段階と捉える方も多いように思われます。その分、これからの期待に応えてくれるに十分な魅力も予感させます。「なぜ今ヨーロッパ漫画なのか?」ではなく、読者の立場からも今後どのようなビジョンを描いて行くべきか? 考えただけで未体験の喜びに身が拉がれる思いさえします。一つ一つの作品に、批評めいたものを記しませんが、私の尺度等ではなくまず一度お手に取って御高覧頂きたいというのが本心です。

貴方のこれまでのマンガに対しての尺度を軌道修正されるに足り得る興味深い作品に、いくらかでもご関心を投げかけてみて下さい。繰り返し読まれることで、それまで経験されることのなかった「焦点」が次第に訴えかけて来ます。

このネット社会において冒険ともとれる創刊を賭された編集制作スタッフの方々と共に、育み続けて行きたい「マンガ本」に、あなたもぜひご声援下さい。アニメやゲームでは決してなしえない感動が、ここには定着しているのです。次号は2009年3月発行の予定です。URLを記しますが、モニターではこの醍醐味は伝わりません!
< http://www.euromanga.jp > euromanga

【さぎ・よしかつ】< http://www.loftwork.com/user/2492/portfolio/ >
正直、「またフランス崇拝モノかよ」と思われやしまいか? とも心配しましたが「ユーロマンガ」はいわゆる「BD好き専門誌」ではありません。もっと編集面等を研ぎ澄ませれば、まだまだ面白くなると思います。特にクロスメディアの観点からBDに思いを馳せると、稚拙なフィギュア化や映像化等といった「資本主義企画」を軽々と飛び越え、これまでになかった醍醐味を味わえるはずです。

・ASIAGRAPH2008 in TOKYO
< http://www.asiagraph.jp/index.html >
・平成9年度(第1回)文化庁メディア芸術祭
< http://plaza.bunka.go.jp/festival/1997/ >

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■編集後記(12/17)

・写真公募展「川口百景」を、川口市立アートギャラリー・アトリアへ見に行った。市制75周年を迎えた川口市は、いま急速に姿を変えている。東京都北区から荒川の対岸を望むと、マンハッタンのようだと言われているらしい(かなり恥ずかしい)。川口といえば「キューポラのある街」で、わが級友たちも映画に出演している。古い話だ。いまはキューポラではなく高層大型集合住宅がシンボルとなっているが、古い木造住宅も多くあり、コントラストがじつに絵になる。もちろん緑も豊かだ。新しく生まれた景観や、昔ながらの川口の良さを知ってもらうために、2年間にわたって写真公募展「川口百景」をギャラリーが主催する。今年は50景、来年50景、合わせて百景を選定し出版するという。審査員は、小林のりお、鈴木理策、野口里佳と豪華。いや、豪華過ぎます。タイトルから言って名所絵はがきのような作品が多いのではないかと予想していたが、傾向はなく多彩だった。その50景はサイトを見て欲しい。川口市長賞は、50点並べたらこれが選ばれて当然、「川口百景」のシンボルともいえる安全な作品だが、意地悪なわたしはあざといと感じた。審査員賞はさすがに選ばれた作品だ。ほかは、上手なのもあるがまあまあの出来が多いかなといったところ。隣の展示場では「川口ゆかりの写真家たち」飯田鉄、寺島萬里子、増田明弘の作品が並んでいた。さすがにプロは違うと誰もが思うだろう。アマチュア作品を先に見てよかった。とくに飯田鉄のモノクロプリントの美しさと、隅々までビシーッとはりつめた緊張感には畏れ入りました。再び50景に戻って見ると、なんという甘くて緩い写真ばかりなのか。次回50景は来年10月31日が締切である。わたしだって、出品すれば入りそうな気がする。甘いか。(柴田)
< http://www.kawaguchi100k.info/winner/index.html > 川口50景
写真公募展「川口百景」は12月21日(日)まで
< http://www.atlia.jp/schedule/index.html >

・加湿器を買った。喉からはじまった、鼻、胃腸や頭痛への長期風邪がこたえた。今もまだ本調子じゃないのだ。バレエを休むのがつらい。休んでいる間に生徒さんが増えたと聞き、嬉しい反面、私はなぜベッドの中にいるのだろうかと。今後のために部屋の湿度を上げて予防をしようと加湿器購入へ。最近入ったフルハップから助成金が出るらしくラッキー。ナイスタイミング。知識のない商品に関しては、サイトの説明を読むより店員さんのアドバイスが助かる。つまらない質問にも答えてくれて頼もしい。サイトだとメーカーを越えた比較はできないし(仕様を見てもよくわからず)、アマゾンレビューはいくつかの商品を利用しての比較はないので、単に音がうるさいとか寒いとか書かれてあっても本当はどうなのかわからない。店頭だと展示されている商品しか選べないし、店員さんのひいきもあるので、そのあたりは左右されるが。まずは加湿器と加湿空気清浄機の比較。これは一目瞭然で、空気清浄機は図体がでかい。奥行きがある。コンビニにあるコピー機の高さ2/3程度の大きさものが主流。加湿器にアレルギー物質云々と書かれてあっても、それは単にそういう仕組みがありますよ、抑制しますよというものであって、空気清浄機のように30分以内に一定の基準以下にするという機能ではないそうだ。圧迫感があるので今回は空気清浄機は見送り。空気清浄機もそうだが、必ず部屋のサイズにあったものにしてください、とのこと。パワーが足りないと部屋全体の湿度はあがらない上、フル運転し続けるので電気代がかかるからと。続く。(hammer.mule)
< http://www.nfh.or.jp/seido/jyosei.html >  快適な職場づくり