わが逃走[35]世田谷ボロ市の巻
── 齋藤 浩 ──

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我が地元・世田谷では、12月と1月の15・16日に『世田谷ボロ市』が開催されます。東急世田谷線の世田谷駅と上町駅周辺を結ぶ、通称『ボロ市通り』を中心に、骨董品などの露店がずらーっと並ぶ、(オレ的に)夢のようなイベントです。

事の始まりは天正6年(1578年)に開かれた楽市だそうで、これが事実なら、なんだかんだで今年で430年も続いてるってことになる。
これは今年の様子です。写真参照。

無意味で無価値のものが、ものすごーく欲しくなり、買ってしまう。そうすると捨てられなくなり、その結果部屋が狭くなる。といった悪循環の源でもあるこの『世田谷ボロ市』。

今回は、ここ数年で私が購入したくだらないものたちを写真付きで紹介しちゃうという、企画自体がボロ市のような『わが逃走』です。



1●時代劇捕り物かるた
8年くらい前にまけてもらって500円で購入。印刷物好きとしてはたまらない、荒いアミ点、版ズレしまくりのデッドストック品。札は断裁されておらず、購入者がはさみで切って使う。イラストがなんとも風情があってイイ。「くらっまてんぐのかんぢゅうろう」「あジャーパーのばんじゅん」「ひばりのえいがはおういりまんいん」「むっつりうもんわとりものめいしん」など、誤字だらけの手書き読み札も泣かせる。

2●毛沢東ウォッチ
新品で買ったのにすぐ止まる、手巻き式腕時計。たしか2,000円しなかったんじゃないか。先端に赤い星のついた秒針が動く度に、毛沢東の右腕が手を振るように動く。あまりのくだらなさに衝動買いしてしまった。おそらく97年の香港返還時に多く出回ってたモノ。ちなみに毛沢東ウォッチ・コレクションはこれが3個目で、他にも文字盤が毛沢東のホログラフィになっているものや、毛語録が描かれたベルトまで真っ赤のものなどを所有しているが、いずれも金銭的価値は皆無。

3●十手
去年購入。5,000円也。極親しい間柄の年上の女性Aさん(年齢非公開)が以前からずっと欲しがっていたので、プレゼントしたもの。私は年末における物品の交換等の慣習には興味がないのだが、このときは何故か衝動的に購入、その場で十手を欲しがる女・Aさんに貢いでしまった。店のオヤジの話によれば、明治期のものとのこと。明治時代に十手が必要とされていたのか否かはどうでもいいとして、重量感のある鉄の質感が実に好ましい。Aさんは特にそれを振り回すこともなく、台所の棚にぶら下げたままだ。

4●京セラ SAMURAI
坂本龍一を起用したCMでも話題になった、おそらく日本最後のハーフサイズカメラ。たぶん1987年のもの。とにかくその縦型のデザインが当時少年だったオレのマニア心を直撃したもんだが、結局ハーフサイズに何万円も出すのもなー。なんて思ってあきらめたものだ。それがケース付きで4,000円。ちゃんと動くし、レンズもファインダーも、それなりにきれい。実際撮ってみるとそんなに面白くない描写で、やはりオリンパス・ペンの味にはかなわないなあ、なんて思った。3年ほど前に購入。

5●オリンパス XA
“どなたにも簡単に写せる”XA2はわりと見かけるが、絞り優先AE搭載のXAはあまり見かけない。XAは私にとって人生2つ目のカメラであり思い入れもあるのだが、使いすぎたせいか高校生のときに壊れた。偶然モトカノに会ったような気がして速攻買い。後で気づいたのだが、レンズのコーティングのハガレやファインダー内の汚れが目立つ。専用ストロボ付きで10,000円だったのだが、今思えば微妙な値段だ。

6●ロータス・エランとマツダ・ロードスターのプラモデル
確か2つで1,200円。大好きな車なので一応おさえておかないと、と衝動買いしたのが8年くらい前のこと。パーツを眺めるだけで、全く組み立てていない。オレは死ぬまでに完成させなければならないプラモデルを果たしていくつ所有しているのだろうか。

7●顔のグラスと箱
これがいちばんのお宝かなあ。キリンシーグラムのノベルティ、『岡本太郎の顔のグラス』と、それが入っていた箱。顔のグラス自体は2種類あって、ひとつは極親しい間柄の年上の女性Aさんが持っていたのだ。で、もう1種類の方を探していたら、なんとデッドストックで発見。1個3,000円。これはまあ古道具屋に行けば見つかるもんだが、(あくまでもオレ的に)価値があるのは店舗用POP一式の入った箱。これは売り物ではなかったのだが、頼んで売ってもらった。これも3,000円。たぶんこんな価値などないのでしょうが、業務用非売品印刷物好きのオレにとってはお宝なのだ。

という訳で、ボロ市で購入したくだらないものを紹介させていただきました。こんな買い物ばかりしているので、我家は物だらけになってしまいました。オレが死んだら、この価値の分かる者に相続してほしいものだが、世の中、そううまくいかないらしい。しゅーん。

それにしてもこの『世田谷ボロ市』、なんで開催日は15日と16日なんでしょうね。以前は1月15日が成人の日だったから確実に1日は休日が入ったんだけど、この冬は12月も1月もバリバリの平日です。だから(なのか)オバサンとジジイが客の大半を占めている。しかも、その量たるや半端な数じゃない。

どうでもいいけど、周辺の飲食店では食い逃げも多いようです。最近は食べ終わった後にケータイで話しはじめて、「あ、ちょっと電波が悪い」とか言いながら店の外に出て、そのままいなくなるケースが多いようです。周辺で飲食店を営む方は、特に注意です。

そんな訳で、これを読んで興味を持ってくださった方、1月の15・16日は、是非世田谷へお越しくださいませー。
それではみなさん、また次回。次回って来年??
それではみなさん、よいお年をー。メリークリスマス。

【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。
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