ところのほんとのところ[9]パリ持ち込み第一弾の結果は……
── 所 幸則 ──

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フランス在住28年の画家・西美さんにお尻を叩かれ、パリ2区〜4区の近接したエリアの中で、しかも、フォトギャラリーとしてセリエAレベルの所だけに限定(この表現は、パリフォトに出店しているギャラリーというのは厳しい選考基準をクリアーしたところだから、世界中で本当のトップということ。日本のギャラリーは「ジャパンイヤー」だからちょっと緩いので別、とは彼の言葉)して訪問する。

ところ自身が、何となくピンと来た所だけ5カ所に絞って帰国前日に飛び込んでみることになり、言葉が通じない2人で決行! どうなる? レザ君は英語とフランス語のみ、僕は日本語と関西弁のみ! しかし、一軒目に入る200メートル前でレザ君は知り合いのパリジェンヌにあって、立ち話が始まった。もうモニカちゃんとは後にしてくれーって、目からメタリウム光線を発射したらなんとか終わったようだ(ほっ)。

まず一軒目、おかまのお兄ちゃんがふたりでやってるとこだ。人気があるし、スペースもいいけど……。中に入って展示された写真を鑑賞してから、レザ君が交渉にはいったら、シッシッというジェスチャーまで交えて、帰ってくれと言うではないか。なんだこりゃ〜、ひまそうじゃないか。それなのに見もしない……しょっぱなからこれかよ。



「たぶん木曜日はわりとひまじゃないかと思うんだよね。でも、作品もって訪ねて来る作家に対し、作品は見ないって言うようなやつは、画商として考えたら駄目なやつだと思うよ」と西美さんが言ってたが、そのまんまだ、商売しか頭にないやつだね。

さっさと次だ! 二軒目に移動する! すぐ近くだった。意外とせまいな。隣りがアート書店だ。だけどオーナーの人柄は良さそうだな。レザ君交渉開始、……難しそうな話をしてる(全然わからないけど)。ところは簡単な英語でレザ君に聞いてみる。

このギャラリーは質はいいが、抱える写真家は7人と昔から決めていて、今7人いる。それで、彼としては手一杯だと言っているようだ。ところは、見てもらうだけでもいい、意見を聞かせて欲しいんだけど、と聞いてみた。

もし、作品を見てもらい、彼が気に入ったら、彼の中で葛藤が生まれる。それは抱えている他の作家に失礼なことだから、彼のポリシーとしてはいっさい見ないことにしている、すまない、と彼は言っている、とレザ君。

ふむ。なんか誠実そうで、ところは好きになったなあ。いつか縁があれば、また。気を取り直して三軒目。ここも割と近い。いままでで一番立派だ。展示された写真をゆっくり見たあと、オーナーのところに行ってレザ君交渉。割ける時間は少しだけよ、ってことで。

横のテーブルに移動して、初めてパリのギャラリーで作品広げるゾーーー!テンションがあがりまくるところであった。オーナーはかなり食い入るように見てる。うっひゃー。

グッドワークス。1secという時間のなかで、というコンセプトが明快だわ、ちゃんとした正統派の写真だしいいと思う。けれど、うちのギャラリーはここ数年ちょっと傾向がちがうの。ごめんなさいね。

まあ、誉められたのは確かだし、レザ君や西美さんがいうにはフランス人はお世辞はいわないから。ああいう場では特に。そんなわけで、次へ。四軒目、定休日だよー。少し離れてる今日最後のギャラリーに向かう。まあ、ギャラリーで初めてほめられた後だから、ちょっとテンションあがる!

五軒目はちょっと狭めだけどゴージャスな感じ。作品を見せ始めたら、これはいくら? とか聞いてくる。大きいのはいくら? すごい食いつきだ。連絡先の確認してるー。僕の写真好き? って、ところも片言で聞いてみた。

凄く好きだわ! って答え。オーナーは別にいて、会議しないとなんとも言えないけど、私はとっても好きよ! と。やったー!! やったー!!! もう、オーナーに断られてもいいよ、ところとしては。

プリントを見てくれた人は、2人ともギャラリーのテイストかどうかは別にしてほめてくれたし、今とっても好きっていわれたんだから、とりあえず一回目の出陣としては充分かな? フランスの出版系も全員ほめてくれたしー。って喜んで帰って来たら……。

西美「うれしいの? 個展決まってないのに?」
ところ「決まった方がいいけど。今回なかなか見てももらえなかったけれど、最初の一週間の最後の方に見てもらってうれしいかな〜」
西美「作品がいいのはわかってるでしょう。契約書にサインするまでいけるかもしれないじゃないか。そこでだろう。喜ぶのは」
ところ「はーい!」

まあ、とりあえずいいっす。接触したのはアポ用の電話入れもいれて、合計10軒ぐらい。プリント見てもらったのはギャラリーだけだが、まだ二軒。明日の朝でやっと三軒だ。良いことがありますように。無事日本に帰れますように。

帰国日の朝、今回最後のギャラリーに向かう。行ってみて、びっくり。キュレーター含めスタッフ3人ともベタほめ。惚れ込んでくれた〜。

すべての写真が1secで区切られることによって、街の時間が凄く伝わってくる。プリントのセンスもすごくいい。間違いなく素晴らしい写真だわ! だって、日本人の持ち込みも多いけど、写真じゃない絵のようなものを写真だと言ってもって来る人も多いのよね、カメラは使ってるんだろうけど。

値段は? サイズによっていろいろ聞いてくる。展示のしかたとか、3人で話し合ったり。あとは確定してからね。

やった〜! っていいたいところだけど、まだ100%じゃないから。ただ、フランスで画商3人と編集長2人が直接見てくれて、みんなが良いといった。この事実に、ところは大満足だった。パリ持ち込み第一弾はひとまず成功といっていいだろう。

【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則
< http://tokoroyukinori.seesaa.net/
>

サイトを少しリニューアルしました。去年の大幅なリニューアルからやっていただいているのが、インフォガレージの池田さんです。彼はもともと、コンピュータやインターネットを使ったアーティストのプロモーション活動に興味があり、ブログ黎明期での有名人ブログの立ち上げや、ラジオやテレビ番組と連動したWebサイトの企画などを行ってきたということでした。
そんな、彼の立ち上げた会社インフォガレージでは今後、様々な業界で活躍している個人や会社が、インターネットというメディアを有効に活用できるようにするためのツール作りを進めたいという。
そんな話をする中で、今回のホームページリニューアルの話が持ち上がったという感じです。感謝の気持ちを込めて。
・所幸則公式サイト
< http://tokoroyukinori.com/
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所 幸則
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by G-Tools , 2009/01/09